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   NO.4




3日目。7時に起きて気になる天候を見ると、今朝もしょぼつく雨が依然として降り続いている。もう1日以上もそれが続いている。南国の雨にはしては、ちょっとしつこ過ぎる感じである。今日はアクティビティの予定はなく、のんびりとこのモツ(小島)で過ごすつもりだから、さほど問題はない。雨のボラボラもまた良しというところだ。
 

ホテル周辺の環境
8時ごろになって、朝食を取りに行こうと腰を上げると、いつの間にか雨が止んでいる。あのしつこい雨もどうやら止んでくれたらしい。このまま天候が回復してくれたらいいのだが……。今のうちにテラスからの風景写真を撮っておこう。天候が変わりやすいから、後でと言うわけには行かない。目の前には雨上がりの静かなラグ−ンの風景が横たわっている。海に浮かぶ水上コテ−ジが、いかにも絵になる風景をつくり出している。静かな心なごむ朝の風景である。 



 テラスから見た静かな朝のラグーン風景



外に出ると、コテ−ジをつなぐプロムナ−ドをゆっくり歩いて行く。人影はどこにも見えない。この素敵な風景を独り占めできるなんて、なんともぜいたくなことである。遠慮なしに、その景色をカメラに収める。向こうに見える本棟の大きな建物もすべて草葺きの屋根で造られ、自然との調和が配慮されている。その一部の屋根が、とんがり帽子のように突き立って高くなっているのが面白い。
 





プロムナードから見たホテル本棟の風景










本棟横手に通じる道は、椰子の木などの植え込みがきれいに整えられ、なかなか南国らしい風情を醸し出している。本棟正面の階段横には、ちんまりとしたプ−ルが設けられ、目の前のラグ−ンのように透明の水をたたえている。その横には国花のティアレに似た白い花が大きな樹木いっぱいに咲き揃っている。






南国ムードいっぱいの通路
















ちんまりと可愛いプール
















ティアレに似た白い花がいっぱい









その横に立ってビ−チの方を眺めれば、ラグ−ンの向こうに「わたしの姿、お気に召して?」と言わんばかりにバランスよくシンメトリ−に盛り上がったオテマヌ山(727m)がそびえている。このホテルだけが独占する息を呑むようなボラボラの絶景である。この眺めを椰子の木陰から眺めるのも、また乙なものである。この大景観が眺められる立地条件を評価すると、かなり高価なものになるだろう。ここに来て、そんなヤボなことは考えるまい。



               ホテル入口正面階段より眺めたオテマヌ山の風景。まるであつらえたような絶景に言葉も出ない。








赴きのある椰子の木蔭からの眺め










ダイニングルームの情景
一通り写真を撮り終えると、ゆっくり歩いてダイニングル−ムへ向かう。中に入ると、ラグ−ンに突き出すように造られた食堂は、見事な景観に囲まれた別天地の世界である。床下までストレ−トに通した一枚ガラスのウィンドウの向こうには、モツで囲まれた内海のラグ−ンが静かに広がっている。その向こう側の岸辺には南洋樹林を背景にビ−チバンガロ−がたたずみ、うっとりするような情景を見せている。長い窓辺に沿って籐椅子のテ−ブルセットが並べられ、最高の食事雰囲気を醸し出している。思わず溜め息がもれてしまう。
 





ムードたっぷりのダイニングルーム




                ダイニングルームから眺めた内海のラグーン風景



この雰囲気に合わせて、揃えられた料理も豪華版である。スクランブルエッグを調理してもらっている間に、ハム・ソ−セ−ジ類、ポテト、サラダ、フル−ツ、マンゴジュ−ス、ミルク、コ−ヒ−と取り揃え、これにパンとジャム・バタ−を盛って席に着く。そして、出来立てのスクランブルを加えて豪華な朝食が始まる。朝食のル−ムサ−ビスもいいが、やはり食堂に来て食べるべきだ。料理の種類が比較にならない。そんなことを思いつつ、外の眺めにうっとりとしながら時間をかけていただく。毎朝、こんな場所で、これほどの料理を食べて暮らしたら、どんなにか素敵なことだろう。でも、きっと太り過ぎになるかな?
 

窓辺で食事している誰かが、パンくずを水面に投げている。すると、何処からともなく小魚たちが面白いように集い寄って来てパンのエサに群がっている。その中に少し大型の魚も混じり、子亀まで仲間に加わっている。漁種は少ないが、朝げの争奪戦が始まっている。ここでは毎朝、食事客の誰かがパンくずをエサに投げやるのだろう。彼らはそのことをちゃんと心得ていて、この時間帯にはこの辺りを回遊しているに違いない。こうして群がる魚たちの争奪戦を眺めながら、のんびりと時間をかけてゆっくりと食事をいただく。のどかな朝食のひとときである。泊まり客は、きっとこの食堂の雰囲気を気に入って帰るに違いない。
 





パンくずのエサに群がる小魚たち









食事と眺めをたっぷり堪能した後、ひとまず部屋へ引き揚げる。本棟を通り抜けていると、中庭に当たる所に広い池が設けられ、そこに睡蓮が植えられている。今、紫色の花が水面いっぱいに咲き乱れて、素敵な風情を見せている。雨季のこの時期がさまざまな花が咲き揃う頃でもあるようだ。
 





紫の睡蓮の花が美しい











コテージの様子
コテ−ジへ続くプロムナ−ドを部屋の前まで歩いて進み、そこで自分の泊まるコテ−ジを写真に収める。この写真の正面向かって右側2/3がベッドとテ−ブル、ソファ−、クロ−ゼットなどに使われ、左側1/3が洗面、トイレ、バス、シャワ−などの水回り施設に当てられている。部屋に入ると、今度はテラスに出て海中へ下りる階段下に立ち、そこからコテ−ジの下部の部分を撮影してみる。写真のように、それぞれのコテ−ジから海中へ気ままに下りられるようになっており、水上コテ−ジらしい特色を出している。
 





宿泊したコテージ
















コテージの床下の様子










不思議なことに、各コテ−ジとも水道管とか排水管がどこにも見当たらないのである。私の推測では、恐らくこの支柱のどれかがその役目を持っており、海底に配管されているようだ。ホテルの案内書によれば、排水などはすべて本島に送られ、そこで処理されているとなっている。環境保護のため、そこまで配慮しているのである。これでは、コストがかかるはずである。 


周辺の散策
一息入れてから、暑くならないうちに、今度はホテル周辺の散策に出かける。椰子の木などの熱帯樹木が生い茂る本棟の横を回って裏手へ出ると、木陰に幾つかの建物が見える。その一つを窓から覗いて見ると、結婚式場に使われるのか教会のような祭壇が設けられている。そこを通り過ぎて先へ進むと、入江の末端の細くなった水面の岸辺に出る。
 

するとそこには子供連れの外国人親子が何やらはしゃいで楽しんでいる。彼らの会話を聞いていると、どうもロシア語のようだ。そこで「ズドラ−ストヴィチェ!(こんにちは)」と声をかけると、懐かしそうな顔をして、にっこり微笑みながら挨拶を返してくる。目の前の水面には、大小の海亀が集まっている。親子がパンくずを与えているのだ。間近に見れる海亀が珍しく、食べたり泳いだりする様をしばし眺め入る。
 





親亀・子亀がいっぱい










こんな入江の奥まったところに海亀が?と不思議に思い、ふと横を見ると、そこには網で囲った亀の飼育池がある。二つに仕切られた池には、子亀がいっぱい遊んでいる。いったいどこで卵を生ませ、孵化させているのだろう? そんなことを思っていると、大きなバケツに魚の切り身を入れて係がやってくる。ちゃんと飼育係がいるわけだ。そこに今度は、オ−ストリアから来たと言う数人の女性グル−プがどやどやとやってくる。みんなで珍しげに亀の観賞をしている。
 





 養殖池の亀さん










ここを離れて橋を渡り、向かい側のモツ(小島)に出る。ここのビ−チ沿いには、先程食堂から眺めたように、何軒かのビ−チバンガロ−が立ち並んでいる。その背後の茂みの中に設けられた通路をゆっくり歩きながら先へ進んで行く。すると突端の岸辺に突き当たり、それ以上進むことはできない。
 

その岸辺に立って前方を眺めると、今度は少し左寄りの違った角度からオテマヌ山の風景が見られる。ここから眺めると、山のてっぺんが一段と鋭く尖って見える。右側には水上コテ−ジが沖合まで突き出すように並んでいる。その中に青いシ−トをかぶったコテ−ジが見えるが、それらはいま屋根の葺き替え作業中なのだろう。こうして絶えず維持管理が必要のようだ。草葺き屋根も南国情緒たっぷりで素敵だが、その裏にはこうした隠れた努力が必要なのだ。
 


              左寄りの位置から眺めたオテマヌ山の風景



そこからUタ−ンしてビ−チバンガロ−の方へ戻り、先程の入江に出る。茂みを抜けてビ−チに出ると、そこには内海のラグ−ンの静かな風景が横たわっている。自然の造形とはいえ、実にうまくできたラグ−ンであり、外海のラグ−ンとはまた違った趣を呈している。ホテルスタッフの話では、このラグ−ンに小魚がたくさんいるらしく、特に奥の橋の付近はポイントとかでシュノ−ケリングに適しているとこのことである。
 

正面向こうにはホテルの本棟が見え、先程食事した食堂が水際沿いに長く広がっているのが見える。その右手に小さな橋が見えるが、その奥に亀の飼育場所があり、その先は入江の末端になっている。確かに、橋の上から見ると、スタッフの話のように小魚がいっぱい泳いでいる。だが、カラフルな魚の魚影は見えず、食堂前に集まってきた類の魚のようである。
 

反対の左端には橋のかかる細い水路があり、ここで外海とつながっている。この橋の上に立って眺めると眼下に大型の魚が群れをなして泳いでいる。そして椰子の木が並ぶその向こうが外海のビ−チになっている。ここをぐるりと回って外側のビ−チに出ると、オテマヌ山を横目に眺めながら、砂の上をサクサクと歩いて自分のコテ−ジへ向かう。どこを回っても素晴らしい景観が楽しめるモツである。


                     内海のラグーン風景。向かいの建物がダイニングルームと本棟。その右側に小さな橋が見える。



午後の休息
部屋に戻ると、汗ばんだ身体をシャワ−で流し、さっぱりしたところで一休みだ。青空は見えず、雲の多い天気ではあるが、薄日が差し込む日中は紫外線もきつく、かなり暑い。午後は昼寝でもしながら陽が傾くのを待つのが賢いようだ。しばらくくつろいでから、パンとコ−ヒ−で昼食とする。このパンは朝食時に余分にいただいたものだが、代わり映えがしないとはいえ、これがフランスパンだけに、なかなかおいしいのだ。結構な昼食ではある。
 

その後は、テラスに出て目の前のラグ−ンを渡る海風に身体を撫でられながら、リクライニングチェアに寝そべって憩う。リラックスするとは、このことを言うのだろうか? そこには自然の風景にどっぷりと溶け込んだ自分がいる。この非日常の時間と空間の中に身を置いていると、心身の奥底まですっかり癒やされて、心くつろぐ思いがする。身も心もとろけるような南国のひとときが、ゆっくりと流れて行く。
 

カヌーとシュノーケリング
4時ごろになって、大分陽光も和らいできたので、カヌ−に乗って遊んでみよう。このホテルでは、シュノ−ケリング用具やカヌ−、カヤックなどは無料で借りられる。そこで水着に着替え、身仕度をしてビ−チへ向かう。係に申し出てカヌ−を借りることにする。片側にフロ−ティングが付いているので転覆の恐れがなさそうだ。屈強な若いタヒチアンがカヌ−をビ−チから引きずりおろし、海面に浮かべて用意してくれる。それに乗って、カヌ−による処女航海が始まる。おっと、その前に念のため備え付けのライフジャケットを身に付けておこう。
 





ビーチにはカヌーやカヤックが並んでいる















 うまく漕げるのかな?















幼少の頃から伝馬船やボ−ト漕ぎは鍛えられた腕前なので、自信ありげに沖へ漕ぎ出す。ところが問屋はそう簡単には卸してくれない。片側に浮きが付いているために真っ直ぐ進まず、右回りになってしまう。3対1ぐらいの割合で左右を漕ぎ分けないと真っ直ぐ進まない。いったん回り出すと、いくら右側を漕いでも体勢はなかなか戻らない。左側をバックに漕いで向きを直すか、左側の縁をテコにして櫂(かい)を立てながら漕ぎ押すと、うまく方向変換ができる。
 

こうして少しずつ慣れながら、沖合へ漕ぎ出して行く。カヤックは乗ったことがないが、あれよりは安定感はあるようだ。左右の漕ぐ力の配分が難しいが、浮きが付いているので転覆の危険はあまりなさそうだ。だれ一人いないラグ−ンの中を漕いでいると、絶海の孤島に流れ着いたロビンソン・クル−ソ−の気分になる。何という爽快な気分であろう。前を向けばモツのビ−チが広がり、横を向けば水上コテ−ジが静かに立ち並んでいる。後ろを振り向けばボラボラ本島が視野いっぱいに横たわり、オテマヌ山がそびえている。
 

左右のバランスを考えながらうまく漕ぐと、かなりのスピ−ドで、すいすいと進んで行く。このまま本島に向かって漕ぎ進み、アナウの町まで行ってみたい気分に誘われる。泳いでも渡れそうな距離なのである。しかし、あまり沖合まで進んで潮流に流されたら大変だから、慣れないことはやめておこう。こうして小1時間あまり、波静かなラグ−ンでカヌ−を漕ぎ回り、ボラボラの海とのどかな周りの風景を堪能した後、ビ−チに引き揚げる。 
 

陸に上がって椰子の木陰のベンチで一休みした後、今度は先程の写真で見た内海の入江でシュノ−ケリングをすることに。そこでシュノ−ケリング用具を借りて身に付け、遠浅の海に入ってみる。朝食時には食堂周辺に小魚が群がっていたので、その区域に向かって泳いで行く。ところが、その現場には1匹も魚影が見えない。あれだけ多くの魚が集まっていたのに、どこかへ姿を消してしまっている。彼らはパンくずが投げられる時間帯をよくわきまえていて、それが終わると解散してしまのうだろう。
 

当てが外れて、今度は少し中央に向かって泳ぎ出してみる。すると、ちらほらと魚影が見え始める。ゆっくり周回しながら様子を見ると、大型の魚が通り過ぎたり、小型の魚の群れが見えたりする。その中にカワハギに似た小魚が黒・白・茶色・紺色のきれいな縞模様を見せながら泳いでいる。だが、ここにはこれ以外のカラフルな魚は見当たらず、平凡な漁種しかいないようだ。亀の養殖場付近に行けば海亀が見られるが、泳ぐにはちょっと距離が遠すぎる。ここらで海中散策は終わりにしよう。
 

部屋に引き揚げて時計を見ると、もう夕暮れの6時。すぐにシャワ−を浴びて身体を流すと、バスにお湯を張って全身を伸ばしながら、ゆっくりと湯船につかる。こうして一日の疲れを取ると、お待ち兼ねの夕食だ。とは言っても、パンとカップラ−メンとコ−ヒ−の3品定食である。これは今夜が最後、明日はパペ−テへ移動するので、3品定食から開放されることになる。だが、この3品でも結構お腹が満たされ、文句を言うほどのことはない。
 

ボラボラの夜景
食後はテラスに出てチェアに身体を委ね、夕闇が迫るボラボラの風景をぼんやりと眺めて過ごす。実に静かな夕暮れの風景である。辺りが漆黒の暗闇に包まれると、明かりが漁火のように点々と海面に浮かび、それが水面に映えて幻想的な夜景を演出する。ホテルのコテ−ジの明かりや本島海岸の明かりなどが点になって海面に浮かんで見える。それらが都会の夜景とはまるで違う南国の夜景をつくり出している。曇りで星空が見えないだけに、いっそう暗黒の夜の闇に浮かぶ明かりが映えて美しい。ボラボラの夜もこれで見収めだ。



 なんともロマンチックな夜景。左側が本棟。右側半分の明かりはボラボラ本島のもの。



夜半になると急に風が吹き荒れ、ヒュ−ヒュ−と鳴り出した。しばらく前までは、あんなに静かな夜だったのに、一瞬にして状況が変わってしまう。この地の天候は急変しやすいようだ。またスト−ムがやって来るのだろうか? 明日はパペ−テへ移動する日なので、船と飛行機が心配だ。そんな危惧を抱きながら、いつの間にか眠りに落ちる。


(次ページは「パペーテ編」です。)









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