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     N0.3



スロベニア編



旅のコース





トリエステの朝
バルカン半島の旅、3日目。十分に睡眠が取れて朝5時半起床。昨夜の雨が気になって空模様を確かめると、雨の気配はなさそうだ。今日はブレッド湖観光があるので雨になれば台無しになる。ほっと安心したところで、眠った身体をウォーミングアップし、今日の行動に備える。


本日の行動予定は、スロベニアの国境を越えてヨーロッパ最大規模のボストイナ鍾乳洞を観光、その後、絵のように美しいブレッド湖を観光して、首都リュブリャナへ向かう。


身支度を整えると、朝食前に明るくなった付近の散策に出かける。空は青空が広がって上々の天気である。この分だといい旅ができそうだ。ついてるぞ〜! 足取り軽く、まずは近くのトリエステ中央駅へ向かう。同じく散策中の仲間のご夫妻と同行する。早朝のことで、通りは車も人影も少なくひっそりとしている。ふと路地に目をやると、道路を埋めるように左右行儀良く並んだ駐車の列が眠っている。そうか、今日は週末土曜で休日なのだ。


土曜の朝、ストリートは人気もなくひっそりとしている。


横手の路地には駐車の列が・・・

少し歩くと、その先にクリーム色の風格のある建物が見えてくる。これがトリエステ中央駅の駅舎なのだ。きれいなアーチ型の窓が並んで歴史を感じさせる。コンコースに入ると高い天井ですっきりした感じのスペース空間が広がっている。壁面には装飾彫刻が施されて重厚な感じがただよっている。


トリエステ中央駅の駅舎


天井の高い駅のコンコース

ホームに出ると、グレーのスマートな列車が静かに止まっている。どこ行きになるのだろう? カッコイイところを見るとこれは多分EC列車なのかも・・・。この駅を通って国境を越えれば隣国スロベニアの首都リュブリャナへ通じている。ここからリュブリャナまで普通列車で約3時間の距離である。だが、直行列車は1日1本ぐらいしかない。


ホームにはスマートな列車が静かに止まっている

駅を出ると、今度はきびすを返して反対方向の海岸を目指して歩いていく。宿泊ホテルの前を通り過ぎて少し進むと右手に波止場が見えてくる。その沖にはベタ凪の静かな海が広がっており、岸壁に係留されているボートもびくとも揺れない静けさだ。実に穏やかで気持ちのいい朝である。



 トリエステの朝の海岸風景。 写真中央には釣り人がのんびりと糸を垂れている。この釣り人が下の写真の赤魚を釣っていた。




おや? 釣り人がいるぞ〜。みると、年配のおじさんが岸辺から投げ釣りを楽しんでいる。いったいどんな魚が釣れるのだろう? 途端に興味がわき、早速「ヴォンジョールノ! フィッシング?」と声をかけながら近づき、のぞいてみる。すると足元の紙袋を指差して、それを見よという。開いて見ると、数匹の型のよい赤魚が釣れている。仕様もない雑魚釣りなのだろうという私の想像は、これで見事に覆されてしまう。袋から1匹を取り出して写真に撮る。


型の良い赤魚が釣れていた

釣り餌は何だろうと見れば、生きたゴカイを使っている。これはなかなか高級な餌を使っているなあと感心しながらじっと見入る。この地でもゴカイ(ムシ)を使うなんて、釣りの世界は何処も同じなんだなあと・・・と、なんだか親しみがわいてくる。海辺の町だけに、釣具屋も揃っているのだろう。


「グラーツィエ! アリヴェデールチ!」と別れを告げて立ち去る。そして今度は、離れた位置で釣っているもう1人の釣り人のおじさんの場所へ移動する。この老人は沖合いへの投げ釣りではなく、ただ岸壁から糸を垂らしているだけである。これじゃ大した物は釣れないだろうにと思いながら近づくと、タイミングよく魚がかかったようだ。しなる釣竿の先には銀色に輝く型のよい魚が跳ねている。それを手繰り寄せて写真に撮らせてくれる。何という魚なのだろう? この岸壁付近には、結構釣りを楽しめる魚類がいるようだ。ここも餌はゴカイを用意している。


銀色に輝く魚が釣れた

朝の散策はこれで終わりにし、ホテルに戻って朝食とする。バイキング料理の朝食を済ませ、部屋に戻って少ない荷物をまとめると出発準備OKである。


トリエステの観光名所・ミラマーレ城
フロントでトリエステの一番の見所はどこかを尋ねてみると、パンフを見せながらこのミラマーレ城(Miramare)を教えてくれた。ここは街の北西6kmの郊外にあり、トリエステ中央駅からバスも出ているという。海岸に面した白亜の城で、城内は歴史博物館になっているという。時間があれば訪ねたいところだ。


ミラマーレ城(パンフより転載)

なお市内にはあまり見所はないようで、現地ツアーなども存在しない。個人でバスやタクシー、徒歩などで観光する以外にないようだ。


国境を越えてボストイナ鍾乳洞へ
8時半、ホテルを出発した我らがバスは、5km先のスロベニア国境へ向かう。このバスの車体はスロベニアのナンバー、ハンサムなドライバーはボスニア出身、そして現地スルーガイドの若い女性はクロアチア出身と、なかなか国際色豊かである。


我らがチャーターバス。これで旅の最後まで走破した。

出発から約30分足らずの走行でスロベニア国境である。国境といっても、スロベニアは幸いなことにセェンゲン協定国なので、何のチェックもなくフリーパスである。

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東西欧州の往来自由化、シェンゲン協定をチェコなどに拡大
 【ツィタウ(ドイツ東部)=三好範英】国境での出入国審査を免除することを定めた欧州連合(EU)のシェンゲン協定の範囲が07年12月21日午前0時(日本時間同8時)から、東欧諸国を中心とした9か国にも拡大された。これにより、東西欧州間の往来がパスポート審査なしにできるようになった。

 
これまでの協定参加15か国に新たに加わったのは、ポーランドやチェコ、ハンガリー、スロバキア、スロベニア、エストニア、ラトビア、リトアニア、マルタの計9か国。

 
同日午前9時から、ドイツ、ポーランド、チェコ3国の国境地帯にあるドイツの町ツィタウの国境検問所で、3か国の首相らが参加して記念式典が行われる。東欧諸国との間の出入国審査がなくなることで、ドイツ内では、国境を越えた犯罪者の流入など治安面での懸念が強く、独政府は国境警備隊のパトロール強化などの対策を取る方針。

 
シェンゲン協定は1985年に独、仏、ベネルクス3国の計5か国により調印された。その後、EU加盟国13か国にノルウェー、アイスランドを加えた15か国に拡大していた。

(2007年12月21日  読売新聞記事より)

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国境事務所を横目で見ながら通過し、ハイウェーを北へ突っ走る。車窓には山あいの緑の風景が流れて行く。すでにスロベニアに入国しているのだ。


スロベニア国境検問所を通過中


ボストイナへ向かうハイウェーの風景


同 上

スロベニアのこと
正式国名はスロベニア共和国、通称スロベニアは中欧に位置し、首都はリュブリャナ。人口は200万人で旧ユーゴスラビアから独立した。西にイタリア、南と東にクロアチア、北東にハンガリー、北にオーストリアと接し、南西でアドリア海に面している。スロベニアはイタリア(特に北イタリア)、オーストリアといった西ヨーロッパ地域に隣接しており、極めて西ヨーロッパに近いという性格を有している。宗教はカトリック70.8%、ルター派1%、イスラム教1%。国土面積は四国とほぼ同じの20,273平方キロメートル。




産 業
農業では、小麦、トウモロコシ、テンサイ、ホップ、ブドウ、畜産では牛や豚、羊などを生産。地下資源では石炭が豊富で、ほかに水銀、鉛、亜鉛を産出。工業は金属、機械工業が発達し、電子機器や自動車も生産されている。繊維産業も発達し、絹織物の生産が際立つ。神秘的な湖など自然と気候に恵まれ観光客も多い。代表的な観光資源は首都リュブリャナ、アルプス山脈(トリグラウ山、ブレッド、ボーヒニなど)、アドリア海(コペル、ピラン)、カルスト地方の洞窟(シュコツィアン洞窟群、ポストイナ)、温泉など。


歴 史
6世紀ごろに南スラヴ系のスロベニア人が定着し、15世紀にはハプスブルク家の所領となったり、19世紀初頭にはナポレオンの支配を受けている。その後、セルビア・クロアチア・スロベニア王国の成立に加わり、1929年にはユーゴスラビア王国と改称され、1945年にはユーゴスラビア連邦人民共和国となり、1963年に社会主義連邦共和国となった。1991年にはスロべニア、クロアチア、ボスニア・ヘルチェゴヴィナ、セルビア・モンテネグロ、そしてマケドニアの6カ国に解体された。


ボストイナ到着
やがてバスはハイウェーをそれて普通道に入り、山あいの山林の中をしばらく走ってボストイナのパーキングに到着する。


ボストイナへ近づいてきた

出発から2時間の距離で、駐車場には各地から集まった観光団のバスが列をなしている。さすがに人気スポットらしく、大勢の欧米人観光客が押し寄せている。この駐車場の横を流れる素敵な清流にかかる橋を渡って少し坂を上り、洞窟の入口へ向かう。周辺にはみやげ品店やカフェが店を並べている。


各地から集まった観光団のバス(ボストイナ鍾乳洞の駐車場)


駐車場の側を流れる素敵な清流


この川を渡って鍾乳洞へ向かう。観光団の列が続々・・・・。


チケット売り場


入口周辺にはカフェやみやげ店が並ぶ


しゃれたレースを売っている

ボストイナ鍾乳洞のこと
世界で三番目、ヨーロッパ随一の規模を誇る鍾乳洞。スロベニア唯一の世界遺産であるシュコツィアン洞窟群があるが、その続きの一部がボストイナ鍾乳洞である。ポストイナ鍾乳洞があるのは、西部のカルスト地方。石灰岩の大地が水で溶かされてできる特異な地形「カルスト地形」の語源である。水が岩盤を溶かし、地下に川ができ、洞穴を広げ、巨大な鍾乳洞ができた。


この国には鍾乳洞が6000以上もあり、約十カ所が公開されている。ポストイナ鍾乳洞の全長は、約20キロ。そのうち1・7キロが歩いて見て回れる。入場料は、大人19ユーロ(日本円で3200円。08年5月現在)。洞内では原則、写真撮影が禁止されている。


現地ガイドの話によれば、このボストイナ鍾乳洞が世界遺産に登録されないのは多分、あまりに観光化されて自然の姿が多少破壊されているからだろうとのこと。その点で、恐らく登録基準に合わないのだろう。


プロテウス・アンギヌス
この洞穴にはプロテウス・アンギヌス (Proteus anguinus)という人間の肌の色をした“類人魚”が生息しており、ここの名物の一つとなっている。 "ヒューマンフィッシュ" と呼ばれるそうだが、両棲類でサンショウ魚の一種とか。盲目で餌がなくても1年以上は生きられるそうで、寿命は80年〜100年という。絵を見ると4本足の白い生物で、これが洞内の水槽で展示されている。


しかし、ストレスが溜まると不具合になるらしく、2ヶ月に1回は交代して暗黒の自然環境に戻されるらしい。その交代の時期には展示がないらしく、本日は残念ながら生憎とその期間に当たり、空の水槽だけで現物は見ることができなかった。体長は25〜30cmだそうだ。


この写真の生物がプロテウス・アンギヌス

いよいよ鍾乳洞へ
洞内ガイドの都合で、入洞時間が決められている。しばらく待って洞内へ。入口は観光客で混雑している。正面壁には洞内は「撮影禁止」の表示がなさている。入口を抜けて中へ進むと、トロッコ列車のホームになっている。ここから洞穴の奥まで約10分間これに乗って進むのである。撮影禁止なのに、みんな写真を撮っているので、こちらも負けじと撮影する。


建物の中にある鍾乳洞入口


入口を入るとトロッコ列車のホームに出る

長い連結のトロッコ列車に乗っていよいよ出発進行! 薄明かりの暗い洞穴内をカタコトカタコトとスピードを上げながら奥へ進んで行く。時には首をすくめるほど天井が低い箇所を通過したり、壁ぎりぎりの所を走り抜けたり、広い空間に出たり、カーブで揺られたりと、なかなか変化に富んだスリル満点のコースである。洞内は風はないが、走行すると風を切るので少々冷たく感じる。


 (動画)トロッコ列車の様子・・・これは帰りのコースです


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防寒対策について
洞内の気温は通年で常時8℃〜10℃とのこと。旅行出発前に、防寒と水滴対策のためにブレーカーなどを持参するようにとの事前注意があったが、私は薄いビニール合羽1枚のみを持参した。


寒がりの私の体験では、冬服着用のみで特に防寒着などは不要と思う。外のように風はなく、無風状態なので寒くはなく、見物は歩き回るので身体が温まる。ただ、トロッコ乗車の10分間だけひんやりするので、それさえ辛抱すれば普段着のみで問題はない。また降雨などの気象条件の場合、水滴が多くなるかもしれないが、私の場合はほとんど問題はなかった。入口で貸しコートがあるようだ。

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終点に到着して下車すると、洞内ガイドが待機するポイントに集合する。そこには英、仏、独、伊など数ヶ国語のグループに分散して担当ガイドが待っている。われわれは英語のグループに参加して観光することに。そしてグループごとに分かれて引率案内される仕組みになっている。


この洞穴には幾つかの主要な見物ポイントがあり、それぞれ「ロシア山」、「スパゲッティホール」、「コンサートホール」などの名称が付けられている。コースはスロープあり、階段あり、橋ありで当然のように変化に富んでいる。地面は濡れた所が多いのでスリップに注意である。


ガイドが案内しながら、「ノーフラッシュなら撮影してかまいません。」という。それならもっと早くに言ってくれればいいのに、途中まで来てからでは遅い! そう思いながらバチバチと撮り始める。だが、案内灯の薄明かりでは思うように撮れない。


奥へ進むにつれて、さまざまな鍾乳石の自然の造形美が次々に現れて目を楽しませてくれる。天井からつららのように垂れ下がった無数の鍾乳石、鍾乳石の水滴が地底に落ち積もってできる石のタケノコ(石筍)、天井のつららと石筍がつながってできる石柱など、多種多様な地底の造形が幻想の世界を繰り広げている。これまで秋吉台・秋芳洞、沖縄の玉泉洞、それに人吉やベトナム・ハロン湾などの鍾乳洞を見物してきたが、この洞穴はさすがに、それらを凌駕する規模と見事さを備えている。欧州随一と言われるのはもっともなことである。


巨大な石柱


無数の鍾乳石や石筍が見える


見事な自然の芸術


巨大な石筍


石柱の数々・・・



ソーメンのように細く垂れ下がる鍾乳石


巨大な石柱


巨大な石柱と石筍

徒歩見学のコースは約1.7kmの距離で、これを小1時間かけて案内してくれる。英語によるガイドなので、英語圏の観光客はよいが、われわれ日本人にはリスニング力がないと解説はよく理解できないことになる。だが、鍾乳洞の様子は見れば大体分かるので、さほど問題はない。前後して歩く外国人にいちいち出身国を尋ねてみるとポーランドあり、ロシアありで、なかなか国際色豊かである。


コースの最後の地点では「コンサートホール」と名がつく自然の広い空間が現れる。天井の高さ40m、空間の広さ300uで、手を叩くと残響が6秒間も残るという残響効果抜群のスペースである。ここを利用して年間多数のコンサートが催されるそうで、ウイーンのオペラ歌手など世界中の音楽家が集うという。



 これがコンサートホール。広大な広さが分かる。




ここで案内ガイドは終わりとなり解散となる。ホールの片端にはみやげ品店もあり、みんな自由に過ごした後、ホールを出てすぐのところにあるトロッコ乗り場から出口へ引き返すのである。


こうしてトロッコ列車往復(約20分)、徒歩観光約1時間、計1時間半ほどを洞内で過ごし、鍾乳洞観光は終わりとなる。10時発のトロッコに乗車して入ったので、洞穴から出たのは12時ごろである。


昼食はマス料理
鍾乳洞観光を終えると、次は昼食のため少し離れたレストランへ移動する。料理はスープ、マスのムニエルで、これに野菜サラダが付き、デザートは当地名物の焼き菓子ギバニッツァが出されるが、甘い物が苦手な私には手が出ない。飲み物は缶ビール(2ユーロ)を注文する。


これがギバニッツァ



(次ページへつづく・・・)










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