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旅のコース




4.氷河特急でツェルマットへ・・・フルカ峠・ローヌ氷河
スイスの旅4日目。今朝は5時起床。朝食時間まで間があるので、ゆっくりと柔軟体操でもしながら身体をほぐす。細く狭いベッドにも慣れて来た感じである。だが、寝返りした際に落ちはしないかと気にかかる。今日でお別れだから、その心配もなくなる。


今日の旅程は移動の日で、氷河特急でアンデルマットまで移動し、そこからバスでフルカ峠を越え、ツェルマットの入口の町・テーシュまで移動。そこから電車に乗って目的地ツェルマットを目指す。


朝食は昨日と同じ追加料理の玉子とソーセージ付きでいただき、これにハムやパン、コーヒーなどでお腹を満たす。これで出発準備OKだ。


氷河特急(グレッシャー・エクスプレス)
世界で最も遅い特急列車と言われ、つとに有名なこの氷河特急は、スイス南部を横断する観光列車で、標高最低のクール(Chur:585m)から最高のオーバーアルプ峠(Oberalppass:2033m)の標高差を駆け抜ける。サン・モリッツからツェルマットまで約8時間の列車の旅を楽しめる。


車窓からはアルプスの山並みや山間の急流、渓谷などの絶景が見られる。291の橋、91のトンネル、伝説的な高架橋などは、現在でも鉄道技術の傑作とされている。世界で最も人気のある列車と言われる氷河特急。毎年約25万人の乗客が感動の旅を満喫している。


氷河特急の名前の由来はフルカ峠付近でローヌ氷河を車窓から見ることができたため、この名が付いたそうだ。しかし、1982年に新フルカトンネルが完成して氷河ルートを通らなくなったため、現在は氷河は見られなくなった。それでも“氷河特急”の名前だけが残っている。なお、サン・モリッツ駅からクール駅までのアルブラ線は、「レーティシュ鉄道アルブラ線/ベルニナ線と周辺の景観」として世界遺産(文化遺産)に登録されている。


氷河特急の運行は、夏場はサン・モリッツからツェルマットの間で1日3往復、ダボスからツェルマットの間で1日1往復。いずれの列車も出発時間は午前9時から10時頃で夕方には終点に着くことになっている。冬場は運行本数がへずられ、サン・モリッツからツェルマットの間で1日1往復とフィスプからクールの1日1往復の2本だけとなる。


              [氷河特急の路線図(赤線)]



現在は1、2等車両ともすべてパノラマ車両で、天井の細い骨格部分を除いてすべてガラス張りのすけすけとなっており、ワイドに見通しができて快適である。車内は全席禁煙となっている。


サン・モリッツ〜ツェルマット間の料金は・・・(2011年8月現在)
・1等・・・226スイスフラン(約22600円)
・2等・・・136スイスフラン(約13600円)
グレッシャー・エクスプレスの利用には座席予約と追加料金が必要。


ルートの要所要所ではヘッドホンによる6ヶ国語(日本語もある)での案内がある。このヘッドホンは記念に持ち帰ることができる。また、氷河特急関連グッズのお土産品の車内販売もある。あの珍しい斜めカットのワイングラス(Slanted Glass)などもある。


昼食は食堂車に行かずとも座席に居ながらにして取ることができるようになっている。スタッフが各座席まで配膳してくれるのである。昼食(座席/食堂車)の利用には予約と別料金が必要。


希望すれば乗車記念証明書を発行してくれる。ツェルマットまたはサン・モリッツ、ダヴォスの各駅のチケット窓口でもらえる。


       *********************************************
               (私がもらった乗車記念証明書)

       Mr.○○○
       雄大なスイスアルプスの中を旅された記念に、乗車証明書
       を贈呈いたします。

       中世の古城や僧院を眺め、291を超える高架橋を渡り、91
       ものトンネルを抜けて標高2033mオーバーアルプ峠へ。

       セガンティーニゆかりの谷から氷河の世界が広がるヴァレ
       ー州、マッターホルンの麓へ。

       手つかずの自然が残る森林や牧歌的な草原、水飛沫をあ
       げて流れる清流や歴史や伝統文化が息づく山間の谷など、
       素晴らしい風景が車窓から広がる氷河特急に乗車されたこ
       とをここに証明いたします。

       乗車年月日 St.Moritz 22.JUNI 2011

       取締役 Hans−Rudolf Mooser
             Erwin Rutishauser


乗車証明書(左側に英語、真ん中に日本語、右側にイタリア語で書かれている)

       ********************************************* 


列車の予約は氷河特急もベルニナ特急も現地窓口でチケットを購入して問題なさそうだ。当日の予約状況を見て車両を増結するなど臨機応変の対応がとられているようだ。


氷河特急のサイト⇒ こちら


氷河特急の歴史
・1889年:レーティッシュ鉄道の初路線開通。
・1903年:レーティッシュ鉄道のアルブラ線開通。1904年にサン・モリッツ
       まで延長。
・1982年:新フルカトンネル完成。以後、ツェルマット〜サン・モリッツ間の
       通年運行。
・1993年:初めてのパノラマ車両採用。
・2006年:新しいパノラマ車両を1等と2等に導入。
・2008年:「レーティッシュ鉄道アルブラ/ベルニナ線と周辺の景観」が世
        界文化遺産に登録。
・2009年:1等と2等の全車両にパノラマ車両導入。


アンデルマットへ
今朝の出発は少し早くて8時過ぎ、ホテルを出発。これでサンモリッツともお別れである。今朝の空は曇り空で昨日のようにすかっとしない。雨は大丈夫だろう。昨日と同じコースをバスはサンモリッツ駅へ向かい、間もなく到着。9時17分発の氷河特急に乗り込む。


朝のサン・モリッツ駅構内


オープンカー。好天の時には車両の後尾に連結して走る。


朝のサン・モリッツ駅構内


氷河特急のパノラマ車両


氷河特急の車体に大きな表示が・・・


氷河特急パノラマ車両の内部


座席シートのカバー


座席のテーブル(折り畳んだところ)


座席のテーブル(広げるとワイドになる)


氷河特急の案内パンフレット

サン・モリッツから終点のツェルマットへ行くのだが、氷河特急を利用するのはその途中のアンデルマット駅までで、そこで途中下車する予定だ。と言うのは、フルカ峠付近にあるローヌ氷河を見るためで、アンデルマット以後の車窓風景は平凡だとの理由もある。だから、その代わりにローヌ氷河見物を入れたのだ。サン・モリッツからツェルマットまで8時間も列車に乗車するのでは確かに飽きるに違いない。


列車は静かに動き出す。乗り心地は満点。車窓には絵のような美しい草原の風景が流れる。出発から50分ほどしてBergun駅を通過すると、氷河特急のシンボル、ランドヴァッサー橋にさしかかる。この橋は長さ130m、高さ65mで5本の石造りの柱に支えらた印象的な高架橋で、半径100mのカーブを描きながらランドヴァッサー・トンネルに直結している。


車窓からの眺め


同 上


同 上


同 上。小さな村が・・・。


同 上


同 上


同 上

サン・モリッツ側から進むと、トンネルの手前から遠く左前方にきれいな弧を描くランドヴァッサー橋が見え始める。そしてトンネルに入り、そこを抜けた瞬間、この橋にさしかかる。写真撮影のタイミングはそのことを知ってシャッターチャンスを待ち構える必要がある。トンネルを出ると、弧を描きながらカーブする後方車両が石橋の上を走る様子が見える。列車はその様子を見物できるように、超スローで走行してくれる。


(動画)ランドヴァッサー橋を走行中



ランドヴァッサー橋を走行中の氷河特急(パンフより転載)

土産品の車内販売が回って来る。事前に土産品のパンフレットが配られてはいるのだが、あまり買う乗客はいないようだ。


車内販売の様子


車内でランチ
11時過ぎごろになると、スタッフがやって来て座席のテーブルにナイフ、フォークなどをセットする。以前は食堂車での食事だったので時間がかかったそうだが、今はこうして座席に居ながらにして食事ができるようになったのでありがたい。


テーブルに食事のセットが・・・

しばらく経って配膳が始まる。まずはスープである。これに黒パン、次いでメインディッシュの料理が運ばれる。大皿にライスらしきものが盛られているが、コメではなく、どうも小麦?みたいな代物で、ぶつぶつした食感である。そして何か分からぬ肉のような物が盛られている。これに豆とニンジンが添えられたものである。あまり美味しいものではない。(昼食(座席/食堂車)の利用には予約と別料金が必要)。


スープとパン


メインディッシュ


車内の食事風景


ディゼンティス駅(Disentis)
ランチを終えてしばらく走ると、Disentis駅に到着。この駅の標高は1130m。ここで10分の停車である。そこでホームに出て様子をうかがう。ひなびた田舎の駅の感じである。ここを出ると、1時間10分で目的地アンデルマット駅に到着である。


Disentis駅ホーム


駅名の表示


列車の案内表示


車窓風景


同 上


(動画)車窓風景(スイス:氷河特急)


(動画)ライン川の風景(車窓より)


(動画)車窓風景


オーバーアルプ峠駅(Oberalppass)
Disentis駅から高度を上げながらしばらく走ると、氷河特急路線の最高地点オーバーアルプ峠駅に到着する。ここは標高2033mの地点で、目の前にはオーバーアルプ湖が静かに横たわっている。この湖はライン川の源泉となる。ここでは列車の離合待ちで停車するだけである。


(動画)オーバーアルプ湖の風景


鏡のような湖面をたたえるオーバーアルプ湖


オーバーアルプ峠駅


車窓風景


(動画)車窓風景(氷河特急)


(動画)車窓風景(氷河特急)



アンデルマット駅(Andermatt)
オーバーアルプ峠駅を出てしばらく下りながら走ると、目的地のアンデルマット駅に到着である。午後2時少し前のことである。この駅の標高は1435m。ここで下車してバスに乗り換える。フルカ峠を越えてローヌ氷河を見物するためである。


アンデルマット駅


アンデルマット駅ホーム


ローヌ氷河
出迎えのバスに乗ってフルカ峠(標高2431m)へ向かう。バスは山間部のジグザグ道を上りながら次第に高度を高めて行く。峠へ至る道は細く、バスなどの大型車両だと対向車との離合も難しい感じだ。ドライバーは熟練が必要である。


バスの車窓風景


牛の放牧


(動画)フルカ峠へ向かう(バスの車窓より)


かなり走ったところで、ようやくフルカ峠に差しかかる。峠には何もなく、殺風景な場所である。そこで峠には止まらず、そのまま少し下ってローヌ氷河展望所へ。ここで下車し、氷河見物である。


展望所からの眺望。左端はホテル

目の前にはゴツゴツした岩肌の山並みが見え、その谷あいから氷河が流れ出ているのが見える。ここの氷河は鉛色にくすんで見栄えがしない。そのため、氷河なのか山の岩肌なのか一瞬判別がつかない。氷河とあれば、通常は真っ白な氷塊の流れをイメージするのだが、このローヌ氷河は残念にも鉛色なのだ。その理由は、飛来した粉じんで汚れているらしい。


この場所にはショップ兼トイレ(有料で5フラン)があり、ここで氷河見物の入場券を購入する(1人7フラン)。ここには氷河をくり抜いて造った珍しい洞窟があるのだ。その地点まで5分ほど歩いて移動する。砂利道を下って行くと、眼前に大氷河の流れが迫って来る。くすんだ鉛色がほんとに惜しいものだ。氷河特急はこの風景を車窓から眺めて走っていたのだろう。


砂利道を下りながら氷河洞窟に向かう


目の前に迫る大氷河


同 上



ローヌ氷河の大景観




ほどなく、氷河の右端にくり抜かれた小さな入口が見えてくる。これが洞窟の入り口なのだ。中に入ると、ひんやりとした冷気がただよっており、ブルーに輝く氷河の壁が見える。何千年前の氷河の層なのかは分からないが、ライトに輝くブルーの氷壁はこの上なく美しい。天井も高く掘られており、迷路のように洞穴が伸びている。距離にして60〜70mぐらいだろうか? その中を一周して外に出る。


氷河洞穴の入口


氷河洞穴の内部


氷河洞穴の内部


同 上


同 上


同 上


テーシュ(Tasch)へ
3時過ぎ、氷河見物を終えると、バスは峠を下って一路ツェルマットを目指す。車窓からは草原や山並みの風景が流れ去る。フルカ峠から約70kmの道程を2時間超かかって午後6時前、テーシュの町に到着。ここからシャトルトレインに乗り換えて終着点のツェルマットに向かう。


バスの車窓風景


同 上


テーシュ駅


スマートなシャトルトレイン(テーシュ駅)

ツェルマットの町は環境保護のため電気自動車以外の車は進入禁止なのだ。そのためバスはツェルマットの手前の町テーシュでストップと言うわけだ。ここからはスマートなシャトルトレインの電車がツェルマットまで毎時20分間隔で頻繁に往復している。所要時間は10分と短い。


ツェルマットへ
シャトルトレインへ乗り込むと、山沿いの線路を走りながら高度を高めて行く。10分の乗車で最終目的地のツェルマット駅に6時過ぎの到着である。


ツェルマットへ向かう途中の車窓風景


シャトルトレインの内部の案内


終点のツェルマット駅

ここは標高1604mの高地で、マッターホルン山麓にあるスイス屈指の山岳リゾートであり、アルプス観光の中心地のひとつである。氷河特急が走るマッターホルン・ゴッタルド鉄道の終点であり、ツェルマットからはスネガ、ゴルナーグラート、クライン・マッターホルン等の絶景地に多数のケーブルカーや登山鉄道が延びている。


駅前広場には小型の電気自動車が並んでいる。この地は環境保護のため、ガソリン車は進入禁止となっており、電気自動車か馬車のみが通行を許されている。メインストリートの両側には土産品店や専門店などのショップが立ち並び、通りの向こうには高い山並みが見える。アルプスの本場に入ったという感じである。


駅前広場には電気自動車が・・・


ツェルマットのメインストリート


ツェルマット駅前の通り


メインストリートを登山グループが闊歩する


メインストリートを馬車が通る。馬車は通行可。

この商店が並ぶメインストリートの長さは短く、100m少々で商店街は途切れてしまう。その先はペンションなどがぼつぼつと建っており、その奥行きは驚くほど遠くまでつながっている。


ツェルマットの教会


マーモットの噴水(マーモットはリス科の小動物でツェルマット近辺に多数
生息しているという)


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                    マーモット
      リス科の哺乳類で体長50〜60cm。草食動物で冬は数
      匹で穴を掘り、冬眠前に草からたくさんの脂肪を蓄え、
      140日間〜半年ほど食べずに冬眠する。とても警戒心の
      強い動物である。
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ツェルマットと日本の妙高高原の姉妹都市提携記念碑


マッターホルン登山で遭難死した登山家の墓地。その多さには驚く。


マッターホルンが見える橋のポイントから撮影するも雲に隠れて残念


夕食はそのままレストランに移動して食事となる。ビール小ビン(2.8フラン=280円)を注文して喉を潤す。


食後の8時過ぎ、奥まった所にあるホテルへ移動してチェックインする。小規模なホテルでリフトは珍しい古式豊かなもの。リフトのドアは手動で開け閉めしなければいけない。この地のホテルの建物はほとんどが小規模で、それも山荘風の建物になっている。やはり土地柄に合わせて建物のスタイルも考慮されているのだろう。


宿泊したホテル


湯船で一日の疲れを流し、明日の好天を祈って床に入ったのは9時半のことである。今度の旅の最大の目的は、明日の1日にかかっているのだ。



(次ページは「マッターホルン&絶景ハイキング」編です。)






    





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