101ビル見物
バスは圓山大飯店を後にすると、今夜の宿・リバービューホテルへ向かう。今夜はこれから大事な行動計画がある。それはツアーの日程には組まれていない101ビルの個人見物である。台湾へ来たからには、このビルに上らずして帰国は考えられないと意気込んでいる。チェックインが終わって部屋に荷物を置くや否や、再び玄関に出て車に飛び乗る。帰途につこうとする我らが小型バスに便乗して101へ向かう。
このビルはギネスブックにも登録されている世界一ののっぽビルで、信義区にある超高層ビル。その高さ508m、地下5階・地上101階からなるこのビルは、7年間の工期を経て、2004年の秋に世界一の超高層建築物として竣工したそうだ。施工は日系企業が中心で、地震や台風の多い台湾だけに防震、暴風対策に力を注いだ設計になっているという。101階ということから、そのビル名が付いている。このビルは主に金融・IT企業などが入るオフィスとなっている。
ビルの玄関前に到着すると、見上げる夜空に電光飾に彩られたビルの塔が立ちふさがるようにそびえていて、その先端は夜の闇に消えて見えない。
そびえる101ビルの夜景
展望台へのエレベーターは5階にあるというので、まずは広々とした玄関ロビーに入ってエスカレーターで上り始める。5階までの各階はショッピングモールやレストランなどの施設が並んでいる。各フロアーには様々な高級ブランド品を並べたおしゃれなショップが並んでおり、フロアーに下りては半周して、また次のエスカーレーターに乗るといった具合である。
101ビルの1階ロビー
どうしてこんな手間暇がかかることをさせるのだろう? なぜ1階にエレベーターが設置されていないのだろう? そんな素朴な疑問がわくのだが、よく考えてみると、これは商業政策上のことなのだ。つまり、入場者のほとんどが1階からエレベーターで展望台へ上ってしまえば、5階までのショップはすべて素通りされてしまうことになり、商売にならないと言うことなのだろう。これはどこでも採用されている常套手段なのだ。
こうしてエスカレーターの乗り継ぎを繰り返しながら5階まで上りあがる。このフロアーに展望台行きのエレベーターがあり、その入場チケットが売られている。料金は大人350元(約1400円)、12歳以下の子供320元である。現在の時刻は夜の8時ごろだが、人出はそれほど多くなく、割りと空いている。
チケットを購入して、いざエレベーターへ。内部はやや広い空間になっており、案内嬢と一緒に乗り込む。やがて振動もなく上昇し始めると、室内の照明が落とされて暗くなる。おやおや?と驚いていると、プラネタリュームさながらに見上げる天井には見事な星空の演出がなされている。流星が流れ、天の川がきらめき、北斗七星も見える。う〜ん、なかなかやる〜と、その素敵な演出効果に目を奪われる。
演出効果満点のエレベーターの天井の星座
側面には階数電光板があり、エレベーターが上昇していくスピードが分かるようになっている。それを見ていると、あれよあれよと言う間に89階の展望台まで、わずか37秒で上りあがってしまう。これは世界最速のエレベーターだそうだが、これも世界初となる気圧制御システムが設けられているので、耳の異常感はほとんど感じない。この優れたエレベーターは、なんと日本の東芝製なのだ。
エレベーター内には階数電光板が
89階でエレベーターを降りると、周囲全面が大きなガラス張りになった円形大展望台のスペース空間が広がっている。ここから眼下に広がる大景観を俯瞰できるようになっている。このフロアーでは無料の音声ガイド機が貸し出されており、日本語版もあるので、これを聞きながら眼下に広がるパノラマ景観を見下ろすことができるのである。(音声機の貸し出しには身分証明か1000元を預ける必要がある)
これを借りてイヤホーンを耳に当て、案内を聞きながら眼下に広がる台北の夜景に眺め入る。街の灯りがいやに小さく見える。展望台があまりに高くて景色が遠過ぎるせいだろうか? それとも灯りが少ないのだろうか? そのためか、100万ドルの夜景とまではいかないようだ。ここには数台の望遠鏡が設置されているので、これを利用すると迫力のある夜景が見えるのかもしれない。この音声ガイドは幾つかに区分けされた展望区域に従って順次案内が切り替わるようになっている。一周の展望を終わるのに10分以上はかかる。
89階の展望一周を終わるとイヤホーンを返却し、さらに91階(高度390m)の屋外展望台をめざす。ここへ上るには、さらに100元(400円)の追加料金が必要だ。これで合計450元の料金となる。チケットを買うと、今度は徒歩で階段を上って行く。わずか2階分の階段を上るだけだから、少しも疲れることはない。出口の所には係員がいて誘導してくれる。
101ビル91階の表示
高さ390mの屋外の展望台に出ると、静かな夜なのか意外と風当たりは少ない。この高さの建物上で外気に触れるのは初体験である。空を見上げると、この階より上の階層がグリーンの光を輝かせながら伸びている。その最先端は明るい光を放っている。
101ビルの先端部分
展望台の周囲には高いフェンスが張り巡らされており、この金網越しに下界の景色を眺めることになる。人間て、高い所に上るのが好きな動物なのだ。そのフェンスの隙間からカメラを握った手を伸ばして撮影を始める。適当に連続写真を撮ったのだが、うまく撮れているのだろうか? |
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