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                No.3
                           (シルクロード)



3.ウルゲンチ・・・・ バザ−ル・金歯のファッション・写真ねだり    
 
ホテルへ
快晴の空の下、出迎えのバスに乗ってホテルへ向かう。気温は二十度でとてもさわやか。空港の近くらしく、すぐにホテルへ到着。二階建ての横長に広がったパッとしない感じのホテルである。割り当てられた一階の部屋に入って旅装を解く。まあ、なんというお粗末な部屋だろう。それに壊れて使い物にならない電話機とラジオがホコリをかぶって棚の上に眠っている。古臭いテレビは電源を入れてもザ−ザ−と雑音が出るばかりで何も映らない。ただ、ここには不似合いな大型の冷蔵庫のみが用をなしている。


窓のカ−テンははずれかかっていて、閉めても隙間ができて光が差し込む始末。それでも窓際には古いク−ラ−が取り付けてある。洗面のお湯はなんとか出るものの、隅のほうには小さなゴキブリが這いずり回っている。その上、床にはカ−ペットさえ敷かれてない。スリッパを持参しない私は、いつも室内を裸足で歩き回るのだが、これでは不便きわまりない。こんなすごいホテルは初めてである。ここに二泊するとは困ったものだ。田舎の町だから辛抱しなくてはいけないのだろうが……。
 

昼食がメイン
すぐに遅い昼食となり、二階の食堂へ集まる。当地で初めてのメインの食事である。この国では夕食が主ではなく、昼食が一日のメインの食事になるそうで、そのためス−プが付くのも夕食ではなく昼食になっている。テ−ブルに並んだ料理を見ると、えっ!、これだけ?、と思うほどあっさりしたものである。赤カブのサラダに、大根を千切りにしたサラダ、薫製チ−ズ、肉入りシュ−マイ、羊肉のス−プ、それに主食のナン(麦の粉を焼いて円盤状に広げたもの)、リンゴ、炭酸水、お茶などである。どれもパサパサしてのど越しの悪いものばかり。唯一頼みのス−プは、これまた酢っぱくて飲めた代物ではない。ス−プは大抵どこの国でもおいしいのになあと首をかしげる始末。


昼間からビ−ルはと思い控えていたが、この分だと他の連中と一緒にビ−ルを注文すればよかったかな。とにかく、どれ一つとしてうまいと思う料理はなく、この食事内容では食べた満足感が生まれない。ただ一つの救いは、主食のナンが結構いけるもので、大きな円盤を千切りながら食べると、コツコツと歯応えがあり、香ばしい風味が広がってなかなか美味しい。でも、一枚全部はとても食べ切れない。
 

四時まで自由というので、各自部屋に戻って休息を取る。その間に、添乗さんが同行ガイドのトリック君を連れて各部屋の問題点のチェックに回ってくる。電話はもともと通じないので手の施しようがなく、テレビの点検をしてくれる。アンテナ線がつながっていないことが分かり、むきだしの裸線を適当に差し込んでくれる。でも、昼間の放送は休みだそうで、午後六時にならないと映らないという。なにはともあれ、ベッドに横になり休息する。
 

バザールへ
四時なると、みんなそろって近くのバザ−ル(市場)へ出かける。途中のメドレセへ立ち寄ってみると、タシケントで見たクケリダシュのメドレセとそっくりの二階建てで、窓の形や両サイドにある塔まで同じである。






ウルゲンチのメドレセ















ウルゲンチのストリート










この町のメインストリ−トを横切ってバザ−ルへ向かう。途中の広場で遊んでいる子供たちが寄ってきて、だれかれ構わず写真を撮ってくれとせがんでくる。この地の子供たちは物乞いはしないものの、写真写りをしつこくねだってくる。奇妙な現象に、そのことをトリック君に尋ねると、この地ではカメラを所有している者がめったにいないので、このようにねだるのだという。貰えもしないのに、ただ写るだけで満足なのである。


バザ−ルはかなり広い敷地で、そこに幾棟もの屋根つき施設が設けてある。その回りの露天でも、びっしりと商品が並べられている。食料品をはじめ、衣類その他の日用雑貨品だ。屋根付きマ−ケットでは主に野菜類、フル−ツ、各種の木の実などが売られている。オレンジはないかと見回すと、それに似た地元産の小さなみかんを発見する。早速、それを五個購入(一五〇スム=二〇〇円)。






様々な生活用品が並ぶバザールの露天風景














屋内のバザール風景
穀物・青果物が並ぶ










若者は写真がお好き?
いろんな乾燥した木の実を売っているので、もの珍しく眺めていると、売り場の若者たちが寄ってきて例のごとく写真をねだり始める。そこで一枚撮ることにする。カメラを構えようとすると、さっと寄り集まって撮りやすいようにポ−ズをとる。その素早さは見事なもので、パチリと撮り終えるとワイワイ騒ぎ立てて喜び合っている。ほんとに素朴で純真な人たちだ。一人の若者が、写真を撮ってくれたお礼にナツメの実を三つほど持たせてくれる。これはなんと甘い実だ!
 





バザールで木の実を売っている若者たち









物が満ち足りすぎると、人間はどうしてだめになっていくのだろう。写真写りだけでこんなに喜ぶ彼らを見ていると、喜ぶ機会を失くした日本や先進諸国の人間が可哀想に思えてくる。 一時間ほどでホテルへ戻る。それから夕食までは自由時間だ。何もすることがないから、部屋に戻ってシャワ−でも浴びよう。石鹸はまあまあだが、トイレットペ−パはバサバサのゴワゴワした紙で、とても使い物にならない。旅行案内のメモに従って、やはり日本から持参して正解だった。昔、古新聞紙を使っていた頃のことを思えば、それよりはまだましなのだが、なんと贅沢になったものか。
 

夕 食
夕食はキュウリの生輪切り、ポテトサラダ、野菜サラダ、千切り大根のサラダ、焼き飯、スポンジケ−キ、ナン、炭酸水である。ス−プが出ないので、食べ物が喉を通らない。炭酸水は飲めたものではない。そこでビ−ル(小ビン)一本(二五〇スム=二六〇円)注文し、喉を潤す。折角の焼き飯もパサパサで油っぽく、手が出ない。結局、ポテトサラダやケ−キ、ナンなどをビ−ルで流し込み、お腹をごまかすしか手がない。どうもここの料理では食べた満足感が得られない。
 

食事を終えて外に出てみると、空には満天の星がキラキラと輝いて夜空を美しく彩っている。やはりこの地では工場や車が少なく、大気汚染がないのでこんなに空がきれいに見えるのだろう。澄み切った夜空に、こぼれるような星の輝きを見るのは感動的である。オ−ストラリアの美しい夜空が思い出されてくる。
 

ロビ−の一角で小物を売っているのでのぞいてみる。ふと目にとまったのが、ウズベク人のさまざまな表情を彫り込んだ可愛い人形である。尋ねてみると、ラクダか何かの動物の骨に彫ったものだという。これなら軽くて荷にならない。そこで値段の交渉を始める。五個組みの人形で、はじめ十ドルというのを五ドルにまけさせて入手する。
 

部屋に戻ってテレビをつけると、映像がぼんやりと影絵のように映っている。そこで叩いたり、チャンネルスイッチをいじったりして、なんとか不完全ながら見れるまでに復旧する。もちろん言葉は分からないし、内容もパッとしないので、スイッチを切って早目に就寝することにする。時間は九時過ぎである。



(次ページは「ヒワ編」です。)
















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