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  NO.30




22.ノイシュヴァンシュタイン城・ミュンヘン・・・ サイクリングと大ビヤ
   ホ−ルと
 
   
お城へサイクリング
昨夜、雷雨があり、朝方まで小雨が降り続いている。ところが天の助けか、みるみるうちに晴れ上がってくる。これまで、こういうパタ−ンが何度かあって、雨にも遭わずラッキ−な旅が続いている。午前中はH氏を誘ってノイシュヴァンシュタイン城までサイクリングする計画である。九時から駅のレンタサイクルを九マルク=五五〇円で借り出し、さっそうと雨上がりに映える緑の草原を軽快にサイクリングする。お城のふもとまで快適なサイクリングコ−スが完備している。カランコロンと首にぶら下げたカウベルをのどかに響かせて牧草を食む牛の群れを眺めながら、人気のない草原の風を切って走り抜ける気分は爽快この上なしである。




 


ノイシュバン・シュタイン城へ向かう自転車道路








二十分も走れば、お城のふもとに到着である。お城は山の上にあるので、ここから急坂を登らなければならない。自転車で坂に挑戦してみるが途中で断念し、徒歩に切り換えて登り出す。息をはずませながら二十分ぐらい登ると、森の木陰からお城の白い優雅な姿が現れ出す。もうすでに、かなりの観光客が押し寄せている。日本人観光客の顔も多数混じっている。ロマンティック街道の観光コ−スでは、ロ−テンブルクの町に次ぐハイライトでもあるのだから無理もない話だ。








 この地点から歩いてお城まで約20分























 森の陰から見えるノイシュバンシュタ
 イン城




















下から見上げるお城















下から見上げた正面

















 そびえ立つお城の側壁






















 お城を背景に・・・














ここで、このお城にまつわるお話をガイドブック(地球の歩き方ヨ−ロッパ編)から少し引用させてもらおう。このお城は、バイエルンの国王ル−ドヴィヒU世が、一八六九年から十七年の歳月と巨額の費用をつぎ込んで自己の夢を実現させようとつくった城である。ところが、その城主が住んだのはわずか百日あまりだという。またこれは、ディズニ−ランドのシンデレラ城のモデルにされたといわれ、中世の童話そのもののファンタジックな姿は見る者を魅了して離さない。


一八六四年、十八歳でバイエルンの国王となったル−ドヴィヒU世は、革命的音楽家リヒャルト・ワ−グナ−に心酔して莫大な資金援助をし、自分の趣味で飾りたてた城造りに熱中して国民の強い反感を買う。また彼は、若い頃から八歳年上のハプスブルク家のいとこエリザ−ベ−トに心魅かれていた。彼女はヨ−ロッパ社交界では並ぶものがないほどの美女として名高く、すでにオ−ストリア皇帝の妃であったにもかかわらず自由奔放にふるまっていた。彼女は自分の妹ソフィ−と婚約するようにル−ドヴィヒにすすめるが、エリザベ−トへの思いを断ち切れない彼は、結局だれとも結婚せずやがて男色へと走った。


最後には、とうとう国王にふさわしくないと王座を追われ、四十一歳でミュンヘン郊外のシュタルンベルク湖畔に散歩に出たまま謎の死を遂げる。彼の死後、エリザベ−トもまた、レマン湖畔で無政府主義者によって殺され、不幸な死を遂げる。
 

このような予備知識があっただけに、このお城への思い入れが一層深いものとなって、私の心をとらえて離さない。そして、この時初めて「皇妃エリザベ−ト」の名を知ったのだが、彼女がそれほどまでに美しい女性だったのかと深い関心を持ち始めることになる。それから間もなく、図らずもウィ−ンで彼女の美しい姿に出会うことになり、ハプスブルク家の歴史にますます興味をかきたてられることになる。最近、オ−ストリア帝国の王家であったハプスブルク家の歴史に関する著作物が数多く出版され、ブ−ム的現象を呈している。
 

その中の一つに、「皇妃エリザベ−ト」が発刊されており、その美しい皇妃の波乱に満ちた伝説の生涯を豊富な写真で克明にたどっている。それによれば、ハプスブルク家約六百五十年の歴史において、エリザベ−ト皇妃こそ自他ともに認めるもっとも美しい女性であり、一七二センチのスリムな長身に今日のトップ・モデルさながらの見事なプロポ−ションを誇っていた。


ドイツ人の宮廷肖像画家ヴィンタ−ハルタ−が描いた絵は有名で、エ−デルワイスの花と星のような飾りをつけた腰までとどく栗色の長い髪、同じような星形の刺繍のある白い豪華なドレスに身を包んだ皇妃エリザベ−トの美しさは、典雅、崇高、気品、威厳、端麗、魅惑、孤高、ロマンチシズムと、いかなる言葉を並べても表現できない存在感をもって、見る者を金縛りにするという。死後九十六年を経過した今も、オ−ストリアの人びとの心をとらえて離さない根強い人気を誇っている。
 

入城料九マルク=五五〇円を払って入ったものの、ガイド付きで見学するため人数制限があり、観光客が列をつくって待っている。これでは午後の列車に間に合いそうもないので見学はあきらめ、裏手の谷間にかかる橋のほうへ上って見ることにする。目もくらむような深い谷をまたぐ橋の中央に立ち、ここから見下ろすように眺めるお城の全景はまた格段に美しい。






ディズニーランドのシンデレラ城のモデルといわれるノイシュバン・シュタイン城
遠くに見える湖と森に囲まれたこのお城はやはりファンタスティック




遠くに見える湖を背景にして、深い森に覆われた山の頂にそそり立つお城の姿は、まさに神秘的でファンタスティックである。これまで、このお城の写真を旅行広告などで何十ぺん見てきたことだろう。その実物が、いま目の前にそびえている。この城主が、エリザベ−トへの思慕の情を抱きながらどんな気持ちでこの城に百日間住んだのだろうかという思いに心を馳せると、美しい緑に映える純白の優美なお城の姿が、なんとなくもの悲しく哀愁を漂わせているようにさえ見える。






お城を背景に・・・










下る途中、もう一つホ−エンシュヴァンガウ城を遠く下方に眺めることができる。ここから再び草原を駆け抜けてフュッセンの町へ戻り、タカフェテリアで肉シチュ−をかけたライスで昼食を取る。これで一〇マルク=六一〇円。この後バスでスイスの山へ登るというH氏と別れ、再び独り旅に戻ることになる。







遠くにホ−エンシュヴァンガウ城を望む









ミュンヘンへ
午後一時八分発の列車に乗り、三時過ぎ今日の宿泊地ミュンヘンに到着。駅の近くにホテルを見つけ、一パツOKでチェックイン。テレビはないが小ぎれいで、早速洗濯にとりかかる。一服してから、世界一有名な大ビアホ−ル「ホ−フブロイハウス」へ出かける。歩行者天国になっていて、レストランやデパ−トが軒を連ねる賑やかなメインストリ−トをぶらつきながら、地図を片手にビアホ−ルの在処を探しにかかる。
 

その途中、驚いたことにハイデルベルクからロ−テンブルクへ向かうバスの中で一緒だったアメリカ人夫妻とバッタリ出会うではないか。ロ−テンブルク市内でも出会い、遠く離れたこの地でも出会うとは何という奇遇だろう。互いに驚き感激し、「世界は狭いですネ!」といって固い握手を交わしながら二度目の別れを惜しむ。


ビアホ−ルは駅前からかなり離れていて分かりにくく、地図を見せながら何度か「ヴォ− イスト デア ホ−フブロイハウス?」を繰り返し、やっと訪ね当てる。ホ−フブロイとは、「宮廷ビ−ル醸造所」の意味で、バイエルン王国宮廷の直営ビ−ル会社だったところという。今はミュンヘンの大手ビ−ル醸造会社直営のビアホ−ルだそうだ。二階、三階になるほど高級になっている。一階に入ると、広いホ−ルの中はいっぱいのお客で満席状態、二百人ぐらいはいるのだろうか。中央では楽団がバイエルン音楽を演奏しており、それに合わせてお客みんなが一斉に大声で合唱し始める。それはそれは賑やかですごい喧騒、壮観である。


 



賑やかなホーフブロイハウス










隅のほうにやっと席を見つけ、ドイツ青年たちと相席で座る。長テ−ブルに長イスと、いたって簡素なもの。座ったものの、どこでどう注文すればよいのか分からず戸惑ってしまう。近くを通るウェイタ−をやっととらまえて注文する。おいしそうな白いソ−セ−ジがあるので注文すると、相手はどのソ−セ−ジか分からないらしく、メニュ−を持ってきて表紙の写真を見せる。その一つを指差しながら、「ツヴァイ ビッテ(二本ください)」というと、うなずきながら戻って行く。しばらくすると、ゆがき立てのソ−セ−ジが運ばれて来る。これは名物の白ソ−セ−ジというものらしく、それがとてもうまい。これに甘いマスタ−ドをつけて食べながら、大ジョッキでビ−ルを傾けるのは最高である。ガブ飲みするミュンヘンのビ−ルとソ−セ−ジのうまさは、やはりひと味違う。
 

若者たちが一緒に乾杯しようと誘いながら、日本語で何というのかと聞くので、「カンパイ」だと教えると、日本語で「カンパイ!」、ドイツ語で乾杯!、英語で乾杯!と大はしゃぎである。そして、最後には一緒に記念写真をというので、それぞれのカメラで撮り合いながら別れを惜しむ。なんともいえぬ実に楽しい夜である。






ドイツ青年たちと乾杯!










涼風に当たりながら夜のストリ−トを帰途についていると、ホロ酔い加減のいい気分になって、つい鼻歌が出てしまう。


(次ページは「オーストリア・ウィーン編」です。)










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