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 NO.2
(カナダ編)



2.カナディアン・ロッキ−・・・・ 森と湖と氷河が織りなす神秘の世界
 
カルガリーへ
第三日目。今日はカナダのカルガリ−へ飛び、そこからカナディアンロッキ−の麓バンフへ行き、さらにその奥のレイク・ルイ−ズまで移動する。ロスから真北へ三時間の飛行でカルガリ−空港へ到着。われわれの飛行機だけとあって、清潔で美しい空港はひっそりとして人気がなく、ロスの空港とは好対照である。いともスム−ズに入国手続きをすませて出迎えのバスに乗り、バンフに向けて走り出す。


ここのハイウェ−は幅も広くて美しく、行き交うくるまもポツンポツンとしか見かからない。なんと車が少ないのだろう。いったん郊外に出ると、俄然人も車も少なくなり、静かで美しい田園風景が広がっている。カナダに来ると心まで洗われたような気がして、なんだかホッとした気分になる。それもそのはず、国土面積は日本の二十七倍、それなのに人口は二、七〇〇万人なのだから……。

 




バンフへ向かうハイウェー











レイク・ルイ−ズへ
二時間近く走ると、やがて前方に白く冠雪したロッキ−の山々が見え始める。そしてハイウェ−の両側には高く垂直に林立したこの地特有のロッジ・ポ−ル・パイン(松の一種)が、美しい森林を形づくっている。パラパラと雨が降り始め、ワイパ−を時折始動する。地域的なにわか雨のようだ。バスはバンフの町を素通りして、ここからさらに半時間走ったロッキ−の中心部レイク・ルイ−ズへと向かう。宿泊ホテルは、この湖のほとりに建つエレガントなシャト−・レイクルイ−ズである。このホテルは深山の風情と都会の快適さを同時に味わうことのできる世界でも最高級のリゾ−トホテルとされている。それでも夏料金で一万円から二万円(シングル・ツインとも)と割安で、湖面側の部屋が高くなっている。
                   

夕方六時過ぎホテルに到着。当地も夏時間なので日は長くまだ明るい。このホテルは、カナディアン・ロッキ−の宝石とまでいわれる超有名なこの湖の全景を独占するかのように、大きく優雅な建物をその湖畔に静かに横たえている。だから、五メ−トル四方もあるダイニングル−ムの大窓から眺める景色は、まるで巨大な額縁絵を見ているようでとても素晴らしい。ここは高地なので天候が変わりやすい。そこで、到着するや否やバッグを持ったまま湖のほとりに出て行き、観光パンフの写真にいつも登場するアングルを真似て夕暮れの景色を写真に収める。湖面はまだ氷に覆われて真っ白である。あと半月もすれば氷も解けてエメラルド色の水面が現れるそうだが、少し時期が早すぎた。




 カナディアン・ロッキーの宝石といわれるレイク・ルウィーズの神秘的な光景。
 正面奥の谷間からビクトリア氷河が迫る。エメラルド色に輝く湖面は、まだ氷に覆われている。




撮り終わって戻ろうとすると、後ろのほうで若い女性が一人で写真を撮っている。そこで、撮り合いっこしようと思って「撮ってあげましょうか?」と声を掛けると、「えゝ、お願いします。」 という。遠くにヴィクトリア氷河が落ち込む湖水を背景に、ナイスアングルを選んで一枚撮ってやる。お返しに撮ってあげましょうという言葉に、こちらもスナップを撮ってもらう。


そして、いろいろ話を聞いてみると、彼女はホリデイ・ビザ(若者を対象に英語研修を目的とした一年の短期ビザで、その間適当なアルバイトもできる。カナダとオ−ストラリアで認められている。)で東京からカナダにやって来たばかりだそうで、宝石店でアルバイトしながら英語の研修をするそうだ。配属先はまだ決まっていないが、バンフの町かこのホテルの店で働くらしく、明日から仕事のための研修が始まるそうだ。その後、このビザで観光ガイドや商店の店員などをしている多くの日本人青年を見かけることになる。
 

夕食はグル−プみんなで一緒にとるというので、一人で寝るには贅沢すぎる素敵なル−ムで一服してからダイニングル−ムへ出掛ける。ここは広大なスペ−スの大食堂だが、すでに大勢の宿泊客たちで満席状態である。十人は座れる大テ−ブルに二手に分かれて座り、大きな一枚板ガラスの入った巨大ウィンドウの傍で、天然の額縁絵を鑑賞しながらアルバ−タ牛(アルバ−タ州で育成されたこの地方特産の肉牛)のステ−キに舌つづみを打つ。ここの氷河の水でつくられたビ−ルがあるというので、それをとってみんなで乾杯しようということになり、和気あいあいのうちに夕食を取り終える。
 

カナディアン・ロッキ−観光
第四日目。今日は一日掛けてカナディアン・ロッキ−の観光である。北米大陸西側には、沿岸地帯と中部大平原を分ける巨大な山脈が南北に走っているが、そのカナダ領内がカナディアン・ロッキ−である。そこにはビッグホ−ン、バッファロ−、ム−ス、ビ−バ−、ヤマ山羊などさまざまな動物が生息し、それに山と氷河、そして深緑色の森とエメラルド色の湖が絶妙に調和してロッキ−の神秘的な美しさを生み出している。今、その中心部に滞在しているわけである。                    

朝起きてみると、辺り一面は深い霧に覆われていて、湖も白い氷の湖面だけしか見えない。やはり高地の気象は変化しやすい。九時に出発した専用バスは、今日の観光のハイライト、コロンビア大氷原へと向かう。この氷原は三二五kmに及ぶ北極圏外では北半球最大の氷原なのである。私たちが降り立つのは、この大氷原のほんの舌先にあたるアサバスカ氷河の上なのだ。霧はすっかり晴れ上がり、車窓から見るロッキ−の真っ白な山肌が朝日を受けて銀色に輝く景色が目にまぶしい。                    






朝日に輝くロッキー










バスは、氷河の雪解け水を集めて流れるボウ川を横切り、ジャスパ−(カナディアン・ロッキ−第二の観光の町)へ通じるハイウェイを一時間以上かけて突っ走る。このハイウェイはカナディアン・ロッキ−の銀座通りともいえるル−トで、三、〇〇〇m級の起伏に富んだロッキ−特有の鋭い岩山が車窓の右に左に、そして前方にと現れては過ぎ去って行く。バスは時折、格好の場所で休息を取りながら、その変化に富んだロッキ−の景観を惜しみなく堪能させてくれる。そして走行の途中には、雪の残る険しい岩場の断崖に白いヤマ山羊が見えたり、角笛のような角を持つビッグホ−ンが道路上で散策していたり、また滅多と見られないというム−ス(水牛の一種)が湖の中にたたずんでいたりして、ロッキ−観光に、より一層の興趣を添えてくれる。
                     

コロンビア大氷原
十一時すぎコロンビア大氷原の雪上車基地に到着、ここから特別製のスノ−コ−チ(雪上車)に乗って氷原の一角、アサバスカ氷河に向かうのである。四〇人乗りぐらいのこのコ−チは、六輪の巨大なスノ−タイヤを付けており、雪に埋まった氷河までのコ−スを十五分かかってゆっくりと登って行く。このコ−チも若い女性ドライバ−だ。以前は鉄製のキャタピラ−を付けた雪上車だったそうだが、氷河を痛めるという理由から現在のゴム製タイヤに変わったそうだ。地球温暖化の影響か、年々氷河の先端が短くなって後退しているそうで、こういった現象はロッキ−全体の氷河に現れている。

                   



 氷河上の雪上車










コ−チが止まって氷河の上に降り立つ。今日は青く晴れ渡って陽光が強いせいか、意外と暖かい。前方に目をやると、両側の山がなだらかなスロ−プをつくりながら中央に切れ込んでいる。その間から大氷原が流れ出てこの広大なアサバスカ氷河につながっているのだ。(広大な氷のプレ−トを氷原、そこから流れ出る先端を氷河といって、用語を使い分けている)。




 カナディアン・ロッキーにあるコロンビア大氷原の一角:アサバスカ氷河の景観




氷河の上を奥の方まで進んでみる。表面は雪が積もっているので、サクサクと柔らかい。サングラスを掛けないと強い日差しが雪に反射して目が痛い。立っているだけではわからないが、目に見えない速度で確実に氷河が流れ下っているのだ。その証拠に、岩石を削り取り、その土砂を両側面にかきわけながら、うずたかくせりあげている。自然のすごさに驚かされる。
 

五月のロッキ−は天候が崩れやすいそうだが、天気の神様に気に入られたのか、今日は青空がいっぱいに広がっている。私たちのグル−プは年配の外国人グル−プと一緒にコ−チに乗り合わせ、往きは英語のガイドで、帰りは日本語のガイドでという具合に交互に説明を受ける。二ヶ国の団体が乗り合わせた場合は、この方法をとるらしい。


どこから来たのかと聞くと、「イングランドから来た。」という。するともう一人の老婦人が「グレイト・ブリテン」という。同じ英国というのにも、老人たちには昔の大英帝国時代の面影が忘れられないのか、“グレイト”を付けたがる。でも陽気な老人たちで、ガイドのユ−モアあふれる説明に外国人らしいオ−バ−なゼスチュアで反応しながら、車内いっぱいに笑いの渦を巻き起こす。英語の分からない私たちのグル−プは、その間ポカンとしながら、意味不明の連れ笑いにただスマイルを浮かべているだけである。帰りの車中で、グル−プの一人が持参のウィスキ−に氷河の氷を入れてオンザロックにし、記念にといって飲ませてくれる。酒の愛好家たちは抜け目がない。
 

氷河観光が終わって、次は昼食だ。基地のすぐ近くに、ここ唯一のレストランがある。中国人の経営というだけあって、バイキング料理の味付けがどれもうまい。特に焼きソバは皿ウドン風のもので、仲間のみんなもウマイウマイといいながら食べている。食後一服すると、バンフの町へ向かってもと来た道をUタ−ンする。途中、氷に覆われたボウ湖に立ち寄っただけで、ロッジ・ポ−ル・パインの深緑の森がどこまでも続リく快適なハイウェイをドライブする。やがてバスはバンフの町へ到着、早速、大橋巨泉が経営しているというみやげ品店に案内される。


バンフの町
標高一、四〇〇メ−トルにあるこの町は、カナディアン・ロッキ−を代表する観光地で、ロッキ−のリゾ−トライフの拠点となっている。その割りには、こぢんまりとして清楚な感じが漂う基地の町である。山の麓に向かって一直線に延びるメインストリ−トは数百メ−トルしかなく、その両側には小ぎれいな店舗が並んでいる。巨泉の店はその中ほどのいい場所に立地している。

 




バンフのメインストリート










ここで二時間の自由行動というので、その間に妻子への便りを書こうと巨泉の店で格好な絵葉書を求める。ここにはカナダの特産品から地元の特産品まで、さまざまなみやげ品が所狭しと並んでいる。荷物にならないように、小物のみやげを二三購入する。中二階になっている階上には休憩用のソファがあって、各種の清涼飲料水がセルフサ−ビスで自由に飲めるようになっている。そこのコ−ナ−の一角に小さなテ−ブルのスペ−スを見つけ、ジュ−スで喉を潤しながら一番お気に入りの美しい絵葉書二枚に便りをしたためる。
 

町の中心の交差点にある赤いポストに書き上げたばかりの葉書を投函してから、メインストリ−トをぶらついてみる。観光案内所を探して日本語版の案内パンフをもらい、並み居るさまざまな商店の様子を垣間見ながらストリ−トを往き来する。みやげ品店や飲食店などが多い。観光シ−ズンには少し早いので、まだ人通りはそれほど多くない。時間が来てバスに乗り、ここから三十分走って午後六時、ホテルのあるレイク・ルイ−ズへ帰着する。澄んだ青空に映える美しいロッキ−の一日観光を終え、その後豪華なダイニングル−ムでフルコ−スのディナ−を楽しむという旅行の醍醐味を満喫しながら、深い満足感に浸る。



(次ページは「カナダ・トロント」編です。)










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