NO.2




憧れの水上バンガロー(コテージ)
木製のプロムナ−ドを通りながら目を海面に移すと、透き通る海中に魚の群れが見える。ボラに似た魚のようで、少しがっかりである。ここまで来て、平凡な魚は見たくないからだ。ずいぶんと沖合の方まで続く通路を進んで行くと、その中間どころで歩を止め、「こちらです。」と案内される。
 

スム−ズに開かないカギをなんとか開けて中へ一歩踏み入れる。するとどうだろう。海面に反射してきらめく南国の陽光が、2m四方もあるガラス張り床を通して室内を明るく照らし出している。






豪華なガラス張り床










そして、そこに浮かび上がったのはまぶしいばかりの瀟洒なベッドの様子である。それを取り囲むように上からレ−スのカ−テンが垂れ下がり、それを四隅で絞っている。その豪奢な雰囲気は、なんだか王子様になったような気分である。
 







 ムードいっぱいのベッド















ベッドの真向かいにはテ−ブルを隔てて横長のソファがあり、そこには大人が1人寝られるようにシ−ツで覆われた長いクッションが置かれ、3人が泊まれるように配慮されれている。ベッド横の壁の内側には、人が入れるゆったりとした空間のクロ−ゼット室がある。天井を見上げれば、屋根裏むき出しで板を張った骨組みが丸見えである。この上に草葺き屋根が乗っかるわけである。
 





ソファーにはマットが敷かれている
















 屋根裏の様子














その中央から吊るされた大きなファンがゆっくりと回っている。今では懐かしい光景である。ファンしかないのかな?と思って壁面を見回すと、壁掛け式エアコン(日本企業のダイキン製)がちゃんと設置されている。わりと湿度が高いので、これはありがたい。
 

ソファの裏側に回ると、そこがバス・洗面となっており、シャワ−室は別個に設けられている。






 洗面とバスタブ(奥)









テラスに出ると、木製のテ−ブル・イスの3点セットが置かれ、そこからオテマヌ山を配した絵のような風景が眺められるようになっている。各コテ−ジの位置の違いによって、見える風景も異なってくる。






テラスから見た絵のような風景。前方の山はオテマヌ山(727m)。








このテラスから直接海中へ下りられるように階段が設けられており、気が向けばどぼんと入って泳げるようになっている。テラスから眺めるタ−コ−ズブル−の海の景色も、うっとりするほど美しい。 



 これもテラスから眺めた美しい風景



水上コテ−ジは初体験だけに、荷解きもしないまま、もの珍しく部屋の内外を一通り調べて回る。チェックが終わったところで、お湯を沸かし、コ−ヒブレイクとする。一息ついたところで、早速今日の午後のアクティビティを予約しなくちゃ。そこでレセプションに出向き、係にパンフレットをもらって内容を確認し、申し込む。ちゃんと、日本語のパンフも用意されていてありがたい。申し込んだのは、午後2時から出発する「カタマランクル−ズ」と明日の「4Wサファリ」の2つである。これらは旅行前に調べて予定に入れていたものである。
 





桟橋にはカタマランヨットが停泊している








「カタマランクル−ズ」はシュノ−ケリングができたり、サンセットが見られるもので、サファリはジ−プでボラボラ本島をめぐりながら、その自然と山頂からの景観を楽しむものである。申し込みをすませたところで、部屋に戻り一眠りすることにしよう。機内ではまどろんだのみで、睡眠不足なのだ。
 

昼 食
ぐっすり寝込んだ後、ふと目を覚ますと昼近くである。ここで昼食にしよう。とは言っても、内容は寂しいもので、機内から持ち込んだパンとバタ−、それに日本から持ち込んだおにぎりとお菓子、そしてコ−ヒ−だけである。それでも十分お腹は満たされる。広いガラス床から海中が丸見えだが、魚は先程のボラみたいな魚がちらほら見られるだけで、ほとんどいない。この海域にはそもそも魚がいないらしく、したがって熱帯らしい魚の姿も見られない。折角のガラス床が寂しげに静かな海面を映すのみである。人間の習性とは面白いもので、思わずガラス床の上を避けて通ろうとするのである。無意識のうちに、破損して落下するのを恐れているらしい。それに慣れるまでに、かなりの時間を要するようだ。
 

カタマランクルーズ
やがてクル−ズ出発時間の2時が迫り、海水着に着替えて日焼け止めを顔や腕、首筋、足などにたっぷりと塗り、タオルと水を持って波止場に向かう。すでに波止場のカタマランヨットには乗客が乗り込んでおり、出発を待っている。高いマストを持つ双胴のスマ−トなヨットは、私が乗り込むとエンジンを始動して波止場を静かに離れる。入江を出たところで大きな帆を揚げると、エンジンを止めてセイリングに移る。ほどよい順風を帆布いっぱいに受けながら、すいすいと音もなく帆走する。海上から見る水上コテ−ジが、いかにもタヒチらしい素敵な雰囲気を醸し出している。
 





 双胴のカタマラン
 これに乗ってクルーズ













宿泊ホテルのコテージ









ヨットは初体験であるが、こんなにも心地よいものとは知らなかった。エンジンの振動や音もなく、ただざわざわと波を切る音だけを聞きながら南国の潮風を肌に受ける。そのなんと快いことか。普通のヨットのように傾かないから身体は安定していられる。乗客は全部で17人、そのうち日本人が7人で、他は外国人である。クル−はタヒチアンの男性2人で、操舵と帆を操り、その合間にはドリンクのサ−ビスをしてくれる。
 





 船内風景









船の舳先にはネットが張られ、そこで寝そべって過ごせる。どういうわけか、外国人ばかりがそこを独占し、日本人カップルは遠慮しているかに見える。きっと日焼けを恐れてのことだろう。そこで、のこのこと私一人が帆影のできたネットに乗り移って仰向けに寝転がる。う〜ん、これは気持ちがいいぞ。南太平洋の青空を見上げながら、ネットを吹き抜ける潮風に身をまかせ、ざわつく波音を聞いていると、そこはまさに異次元の世界。これぞ、くつろぎのひとときと言えるのだろう。
 





 ネットの上で憩う









進路を飛行場の方に向けて本島沿いに進み、そこを回り込むと岸辺に椰子の木が林立するなだらかな丘陵が見えてくる。その前に広がる波静かなラグ−ン(遠浅の海)に到着する。ここがシュノ−ケリングスポットである。ここまでセ−リングで1時間以上かかっている。舳先の真中にある梯子が下ろされると、そこを下りていよいよシュノ−ケリング開始である。供与されたメガネとフィンを付け、みんな次々に海中に泳ぎ出す。



                  このラグーンでシュノーケリング



もう一度念のために日焼け止めを塗ると、後に続いて私も水中に入る。海水温度は25〜6度もあるので、冷たくは感じない。少し岸辺に向かって泳ぎ出すと、いるいる! 大は50cm級から小は5cm以下まで様々のカラフルなトロピカルフィッシュがあちこちで泳ぎ回っている。ここはラグ−ンで浅いので、身近に魚たちを見ることができる。浅いところは、腰までの深さしかない。これまでオ−ストラリア・ケアンズ沖のグレ−トバリアリ−フやグリ−ン島、フランクランド島、それにニュ−・カレドニアなどの海をシュノ−ケルしたが、これほどのトロピカルフィッシュを見たのは初めてである。やはり、ここまではるばる来た甲斐があったというもの。
 

ここの魚たちは人馴れしているのか、手を伸ばしてもあまり逃げようとしない。それどころか、エンジェルフィッシュに似た黄色と黒のバンド模様をした魚など、私に近づいて離れようとしない。可愛い魚たちではある。泳ぎ疲れては、浅い所に立って休み、一息入れる。こんなことを繰り返しながら、タヒチの魚たちと戯れること1時間、予定の時間が来たのでヨットへ引き揚げる。念願の熱帯魚たちと出会えて満足感にひたることしきりである。
 

みんなが引き揚げると、錨を揚げて出帆である。帰路は逆風になるので、ジグザグコ−スを取り、直線に進めないので時間がかかる。沖合の雲行きが怪しくなっている。鉛色の厚い雲が覆って来て風も強くなっている。コ−スに乗って走り始めると、クル−がスイカのサ−ビスを始める。運動した後の乾いた喉には、絶好のフル−ツである。その時を待ったように、タイミングよく振舞われる。だが、ここタヒチのスイカは色づきは国内産と変わりはないが、甘味に欠けているのが惜しまれる。そんな感想を持ちながらも、残ったスイカをまたいただく。
 

しばらくすると、クル−の一人が今度はココナツを取り出して手に取り、それを見せながら自分の周りに集まれと言う。ちょっとしたショ−があるのだろう。みんなが注視していると、台の縁にココナツを半分突き出して置き、それを片手で叩いて割ろうと言うのだ。空手チョップスタイルで手を力いっぱい振り下ろす。だが、硬い殻だけに、1回目は見事に失敗。もう一度挑戦すると、今度は見事に割れて中からジュ−スが溢れ出てくる。殻の内側に付いている白いココナツミルクを取りだし、それをナイフで刻んでみんなに振舞う。試食してみるが、サクサクして淡泊な味がし、旨味はない。これは料理にも使われるらしい。
 





ココナツミルクを取り出す









サンセット風景を期待しているのだが、この雲の厚さでは無理のようだ。クル−の一人も「今日はサンセットが見られませんね。」と惜しがっている。今朝到着した時は晴間が多かったのだが、次第に雲が多くなり空模様が怪しくなってくる。帰路には風も出て強くなって来ている。太陽が沈む沖合の彼方を恨めしそうに眺めながら、タオルを身体に巻いて風を防ぐ。シャワ−がないから、海水をタオルで拭いただけなのだ。 
 

ようやく宿泊ホテルのコテ−ジ群が見えてくる。すると、帆を畳みエンジンに切り替えて航行する。船はゆっくりと静かな入江に入り、無事桟橋に到着。時計を見ると夕方の6時、出発から4時間の行程である。そのままコテ−ジの部屋に戻り、シャワ−を浴びた後、バスタブに水を張って気持ちよく入浴する。確かめてみると、日焼けはばっちり防げて問題なしである。 


夕 食
洗濯を終えて一息つくと、楽しみの夕食だ。とは言っても、内容はお粗末。日本から持参したカップラ−メンと残りのパン、それにコ−ヒ−、紅茶だけである。熱湯を入れて、3分間待つのだぞと言い聞かせながら、ラ−メンができあがるのを待つ。タヒチまでやって来て、日本製のラ−メンをすするとはちとム−ドのない話だが、なにせこのホテルの食事代が1食6000円にもつくので、新婚でもない熟年の独り旅では辛抱せざるを得ない。ここがモツ(小島)という孤立状態にあるがための悲しいところである。だが、それだからこそ、これだけの閑静な環境が確保されるのだから、文句は言えない。
 

向かいの本島まで、およそ半時間に1本の頻度で無料のシャトルボ−トが出ており、所要時間5分で行けるのだが、到着場所のアナウの町には商店などが何もなく、食品などの買い出しはできない。本島随一の町ヴァイタペへ行けばス−パ−やレストランもあるのだが、それが不便なことにアナウの位置から山を越えた島の反対側の位置にある。そのため運賃5000円もかかるタクシ−を使って沿岸沿いにぐるりと回って行かなければならない。そんな大げさなことはできないので、いきおいカップラ−メンで辛抱せざるを得ない。これが長期滞在となれば話は別だが……。
 

そろそろ出来上がりの様子だ。これにパンとコ−ヒ−を揃えてコテ−ジ風夕食が始まる。これでもお腹は結構満腹になるのものだ。デザ−トにコ−ヒ−と紅茶を飲んで十分満たされる。夕食をとっている間に天候は次第に悪化し、雨まじりの強風となっている。おやおや、明日のサファリはどうなることだろう? お腹も落ち着いたので、早目に寝るとしよう。
 

夜半になると、いっそう風雨は激しさを増し、ヒュ−ヒュ−と風がうなって草葺きの屋根をざわつかせている。時折、屋根のざわつく音で目が覚める。ちょっとしたスト−ムになっているようだ。1年前、同じ南太平洋のカレドニアで運悪くサイクロンに遭遇し、ホテルに足止めになったのだが、その時の悪夢の再来かと気がもめる。心配してもしようがない。明日は明日の風が吹く。そう思いながら、また眠りに落ちる。


(次ページは「4WDサファリ編」です。)







 


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