N0.6
(&ルクセンブルク)




グロ−テ・マルクトと市庁舎
ノ−トルダム大寺院を後にして正面の通りを少し先へ進むと、グロ−テ・マルクトと呼ばれるちょっとした石畳の広場がある。そこでまず目に飛び込んで来るのが鮮やか国旗の満艦飾である。広場の正面に建つ市庁舎の窓すべてを塞ぐように世界各国の国旗が掲げられているのである。何のイベントが催されるのだろうと人々を思わせるこの光景は、この広場を華やかな雰囲気に包んでいる。この国旗で埋まる市庁舎は、1561年から65年にかけて建てられたルネッサンス建築で、その内部の広間にはアントワ−プの歴史的な出来事を描いた壁画があるという。
 





華やかな万国旗に埋まった市庁舎









この広場の中央には、まさに手首から切り取った“手”を投げようとしている裸の男性像が立っている。この像は伝説上の人物で、シュヘルド川で猛威をふるっていた「巨人の手(ant)」を切り取って「投げた(werpen)」ブラボ−という古代ロ−マの兵士だそうで、これがアントワ−プ(アントウェルペン)の由来とされている。その切り取った手首の先からあたかも真赤な血が噴き出すかのように噴水が勢いよく吹き上がっている。
 







伝説上の人物、ブラボーが切り取った巨人の 手を投げようとしている像。
その手首の先から噴水が・・・













そんな広場の様子を眺めていると、どこからともなく真赤なミニトレインがやってくる。観光用のトレインなのだろう。その派手な色のトレインが、華やかなこの広場の雰囲気によくマッチしている。後で、ぜひ乗ってみたい。






広場を走るミニトレイン











両替と昼食

昼食の前に、両替をしておきたい。そこで、通りがかった老紳士に最寄りの銀行を尋ねると、遠くに見える高いビルを指差しながら、あれが銀行ですよと教えてくれる。ついでだから、近くまで案内しましょうと一緒に連れだって歩く。フルン広場を通り抜けたところで別れ、大きな銀行ビルの正面入口から入ると受付がある。なかなかきれいな近代的ビルで空間も広く、フロアはぴかぴかに磨かれている。受付嬢に尋ねると両替は2階だと言う。2階へ階段を上がって窓口で両替を頼むと、意外にレ−トはよく、南駅のレ−トよりもずいぶん有利になっている。有り難いことだ。 
 

こうして資金の準備ができたところで、いざ昼食である。フルン広場の方に戻りながら適当なレストランを探し歩く。と、イタリアンレストランが目に留まり、ここで得意のスパゲッティを食べることにする。中に入って、ム−ル貝のスパゲッティはできるかと尋ねると、できますとの返事。そこで早速、これとビ−ルを注文する。
 

できあがった料理は写真のもので、貝殻付きのものかと思っていたら、身を離し取って調理したものである。さすがに味はなかなかのものである。ム−ル貝の味が溶け込んで素敵な風味を作り出している。これはム−ル貝料理の欠かせない一品かもしれない。






これがムール貝入りスパゲッティ










露と消えたシュヘルド川めぐり

食事を済ませると、次は川めぐりをしてみたいと、シュヘルド川の方へ行ってみる。フルン広場から北へ500mぐらいの距離である。その途中、ある酒屋さんの前を通りかかると、ビ−ルの看板が店頭に置かれている。この写真で見るように、ベルギ−のビ−ルはその銘柄の種類ごとにカップが決まっているのである。これはほんの一部なのだろうが、その様子がこの写真で読み取れる。
 







 ビールの銘柄ごとにグラスが
 写真のように決まっている。














河岸沿いに走る広いKaai通りを横切って川岸に出る。そこに川めぐりのチケット売り場があるのだが、係も誰もいない。辺りを見回すと背後にクル−ズ船の事務所があるので、そこへ行って尋ねてみると、午後1時の便があるのだが、乗客がいないので運行しないという。午後3時の便は団体予約が入っているので、確実に運行するという。意外にも、ここの川めぐりは人気がないらしい。折角だが、あきらめることにする。観光都市なのだろうに、珍しいことだ。
 





河岸沿いに走るKaai通り
左側にシュヘルド川が流れる







河岸のプロムナ−ドに出ると、広大なシュヘルド川が目の前に横たわっている。護岸された岸辺はどこにも自然の雰囲気は残っていない。この河口付近にはコンビナ−トがあるのだろう。






ゆったりと流れる広大なシュヘルド川









川の両岸には見るべき建物や景観もなさそうで、殺風景な感じがする。パリのセ−ヌ川やブル−ジュの運河めぐりみたいには行かないようだ。いつも観光客であふれているのだが、この川岸にはその姿も見られない。ただ、このプロムナ−ドでポ−ランドから来たと言う高校の修学旅行生たちがたむろして食事をしているだけである。市街の方を振り向くと、そこにはノ−トルダム大寺院の尖塔が建物の間から突き抜けるようにそびえているのが見える。






河岸から市中を眺める
高い塔はノートルダム寺院










やって来ないミニトレイン

川めぐりがだめなら、ミニトレインで市内観光をしてみようと、フルン広場の方へ移動する。そこにトレインの停留所があったのを思い出したからである。広場に戻ると、ベンチにのんびり腰掛けながら待つことにする。
 

ふと、隣に座っている上品な老婦人を見ると、おいしそうにアイスクリ−ムを頬張っている。思わず食べたくなって辺りを見回すが、アイスクリ−ムの店が見当たらない。そこでやむなく隣の婦人に、「すみません。そのアイスクリ−ムの店はどこにありますか?」と尋ねてみる。すると、「すぐその道を入った角の所にありますよ。」という返事。そこで早速探しに行くと、その店はすぐに見つかる。こうしてお好みのバニラアイスクリ−ムを手に入れ、ベンチに戻ってにっこり微笑む婦人と並んでクリ−ムを味わう。
 

婦人は立ち去り、すでにアイスクリ−ムも食べ終わり、そしてかなり待ってもトレインは姿を見せない。しびれを切らして、トレインの停留所のポ−ルが立っている前のレストランに入り、トレインの運行について尋ねてみる。すると主人は、もう間もなくやって来るはずだという。そこでまたベンチに戻り、気長に待つことにする。だが、小1時間待っても来る様子がない。とうとう、これもあきらめることにする。


中央駅へ
ベンチから腰を上げると、ぼつぼつ中央駅へ戻り始める。ここから歩いて20〜30分の距離である。帰路は駅までぶらぶら歩いてみよう。フルン広場から通りに出ると二階建ての観光馬車がのどかな蹄の音を響かせながら通っている。このダブルデッカ−になっている馬車は珍しい。早速、写真に収めると、通りを真っ直ぐ進んで行く。
 





カッポカッポと馬車が行く










間もなく、歩行者天国になっているメインストリ−トのメ−ル(Meir)通りに出る。ここは幅広い大通りで、中央駅へ一直線に伸びている。ゆったりとした通りの両側にはビルが立ち並び、さまざまな商店が軒を連ねている。右や左を眺めながら、ぶらぶら歩いて行く。
 





歩行者天国になっているメール通り









この通りのどこかにル−ベンスの家があるのだがと思って、商店の人に尋ねてみる。すると、少し戻ったところの角を曲がって入った所だという。そこで教えられたとおりに戻って角を曲がると、その通りの左側にル−ベンスの家がある。この家は1610年から5年間かけて築き上げたアトリエ兼住居だそうで、ここで死ぬまで30年間を過ごしたという。中に入って見学するには入場料が必要だが、ここは外観だけを眺めて素通りすることにする。
 





ルーベンスの家
(旗が掲揚されている家)









この歩行者天国になっているメ−ル通りは、中央駅の手前で終わり、そこからレイス通り(Leys str.)、ドゥ・ケイゼルレイ通り(De Keyserlei)と続いて中央駅に至る。メ−ル通りを過ぎて歩いていると、こぎれいなカフェが目に入り、途端に喉が乾いてビ−ルを飲みたくなる。ここでもWit Bierを注文し(2.25ユ−ロ=320円)、乾いた喉を潤して生き返る思いにひたる。ここにもカウンタ−の棚には多くの種類のグラスが用意され、客の注文に応じている。
 

喉の渇きが潤い、元気が出たところで、レイス、ケイゼルレイと通りを抜けて行くと、遠くにアントワ−プ中央駅の高いド−ムが見えてくる。






レイス通り付近を走るトラム















ケイゼルレイ通り付近を走るバス














正面に見えるのがアントワープ中央駅のドーム









駅のコンコ−スに入って時刻表を見ると、3時51分発の列車がある。これに飛び乗ってブリュッセルへ戻ることにする。車窓に流れる風景を眺めながら、アントワ−プの街の思いにふける。この街は結構大きくてビルも多く、どちらかというと都会的、現代的な雰囲気が流れて、ブリュッセルに似た感じがある。ブル−ジュのような中世の趣はあまり感じられない。やはり、今でも産業の中心として脈打つ姿が街全体を自然と現代化しているからだろうか。そんなことを思い浮かべていると、40分の列車の旅はあっという間に終わり、ブリュッセル中央駅に到着する。


夕食は中華料理
ホテルに戻ってシャワ−を浴び、夕食までのひとときをベッドに横たわって一休みする。今日も一日よく歩いたものだ。ふと目を覚ますと、6時を過ぎている。しばし、まどろんだらしい。そろそろ夕食に出かけてみよう。今夕はショッピングア−ケ−ドのギャルリ−を探索してみる。
 

感じの良いア−ケ−ドの通りを歩いていると、その中ほどから細い路地が走っている。そこをのぞいてみると、その狭い路地の両側にレストランがずらりと立ち並んでひしめき合っている。その光景はまさに壮観である。ここには海鮮料理のレストランが多く、その他さまざまな料理のレストランが軒を連ねている。それも狭い通りにオ−プンテ−ブルを出しているので通行人は狭い通路を通る羽目になる。その中を通っていると、左右から盛んに呼び込みの声がかかる。「寄っていらっしゃい!」などと片言の日本語で呼びかけてくる。
 





賑やかなレストラン街










そんな中に1軒の中華料理店が目に留まる。どうしても食べ慣れた料理に目が向いてしまう。魚の本場の長崎に住む私にとっては、なんとなく海鮮料理に目が行かない。案内されて店内に入ると、お客は欧米人のカップルがいるだけである。あれだけ種類多く料理を取り寄せて、果たして食べきれるのだろうか? そんな余計な心配をしながら席に着く。示されたメニュ−を見ながら、焼き飯とラ−メン、それにビ−ルを注文する。全部消化できるかな?と少し不安になりながら……。
 

ビ−ルで喉を潤していると、料理が運ばれてくる。見ると、やはりボリュ−ムたっぷりで圧倒されるほどである。味もまあまあで、これならイケる。ゆっくりと時間をかけながら食べ進む。例のカップルを見ると、案の定料理を持て余してかなりの分量を残している。中華もそうだけど、外国での料理はよほど気をつけて注文しないと食べ残すことになる。そういう私もすでに持て余し気味で、お腹は満腹状態になる。もったいないが焼き飯を少々残すことにする。 


満ち足りた気分で外に出ると、路傍のテ−ブルにはお客が座って思い思いの料理をおいしそうに食べている。この通りは人々の胃袋を満たすベルトコンベアみたいな感じがしてならない。そんな思いを抱きながら、夕暮れの道をホテルへと戻る。



(次ページは「ベルギー市内観光編」です。)










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