N0.8





昼 食
こうして3箇所のオアシスを巡り終わると、今度はトズールの郊外にあるレストランに向けて移動する。ここはナツメヤシで財を成した地元の人物の邸内にあるレストランということで、ここでの昼食となる。午後1時半ごろの遅い昼食である。バイキング式の料理で、スープその他のチュニジア料理に菓子パンなどがテーブルに並び、珍しさにつられていろいろ試食してみる。デザートは甘いナツメヤシの実である。



邸内の木陰にあるレストラン



昼食の料理


デザートに出されたナツメヤシの実

ここの広い邸内には、その王者らしくナツメヤシの植え込みがなされて樹林になっている。まだ背丈は小さく、成長の過程にあるのだが、数十年後には壮観な樹林の景観が見られるに違いない。だが、この成長は遅く、高さ10m以上の高さになるには相当の年月が必要らしい。この庭園の一角に建築中の主人の豪邸があるのだが、それをのぞかせてもらうと、なかなかの贅を尽くした室内設備を備えている。










 ナツメヤシの実を干している










 邸内に広がるナツメヤシのガーデン




9.大塩湖ショット・エル・ジェリド横断

昼食を終わると、今度はここに先回りして待っていたチャーターバスに乗り移り、今夜の宿泊地ドゥーズへ向かう。この道中では北アフリカ最大と言われる塩湖ショット・エル・ジェリド(広さ4600ku)を横断するのだが、その塩湖は圧巻見ものである。大塩湖とはいったいどんな様相を呈しているのだろう? 初めての遭遇なので興味津々である。とはいえ、すでにその露払いとして小規模の塩湖は今朝見たところではある。


しばらく走ると、バスはジェリドにさしかかったようである。限りなく広大な干潟に似た湿地帯を貫通する直線道路を突っ走る。この道路は塩湖の中に堰堤のように積み上げて造られたいわば堰堤道路なのだ。そのあくまでも一直線に伸びる前方部分の道路は地平線の彼方に消えて見えない。これから察せられるように、このジェリド大塩湖がいかに広大かが分かるというものだ。


大塩湖の中を突っ走る

この直線道路の左右に広がる果てしもない塩湖に見とれていると突然、「あっ、右側に蜃気楼が見えます!」と叫んでいる。その方向を見ると、塩湖の遠く前方に浮島のようなものが見える。あまり大きくはないが、ここではよく見られる光景らしい。ここでバスはストップし、道路から干上がった湖面に下り立つ。その位置から蜃気楼を撮影してみるが、ズームも望遠もないカメラでは対象が小さ過ぎて分かりにくい。



 遥か前方の水平線上に現れた蜃気楼(小さくて分かりにくい)




面白いことに、しゃがんでみると蜃気楼が消えてなくなるのである。立った位置からでないと見えないのだ。微妙な視角の位置の違いがそうさせるのだろう。これはガイドさんが教えてくれたもので、何度試しても間違いなく蜃気楼はマジックにかかったように消えてしまうのである。


この広大な塩湖だが、よく見据えると湖水は見えず、ただ海水が引いて干上がった潟に天然の塩田ができたように見える。だがしかし、先述したようにこの塩は海水とは無縁のもので、土中の塩分が吹き出たものである。とは言え、天然の塩には変わりないので、採塩している工場も見られる。


道路沿いには川のような水溜りが・・・



 干潟のような大塩湖の風景




道路沿いにはちょっとした土産品店があり、ここでも砂漠のバラなどを売っている。周辺の湖の中には塩の結晶を固めて作った動物のユーモラスなオブジェや塩の小山が作られている。道路わきには「ALGERIE 150」の標識板が立っている。ここから150km走れば隣国アルジェリアの国境なのだ。マイカーだったらそのまま突っ走って越境するところだが・・・。


道路沿いには砂漠のバラの土産品が並ぶ


大塩湖の中の横断道路。その先は地平線の中に消えている。


アルジェリア国境まで150kmの標識


塩で作られた動物のオブジェ


塩の小山

10.ドゥーズ

ドゥーズへ
再びバスに乗って塩湖横断道路を走り行く。ここから1時間足らず走ったところで砂漠の入口の町・ドゥーズのゲートにさしかかる。このゲートのデザインは地元のシンボル、ラクダをあしらったものだ。この町で待望のラクダに乗り、砂漠に沈むサンセット風景を楽しむ予定になっている。空は快晴で夕日を拝むのには申し分のない日和である。


ドゥーズの町のゲート門

ラクダに乗ってサンセット観賞
4時半ごろホテルに到着。ここで希望者はチュニジアン・コスチュームに着替えて現地人になりすまし、ラクダの待つ砂漠へ移動する。男性はブルー、女性は深紅のコスチュームで、みなさんなかなかサマになっている。準備が整ったところで、ここから直ぐのところに広がるサハラ砂漠へ移動する。


砂漠の入口に到着すると、そこにはすでに数十頭のラクダが並んで待ち受けている。やはり砂漠にラクダは付き物で、これがいないと絵にならない。さあ、これからラクダに乗っていよいよ砂漠遊歩だ。どんなサンセットが見られるのだろう? ラクダ乗りの経験はエジプト、タクラマカンに次いで三度目の経験である。ラクダ乗りは立ち上がる時としゃがむ時が大きく揺さぶられるので注意が必要だ。


待機するラクダの群れ。これに分乗して砂漠の中へ。

おっとっと〜、そんなに揺らさないでくれよ、ラクダ君! 彼が立ち上がる時は後ろ足から立ち始めるので、前につんのめりそうになるのである。そして今度は前足を伸ばすので、前後に大きく揺さぶられることになる。とにかく全員が乗りそろうと、いよいよ砂漠の中へ出発だ。


砂漠遊歩へ出発だ! 赤のコスチュームは女性、ブルーは男性。

ここの砂漠は今朝のジャメル砂丘の平凡な平地砂漠ではなく、一応起伏のある小山の砂丘もあって砂砂漠らしいムードが出ている。かろうじて砂上に風紋ができている箇所もある。とはいえ、やはりここも車やバイクが入り込んで走り回れるほどの固い砂地である。ラクダの蹄もめり込むほどの砂丘がほしいのだが、ここでもそれは無理のようだ。


ラクダの上から写真を撮るのは慣れないと困難である。なにせ片手で握り棒を持ち、片手でカメラを持って構えないといけない。ラクダの背は大きく揺れ動くので、片手握りの不安定な状態で撮影のタイミングを捉えなければなならいのだ。しかも下手すると、振り落とされる危険性もある。そんなこんなで初乗りの人には撮影はなかなか難しい面がある。


のっそのっそとペースは遅いが大股で歩きながら砂漠の奥の方へ進んで行く。前方の砂丘にはヤシの樹がまばらに立っていたりして、なかなかサマになる風景を見せてくれる。ただ、足元の地面に幾筋もの車輪のわだちが残されているのが何とも艶消しである。これでは砂漠のイメージが壊されてしまうからだ。


う〜ん、砂漠らしい風景。が、車輪の轍がムードをそこなう。


折角の砂漠風景も轍が邪魔する。

そんなことを思いながらもラクダの隊列は、のそりのそりと奥地を目指して進んで行く。前方には砂丘とは言えないほどの可愛い砂の小山が砂漠らしい風景を見せている。これよりもう一段の大きな砂丘の波がほしいなあ〜・・・と思っていると、右方向へカーブし始める。ここまでが観光ラクダの行ける最奥地なのだ。


砂漠らしい風紋が見える。もっと大きな砂丘が見たいのだが・・・。

横方向へ進んでいると、左前方の砂漠の彼方に沈む夕日が見え始める。これから落日のドラマが始まるのだ。大きなオレンジ色の火の玉が砂丘の彼方に落ちようとしている。ラクダの動きでカメラがぶれないように慎重に構える。カメラを持つ腕を柔軟に構えていないと揺れに連動してぶれてしまう。ちょっと待ってよ! そんなに早く歩かないでくれよ! 折角の落日が森陰に入ってしまうじゃない。


砂漠のサンセット風景。大きな太陽だ。

それは止めようもなく、森陰の方にラクダは移動してしまう。これでは森陰の夕日しか見られないぞ! 何とも残念なことだが、しようのないことだ。あれはナツメヤシの森だろうか? なんとも邪魔な位置にあるものだ。森陰に入る前の地点で落日の様子を最後まで見せてほしいのだが、ラクダ引きにも予定があるのだろうから注文はつけられまい。


サンセットを背景に浮かぶラクダのシルエット


う〜ん、森が邪魔して折角のサンセットも見えない。


間もなく落日


落日の瞬間

結局のところ、最後の落日は森陰越しにしか眺めることはできない。晴れ渡った青空の中に沈み行く見事な夕日なのに、これでは画竜点睛を欠くというところだ。残念この上ないと思っているうちに、砂漠に陽は落ちて辺りは薄暗くなり始める。これでサハラ砂漠を舞台にした入り日のドラマは終わりなのだ。あゝ〜・・・。45分間のラクダによるサンセット観賞はこうして終わりを告げる。


ホテルで夕食
砂漠の末端に戻ると、ラクダを降りてすぐ近くの宿泊ホテルへ移動。このホテルは暖房もよく効いており、熱いお湯もしゃんしゃんと出て気持ちが良い。3泊目にしてようやく快適に過ごせる宿に出遭う。


食堂に行くと、入口の横でおばちゃんがおいしそうなナンを焼いている。よし、この焼き立てのナンを夕食のメインにしよう。今夕はバイキング料理でスープ、ナン、チキン、クスクス、各種のパン、それにデザートは様々なお菓子類が並ぶ。なかなか豊かな夕食で、ビール(小ビン3.5ディナール=350円)で喉を潤しながら、おいしくいただく。


この鍋でナンを焼いている。

今日の旅はサハラの日の出と入り日をそれぞれ異なる場所で観賞するというなかなかの趣向で、それに山岳地帯のオアシスを訪ねたり、珍しい大塩湖を横断するなど、変化にとんだものである。天候も快晴に恵まれ、これらが快適な、そして印象深い旅になったことに心満ちる思いで床に就く。明日はチュニジア第三の都市スースへ移動する日だ。



(次ページは「マトマタ&エル・ジェム観光」編です。)










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