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 NO.4
(カナダ編)




ナイアガラに濡れる情熱のキス 

ナイアガラへ
第六日目。今日は待望のナイアガラ観光である。その後すぐニュ−ヨ−クへ移動と忙しいスケジュ−ルである。これまでグランド・キャニオンとナイアガラ・フォ−ルをこの目で見るのが、私の二大願望であった。それを今日、成就できるのだ! はずむ心で出迎えのバスに乗る。一時間ほどトロント市内を観光、ただ一ヶ所下車したところは古いレンガ造りの建物がある州議事堂だけである。赤と黄色の花がグリ−ンに映える美しい議事堂の庭園を後にして、一路ナイアガラへと向かう。


大都市周辺とあって、ハイウェイは行き交うくるまが結構多い。二時間ほど走るとナイアガラだが、そこへ近づくにつれてリンゴ畑やナシ畑が一面に広がっていて、車窓からの眺めを楽しませてくれる。ちょうどリンゴの白い花が咲きそろっていて、旅情をいっそうかきたてる。カルガリ−空港で話し込んだ婦人が「いまはリンゴの花がとてもきれいでしょう。」と話していたとおりだ。
 

バスには若い日本人男女二人のガイドが同乗している。男性のほうは、すでにカナダ在住五年になるそうで、女性のガイドはまだ一年になったばかりという。カナダでの暮らしぶりは結構なもので、日本へは帰りたくないという。千二、三百万円で広い家と土地が手に入るし、物価も安い。五年以上住むと永住権が取れるそうで、そうなれば病院の治療費はタダ、失業してもしっかり保障があるので生活の心配がないという。ただし、税金は高いそうだが……。冬の暖房はどうするのかと聞くと、新しい家はセントラルヒ−ティングでオイルを使い、古い家は暖炉で薪を燃やすという。一冬分の薪を買い込んで家の一角にうず高く積み上げておくそうだ。 


ナイアガラ観光
そうこうするうちに、いよいよナイアガラ到着だ。遠くに白い水煙が上がっているのが見える。この付近一帯は緑に覆われた美しい公園が見渡すかぎり広がっていて、家族連れの一日ピクニック景には絶好の場所である。はやる心を抑えながらバのスから降り立ち、遠くに見えるアメリカ滝を背景に記念のスナップを撮る。






 アメリカ滝の景観










ここナイアガラの領土関係は変わっていて、ナリイアガラ川を挟んで左側(上流に向かって)がアメメリカ、右側がカナダとなっている。つまり、この川が国境となって両国を二分しているわけである。滝のすぐ下流には「レインボウ・ブリッジ」がかかっていて、車も人も渡れるが国境を通過することになるのでパスポ−トが必要になる。そして、アメリカ領域には落下ラインが直線的な「アメリカ滝」が、カナダ側には巨大な馬蹄形をした「カナダ滝」が、それぞれ落差五〇メ−トルの豪快な滝の飛沫をつくり出している。カナダ滝のほうが大きく雄大で、その両方がよく見えダるカナダ側からの観光が人気がある。






左はアメリカ滝、右はカナダ滝









五月中旬ごろから夏の終わりにかけて遊覧船「霧の乙女号」の運行が始まり、滝の真下まで連れて行ってくれる。ちょうど運行が開始されたところで、今日はまずこの遊覧船に乗って滝の観光である。エレベ−タ−で地底まで降り、そこから波止場へ歩いていく。乗船口で、頭からスッポリ被るビニ−ルカッパを渡してくれるが、これは記念リに持ち帰ることになっている。みんなお揃いのブル−のカッパを着てデッキに立ち並んでいる様子は、囚人の集団が護送されている光景にも見えて滑稽である。


岸を離れた船は、ゆっくりとさかのぼりながらアメリカ滝に向かう。滝の直前まで船は迫り、ゴウゴウと耳をつんざく音にまじって水しぶきが吹きかかる。すごい風圧と轟音だ。二階のデッキから見上げる滝の凄まじさには、ただ圧倒されて立ちすくむばかりだ。しばらく停船してから、次は方向を右へ転じてカナダ滝へ向かう。船は、この馬蹄形の滝に包み込まれるように奥のほうまで進入していき、そこでしばらく停船する。






滝に迫る”霧の乙女号”










アメリカ滝の落下地点は岩石の川岸になっているので、船は直下まで近寄れないが、このカナダ滝のほうは落下地点が滝壺になっているので、滝の真下まで肉迫できる。だから、スケ−ルが大きいこともあって、その迫力は一段とすごさを増し、着ているカッパも風圧で裾からめくり上がって用をなさない。目前に落下する巨大な滝の流れを見詰めていると、自分が滝をさかのぼっているような錯覚に陥る。視覚と聴覚の両方から感じ取れる自然の大迫力は、視覚のみの場合とはやはり比較にならない。

 




船上から見たカナダ滝










ふと目を横にそらすと、若いカップルが抱き合いながら熱いキスをかわしている。二人とも首から上をカッパから出し、雨嵐のように降り掛かる水しぶきにぬれそぼりながら、身じろぎもせずにキスしている。まるで映画の一シ−ンを見ているようだ。なんとロマンティックな光景だろう。彼らは高校生旅行団の一組らしく、周りはみんな轟音の中でわいわいはしゃいでいるのに、この二人だけが熱いシ−ンを繰り広げている。恐らく二人は示し合わせて、この迫力あるナイアガラの滝を目前にして、生涯に残る記念のキスを企んでいたのに違いない。外国でしか見られない、微笑ましい光景である。


二十分間のスリリングな遊覧船観光を終えてす滝ぐ近くのホテルへ移動し、バイキング式のランチが始まる。なかなかの内容のもので、特に多種類のおいしいケ−キが出されているのが珍しい。どれも口にしてみたいが、ビ−ルで脹れたお腹が受け付けない。食事が終わるとお定まりのショッピングで、またもや巨泉経営のみやげ品店に案内される。彼はバンク−バ−、バンフ、ナイアガラと、それぞれ好立地の場所に三軒の土産品店を持っている。第一級の観光地を選んで、日本人向けに展開している抜け目なさに感心させられる。私にとって、おみやげはもはや用無しなので時間を持て余す。
 

そこを出てから、ここ一番の観光ポイント、テ−ブルロックへ移動する。ここはカナダ滝のすぐ近くに突き出た場所で、ナイアガラ観光のメッカともなっている。それだけに大勢の観光客が岸辺のてすりに群がって、白い水煙を巻き上げながら落下する滝を眺めている。上流から下流へ沿って歩いて行くと、上流の紺色の川の流れが次第にざわめき立ちながら真っ白な滝の壁となって豪快に落下していく様が手にとるように見える。船上から見上げるのとは、また違った迫力がある。一枚の写真では到底この迫力シ−ンを写し撮れないので、三枚ないし四枚の写真に分けて撮るパノラマ写真を試みる。




 ナイアガラ・フォールへ落下直前の上流の景観(カナダ滝)



 ナイアガラ・フォールの落下点(カナダ滝)



 ナイアガラ・フォールの全景。手前がカナダ滝、左端に見えるのがアメリカ滝。






この滝をつくる激流が毎年数センチずつ断崖を削り取るため、落下地点が上流のほうに年々後退しているそうである。以前は年間一メ−トル以上も後退していたそうだが、現在ではそれを防止するため流量をコントロ−ルしているそうだ。 


ナイアガラを観光するには、いろいろな方法がる。滝を上から眺めようと思えばミノルタタワ−やスカイロンタワ−があり、ヘリコプタ−の遊覧飛行もある。横から見ようと思えば、このテ−ブルロック、下からは「霧の乙女号」やトンネルをくぐって裏から滝を眺めるシ−ニックトンネルズなどがある。夜になるとライトアップされ、カラフルなイルミネ−ションに写し出されるナイアガラが鑑賞できる。そのどれにも挑戦して堪能してみたい。そしてまた、レインボ−ブリッジを渡ってアメリカ側からも見てみたいし、アメリカ滝とカナダ滝に水流を二分している川中のゴ−ト島にも渡ってみたい。だが、それには一、二泊しないと無理な相談だ。一日中ここにひたってさまざまな挑戦を試みたいが、拘束された身の上ではどうにもならない。


多少の心残りを胸にしまい込んで、バスは今日・最後の観光地ナイアガラ・オン・ザ・レイクへ向けて走り出す。この街はナイアガラの北にあり、くるまなら二十分で行ける果樹園に囲まれた小さな街である。十九世紀の開拓時代の面影を色濃く残す緑多き素敵な古都で、ナイアガラ川がオンタリオ湖に注ぎ込む河口にあたる街でもある。
 

しばらく散策してみると、閑静な住宅街を通り抜ける道路には大きな並木が枝を伸ばし合って緑深い素敵な緑陰をつくっている。よく手入れされた庭園と愛らしい花々に取り囲まれた家々には人影もなく、ひっそりと静まり返っている。こんな街に住んでみたいなあと、心底思わせる魅惑的な街である。この街には、庭の手入れを怠ってはいけないという条例があるそうで、放っておくと隣近所から文句が出るらしく、それでも無視すると市当局に訴えて手入れさせるそうだ。だから休日ともなれば、庭園の手入れに余念がないという。道理で美しいはずだ。 






ナイアガラ・オン・ザ・レイクの美しい町並み












 オンタリオ湖のほとりにあるナイアガラ・オンザ・レイクの美しい公園



 ナイアガラが流れ込むオンタリオ湖




(次ページは「ニューヨーク」編です。)










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