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   NO.3




2日目。8時過ぎに起床。昨夜来の激しい風雨も、今朝になると少し和らいでいる。テラスのカ−テンを開いて窓外の様子を眺めると、厚い雨雲が垂れ下がって雨季らしい空模様を演出している。絶景のオテマヌ山も雲にすっぽり覆われてその姿を見せない。前方のラグ−ンを見ると、さほどの波は立っていない。だが、昨日はあんなにも陽光に映えてタ−コ−ズブル−に輝いていたラグ−ンも、さすがに今朝はくすんでいる。うらめしそうにそんな風景を眺めていると、突然どしゃぶりの雨が降り始める。これがスコ−ルなのだ。この降りようでは傘も役に立ちそうにない。
 

降りしきる雨に打たれて泡立つボラボラの海を眺めながら、ぼんやりと時を過ごす。これも旅のうち、じっくりと眺めて記憶にしっかりと留めておこう。しばらくすると、どしゃぶりのスコ−ルは通り過ぎたようだが、かなりの雨足で降り続いている。南国の雨季は、日本の梅雨のように終日じめじめと降り続かず、時折スコ−ルがやって来てはまた晴れると言った感じらしい。だが、昨夜からの雨風は、今もずっと続いている。
 

朝食のルームサービス
このホテルに滞在中、朝食の1回はル−ムサ−ビスを受けることができる。そこで、今朝の9時に頼んでいたのだが、この雨では運ぶのが大変だろう。なにせ本棟から遠く離れたコテ−ジだけに、このサ−ビスも容易なことではない。ここタヒチの水上コテ−ジを持つ多くのホテルでは、このモ−ニングサ−ビスをなんとカヌ−で運び、テラスに横着けしてそこから階段を上り、ル−ムサ−ビスを行う慣習になっているようだ。南国ム−ド満点のサ−ビスだが、残念なことに、このホテルはそれがない。と言うのは、このコテ−ジの海域の潮流が早く、カヌ−に不適だとのことらしい。
 

それはともかく、洗面をすませて楽しみのル−ムサ−ビスを待っていると、雨の中を9時少し前に運ばれて来る。「イアオラナ(おはよう、こんにちは、こんばんはの意味で共通)」とタヒチ語で挨拶しながら入って来たタヒチ女性は、その途端ぱっと部屋いっぱいにタヒチム−ドを振りまいてくれる。カラフルな花の冠を頭にかぶり、大きな花柄のあるピンク色のドレスを着こなしている。そして、美しい花で飾られた朝食が大きなプレ−トに乗せられている。なんとタヒチム−ド満々の朝食だろう。このホテルのもてなしの心が、なんともうれしいかぎりである。何度も「マウル−ル(ありがとう)」と繰り返し礼を述べながら受け取る。
 





タヒチムードいっぱいでルームサービスを運んでくれる









プレ−トの上には、ボリュ−ムたっぷりのスクランブルエッグ、サラダ、フル−ツポンチ、それに何個ものクロワッサンとパンが盛られ、ココアが付いている。エッグだけでも食べおおせるかな?と思いながらフォ−クをつける。昼・夜と粗食になるので、朝食はたっぷり取って栄養を補給しなくてはと思いながら、時間をかけてお腹いっぱいにいただく。それにしても、これらのパンはさすがに持て余す。これ幸いと、昼・夕食用にそれらをいただくとしよう。
 

これで午後からのサファリの腹ごしらえは大丈夫だ。だが、この雨ではどうなるのだろう? 実施されるのだろうか? そんな危惧を抱きながらベッドに寝そべり、開き直った気持ちでゆっくりとボラボラのひとときを過ごす。調べてみると、ドアの横には大型の傘が用意され、クロ−ゼットの中には、上からすっぽりと被る携帯用ビニ−ル合羽も用意されている。コテ−ジは海辺の吹きさらしだけに、強風の際には傘は役に立たない。それで合羽が準備されているのだろう。さすがに配慮が行き届いている。
 

時折、雨に濡れたテラスに出たりしながら、外の様子をうかがう。大分、風はおさまって来ているようだが、雨は依然としてしょぼしょぼ降り続いている。ガラス床をのぞき込んでも、しょぼ降る雨でか魚の姿も見えない。きらめく陽光も受けずに、ただ寂しげに海面だけが静かに横たわっている。雨の日でさすがに気温は上がらず、エアコンも扇風機も不要だ。そういえば、気になる蚊は昨夜は1匹も現れずじまいである。それに備えて蚊取り線香をはるばる持参したのだが、その用はなさそうだ。また、このホテルでは、電気式の香取りを貸してくれるという。
 

魚の姿が見えない海面をガラス床からのぞいたり、テラスに出て雨で霞んだ風景を眺めたり、ソファ−に寝転んでホテルの案内やアクティビティの案内などをテレビで見たりしながら、くつろぎのひとときを過ごす。テレビがあるからといって、番組は見たくない。折角喧噪な外界から隔離された環境に来ているのだから、そことは完全に遮断されていたいのだ。
 

そうこうするうちに、お昼時となる。朝食にもらったパンがあるので、昼と夕食の分はこれでまかなえる。そこでお湯を沸かしてコ−ヒ−と紅茶を入れる。これらは砂糖も合わせて部屋に準備されているのでありがたい。これにクロワッサンとパンを食べるとお腹は十分である。食後の一休みを取ると、そろそろ出動の準備である。今日は日照りもないので日焼け止めは不要だし、持参するのは傘と合羽とカメラと水だけである。服装はショ−トパンツにゴム草履姿なので、少々の雨濡れでも平気である。
 

4WDジープサファリ
準備ができたところで、午後1時過ぎ雨の中を集合場所の桟橋に向かう。雨の中のサファリとはどんな様子になるのだろう? 何ヶ所かの山上に上って景観を楽しむらしいのだが、この雨では大して期待が持てそうにない。桟橋には小型のシャトルボ−トがすでに待機している。これで向かい側のボラボラ本島の最寄りの町アナウまで渡るのである。所要時間は5分の至近距離にあるので、あっという間に到着する。ボ−トに乗り合わせたのは4組の日本人カップルだが、みんなサファリに行くのだろうか?
 

アナウの桟橋に着くと、そこには待合所の建物があり、そこに待機して待ち合わせる。しばらくすると1台の車がやって来る。これかな?と思って眺めていると、ドアを開けて出てきたのは、おしゃれな感じの日本人女性である。すると、一組のカップルが案内されて車に乗り込む。この土地の名産黒真珠の買い物らしい。真珠店に予め連絡を入れると、そこから車を差し向けて送迎してくれるらしい。
 

当てが外れてしばらく待っていると、今度はごついジ−プがやって来る。待ちかねたサファリカ−の登場である。雨除けにシ−トが張られたジ−プに案内され、踏台を上って車内の両サイドに設けられたベンチに腰を下ろす。今日のガイドは真っ黒に日焼けした現地在住の若い日本人男性である。この仕事を始めてまだ1年にもならないと言う。ドライバ−は若いタヒチアンである。乗客はボ−トで一緒になった3組のカップルと私である。メンバ−が揃ったところで、降りしきる雨の中を何事もなく出発である。こんな天候は日常茶飯事のことなのだろう。
 

その前に、車内で重いゴム合羽を渡され、これをまとってくれと言う。傘は差せないので合羽を着るのだという。雨の日のために、ちゃんとそれ用の合羽が用意されているのだ。みんなが着込んだところで、いよいよ発車である。島内を一周する道路に出ると、左回りに走り出す。一応舗装道路にはなっているが、ジ−プとあってがたぴしと乗り心地は悪い。屋根部分だけにシ−トが張られているので、走行するにつれて座っている背後から容赦なくじゃじゃ降りの雨が降り込んでくる。なるほど、これでは傘など差せたものではない。
 

現地の様子などをガイドから聞きながら沿岸沿いに走っていると、途中から左に折れて山路に入って行く。えっ、こんな所を上るの?と思うほどの狭い悪路である。それも夜来の降り続く雨でぬかるんでいる。でこぼこの地道に、深い轍ができて山あり谷ありになってい。車の走行には、なんと悪条件が揃っていることだ! だが、これは運転のやり甲斐があるぞ。これも4輪駆動だからできることなのだ。ドライバ−のお手並み拝見と行こう。
 





こんな山道を上る。
揺れる車中からやっと撮る








とは言うものの、横揺れに上下バウンドと何と変化に富んだドライブだろう。横の支柱に何度も頭をぶっつけたり、ベンチから床に落ちそうになったりと、その度にあわてて支柱を固く握り締めながら位置を確保する。道の両側には鬱蒼とした熱帯の雑木林が繁り、ボラボラの自然を満喫するには十分である。この自然の様子を写真に撮りたいのだが、それどころではない。なにせ、雨は降り込んで来るわ、上下左右に揺れまくるわで、自分の身体を支えるのが精一杯なのだ。撮影できるとしても、この揺れではどうにもならない。
 

こうして曲がり上ったり、アップダウンを繰り返しながら上り進み、やっと展望のきく山上に出る。傘を差しながら下車してみると、目の前に開けるのはタ−コ−ズブル−のラグ−ンが広がる素晴らしい景観である。だが、残念なことに、憎らしい雨がわれわれにその景色を見せまいと霞のヴェ−ルを引いて覆い隠している。そこを透かして眺め入るしかない。写真に収めようとするのだが、降りしきる雨の中で傘を差しながらの撮影は思うに任せない。ガイド君に傘の応援を頼んで、やっとのことで撮影する。苦労した割りには本来の美しい景色が見れないのが残念である。風が凪いでいるので救われる。これが風雨だったら目も当てられない。




 視界いっぱいに美しいラグーンが広がっているのだが・・・(霞んでよく見えない)



ひとしきり眺め終わると、今度は下山である。この悪路を下るのかと思うと、ちょっと尻込みしたくなる。スリップが怖いのだ。アフリカのサファリで車の横転事故に遭った私は、まだそのトラウマが残っているのだ。深い轍で道の中央には高い凸ができているのだが、車体の底をこすらずに難なく通り抜けて行く。さすがは車高の高いジ−プだけのことはある。下りも身体を揺さぶられ、時には悲鳴をあげながら下り進んで行く。
 

ようやく下山して元の本通りに出ると、さらに走って行く。でこぼこの山路と比べれば、平坦な舗装道路は物足りないぐらいに静かである。ひとしきり走ると、再び左にそれて山路に入って行く。今度も同じような悪路で、上下左右に揺られながら、エンジンを吹かして上って行く。頂上に出ると、ここからも沖合に広がるラグ−ンの風景が眺められる。これが晴天であれば、南国のきらめく陽光に照らされて、ラグ−ンの景色も一段と美しく映えるのだろうが、この悪天候でその景色もくすんで見えるのが残念である。
 

 美しいラグーンも霞んでいる

ここから再び悪路を下山して行くのだが、これまでの悪路の上下山でだいぶ揺れにも慣れてきたようだ。下りの途中で左にそれる分岐点があり、そこを曲がって再び上って行く。行く手は米軍の砲台跡らしい。ビュ−ポイントに出ると、眼下には深い入江が静かに横たわっている。一番奥まった岸辺には白い教会の建物が見える。横手を見れば山がそびえている。オテマヌ山は陰になって見えないが、島の中央にそびえる山のようである。
 

 深い入り江の風景。奥には教会が見える。






そびえる山。オテマヌ山は隠れて見えない。













このジープがサファリカー








これと反対側の海域を眺めると、沖合にかなり大きな島が見え、それをラグ−ンが取り巻いている。その景観が霞んではっきり見えないのが惜しまれる。この砲台跡地には、米軍が残した2門の7インチ砲があり、太平洋戦争の赤錆た忘れ物がこうして今も残っている。広島、長崎への原爆投下で第二次大戦も決着したが、当時のことは思い出したくもない。こうしてこの地に旅ができるのだから、一応平和な世の中になったと言うべきなのだろうか。 



 砲台跡地からの眺望。7インチ砲が遠い昔をしのばせる。



当時、アメリカ軍は南太平洋を制圧するため人口1500人のこの島に6000人ものGIを送り込んだという。そして、今も使われている道路、水道、空港などの基礎設備を建造している。60年代に観光が発展し、80年代にアメリカ、フランス、日本の資本によって高級ホテルが建設され、71年には2200人だった人口は96年にはその3倍にも膨れ上がったという。
 

ここから下山していると、下からジ−プで上ってくる一団と出会う。同じ黄色の合羽を着た欧米人の観光客だ。彼らもまた、この雨の中を押して出て来ているのだ。お互いにご苦労様である。車が一台やっと通れる狭い山路なので、離合するのが難しい。彼らをやり過ごすと、ジ−プはすごい轍の中を揺さぶられながら下りて行く。
 

大通りに出てしばらく走ると、またまた左にそれて山路登坂である。悪路にも慣れて、さほど驚く様子もなくなっている。こうして上った山上は、この島一番の主要な町ヴァイタペが見下ろせるビュ−・ポイントである。ここは静かな入江の海沿いに開けた町で、その背後には高い山が衝立のように立っている。この山を隔てた反対側がアナウの町で、そこからは島の沿岸沿いにぐるりと回ってこの町に来なければならない位置にある。ヴァイタペにはブティック、レストラン、ス−パ−、観光局、警察などが揃っている。 
 

 ヴァイタペの町を見下ろす。

海を隔てた向かい側にはかなり大きな島が横たわっている。その間の海上には、大きなクル−ザ−が停泊している。ここタヒチでは、このような大型クル−ザ−が数隻運航されており、パペ−テを起点に観光客を乗せて諸島の幾つかを数泊かけてめぐる豪華なクル−ズの旅を行っている。こうして島に停泊しては、そこからボ−トで上陸し、観光を楽しむのである。
 

 ヴァイタペの対岸の風景

反対側に回って眺望すると、有名なマティラ岬が左手眼下に細長く突き出ているのが見える。ここはボラボラの観光スポットで、白砂のビ−チに囲まれ、美しいタ−コ−ズブル−のラグ−ンが広がっている。ここには主要なホテルのプライベ−トビ−チやパブリックビ−チがあり、各種のアクティビティはもちろん、レストラン、軽食、ブティック、ペンションなども揃っている。



         マティラ岬の風景。ラグーンが美しい。



山上からのボラボラ大景観を堪能すると、今度は別の道から下山し始める。ところがである。この山路が大変な悪路で、ようやく慣れてきた私でも、おっかなびっくりである。スキ−のモ−グル競技よろしく、すさまじいアップダウンの悪路なのである。下り坂なのに、突然上りの急斜面が現れたかと思うと、それを越えた途端、今度は急転直下で45度もあるかと思われる下りの急斜面である。みんな必死になって支柱にしがみついている。上りの頂上からほぼ直角の急角度で下降斜面に移るのだが、よくもまあ車体の底をこすらないものである。車体が頂上で底をこすり、止まってしまうのではないかと、ひやりとさせられる。
 

この難所を通り抜けたかと思うと、今度は前方にトンボ返りするのではないかと思われる急斜面を下りて行く。それも雨でぬかるんだ山路なのだ。思わず足を踏ん張り、支柱をしっかり握り締めて身構えする。これはスリップしたら危険だぞ! そう思っている矢先、案の定ずるずるっとタイヤが30cmほど横滑りする。一瞬、身体がすくんでしまう。これでは雑木林の崖下に転落してしまう。またもや、アフリカの横転事故の悪夢が頭をよぎる。
 

どうにか車はそれ以上のスリップはまぬがれ、ドライバ−もほっとしたような面持ちで運転している。その後は無難に下山して大通りまで無事たどり着き、胸を撫で下ろしながら平穏なドライブに戻る。なんとスリルに富んだサファリだろう。これがサファリの醍醐味とも言えるのだろうか? でも、雨の日のサファリはご免こうむりたい。スリップがあまりにも危険過ぎるからである。
 

しばらく道路を走り過ぎて行くと、とある小さなショップ前でストップし、降ろされる。パレオや真珠その他のみやげ品を並べたショップである。このサファリツア−の会社と提携しているのだろう。何も買い物はないので、狭い店内を見回るだけである。アナウの町を出発してから道路に停車するのはこれが初めてなので、この機会に写真を撮っておこう。雨の中を店の前に出て、道路の様子を撮影する。海岸線に沿って、写真に見るようなのどかな舗装道路が走っており、これがボラボラ島を1周している。
 





島内を1周する道路









ここを出発すると、循環道路をひた走ってアナウの町に到着である。これでボラボラ島を1周したことになる。ここまででサファリは終了である。つまり、このサファリは島を1周しながら悪路の山路に入り、4ヶ所の丘に上って、そこからの景観を楽しもうというアクティビティなのである。快晴の下でのサファリは、さぞかし素晴らしい景観が楽しめることだろう。これは次回のお楽しみだ。
 

ホテルへ
桟橋にはホテルのシャトルボ−トが待ち受けている。それに乗って、あっという間にホテル前の桟橋に戻る。時計を見ると午後4時、ここを1時15分に出発したので、サファリは約2時間半ぐらいの所要時間になるのだろうか。上陸すると、すぐに部屋に戻り、バスタブにお湯を張ってゆっくりと入浴する。その後は一息すると、例によってカップラ−メンとパンの夕食である。明日の晩をなんとか過ごせば、その後はパペ−テに移動するので食料は調達できる。それまでの辛抱だ。
 

夜になって気づいたのだが、床下にライトがあって海中をライトアップできるようになっている。ライトを点けてしばらくすると、どこからともなく小魚がいっぱい集まってくる。アジ子ぐらいの大きさの魚で、やはりこれもボラの仲間なのだろうか? いないよりはましと言った感じの魚で、あまり興味をそそらない。そんな中、たまに大型の魚影が見え隠れする。
 

雨は依然として降り続いているが、風もなく穏やかな夜である。今日は一日、晴間も見ることなく過ごさざるを得なかった。南国の雨季では、雨の日でも途切れて晴間がのぞくらしいが、今日のように終日降り続くこともあるわけだ。でも、そのお陰で、スリル満点のサファリを楽しめたと言えるのだろうか? そんなことども思いながら、ボラボラ島第二夜は静かに更けて行く。


(次ページは「モツ散策編」です。)










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