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   NO.1
(アメリカ編)




14日間・2ヶ国

大自然の驚異と大都市のプロフィル


1995年 5月13日〜26日


旅 行 日 程

日 付 日数 ル ー ト 泊数 予    定
5/13(土) 成田 > ロサンゼルス @ 市内観光
14(日) ロサンゼルス A グランドキャニオン観光
15(月) ロサンゼルス > カルガリー @ カルガリー>バンフ(バンフ泊)
16(火) バンフ A カナディアンロッキー観光
17(水) カルガリー > トロント @ カナダ最大の都市
18(木) トロント > ニューヨーク @ トロント市内観光・ナイアガラ観光
19(金) ニューヨーク A ニューヨーク市内観光

これ以後、ツアー離脱し、個人旅行開始

 20(土)            〃          B            〃          
21(日) C
22(月) 10 ニューヨーク > フィラデルフィア @ 市内観光
23(火) 11 フィラデルフィア > ワシントン @ 市内観光
24(水) 12 ワシントン > ニューヨーク @  
25(木) 13 ニューヨーク > 成 田 機中 12:00発
26(金) 14 成 田着    

 




 「着陸予定の時間となっておりますが、ただいま着陸した飛行機がパンクを起こし、飛行場が閉鎖されました。そのため約三十分ほど着陸が遅れる予定でございます。大変ご迷惑をおかけして申し訳ございません。」 十四時間かかってやっと成田上空にたどり着いたというのに、この機内放送のアナウンスにはうんざりとなる。そもそも出発時からこのフライトはついていない。ニュ−ヨ−ク・ケネディ空港出発の際にも、機内に搭乗後三十分ぐらいしてから突然、「主滑走路が工事のため閉鎖されました。別の滑走路を使用しますので、今から約三十分後の離陸予定です。」というハプニングがあり、結局一時間遅れの出発となってしまったのである。これで都合十五時間以上も機内に閉じ込められていることになる。
 

どうして搭乗前に工事のことがわからなかったのだろうか、羽田乗り継ぎの飛行便には間に合いそうもないがどうなるのだろうか、一人娘と空港でデイトすることにしているが一時間半も延着しているので戸惑っているのではないだろうか、などとやきもきしながらやり過ごしていると、やがて機は滑るように滑走路に着陸する。ナイス・ランディングである。やっと狭い空間から開放されて自由の身になる。今度のカナダ・アメリカ二週間の旅が好天に恵まれ、大自然の驚異と大都市の素顔にふれる感動と驚嘆の旅であったことの満足感に浸りながら……。


1.グランド・キャニオン・・・・ 20億年の歳月がつくり出した驚異の世
                                        界


ロサンゼルス空港到着 
第一日目。成田から十時間近くの飛行で、予定時間どおりのお昼ごろ、晴れ渡るロサンゼルス空港に降り立つ。ここは三年前の夏にホ−ムステイでやってきた懐かしの空港である。ツア−の一行は十八人のグル−プである。一人参加は年配の男性と私の二人だけ、他は年配女性の二人組と四十代のカップルを除いてみんな老夫婦ばかりである。夏休みや年末・年始でもないこの時期にのんびりと出掛けられるのは、やはり退職あがりのヒマ老人ばかりなのだろうか。 


そんなことども考えながら、ぞろぞろと一緒に入国審査に向かうと、これはなんとしたことだ。すでに長い長い行列が何列もできている。やはり添乗員の話のように、これでは審査を終えるまでに一時間以上はかかるかも知れない。覚悟を決め、観念した気持ちで並んでいると、なんと麻薬調査犬を連れた男女二人の警官がやってきて、行列している入国客のチェックを始めるではないか! こんな経験は初めてであり、犬にかぎ回されるなんて、なんだかみじめでいや〜な感じである。何もこちらが麻薬を所持しているわけではないが、それでも鼻息をならしながら自分のほうへ近づいて来るセパ−ド犬を見ていると、一瞬心細い気持ちにさせられる。自分の前を無事通過すると、やはりほっとするものだ。
 

待ち時間の退屈しのぎに警官と犬の行動を観察していると、行列の中の一人を任意に選んで調査の協力を依頼し、犬に悟られないように麻薬の匂いを付けた布切れをその人のポケットに忍ばせている。それから犬を連れたもう一人の女性警官がやってきてかぎ回らせるのである。そして、犬が確実にその人物をかぎ出すと、その都度頭をなでながらご褒美として好物のエサを与えるのである。そうでもしながら犬にも捜し出す楽しみを与えないと、怠けてしまう恐れがあるのだろう。こんな状況を目で追いながら待ち続け、二時間かかってやっと入国する。  


シーフードで昼食
見覚えのある空港玄関を出ると、すでに出迎えのバスが待っている。これから昼食をすませて市内観光に繰り出す予定である。機内では一睡もできなかったので、まぶたが重い。まだ体内時計は午前三時過ぎの深夜なのだ。一行のみなさんも眠そうにしているが、そんなことにはおかまいなしにバスは海岸線を走って、間もなくヨット・ハ−バ−のレストランに到着。シ−・フ−ド・レストランで、カニやエビを中心にした料理が出される。味はもうひとつ、アメリカの味には期待できないのでビ−ルをとって流し込むしかない。ライスも出されるがネチャネチャのご飯で、一口試食した後はだれも口にしない。
 

ロス市内観光
市内観光は、お決まりのリトル東京(アメリカ最大の日本人街)、ロデオ・ドライブ(シャネル、テイファニ−などの高級商店街が並ぶ高級ブティック街)、チャイニ−ズ・シアタ−(ハリウッドのランドマ−ク的存在の建物になっている中国寺院風の映画館。入口前のコンクリ−トに残された大スタ−たちの手形、足形やサインがあることで有名)などを観光して回る。どれも以前に訪れた懐かしい風景だ。









 エリザベス・テイラーの手形














そして美しいパ−ムツリ−の街路樹とデッカイ広告板が目立つサンセット・ストリップを通り、ビバリ−ヒルズを見上げなら最後はツア−お決まりの免税店行きである。そこで無為な時間を過ごし、やっと本日の宿泊ホテル、シェラトン・アナハイムへ向かう。ここからくるまで五十分もかかる郊外だが、ディズニ−ランドのすぐ傍なのでディズニ−行きには便利なところだ。六時過ぎ、ようやくホテルに到着して開放される。
                     

夕食をすませて部屋でホッとしていると、戸外でドンド−ンと音がするので窓から外をのぞいて見ると、ディズニ−ランド上空の夜空いっぱいに花火が打ち上げられている。今日最後のエレクトリカル・パレ−ドが始まったのだろう。まだ本場のディズニ−を知らないグル−プのみなさんには、夕食後ホテルのシャトルバスでぜひ訪れてみるよう勧めておいたが、果たして行ったのだろうか。そんなことを思いながら眠りに就く。
                    

グランド・キャニオン観光
第二日目。今日は待望のグランド・キャニオン行きである。この観光はオプションになっているので、旅行代金以外に追加支払いしなくてはいけない。旅行社の料金は四万円と高いので、出発前に日本でドル建て支払いのできる現地旅行社に東京経由で予約を取り、グル−プとは別行動をとることにする。料金は日本円で二万八千円と一万円以上も安い。            
 

朝七時半にホテルまで迎えに来るというので遅れないように玄関先で待っていると、時間どおりに迎えがやって来る。くるまを運手する若いM君は日本人で、渡米して五年になるという。彼に矢継ぎ早の質問を浴びせている間に、近くのホテルからドクタ−の新婚カップルとハリウッドのホテルから若い二人連れのOLを拾って飛行場へと向かう。みんな日本人ばかりである。 


郊外のいい雰囲気をもつ小型機専用のバンナイズ飛行場に着くと、年配の夫婦が一組待っている。今日の観光客は、この七人のみだという。セルフサ−ビスのコ−ヒ−を飲んで一服すると、いよいよ出発である。搭乗の前に体重と身長を書かされる。総重量に関係するので非常に重要らしく、重量の如何によって二機に分乗するかどうかを決めるのだそうだ。搭乗するセスナ機をバックにパイロットと記念撮影をすませ、機上の人となる。
 

パイロットとガイドを加えて九人を乗せた機は、延々と続くモハ−ベ砂漠を飛び越えてラスベガス上空を通過し、ネバダ州を横切り、そしてコロラド河を眼下に見ながら東へ六五〇キロ離れたアリゾナ州のグランド・キャニンへと二時間かかって飛行する。






眼下に望むコロラド川










今日のガイドも兼ねるM君が予告したとおり、グランド・キャニオンへ近づいてくると機はにわかに揺れ始め、あたかもジェット・コ−スタ−に乗っているかのようにアップ・ダウンを繰り返す。ハワイの島めぐりの折もセスナ機に乗ったが平穏な飛行で、こんな経験は初めてだ。


キャニオン付近の上空は、いつも気流の状態が悪いらしく、到着前三十分間ぐらいは揺れるのだそうだ。それにしても、カンニンしてというぐらい揺れがひどく、この状態が三十分も続くのかと思うと酔いそうな気分で自信がなくなる。乗客のうち大抵一人は酔う者が出るそうだが、みんな平気の様子である。シ−トのポケットに用意されたビニ−ル袋を気にしながら、下腹に力を入れてジッと辛抱する。  

やがてグランド・キャニオンの大きな裂け目が視界に入っていくる。自然がつくり出した驚異の世界だが、その中心部から離れた上空を飛行しているのでその全貌はわからない。それから間もなく、機は飛行場に無事着陸、ホッと胸をなでおろす。歩きながらパイロットに「今日は風が強いですね。」と話しかけると、「今日はそれほどでもないよ。昨日はもっと強かったよ。」という。昨日はどんな揺れ方をしたのだろうと一人想像しながら、待機している小型バスへと向かう。  


バスの運転手は気のいい女性のオバさんドライバ−で、M君のユ−モアをまじえた説明を聞きながら最初の観光ポイント、マ−サ・ポイントへと向かう。全長四六〇kmにおよぶ壮大なスケ−ルのグランド・キャニオンは、二十億年の歳月とコロラド河の急流がつくりあげた大自然の驚異なのだが、この河を挟んでサウスリム(南壁)とノ−スリム(北壁)に分かれており、交通の便と施設の整ったサウスリムの観光が一般的となっている。われわれ一行もサウスリムへ向かうのだが、このル−トに幾つかの観光ポイントがあり、そこから一、六〇〇メ−トルを超える深い谷底へ続く大岸壁の壮大な景色を眺め見下ろすのである。 


最初のマ−サ・ポイントへ到着し、岸壁の側へ歩み寄って、初めて見る驚異の大景観にしばしかたずをのむ。数キロ離れた前方にはノ−スリムの地平線がどこまでも続き、そこから深い谷底へ向かってバ−ムク−ヘンケ−キの生地模様のように色違いの地層が幾層にも重なり合って壮大な断崖をつくり出している。ある場所では段々畠のようにゆるやかな傾斜になったり、また他の場所では切り立つ絶壁となっている。これらが途方もない裂け目の間に複雑な地形をつくりながら、谷底を流れるコロラド河へ向かって落ち込んでいる。浸食される度合いの違いによってこのような複雑な地層を呈しているのだが、大自然の織りなす空前絶後の壮観さを目の前にして、観光客は例外なく感動の淵に立たされて絶句するのである。                   






雄大なキャニオンの眺め















谷底にはコロラド川が・・










このグランド・キャニオンはその昔、海底だったそうで、それが標高二、〇〇〇メ−トルの高さにまで盛り上がり、そこに雨が降って河ができ、気の遠くなるような年月を経て一、六〇〇メ−トルの深さにまで浸食され、現在のように感動的な浸食模様をつくり出したのである。海底だった証拠に、ヤバパイ・ポイントの小さな博物館にはこの地域で採れたアンモナイトの化石が展示されている。
                     

驚いたことに、この深い谷底の一角に小さな宿泊施設が見える。谷底へ下りる細いトレイル(山道)が数ヶ所につくられているが、河まで歩いて行くと往復で九時間〜十四時間ほどかかるそうだ。歩くのは苦手という人には騾馬が用意されており料金を払えば利用できる。楽は楽だが、その反面股ズレに苦しむことになり、一長一短がある、とはガイド君の話である。断崖を上から見下ろすだけではなく、一時間でもいいからトレイルを下りて行き、一、六〇〇メ−トルを超える大岸壁を下から見上げてみたい衝動にかられる。しかし、現地滞在時間は昼食時間を含めて三時間しかなく、その余裕時間はとてもなさそうだ。
                     





谷底へ向かうトレイル










マ−サ・ポイントからの見物を終えた後はレストランへ向かい、バイキング方式の昼食をとる。「帰りの飛行の揺れを考慮に入れて、決してお腹いっぱい食事をしないで腹八分目にとどめて下さい」というガイド君の忠告に耳を傾ける。間もなく日本人ツア−の一行がどやどやと入ってくるのでそちらに目をやると、そのグル−プの中に私と同じツア−のグル−プが混じっているではないか。他のグル−プと合併して大勢で来ているのだ。私たちのグル−プは家族的な雰囲気の小人数で、能率的な行動ができるので助かる。
                   

食後はホピ・ポイント、ヤバパイ・ポイントなど三ヶ所の観光ポイントを回って、グランド・キャニオンの迫力ある大景観を堪能する。なかでもホピ・ポイントからの眺望は、広い角度から迫力のあるキャニオンを眺められる最も美しい景観である。後でつなぎ合わせてパノラマ写真に仕立てられるように、この素晴らしい光景をうまく区切りながら五枚続きの写真に収める。特に夕日に輝きながら変わり行くキャニオンの絶妙な美しさは、たとえようもなく感動的らしい。残念ながら、これを見るには一泊が必要だ。





 数億年の歳月とコロラド川の急流がつくりあげた大自然の驚異: グランド・キャニオンの大景観。もっとも眺めが美しいとされるホピ・ポイントにて。





再びもと来た道を飛行場へと引き返し、地球が年月をかけて演出した驚異のグランド・キャニオンに別れを告げる。M君の話によると、キャニオン上空を飛ぶ遊覧飛行はとても危険だという。この上空は常時複雑な気流が渦巻いているのでベテランのパイロットしか操縦しないそうだが、それでもたまに墜落事故があるという。


つい三年前にも日本人観光客を乗せたセスナ機が墜落したそうだ。そんな話を聞くと、帰りのフライトが一段と憂うつになり出す。観念して再び機上の人となり、最初の三十分間の強烈なアップ・ダウンにシ−トを固く握りしめながらじっと耐え抜く。そして二時間の間、機内の狭い空間に身をひそめながら広い砂漠の上空を抜け出すのを待っていると、やがて見馴れた市街地が眼下に見え始める。やっと帰ってきたのだ。大型ジェット機と違って身動きができず、もちろんトイレもないのだから窮屈この上ない。 


飛行場で一服してから約一時間くるまで走り、午後六時過ぎホテルへ送り届けてもらう。好天に恵まれた感動の一日観光であった。これでグランド・キャニオンを一度は見てみたいという念願が叶えられ、満足した気分に浸りながら一人夕食をとる。


後で聞いた話によると、グル−プのうち旅行社のキャニオン行きに参加しなかっのは四十代カップルと私の三人だけという。その夫妻は奥さんのほうが体が弱く、小型飛行機の揺れには無理だから参加しないという。そこで代わりの観光をどうしようかといろいろ悩んでいる様子なので、サンジェゴのすぐ南にあるメキシコ国境沿いの町、ティファナの観光を強力に勧めておいた。三年前のホ−ムステイの折、ホストファミリ−にくるまで連れていってもらったメキシコの町だが、その観光ツア−があるというので、これは珍しい体験ができるから是非参加したらと勧めたのである。後で聞くと、やはりティファナに行ったそうで、恐かったけどメキシコの珍しい体験ができたと喜んでいた。まだ、なんとなく揺れが残る体をベッドに横たえ、ロス二日目の夢を結ぶ。



(次ページは「カナディアン・ロッキー」編です。)










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