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   N0.5
(&ルクセンブルク)




6.アントワ−プ観光
 
4日目。6時半起床。窓から見上げる空は、今朝も快晴だ。今日はアントワ−プへ日帰り観光に出かけるので、早目に準備する。朝食は7時からとのことなので、それを待って食堂に出かける。中に入ると、テ−ブルの上には食事が一人前ずつきれいに配置されている。適当なテ−ブルについて食事を始める。ここの朝食はホテル料金に込みだが、少々貧弱過ぎる。フランスパンとクロワッサンがそれぞれ1個ずつと、長いハムとチ−ズが1枚ずつ、それにコ−ヒ−というあっさりしたもの。別料金とはいえ、これまでの朝食とは大違いだ。それでも一応お腹を満たし、アントワ−プへの期待に胸をふくらませながらホテルを後にする。
 

中央駅へ向かっていると、その真ん前の大通りで自動車の衝突事故が起こっている。交差点の出会い頭の衝突のようだ。双方の前部ボンネットがぐしゃりとつぶれる中破ぐらいの事故だが、人命には異状がなさそうだ。悪いが、現場写真を1枚撮らせてもらう。
 





 正面衝突!
 中央駅前にて









コンコ−スの時刻掲示板を見て発車ホ−ムを確認し、地下ホ−ムへ下りると、間もなく滑り込んできた7時56発のIC列車に乗り込む。車内はブル−ジュ行きの時のように貸し切り状態とはいかないが、混雑もなくゆったりと座れる。アントワ−プも中央駅から列車で40分の距離にあり、日帰り観光が十分できるところである。






 中央駅地下ホーム










車窓に流れる田園風景をのんびり眺めているうちに、列車はアントワ−プ中央駅に到着。駅のホ−ムは、赤い鉄骨で組まれたカマボコ型の屋根で覆われ、採光がいいのでとても明るく感じが良い。






アントワープ中央駅ホーム
 









アントワ−プのこと
ここアントワ−プは人口50万人の町でオランダ国境に近いベルギ−北部に位置する。15世紀から商業・金融の中心地として栄えてきたこの町は、ヨ−ロッパ最大のコンビナ−トを形成するアントワ−プ港を抱え、世界有数の港として今もなお名高い。跳ね橋が点在するこの巨大な港は産業港であると同時にクル−ズ船の寄港地としてもヨ−ロッパ1、2を争うほどになっている。
 

またこの町はダイヤモンドの研磨・取引の世界的中心都市として輝きを放っており、4つのダイヤモンド取引所と1500のダイヤモンド関連会社が集中して何千もの加工職人がハイレベルの技術を競っている。この産業は、国内経済においても重要な部位を占めている。
 

この町はまた芸術面でも欠かせない存在感を示している。というのは17世紀のバロック期最大の画家ル−ベンスをはじめ、その弟子たちやフランドル派と呼ばれる多くの画家たちが活躍し、今なお世界各地から芸術家の卵たちが集い寄るという。何十もの美術館がこれらの文化遺産を今に伝えている。
 

このようにアントワ−プは、港・ダイヤモンド・美術・文化を中心とした活気あふれる街で、ベルギ−の歴史・経済・芸術面で欠かせない重要な地位を占めている。


市内中心部へ
ホ−ムから階段を下りてコンコ−スへ出る。そこは歴史を感じさせる趣のある駅舎で、高いド−ム型の天井と時計台がひときわ目を引いている。それもそのはず、この建物は国の重要文化財に指定されている古い歴史のあるもので、1895年から10年間かけて建てられたという。駅舎とは思えない、何か劇場を思わせるような雰囲気である。
 








アントワープ中央駅
駅舎の内部
国の重要文化財に指定
 















ここでも得意の貸し自転車を利用しようと、まずはインフォメ−ションを探す。案内板の指示に従って行くと駅舎の外になっている。駅舎の裏手に隣接する動物園は、世界でも最も歴史のある動物園(1843年に創立された世界最古の動物園で、750種類6000頭以上の動物がいるという。)の一つとして挙げられるそうだが、その入口門の横にあるチケット売り場の中に案内所がある。ところが中に入って尋ねると、観光案内の係はまだ来ていないという。そこで、その係に貸し自転車のことを尋ねると、自分はチケット売りの係なので、何も知らないという。これでは観光案内の係を待つしかない。
 

9時というのにまだ係は来ない。所在なく時間待ちしていると、ようやく係の女性が出勤する。そこで早速、貸し自転車のことを尋ねると、この駅にはなく、徒歩で20分ほど離れたシュヘルド川に近い街の中心部にあるという。これでは私にとって用をなさない。駅が発着点でなければ意味がないのだ。そこで自転車は断念し、街の中心部にあるノ−トルダム寺院への行き方を尋ねる。すると、地下に下りてメトロに乗り、フルン広場で下車すればよいと教えてくれる。
 

メトロ(地下鉄)といっても地上も走るトラム(路面電車)である。それに乗ってしばらく走ると地上に出る。窓外の様子をうかがうと、広々とした郊外らしい風景が広がっている。街の中心部がこんな様子ではないはずなのだが……と疑問がわいてくる。そこで乗客の一人にノ−トルダム寺院はどちらの方向かを尋ねると、通り過ぎた後ろの方だと教えてくれる。しまった! うっかり乗り越してしまったのだ。
 

そこで次の停留所であわてて下車する。そこはBerchemという電停である。反対側の停留所に行くと婦人がいるので、再び寺院への行き方を尋ねる。すると、ここから3つ目の停留所で下車すればよいと教えてくれる。3駅も乗り越していたのだ。間もなくやって来たトラムに乗って逆戻りし、地下にもぐってすぐのフルン広場で下車。


フルン広場・ノ−トルダム大寺院
地上に出ると、見上げる向こうに高い尖塔が見える。誰にも聞かなくても、あれが大寺院であることはすぐに分かる。そちらへ向けて歩き出すと、ちょっとした広場に出る。これがフルン広場で、すぐ目の前にはノ−トルダム大寺院がそびえている。広場の中央にはル−ベンスの銅像が立ち、それ以外には何もない殺風景な広場である。
 





フルン広場
中央にはルーベンスの像
目の前にはノートルダム寺院








この広場を通り抜けて大寺院の正面へ回ると、目の前に、かつてはアントワ−プ港に入港する船のよい目印になったという高さ123mの塔が天を突くようにそびえている。この寺院は1352年から200年の歳月をかけて建設されたそうで、ベルギ−国内随一の大きなゴシック教会だという。そしてこの内部にはル−ベンスの最高傑作とされる数枚の祭壇画が飾られている。夜になると、この寺院全体がライトアップされ、夜空に美しい姿を浮かび上がらせている。
 















 ノートルダム大寺院の正面



















 ノートルダム寺院の夜景。その向こうにシュヘルド川が見える。(観光パンフレットより転載)


開門は10時からとのことで、入口前には参観者がぼつぼつ集い寄っている。ちょうどそこへ、寺院の関係者がやって来て入口の鍵を開けて中に誘導してくれる。真っ先に中に入ると、人気のない広い空間には静けさと厳粛な空気がただよい、思わず厳かな気分にさせられる。中央に進むと、その雰囲気にひたるように静かにたたずみながら前方の中央祭壇に目を凝らす。するとそこには何人もの天使が閃光のような後光を伴いならがら舞い降りたかのように、中央祭壇は燦然と輝いている。それは感動的な美しさで、何か神秘的なものさえ感じさせるようだ。 






 燦然と輝く中央祭壇










何本もの大きな支柱に支えられた寺院内の立体空間は驚くほど広く、ここにたたずんでいるだけで、私の狭い心を無意識のうちに押し広げてくれるようだ。この空間の感じを写真に収めようと、アングルを選びながら写して回る。
 





 広いフロアの向こうに
  見えるのは玄関入口










 大きな支柱に支えられた広い空間には厳かな雰囲気が・・・


祭壇の前に進むと、左右の両袖には有名なル−ベンスの祭壇画が飾られている。向かって右側にはキリストが十字架から下ろされている光景を描いた「キリストの降架」が、そして左側には十字架に掛けられている光景を示す「キリストの昇架」の絵が掲げられている。いずれも3枚からなる見開きの大絵画である。その精緻な画面には凄味と迫力がただよっている。これらは彼の30代の傑作として名高い絵画である。これと40代終わりに仕上げた「聖母被昇天」など代表作がそろっている。
 

 ルーベンスの傑作  「キリスト降架」



   同 「キリスト昇架」


ル−ベンスが活躍したのは17世紀で、彼が生涯に描いた作品は油彩画だけでも2000点以上に上り超大作も多い。生前から名声を博した彼は100人ぐらいの大勢の弟子を抱えていたのではないかとの見方もある。彼らに下図を与えて描かせ、必要に応じて自ら加筆するという方法で大作を仕上げた。その一方で、10年ほど有能な外交官として奔走した別の顔を持つパワフルな巨匠でもある。
 

ぐるりと寺院内をめぐっていると、細かな絵柄が描かれたステンドグラスの窓があちこちに設けられ、それらが陽光に映えて鮮やかな色合いの雰囲気を寺院内にただよわせている。これらの幾つかを写真に収めながら、広い寺院内を周遊する。






美しいステンドグラスの窓















寺院内を華やかに彩るカラフルなステンドグラス












(次ページへつづく・・・)










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