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     N0.9






旅のコース




10.マトマタ

チュニジア4日目。今朝は6時に起床。今日も快晴の空のようだ。バイキングの朝食を済ませると、出発準備OKだ。昨日の朝が早かっただけに、今朝はゆっくりの出発で9時の予定。これまで地中海沿岸のチュニスから南下を続けてドゥーズまでやって来たが、これから西に向かって移動し、そこから地中海沿岸沿いに北上して再びチュニスに戻る予定である。


今日のコースは地中海沿岸部に近いマトマタへ移動して先住民族ベルベル人の穴居住居を見学、その後エルジェムへ移動して世界遺産・円形競技場を見学、そして今日の宿泊地スースへ向かうことになっている。今日も移動に次ぐ移動の旅である。


朝食後、ホテル前に出てみると快晴の空の下、朝日に照らされた素敵なナツメヤシの並木が走っている。ここは町の外れらしく、車の通りも少なくて閑静な雰囲気がただよっている。ホテルの敷地もかなり広く、この地域では上級のホテルなのだろう。くるまの排気ガスもスモッグもなく、そして雲ひとつない真っ青な空の広がりが、なんともすがすがしくて気持ちがよい。だが気温は低く、ひんやりとしている。



 空の青と朝日に映えるナツメヤシの並木が美しい。右端の影が筆者。




マトマタへ
9時にホテルを出発したバスは一路マトマタを目指す。郊外に出ると、見渡す限りサハラの土漠が広がる中を突っ走る。2時間近く走ると月の世界のような奇妙な山岳砂漠が見えてくる。ここが映画「スターウォーズ」の撮影地になったそうだ。なるほど、よくもこんな地域を探したものだと感心させられる。残念ながら「スターウォーズ」の映画は見ていないので、このシーンは分からない。ビデオがあれば見てみたいものだ。


広大な土漠


山岳砂漠。この丘の向こう側にスターウォーズの撮影地になった月の世界
の風景が広がっている。


間もなく、マトマタ地方の「TAMEZRET」という小さな村にさしかかる。ここで下車して小休止。この辺り一帯はなだらかな乾いた山岳砂漠が広がっており、その丘の上には民家の住宅が並んでいる。道路沿いには、わずかに数軒の土産品店が見られるのみ。その一軒の店には青年が店番をしているのでチュニジア語で挨拶すると、流暢な英語が返ってくる。驚いて「何処で英語勉強したの?」と尋ねると、「学校で勉強しました。」という。彼はベルベル人で近くに住んでいるという。


地名を示した標識


丘の上に広がるTAMEZRETの村



 別の角度から眺めた村の風景。右手奥の方にスターウォーズの撮影地となった月面風景が広がっている。




彼の話では、母国語のフランス語はもちろん、ドイツ語、スペイン語も話すという。彼はマルチリンガルなのだ。念のためにスペイン語とドイツ語で挨拶してみると、ちゃんとそれぞれの言葉で返ってくる。彼の話は確からしい。彼によれば、立ち寄るお客さんとの会話で実践的に勉強するのだという。なかなか才覚のある好青年である。だが、こう見えても商売はがっちりしたもので、一行の一人が買い物する時もなかなか値切りに応じない。いや、しっかりしたものだ。


店の側にはラクダの子供がつながれており、牛乳1本1ディナール(100円)を払ってラクダに飲ませられるようにしている。眺めていると、たまに立ち寄る観光客が結構牛乳飲ませを楽しんでいる。そんな様子を眺めていると、向こうから羊の大集団がやって来る。道路をいっぱいに埋めながら通り過ぎて行く。泥砂漠の中でどこに草を求めて行くのだろう?


子供ラクダに牛乳を飲ませている


羊のパレード

ベルベル人のこと
ここから15分ほど走ると、先住民ベルベル人の住む穴居住居地帯に到着する。このベルベル人のことだが、彼らの先祖は1万年前から居たと考えられ、北アフリカの広い地域に古くから住み着いた先住民族である。その総人口は1000万人から1500万人といわれ、モロッコでは全人口の50%、アルジェリアでは人口の20%を占めており、チュニジアではその比率は少なく数%となっている。家庭内ではベルベル語を話すが家庭外ではアラビア語を話すという。


彼らは定住民族と遊牧民族に分かれ、前者は石造りの家に定住し、後者は毛皮のテントを張って居住する。また外敵から身を守るために城壁で囲んだり、穴居生活をしたりする。これから訪れるところは、この穴居住居が今も残る地域なのである。


ベルベル人は紀元前にはヌミティア王国を築いたが、12〜13世紀ごろ、アラブ民族に侵入され山岳地帯に逃げ込んだ。マトマタ周辺には地面に穴を開けた形の独特の集落が残っており、これを穴居住宅と呼ぶ。外敵から身を守ると同時に、乾燥したこの土地の風土にもよくあった造りといえる。今でも住み続ける人もおり、穴居住宅を利用したホテルやレストランなどもある。


珍しい穴居住居
バスを降りて赤土の斜面を上って行くと、行く手に突然大きな竪穴が出現する。遠くから見ればただの地面が広がっているだけで穴があることには気付かず、近くに寄ってはじめて竪穴があることに気づくのである。こうして外敵から発見されにくいようにして身を守る術を身に着けたのだろう。









 深い竪穴























 竪穴の周囲にはフェンスもなく危ない
















地底には井戸穴が・・・


横穴の前には人影が見える

こういった大小の竪穴が付近に点在しているのだが、そのほとんどが住居やレストランとして利用されている。大きい竪穴は直径が約10m、深さも約10mぐらいとなっている。その穴の底部に幾つかの横穴を掘って居住部屋を造っており、底部中心には井戸が設けられている。井戸に水がない場合は穀物などの食料貯蔵庫として利用しているらしい。


大きな竪穴の一つに下りて見学する。地表の一角から竪穴に向かって階段付きのトンネルが掘られ、これを下りて地底に出る。横穴の居住空間は大小のものがあるのだが、中にはかなりの広さを持つ空間もある。寝室、調理場、リビングなど用途に分けて横穴空間を使い分けている。









 竪穴に下りるトンネル

















小さな横穴


しゃれた寝室


かまどが並ぶ調理場


台所兼リビングルーム。ここでお茶の接待を受ける。


居間兼寝室?

この穴居住居にはベルベル人のおばあさんが住んでおり、観光客相手にお茶の接待サービスをしてくれている。この部屋がいちばん広いスペースで、かなりの奥行きと広がりを持っている。そこには多数の腰掛も用意されており、20名以上の人数が腰掛けられるようになっている。多分、観光会社と提携して観光用に開放しているのかもしれない。


老婦人の風貌は眼光鋭い色白のベルベル人で、その彫りの深い面立ちはかなりの美人だったことを想像させる。ショールを被った様相は、見方によっては西洋のお伽話に出てくる老婆の雰囲気をただよわせている。現代的なガスコンロでお湯を沸かしているのが、いかにもちぐはぐの感じで、この洞穴には不似合いな感じである。洞穴だけに冬は暖かく、夏は涼しいということだ。


お茶を接待してくれたベルベル人の老夫人

スターウォーズレストラン
各部屋を覗いて見て回った後、地上に出ると、別の竪穴に移動し、そこにあるレストランで昼食となる。地下への階段を下りて奥へ行くと、地底に出る手前の壁に映画「スターウォーズ」の宣伝ポスターが貼ってある。こんな所にどうしたことだと思って地底に出ると、奇妙な器物が竪穴の壁面に取り付けられている。なんとこれはスターウォーズの撮影セットの一部分らしく、その残骸がそのまま残されているものだそうだ。


こんな所にスターウォーズのポスターが・・・


スターウォーズの撮影セットが残っている

ちょっとしたスターウォーズ気分になりながら、横穴のレストランに入って行く。結構、欧米人の観光客の姿が見られる。料理はまずスープ(米粒よりやや大きいツブツブが入ったケチャップソース味のスープ)が運ばれ、ケチャップ味のあっさりしたものでおいしい(写真参照)。このスープ料理はこれまでに何度か口にしたのだが、この地ではポピュラーな料理なのだろう。


ケチャップ味のスープ

次はオリーブ油でパリパリに揚げた香ばしいセンベイ風のパン? そしてメインはベルベル人の主食で名物料理クスクスである。パサパサした食べ物なのでスープや飲み物なしには食べにくいものである。そしてデザートはナツメヤシの実である。注文した飲み物はこの国の名物コーラ・ボガ(2ディナール=200円)である。


(次ページへつづく・・・)










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