N0.5




旅のコース




5.マッターホルン&絶景ハイキング・・・雲で見えず・雨のハイキング
スイスの旅5日目。旅も後半に入る。今朝は5時起床。4時ごろ目が覚めたので外の様子を薄明かりの中でうかがうと、霧はなく、見通しは良いようだ。これなら安心と胸を撫で下ろしながら再び床に就く。


今度は5時に起床して気になる窓外の様子を眺めると、なんと辺りには深い霧が立ち込めているではないか! 1時間前の様子とは激変しているのに驚かされる。さすがに山の変化は激しい。今日の山観賞はダメなのか?


今日の日程は、今度の旅のハイライト、ゴルナーグラート展望台に上って名峰マッターホルンの観賞である。その後、2時間足らずのハイキングを楽しむ。その後、下山してフランス領シャモニーへ移動する予定である。


付近散策
7時の朝食まで間があるので、付近の散策に出かけてみる。標高1600mの高地だけに、朝は少々冷え込んでいる。気温10℃足らずというところだろうか? 玄関を出て川沿いの道を下って行く。川のたもとまで霧にすっぽりと覆われている。これでは何も見えないじゃないか!と、しきりに心の中でぼやく。


早朝6時ごろの通りは人影もない。左側が川。この先を10分以上歩いた
所がツェルマットの駅。


マッターホルンの朝焼けを見るポイントの橋も昨夕同様に、山の眺望は霧の彼方。あと3時間後には展望台に上るのだが、それまでに霧が晴れてくれるのだろうか? 残念ながら、これでは朝焼けの風景は見られはしない。


前掲写真の通りを5分ほど下った所。ここに観測ポイントの橋がある。


橋上からマッターホルンの方向を眺めたところ。山は霧の彼方。

今度の旅の一番の目的はマッターホルンの観賞を楽しむことで、その1(朝焼け風景を見る)、その2(展望台からの眺望)、その3(リッフェル湖に映る“逆さマッターホルンを見る”)の3点である。あ〜あ、この霧で「その1」は簡単につぶれてしまったわけだ。落胆にひしがれながらホテルへすごすごと引き返す。


ゴルナーグラート展望台へ
朝食を済ませて8時にホテルを出発。徒歩でてくてくとツェルマット駅前まで移動する。その途中、観賞ポイントの橋に差しかかると、ふと見上げる先にはマッターホルンの薄影がぼんやりと見えている。先ほどよりは霧が晴れかかっているようだ。これはしめた!


霧の中に現れたマッターホルン

メインストリートには州旗などの大きな旗がひるがえっている。その下をくぐりながら10分足らずでツェルマット駅前に出る。これから登山電車で展望台に上り、そこからマッターホルンを目の当たりに見ようと言うわけである。ただただ霧や雲がないことを祈るばかりだ。


ライオンマークの州旗


メインストリートは旗のオンパレード


ここにも国旗が・・・


朝の教会


開店早々の土産品店

駅前の登山電車駅ホームに入り、電車に乗ると出発である。ツェルマットの標高は1604m、ゴルナーグラートの標高は3089m。その標高差1485mを40分かけて上るわけである。電車は急斜面を上るためレールはギザギザの歯を噛み合わせて上るラックレールになっている。ツェルマット駅から山頂終点のゴルナーグラート駅まで7つの駅がある。この登山電車は1時間に1本の頻度で運行されている。


ゴルナーグラート展望台への登山電車の発着駅


ゴルナーグラートへ向かう登山電車の車内

電車はぐんぐん高度を高めて行く。それにつれてツェルマットの町が眼下に見え始める。どれも申し合わせたように山荘風の建物ばかりで山の環境によくマッチしている。さらに高度を高めて、あと2駅ぐらいの距離まで登りあがると、待望のマッターホルンが右手に見えてくる。少しガスに霞んでいるが、これだけ見えれば言うことないだろう。ここから間もなくで山頂駅だ。


車窓から眺めるツェルマットの家並み


雲の中にマッターホルンが見えてきた!



ローテンボーデン駅。この次が終点の山頂駅・ゴルナーグラート駅。


(動画)ゴルナーグラートへ向かう登山電車の車窓より


(動画)マッターホルンが見えてきた(ゴルナーグラートへ向かう登山電車より)


ゴルナーグラート山頂駅に到着すると、下車して展望台へゆっくりと移動する。なにせ3000mの高地だけに気温も低く零度近くの感じである。それに空気も薄く、高山病が発症する高さなので、ゆっくり歩くことが肝心だ。展望台への階段をゆっくり上りあがると、コンクリート張りの展望台に出る。そこには360度に開けるパノラマ大景観が広がって、見る者を圧倒する。


山頂のゴルナーグラート駅


前方の頂上がゴルナーグラート展望台

眼前にはゴルナー氷河をはじめ、幾筋もの氷河が山あいから流れ出ているのが見える。何とも壮観な大迫力に息をのむばかりだ。ただ上部が雲に霞んでいるのが惜しまれてならない。これが青空の下で見れたら、どんなにか素晴らしいことだろうと残念でならない。肝心のマッターホルンは雲の中である(これで目的2もあえなくつぶれてしまった。涙)。


(動画)ゴルナーグラート展望台よりの風景


(動画)ゴルナーグラート展望台よりの風景


(動画)ゴルナーグラート展望台よりの風景






氷河の大景観。左側がゴルナー氷河。



この展望台前には、屋上に2つのドームを備えた建物が見える。これは山頂ホテルだそうで、ドームは天体観測用のものだという。ここに数日宿泊滞在すれば好条件でマッターホルンを観賞することができるに違いない。残念ながら、その時間はないので、出たとこ勝負で行かざるを得ない。そうすると、このように雲隠れのマッターホルンしか見れないアンラッキーなことになる。


(展望台での服装)
この時の展望台の気温は恐らく零度に近い気温で、風はなく穏やか。私の服装は上下のジャージ姿で靴は普通のウォーキングシューズ。肌着は長袖のメリヤスシャツ、その上に薄手の毛の長袖シャツのみ。下は薄いロングパンツ(ステテコ)1枚で、これにマフラー&マスクを着用。手袋までは不要であった。つまり特別の防寒は不要だった。)



雨のハイキング
展望台で1時間あまりを過ごした後、いよいよハイキング出発である。山頂駅から一つ先のローテンボーデン駅まで電車で移動し、そこから一駅先のリッフェルベルク駅までの1駅間をハイキングする。このコースはマッターホルンの雄姿を眺めながら歩くコースで、途中のリッフェル湖に映る“逆さマッターホルン”が見られる人気の絶景コースである。だが、この雲の様子では山並みは何も見えないに違いないと、失望落胆の気持ちで力が抜ける。なにせ、この“逆さマッターホルン”が見られるということで、今度の旅の参加のきっかけになったのだから!


ローテンボーデン駅で下車すると、現地ガイドの案内でハイキング開始である。足場は問題なく、下り坂の道を歩くので楽勝である。厚く曇って折角の眼前に広がる絶景の山岳風景が見られないのは、いかにも残念である。雲は厚いがまだ雨は降っていないので幸いである。


ぎざぎざの刻みがついたラックレール。これに歯車を噛みあわせて上る。


同 上


登山電車はこんな斜面を上って行く。(ローテンボーデン駅)

眺望のきかないハイキングコースを歩いて行く。気温は零度もない感じで、その上歩くので身体は温もり寒さは問題ない。私はジャージ姿にマフラー&マスクを着用して歩き続ける。好天なら鼻歌まじりにルンルン気分で歩けそうなコースである。


レウカンテモプシス・アルピナ


ハイキングコースを行く

高山植物を愛でながら歩くこと20分、待望の“逆さマッターホルン”が映るリッフェル湖に到着。ところが案に相違して湖とは名ばかりで、意外にも小さな水溜りなのだ。この湖に映るはずの“逆さマッターホルン”の原像は、見事なまでにすっぽりと雲に包まれて何も見えない。先ほど電車で登る時はなんとか見えていたのに、展望台でも、ここでも雲隠れしてしまっている。これでは湖に映るマッターホルンをイメージして眺めるしか手はない。これで3つ目の目的もアウトとなり、ツェルマット訪問の目的は何一つ達成できず、すべて全滅ということになる。何たることだ!








これが“逆さマッターホルン”が映るリッフェル湖。前方の雲の中にマッターホルン。


(動画)“逆さマッターホルン”が映るリッフェル湖の風景



筆者の服装。これにマスクをする。

この“逆さマッターホルン”が湖に映る条件はなかなか難しいそうだ。いくら晴天でマッターホルンが良く見えても、湖にさざ波が立っていれば映らないという。だから、まずは風もない穏やかな晴天でないとダメと言うことになる。したがって、この見事な逆さマッターホルンが見られということは、よほどラッキーなことと言えるわけである。たまたま数時間の訪問で、それに出くわすということは至難のわざなのかもしれない。


気を取り直して先へ進む。湖から少し進んだところで、皮肉にも雨がぽつりぽつりと降り始める。本降りにならなければいいがと思いながらハイキングする。しかし、その願いも空しく、雨はしょぼしょぼと降り続き、地雨の様相となる。目的達成できずに落胆の気持ちを引きずりながら歩いているのに、追い打ちをかけるように、この憎らしい雨である。これでは踏んだり蹴ったりだ!


山腹を進んで行く。左側は絶景なのだろうに、霞んで見えない。


雨が降り始めた・・・


いよいよ風景は霞んで見えない


カラフルな傘が悲しい

合羽と傘を持参しているので問題はないが、風がないので傘だけでしのぐことにする。山間部は雨と霧に煙って視界は開けない。傘を広げ、雨に濡れた道をスリップに注意しながら黙々と歩き続ける。土砂降りでないのが不幸中の幸いである。


かなり歩いたところで、遠くに駅舎が見えてくる。あれがリッフェルベルク駅なのだ。ここまでで1時間ちょっとの雨のハイキングは終わりとなる。


リッフェルベルク駅が見えて来た(右端)


リッフェルベルク駅の駅舎


駅 名


リッフェルベルク駅のホーム


(動画)ゴルナーグラートへ向かう登山電車(リッフェルベルク駅にて)


駅でしばらく待つと登山電車に乗って下山する。ツェルマットの終点に戻ったのは12時ごろである。ここでは雨は降っておらず、山間部のみが雨に降られているらしい。なんとも皮肉なことである。


車窓から深い渓谷が見える


昼食&フリータイム(思わぬプレゼント)
昼食は町のレストランでラクレット料理(ジャガイモとチーズ)の食事である。食後は3時までフリータイムとなる。そこで、メインストリートの商店街をぶらつきながらウィンドーショッピング。通りには時計店、アウトドア用品、カフェ、土産品店、パン屋などの店舗が並んでいる。本場の時計専門店をのぞいてみたいが、夕方までお休みとなっている。


ツェルマットの建物のヴェランダには、どこも花が飾られていて美しい。


同 上


同 上


駅前には馬車がとまっている

他に目ぼしい店もないので、ツェルマット駅に戻って駅の様子を探ってみる。駅には乗客もおらず、閑散としてひっそりしている。この駅はテーシュ間を結ぶシャトルトレインと氷河特急の終着駅なのだが、氷河の到着は夕方遅いので、今は閑散としているわけだ。


駅の構内をぶらついた後、駅前広場に出ると、同行グループの人たちがベンチで休んでいる。そこで一緒に過ごそうと行ってみると、マッターホルンが見えたことで話題になっている。なんと、すぐ近くの公園からマッターホルンが見えると言うのだ!


すわ一大事とばかりに、それを聞いて直ぐに吹っ飛んで行く。駅前にCOOP(スイス版生協)の店があるのだが、その裏手にある小さな公園から見えるのだ。その公園に入って右手を見上げると、霧が晴れてマッターホルンが山の端からぽっかりと姿を現しているではないか! 思わず小躍りして撮影にかかる。


ところがである。デジカメの液晶画面が光に反射して写る画像が皆目見えないのである。いろいろ工夫してみても、どうにもならない。そこであきらめ、とにかく当てずっぽうで撮りまくる。10枚以上は撮っただろうか? ズームでばっちりと撮りたかったのだが、それも叶わず、次の写真がやっとのことである。画面が反射して画像が判別できないのは、ファインダーのない液晶画面の致命的な大欠陥である。これは何とか改善できないものか?


マッターホルン(ツェルマット駅近くの公園にて)


ズームで撮ったマッターホルン(同上)

ゴルナーグラートの展望台では雲に隠れて姿を現さなかったマッターホルンが、ツェルマットの町を立ち去る直前になって、その雄姿を見せてくれたのは、遠景とは言え、ほんとにラッキーである。われわれにお別れの餞別をくれたのかもしれない。「マッターホルンよ、ありがとう! マッター来るね。」と、心の中で礼を言う。


テーシュからシャモニーへ
3時となり、再びシャトルトレインに乗って、われらがバスの待つテーシュへ戻る。


(動画)ツェルマットからテーシュへ向かうシャトルトレインの車窓風景


駅前に待機するバスに乗り込み、フランス領のシャモニーへ向け移動する。この町は16年前に訪れた懐かしのシャモニーでもある。


バスは郊外ののどかな風景の中を走り抜けながら一路シャモニーへ向かう。やがて山道を上り始める。シャモニーへの道は峠を越えなければいけないのだ。途中休憩をはさみながら、さらに上り続ける。


テーシュからシャモニーへ向かう途中


同 上


シャモニーへ向かう山越えの道より眺めた町並み


道路わきの斜面にはぶどう畑が広がる(同上)


シャモニーへ向かう途中、一時休憩した場所

峠のトンネルにさしかかると、そこはフランス領との国境線でフランスの税関がある。ここはフリーパスで、この峠を越えるとシャモニーは間もなくだ。ところが、ここを抜けると天候が変わって雨模様となる。バスは降りしきる雨の中を走り続け、ようやくシャモニーの町に入る。厚い雲に覆われているが、雨は止んでいる。雨は山間部だけのようだ。


シャモニーへ向かう峠を越えたら雨が・・・


シャモニーのこと
欧州最高峰のモンブランの麓にある標高1036mの町で登山とスキーのリゾート地として有名である。観光スポットでは標高3842mの高山に造られたロープウェイ駅兼展望台のエギーユ・デュ・ミディ展望台で、モンブランやシャモニー渓谷の大景観が眺められる。ロープウェイ網はその先、イタリア側の展望台を経由し、反対側の谷まで至っている。


ホテル到着
バスは町中を通り抜けて郊外へ向かう。町はずれのホテルに到着したのはテーシュを出発してから約3時間後の6時40分のことである。部屋に入って窓外を眺めると、なんと素敵なガーデンが広がっているではないか。広さは狭いがグリーンの芝生が広がり、その向こうには高い山が衝立のようにそびえている。雲がなければ素敵な光景だろうに・・・。


宿泊ホテルの看板


ホテルの窓から眺めたガーデン

夕食はホテル食堂での食事である。町はずれのホテルだけに、周囲には何もなく、食後の散歩もできない。ゆっくりと入浴して、静かに眠るしかない。明日はモンブラン観賞だが、天気はどうなるのだろう? この空模様では当てにはならない。明日は明日の風が吹くだろう。そう思いながらベッドに横たわる。



(次ページは「モンブラン・シヨン城・グリンデルワルト」編です。)











inserted by FC2 system