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4.ダブリン市内観光(2)

ダブリン3日目。6時に起きて空を確認すると、今朝は雲が多いが少し青空がのぞいている。これでも青空を見るのは、この地に来て初めてのことである。でも、安心は禁物。この地の空はまったく信用できないんだから〜! いつ雨に変わるかもしれないのが、ここの天候なのだ。そんな気まぐれ天気と付き合うのには、大らかでゆとりの気持ちが必要だ。いちいち気にしていたら、神経を病んでしまう。


今日の予定
さ〜てと、今日の1日はいったいどうやって過ごすか? 昨日、めぼしい観光ポイントはめぐってしまっただけに、今日の1日を持て余してしまう。そこで、昨日のうちにフロントのお兄さんやおばさんに、いろいろとアドバイスを受けることに。お兄さんのお勧めは「市内のショッピング街の見物」であり、一方のおばさんのお勧めは「郊外の景勝地」である。比較検討した結果、安上がりの前者に決定。ということで、今日はぶらりと市内の有名ショッピング街に繰り出すことにしよう。


「Carroll’s」の店
ついでに、この付近に適当な土産品店はないかを尋ねてみる。この地の記念の土産品をまだ何一つ求めていないのだ。すると、パンフレットを取り出して、この「Carroll’s」の店に行けば何でも揃うと教えてくれる。アイルランド固有のグッズ類からギネスグッズ、Tシャツ類まで揃えるアイルランドみやげの専門店なのだという。この店は市内のオコンネル通り、ヘンリー通り、グラフトン通りのショッピングセンターなど7ヶ所に店舗を構えている。


2つのショッピング街
簡素な朝食を済ませて一息入れると、9時になって宿を出る。お兄さんの案内によれば、市内に2ヶ所の主要なショッピング街があり、その一つはトリニティ・カレッジの南側にある「GRAFTON STREET」で、その南端にはショッピングセンターやセント・ステファンズ緑地があるという。そして他の一つは、オコンネル通りから入る「HENRY STREET」だという。それぞれの位置のマークを付けてもらったマップを手にして、いざ出発である。


旅先で傘をささずに歩けるということは、ほんとにありがたい。この地に来てつくづくそう思う。見慣れたDAME STREETをトリニティ・カレッジの方へてくてくと歩を進める。昨日の観光地めぐりで、すっかりこの地に馴染んできた感じで、すでに現地人になった気取りである。すっかり方向感覚が頭に刻み込まれている。


グラフトン通り
昨日訪れたインフォメーション・オフィス前の通りを過ぎると、めざすグラフトン通りに出る。路面は赤色のレンガ石で敷き詰められ、両側にはブティック、化粧品、時計・宝飾品店、書店など、お洒落な店舗が行儀よく並んで上品な雰囲気を醸し出している。開店早々とあって、人出はまだほとんど見られない。この通りは歩行者天国になっており、訪問者は道幅いっぱいを使ってゆっくりとショッピングができる。


朝のグラフトン・ストリート

ショッピングセンター
そんなに長くはない通りを南へ向かってぶらりと歩いて行くと、末端の突き当たりに緑地公園が見え、その前をスマートな路面電車が走っている。


公園前を走るスマートな路面電車

電停前にはデパートのようなショッピングセンターが建っている。まずはここに入ってみよう。中に入ると、中央部分はガラス張りの屋根まで吹き抜けになっており、明るい陽光がさんさんと屋内に降り注いでいる。その両側には3階のフロアーが設けられ、そこにさまざまなショップが軒を連ねている。3階はレストランやスナック店などの飲食店街になっている。屋根からストレートに日差しが入り込み、室内は暑い。


ショッピングセンターの内部

3階まで上って一通り見物し終えると、1階に下りて土産品店を探す。このセンターの中に教えてもらった“Carroll’s”の店が入っているのだ。尋ねながら探し回ると、あった! 1階フロアにちっちゃな店構えで出店している。ひと通りのアイルランドのギフト商品が揃ってはいるけど、これといって心惹かれる物は見当たらない。それでもなんとか小物2、3点を買うことに。


セント・ステファンズ緑地
ショッピングセンターを出ると、道路向かいのセント・ステファンズ緑地に向かう。公園内に入って奥へ進んで行くと、左手にきれいな池が見え、その奥に広い芝生の庭園が現れる。芝生の中には花壇が設けられ、赤や黄色の花が咲きそろって華やかな彩をそえている。周りにはベンチが設けられ、格好の憩いの場になっている。しばし、そこへ腰掛けてのんびり時を過ごす。ここは昼食を取るのにもってこいの場所だが、今は少し時間が早すぎる。


素敵な雰囲気をただよわせる公園の池



 緑地公園の中には、よく手入れされた素敵な庭園が広がる




こうしてみると、この公園は市民の憩いの場にもってこいのようだ。ショッピング街のグラフトン通りを通り抜けると、その先にこの公園があり、地理的に便利この上ない。その上、手ごろな広さのようで、池あり、庭園あり、森林ありで変化に富んだ緑陰を提供している。これに比し、昨日訪れたフェニックス公園は地理的にも中心部よりやや離れており、その上、途方もなく広く、どこでどう過ごしていいのやら取り付く島もない感じだ。広いばかりが能ではないということだろう。


ハトおじさん
やおら腰をあげて公園の出口に向かう。するとその途中、珍しいハトおじさんに出会う。大きな樹木の下に座り込んだそのおじさんは、全身をハトの群れに覆われているのである。これまでよほど手なずけているらしく、座り込んだおじさんの頭や肩、胸などにハトが群がっているのである。餌をやっている風でもない。そのハトたちは、おじさんが体を撫でても逃げようとしない。野生のハトなのに、ここまで手なずけられるとは珍しいことである。側を通りがかる人は、みんな珍しそうに眺め入っている。


ハトおじさん。体中にハトが群がっている。

大道芸人のオンパレード
公園を後にすると、グラフトン通りに出て引き返す。すると、来る時は見かけなかった大道芸人たちがパフォーマンスを始めている。公園門の前では男性がエレキギターを持って奏でている。その先へ行くと、女性が腰掛けて小さなハープを爪弾いている。かと思えば今度は男性がバイオリンを弾いている。その先ではお手玉をやっている。


エレキギターを弾く男性


ハープを奏でる女性


バイオリンを弾く男性


お手玉を操る男性

さらに歩を進めると顔を銀色に塗りかためたこわいゼンマイ男が台の上に立っている。そして、その先では楽団演奏が行われているかと思えば、今度は天使さまが立っている。こんな風に、いつの間にか通りにはさまざまな芸人たちが競うように立ち並んで、道行く人々の目を楽しませている。様子を見ていると、ぼつぼつではあるが投げ銭が与えられている。そして、そんなストリートに花屋さんが華やかな彩を添えている。


ゼンマイ仕掛けの人形のように動くゼンマイ男


クラシックの楽団演奏もある


天から舞い降りた天使様?


カラフルな花屋の店頭

昼食はサンド
さて、どこで昼食をしようかなあと考えながら歩いていると、ふと小さな食品店が目に留まる。よし、ここで食べ物を調達してトリニティ・カレッジに持ち込み、そこで昼食としよう。先の公園はここからは逆戻りで遠いのである。そこで中型バゲットパンにタマゴ、トマト、ハム、ポテトを詰めてもらいサンドを作ってもらう(3.5ユーロ=525円)。これに牛乳1パック、バナナ2本(合計4.85ユーロ=727円)、ミネラル水小1本(1.15ユーロ=172円)を買い込んでカレッジに向かう。今日は天気がいいから戸外の食事には打ってつけだ。


平和のシンボル・ハトの本質
昨日訪れたケルズの書のある図書館前に芝生があるのを思い出し、そこで昼食とすることに。芝生の側に腰を下ろし、前に食品を並べてのんびり食事を始める。すると、スズメやハトたちが物欲しげな顔で周りを取り囲んでいる。よし、よし、お前たちにもおすそ分けしてあげよう。ほれっ、とばかりにパンを千切って小片にし、投げ与えてやる。


すると、ことごとくスズメがゲットしてしまい、ハトの口にはなかなか入らない。スズメより何倍も大きいハトの群れの中に、スズメがさっと飛び込んできてエサを掻っさらっていく。その見事な早業にハトたちは手も足も出ない。そうかといって、スズメを追い払おうともしない。平和の使者らしく、穏やかな顔つきをして見過ごしている。争奪のための闘争を好まないこんな性格から、ハトは平和のシンボルにされたのだろうか? 意外なところでハトの本質を見た気がする。


夏 姿
雲の切れ間から漏れてくる日差しはけっこう強く、気温はかなり高くなっているようだ。今の私の服装は、半袖肌着の上に半袖の夏シャツ1枚を着ているだけである。平年の気温なら、これでは肌寒いはずなのだが、予想に反して気温が高く、この服装でも汗ばむ場面もある。冬服の用意が無駄になってしまったようだ。


こうして私が食事をしている間にも、ケルズの書の見学目的で、ひっきりなしに観光団が押し寄せてくる。欧米の団体や日本の団体が入り混じっている。このカレッジの前に団体バスが止まり、そこから続々と観光客がやってくる。ここはギネス・ストアハウスと並んで、観光コースの目玉になっているのだろう。


私を見習ってか、すぐ隣に中年カップルが腰を下ろして、同様にパンをかじり始める。彼らも食べながらスズメたちと戯れている。そのうち顔を見合わせ、会釈を送る。これがきっかけで話が始まる。アメリカのミシガンから来たという夫妻だが、夫人が保険の外交員らしく、その優れた成果の褒賞としてアイルランド旅行へ夫婦招待されたという。世界各地の受賞者が集まり、この地でコンファランスがあるという。なかなかのナイスカップルで、そのことをほめると2人は照れている。いろいろ話しているうちに、集合時間だといって別れを告げる。


ヘンリー・ストリート
ここでのんびりとハトやスズメたちと戯れた後、やおら腰を上げてオコンネル通りへ足を向ける。グラフトン通りを抜けてトリニティ・カレッジ前を通り、そのまままっすぐ進むとオコンネル橋に出る。そこを渡れば昨日も歩いたオコンネル通りにつながるのである。次はこの通りの途中から横に入るヘンリー・ストリートに向かう。ここもグラフトン通りと並ぶダブリンの有名商店街となっているらしい。


オコンネル通りの歴史を刻む有名な中央郵便局前を通り過ぎると、左に入るストリートが見える。これがめざすヘンリー・ストリートで、メインストリートのオコンネル通りと交差しているショッピング街である。通りに入ると、石畳の通路の両側には商店が軒を連ね、多くの人出で賑わっている。しかし、通りの様子はグラフトン通りのように洗練されたおしゃれな雰囲気はない。多分、古い商店街なのかもしれない。ここも歩行者天国になっているのだが、どうしたことか、グラフトン通りのように大道芸人たちの姿は1人も見えない。


ヘンリー・ストリートの様子

この通りを奥へ進んでいると、右手に折れる通りが出てくる。ふと見ると、そこには食肉、野菜、フルーツ、生花その他の生鮮食料品の店が並んで市場みたいになっている。今の時間帯には人影も少ないが、午前中には買い物客で賑わうのだろう。こんな街のど真ん中に、市民の胃袋となる市場があるとは珍しい。通りの奥まで入って見物する。


ヘンリー・ストリートの中間にマーケットの通りがある

このヘンリーストリートの見物で、先のグラフトン・ストリートとあわせ、ダブリンの街の2大ショッピング街を探索したことになる。どちらかというと、グラフトンの方がおしゃれ感覚がただよっている感じで、落ち着いた雰囲気が見られる。海外からの観光客も多いようだが、団体旅行の場合はこんなショッピング街を見物する時間的余裕はないだろう。みんなテンプル・バーに目が行くようである。


ホテルへ
時計を見ると午後の3時を過ぎている。そろそろ宿へ引きあげて憩うとしよう。今夜も例のアイリッシュ・ダンスの観賞に行く積もりだ。すっかり魅せられてしまったダンスだけに、ダブリン最後の夜にもう一度この目に焼き付けておきたいのである。オコンネル橋に戻り、テンプル・バーの通りを通って宿に向かう。到着したのは3時半のことである。汗ばんだのでシャワーを浴び、しばし休息とする。


今宵は音楽を省略してダンスだけを観賞することにしよう。そうとなれば、ダンスの始まる10時前までにアーリングトン・ホテルに到着すればよい。それまでに、どこかで夕食をすませるとしよう。そういえば、テンプル・バーの通りに中華料理店が目に留まったが、そこで夕食を取るとしよう。連日のアイリッシュ・シチューでは、ちと重過ぎる感じがする。麺類があれば、いうことないのだが・・・。


気になるヒューストン駅までの距離
ところで、明日はゴルウェーへ移動の日だが、この宿からヒューストン駅まで移動しなければならない。この宿からいったいどれくらいの距離があるのか、確かめておく必要がある。地図上の目測では1.7km程度の距離のようだが、徒歩でどのくらいの時間なのだろう? そこで、フロントのお兄さんに尋ねてみると、歩いて10分で行けるという。そんなに近くはないと思うのだが、果たしてどうなのだろう? まあ、倍の時間がかかったとしても20分ぐらいの距離かな? あまり遠いようだとタクシーを利用する必要がある。いろいろ考えた末、明日は歩くことに決める。


夕食はスープヌードル
夜の8時過ぎまで部屋で休息した後、やおら出動する。またしてもテンプル・バーの通りに入ってオコンネル通りを目指して歩いて行く。するとその途中に、目当ての中華料理店が現れる。この界隈にはここ1軒しかないようだ。店内に入ってテーブルに着くと、中国人の女性店員がやって来て中国語で話しかけてくる。私を中国人と思っているようだ。私の場合、どういうわけか外国では中国人に間違われることが多い。どうも中国系に似ているらしく、子供たちの目にもそう映るらしい。


「私は日本人ですよ。」というと、「中国人かなと思っていました。」とばつが悪そうに答える。彼女は上海からやって来たのだという。ところで「麺類はありますか?」と尋ねると、「ありますよ。」と言いながらメニューを見せてくれる。その中に“スープヌードル”を見つけ、それを注文することに。私の頭の中には、“長崎ちゃんぽん”を描いているのだが、果たして想像どおりの品が出てくるのだろうか?


やがて運ばれてきたのは、確かに“長崎ちゃんぽん”風のすスープヌードルである。想像どおりの料理に安心して箸をつける。スープの味はコクがないが、麺はまあまあのもので、唐灰汁(とうあく)を使ってあるようだ。具のほうは大切りの野菜などが入っていて食べにくいが、まあまあというところ。豚肉入りを頼んだら肉がごろごろ入っている。どうしても“長崎ちゃんぽん”と比較してしまうのだが、これと同等のものを他国で求めるのは無理な話である。


一人でゆっくりと時間をかけて食べ終わると、代金9.5ユーロ(1425円)を払って席を立つ。肉が多いとはいえ、このどんぶり1杯のヌードルがこの料金だとは高すぎる。長崎だと700円以下で十分だ。テンプル・バーという場所柄で高いのだろうか? この地の物価は、どうも高いようだ。


2夜目のアイリッシュ・ダンス
そんな感想を抱きながらLiffey川に出ると、橋を渡ってアーリングトン・ホテルに向かう。この時間(9時ごろ)には空はまだまだ明るく、ようやく陽が傾き始めた感じである。なんと日が長いことだ。川沿いのプロムナードをゆっくりと歩きながらダブリン最後の夕景色を惜しむ。


ホテルのパブに入ると、すでに多くの客で賑わっており、アイリッシュ・ミュージックの演奏も始まっている。座る場所はないので、ステージ前方の位置に立ちながら歌と演奏を観賞する。お目当てはアイリッシュ・ダンスなので、音楽のほうはさほど関心はない。半時間ほど立ち見観賞をしていると、ようやく演奏が終わりとなる。おや、今夜は昨夜よりやや早目の10時10分前からダンスが始まりそうである。


やがて待望のダンスが始まる。おや? 今宵のダンスチームは昨夜と入れ替わっている。同じ5人のメンバー編成だが、別のチームなのだ。だが、ダンスの素晴らしさはいずれ劣らずで、迫力のあるリズミカルなダンスを見せてくれる。何度見ても見飽かないその魅力に、すっかり虜になってしまう。これが1回の公演で短い時間しかダンスが見せられないというところが、余計に人の心を捉えて離さない。それほど濃縮された激しいダンスだからだろう。


一糸乱れぬタップの響き、踊る姿勢の美しさ、激しい足の動きとリズム感・・・どれをとっても素敵に美しく、心の奥底まで振るわせる。どの国のフォルクローレ(民族舞踊)もそれぞれに美しく、心惹きつけるものがあるが、私が特に魅せられるのは、このアイリッシュ・ダンスである。ほんとに素晴らしいというほかはない。


再び感動の夜を・・・
昨夜と同様の感動にひたりながら、ホテルを後にする。この魅力的なアイリッシュ・ダンスを2夜にわたって観賞できたのは幸いこの上ないものである。この国が、この素晴らしいおみやげを私にくれたことに、心より感謝したい。そんな思いを抱きながら、静かな夜景を浮かべるLiffey川の眺めに見入りながら、ゆっくりと宿へ向かう。


心満たされた思いで宿に着くと、あとは寝るばかりだ。明日は早起きして、早朝7時10分発の一番列車でゴルウェーに向かう。また、新しい旅の始まりが待っている。さて、この先どんな出来事が待ち受けているのだろう。楽しみに胸を膨らませながら床に就いたのは11時過ぎのことである。



(次ページは「ゴルウェー観光」編です。)










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