9.キジル千仏洞・天池……339の石窟・鳩摩羅什・海抜2千メ−トル
の湖
シルクロ−ドの旅7日目。昨日は13時間かけての砂漠公路縦断の旅であったが、さほど疲労感は残っていない。今朝は満ち足りた気分で6時に起床。空は晴れである。今日の日程も忙しく、郊外のキジル千仏洞やスバシ故城などをめぐった後、空路ウルムチへ移動する。この旅もいよいよ終盤にさしかかったというわけだ。
クチャの位置
クチャの町
ここクチャ(庫車)の町は、天山山脈の南側を東西に走る古代シルクロ−ド・天山南路の最大のオアシスである。紀元前1世紀、亀茲国(きじこく)と呼ばれる白人系の王国で人口8万の町だったらしいが、東西貿易の中継地として通行商人から関税を徴収するなどして栄えた所である。しかし、その繁栄ぶりを狙って北方の騎馬民族匈奴が侵攻し、その一方で東方からは漢民族が押し寄せるなど、大きく翻弄されることになる。
4世紀になって7万の大軍を送った前秦に攻め込まれて陥落。その略奪品の金銀財宝はラクダに乗せて長安へ運ばれたそうだが、その2万頭にもおよぶラクダの列は天山南路を埋め尽くしたという。その後、唐末にはウイグルに支配されることになる。
また仏典翻訳に生涯を送った名僧・鳩摩羅什の出身地として知られるこの町は、現在の人口40万人、その87%がイスラム教徒のウイグル人で占められている。幸せをもたらすという青色を好む町で、わが国の宮廷音楽、雅楽に大きな影響を与えた亀茲音楽や踊り、それに豊かな果物が大きな特色となっている。また郊外には仏教遺跡のキジル千仏洞やスバシ故城などがあり、金曜日には大バザ−ルが開かれる。
残念なことに、旅行日程ではこの町を観光する時間はなく、郊外のキジル千仏洞を中心に観光するのみである。このホテルは広い敷地に幾つかの建物と共存しており、その離れのレストランへ敷地を横切って朝食に出向く。その途中のガ−デンには木々の植え込みがあって鬱蒼と茂っており、その中には果実がたわわになる杏の木があったりして、旅人の目を楽しませてくれる。
たわわになっている杏の実
キジル千仏洞への道のり
バイキング式の中華料理で朝食を済ませ、身の回りを整えると玄関へ。8時半、この町から西北へ75kmの位置にあるキジル千仏洞を目指して出発する。町を通り抜けて郊外に出ると礫砂漠が広がっており、その向こうにはチャ−ル・タグ(不毛の山)と呼ばれる不毛の珍しい堆積地層の山地が横たわっている。まさにそこは草1本見当たらない赤茶けた奇岩の山並みで、奥に進むにつれ、まるで月世界に来たかと思わせる奇っ怪な風景が展開する。その途中でフォトストップとなり、しばしこの奇岩風景を観賞する。
礫砂漠が広がる
珍しい堆積地層の山
珍しいヤルダン地形。風の作用で削られてテーブル台のような地形ができる。 |
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