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台湾高速鉄道(新幹線)試乗
台湾の旅、最終日の6日目。今朝は特別早く5時に起床。外はまだ真っ暗である。だが私にとっては大事な行動計画がある。それは今年2007年1月に開通したばかりの台湾新幹線に試乗体験をすることである。


自由時間のないツアーなので、なかなか自由行動が取れない。だから、果たして試乗する時間が取れるか否かが問題なのだが、運良く今朝の出発が10時前ということなので、その実現ができそうだ。この実行に当たっては旅行出発前にネットで新幹線の時刻表と料金を調べ、事前計画を立てている。この時間的余裕なら、その計画どおりに行けそうだ。


つまり、台北発の一番列車(6:30分発)に飛び乗り、2駅先の桃園駅まで行き、そこからとんぼ返りして台北へ戻るという計画である。これで行くと桃園駅到着が6:52分。そこから台北行き8:10分発に乗れば台北に8:30分に着くという計算である。これなら出発までに十分間に合う。


そこで、まずはお茶を沸かして喉を潤す。次いで柔軟体操でウォーミングアップだ。準備ができるとフロントに電話してタクシーを呼んでもらう。これに飛び乗り、早朝の暗い道路を台北駅へと向かう。距離は近くて間もなく到着。料金は90元(360円)。早朝の台北駅は人気もなく、広いコンコースはがらんとしている。


早朝の台北駅コンコース

高速鉄道の案内表示に従って進んで行くと、チケット売り場に出る。ところがまだシャッターが下りて窓口は閉ざされたままである。すでに5時半を過ぎているのに発売はまだなのだろうか? 付近に警備員がいるので尋ねてみると、この売り場は6時に開くという。一番列車は6時半なのに間に合うのだろうか?


高速鉄道(新幹線)の案内表示

仕方なく付近をうろついたり、ベンチに腰掛けたりしながら時を過ごす。様子を見ていると、シャッターの前に人が並び始めている。そこで腰を上げ、その列に並ぶことにする。6時になってようやくシャッターが開き、営業が始まる。チケットの自動販売機もあるのだが、私の場合はシニア割り引き(半額になる)を受けたいので、窓口で買う必要がある。幾つか並ぶ窓口の右端が割り引きチケット販売の専用窓口になっている。窓口に掲示してあるロゴマークを見ると、幼児、妊婦、身体障害者、高齢者の表示がある。


高速鉄道当日券売り場


高速鉄道のチケット自動販売機

並んでいると、係員が通りがかったのでシニア割り引きのことを尋ねてみると、パスポートを提示くださいとのこと。順番が来て女性の係に割り引きを申し出ると、流暢な日本語で応対してくれる。パスポートを提示し、持参した時刻表のプリントを示しながら、台北6時半発(南行き)と桃園駅発8時10分発(北行き)の普通席チケットを往復申し出る。台北〜桃園駅間の料金は片道160元(640円)、その往復分で320元のことろを半額割引で160元である。


桃園行きのチケット

チケットをゲットし、さあ、いよいよ乗車だ。意気揚々と改札口を通り、地下のホームへ下りようとすると、まだクローズされて通れない。あと10分待てという。仕方なくベンチに座って待つことに。発車10分前ぐらいになって、やっと通路が開門され、急ぎ足で地下ホームへ。そこにはすでに列車が入っており、7号車を探して乗車する。


改札口の電光掲示板


高速鉄道の改札口


700T系のスマートな車体

車内に入ると、中はがらんとして誰一人の乗客もいない。これは私一人の貸し切り状態ではないか! 出発までに他の乗客が来るのかな?と思って心待ちしていると、とうとう人の姿は見えず、広い車内にぽつねんとして過ごすことに。座席シートは、それぞれ片側2列と3列になっている。車両は日本製とのことだが、少し高級感に欠ける感じで、自慢の新幹線にしては何かもの足りない感じである。


新幹線の列車内の様子(普通席)

定刻の6時30分、列車は静かにホームを滑り出す。次の板橋駅までは地下になっており、しかも直ぐの距離にあるのでスピードは上がらない。板橋駅を過ぎて間もなくすると、地上へ出る。ほっとしながら早朝の車窓風景を眺め入る。高層マンションなどの家並みが見えたり、川があったり、工場などの建物も見える。


アパート群が見える


川が見えてくる


工場の倉庫か?


桃園駅が近づいてくる

おや、早速車内販売のお嬢さんのお出ましだ。カートには飲み物やスナック類が乗せてあり、スタイルは日本と全く同じである。弁当はないようだ。


新幹線の車内販売。スナックと飲み物のみでお弁当類はなし。

列車はほとんど振動もなく、快適に走行して乗り心地は上々である。だが、次の桃園駅も距離間隔が短いので、あまり速度が上がらない。時速300kmは出るはずなのだが・・・。間もなく再び地下にもぐり込み、外の風景はあっという間に消え去ってしまう。地下に入ると、間もなく桃園駅到着である。台北駅からここまで、わずか20分の乗車時間だが、新設ほやほやの台湾新幹線の乗り心地や様子が見聞できたというわけだ。


下車しようと車内通路ドアの前に立っても自動的には開かない。ドアの横にある「開」のボタンを押す必要があるのだ。これは入る時も同様である。この点は日本の場合と違うのだが、これは立ち席になってドア付近に立った際に、自動で開かないようにとの配慮かららしい。


通路ドアは「開」のボタンを押さないと開かない

ホームに降りると、係員以外に乗客の姿は見えず、ピカピカの美しいホームを通って地上に上がり、駅のコンコースに出る。ここもピカピカで広いスペースが広がって気持ちが良い。売店はないのかと係員に尋ねると、コンコースの片隅にただ1軒のファーストフード店があるのみ。人気もなくて、なんだか寂しい感じだが、この駅は桃園国際空港まで車で10分程度と至近距離にある。台北からだと40分はしっかりかかるはずだ。


ピカピカの桃園駅ホーム。乗降客は私1人だけ。


桃園駅のコンコース。広々として感じがいい。右前方に案内カウンター。

駅の周辺一帯は空き地が目立つ未開発地帯である。これからホテル、商店街などのビルや商業施設が立ち並ぶのだろう。係の女性が立っているので、いろいろ尋ねてみようと話しかけると、日本語はダメで、少しの英語を話すのみという。「あちらの案内係が日本語を話しますよ。」というので、案内カウンターに行ってみる。


カウンターには若い女性のスタッフが座っているのだが、私以外に乗降客もなく開店休業の状態で持て余している様子。そこへ私が飛び込んで本日初の案内客となる。愛想の良い彼女は流暢な日本語で応対する。大の日本ファンだそうで、日本の文化や料理などが大好きだという。これまで何度となく日本を訪れており、北は北海道から東北、関東、中部、福岡まで周ったという。日本語は台北の専門学校で勉強したという。イントネーションも日本人と変わらず、じっと聞いているだけでは台湾人とは分からないほどの日本語上手である。


それではボーイフレンドは日本人なの?と尋ねると、苦笑しながら「いえ、実は台湾人なんです。」と答える。「できれば日本人と結婚したいのですが・・・。」とのたまう。おやおや、そこまで日本びいきとは・・・。「近いうちに、また出かけます。」と、にっこり笑いながら話す。自宅通勤で、この駅の近くだという。


この可愛いお嬢さんと、すっかり話し込んでいるうちに、時間はいつの間にか過ぎ去り、出発時刻の8時10分が迫ってくる。そこで別れを告げ、地下のホームへ移動する。定刻に到着した台北行き列車へ乗り込み、車上の人となる。この車両もガラガラで、わずかに後方に2人の乗客が見えるだけである。予定どおり8時30分に台北駅に到着し、私の往復40分間の短い新幹線の旅は終わりとなる。


私が試乗した台北〜桃園駅の区間は地下とトンネルが多く、窓外の景色をのんびり眺めながらの列車の旅とは行かず、また駅の間隔が短い区間なのでスピードアップもできない様子であった。やはり、終点の左営駅まで乗らないと台湾新幹線の醍醐味は味わえないのかもしれない。それは次の機会までお預けである。


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<台湾高速鉄道(台湾新幹線)について>
台湾新幹線の総事業費は4806億台湾ドル(約1兆8千億円)。日本からは新幹線の車両技術を輸出・現地導入している。


当初の営業は2007年1月5日だが、台北への乗り入れ工事が遅れ、板橋〜左営間で行われた。開業予定は2005年10月であったが、手抜き工事の露見、システムの混乱、相次ぐトラブルなどの発生で再三延期され、2007年3月から台北乗り入れで全線開通となった。


・全長345km
・通過都市14県市
・最速到達時間:台北〜左営間を90分
 最速の在来線特急自強号で所要時間3時間59分を要していた
・最高速度:時速300km
・駅の数:台北-板橋-桃園-新竹-台中-嘉義-台南-左営
・車両は「普通席」と「ビジネス席」の2種類
・割り引き対象者:12歳以下の子供、65歳以上の者、身体障害者などは
 正規料金の半額



台湾高速鉄道の列車は700T系。これは日本のJR東海とJR西日本の共同開発によって作られた新幹線700系をデザイン基準としている。建設工事契約に当たっては、フランス・ドイツによる欧州連合と日本連合とが競合したが、低コストの欧州連合が落札。しかしその後、情勢変化もあって、最終的に車輌は日本、配電・制御は欧州、土木工事は国際入札という結果になった。








 台湾高速鉄道の路線図


















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台北駅の玄関に出てタクシーを拾い、ホテルへ戻ったのは8時45分ごろ。往きとルートが違ったので料金は110元(440円)と少し高い。とにかく、予定の行動を無事に終えてほっとしながら、朝食の食堂へ直行する。中華バイキングでしっかりお腹を満たしながら、最後のデザートに美味しい台湾バナナをいただく。これが最後の食べ納めと、じっくりそのコクのある台湾バナナ特有の味を賞味する。出発時間の9時50分までには余裕たっぷりである。


龍山寺
部屋に戻って一息つくと、間もなく出発の時間である。今日は最後の台北市内観光である。最初に向かうのは台北で最古の寺院とされる龍山寺である。バスから降りて門前に立つと、目の前には装飾が施された中国風の反り返った甍がそびえて歴史と風格をただよわせている。


台北最古の龍山寺の門

この寺院は1738年に建立された台北随一の古刹で、観音菩薩をはじめ数々の仏が祀ってあり、また面白いことに媽祖などの神様も同居して祀ってある。だから願い事するのには神仏同時にできるので便利この上ない。これなどは台湾らしい工夫なのかもしれない。


門をくぐって中に入ると、多くの参詣者が線香の煙をくゆらせながら熱心にお参りしている。みんな精一杯の願い事を心に秘めながら、その実現のために懸命に念じているのだろう。狭い境内には大きな香炉や花束が置かれ、線香の煙が立ち込めている。本堂の祭壇はきらびやかで、その中央に安置された菩薩像が参詣者を慈しむように見守っている。


祭壇に向かって懸命に祈りを奉げる


本殿と境内


線香をくゆらせながら祈りを奉げる


きらびやかな祭壇に菩薩像が・・・

この寺院では無料のおみくじが引けて自分の運勢を占えるのだが、その手順がやっかいでなかなか簡単には引けないのである。境内の手前に祭壇があり、その前に置かれた箱の中から「神杯」と呼ばれる赤い木片(写真参照)を2つ1組で取り出し、これに自分の願いを込めて地面に放り投げる。


これが「神杯」の木片。2つとも表になっている。

これが「表・表」の場合は不可でクジ棒は引けず、「表・裏」になった場合、初めてクジ棒を引けるのである。「表・裏」にならなければ、何度でも繰り返しすことになる。「表・裏」が出たところで初めて箱の中の細長いクジ棒を引けるのである。この棒の端には小さく番号が記されており、その番号を覚えてクジ棒は箱に返す。


左が「裏面」、右は「表」。こんな形になれば次の手順へ進める。

そこで再び神杯を放り投げ、ここで「表・裏」にならなければ、覚えたクジ棒の番号は無効となり、再度初めから繰り返すことになる。「表・裏」になる→クジ棒を引いて番号を覚える→「表・裏」にならい→最初からやり直し〜と、「表・裏」になるまで何回もクジ棒を引き直すことになる。


うまく「表・裏」になる→クジ棒を引いて番号を覚える→神杯を放ってうまく1回で「表・裏」となる→その番号のおみくじ箱からおみくじを引けることになる。横手には番号順に並んだおみくじ箱がずらりと並んでいる。そこから該当番号の箱を探し、おみくじを取り出すのである。私の場合は、これを3回繰り返して、やっとおみくじが引けることになる。


そのおみくじ札は短冊型の紙片になっているのだが、運勢の内容はびっしりと漢字で書かれていて、我々には読解できない。すぐ横の窓口に持参すれば、係のおじさんが教えてくれるそうだが、ガイド氏に頼んで読解してもらう。それによると私の富の運勢はまあまあと言うことらしい。これは無料のおみくじながら、簡単にはおみくじを引かせてくれない工夫の数々が施されていて、やっかいなことだが結構面白い面がある。意地になって何度も繰り返したりすることになる。



(次ページへつづく・・・)











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