7.オ−クランド市内観光
今日は旅行7日目。今度の旅の最終日である。明日は帰国の旅が待っているだけである。朝7時に起きて窓外を眺めると、曇天である。だが、雨の心配はなさそうだ。とうとう、旅の期間中一度の雨にも遭わず、好天に恵まれた。きっと旅の神が守ってくれたのだろう。今日は1日がかりで、市内観光の予定である。まずは朝食で腹ごしらえをしなければ……。
1階奥の食堂に行くと、時間が早いのか誰もいない。席に座ると係がやってきて何やら注文表を渡し、これに希望の品を書いてくれという。なんとやっかいことをさせるのだろう。こんな経験は初めてである。とにかく、言われるままに従い、スクランブルエッグ、ベ−コン、ソ−セ−ジ、ハム、パン、コ−ヒ−と書き込んで料理カウンタ−のコックに渡す。ここはバイキング式ではなく、面倒な注文方式なのだ。しかし、この方式がロスがなく、合理的なのかもしれない。間もなく用意された食事をカウンタ−で受け取り、朝食を始める。手早く済ませると、部屋に戻って出発準備だ。
エクスプロ−ラ−・バス(EXPLORER BUS)で市内観光
フェリ−ビルディング前からエクスプロ−ラ−・バス(EXPLORER BUS)が出ているという。これは市内のめぼしい観光ポイントをめぐるバスだが、今日はこれを利用して市内観光をしてみよう。このバスはロンドンバスと同様、二階建てのダブルデッカ−バスで、朝9時〜夕方4時までの間に30分間隔で走っている(冬期は1時間ごと)。料金は1日券がNZ$25(=約1600円)で、乗り降り自由である。市内の主な見所14ヶ所を循環するもので、市内を中心部と郊外の2つの系統に分けて、それぞれのバスが循環している。そして、この2系統の循環サ−クルはオ−クランド博物館で接続し、乗り換えられるようになっている。
フェリ−ビルディングの案内所で、このバスのル−トマップをもらい、係からいろいろと説明を受ける。とても一日ではその全部を回ることはできないので、その中から主なものをピックアップして、次の6ヶ所を回ることに決める。
・ミッション・ベイ(Mission Bay)
・ケリ−・タルトンズ(Kelly Tarton's Antarctic
Encounter & Underwter Word)
・ROSEPARK GARDENS
・HOLLY TRINTY CATHEDRAL
・マウント・イ−デン(Mt.Eden)
・SKY TOWER
ミッション・ベイ(Mission Bay)
観光ポイントが決まったところで、9時発のバスに乗って出発だ。乗客は数人と少ない。乗車すると早速、眺望のよい2階の最先端座席に陣取り、過ぎ行く通りの風景を眺めながら楽しむ。走る車も少ないきれいな並木道も現れる。
車も少ないきれいな並木道
間もなく海岸通りに出ると、湾内の風景を左手に見ながら海岸沿いに走って行く。その真向かいには、細く長く裾野を引いた山を抱くランギトト島が静かに浮かんでいるのが見える。なだらかな均整のとれた姿の素敵な島である。
ランギトト島
火山の噴火でできた島で 海抜263mの山が見える。
しばらく進むと、樹木に覆われた白いビ−チが見えてくる。これがミッション・ベイなのだ。下車しようと思って、スピ−ドを落として走るバスの車窓からよく眺めると、ただ人気のない砂浜が静かに横たわっているだけで、特に興味を引きそうなものは何もなさそうだ。もっと気温が上がって夏になれば、海水浴、ヨット、ウィンドサ−フィンなどを楽しむ人で賑わうらしいのだが……。これなら下車して見物するまでもあるまい。そう思って、ここはパスすることに決める。
ミッション・ベイ
白砂のビーチも今は寂しげ。
ケリ−・タルトンズ
バスはミッション・ベイで一時停車ると、ぐるっとUタ−ンして元の方向へ海岸線を走り出す。このケリ−・タルトンズは、すでにミッション・ベイへ行く途中、通り過ぎた場所である。再びそこに戻ったところで下車。
ここは一口で言えば海中に設けられた水族館で、これに付属して南極探検隊長ロバ−ト・スコットが1911年の探検時に使用した宿舎小屋の複製が設けられている大規模な施設である。ここは、世界的に有名な海中写真家・ダイバ−であるケリ−・タルトン氏が自分の体験した海中の素晴らしい世界を多くの人と分かち合いたいとの意思で、1984年に建設を手がけたものである。
圧巻は、海中深く設けられた全長110mのユニ−クな海中トンネルで、ここを動く歩道に乗って透明ガラス越しに多種類の魚たちが泳ぐ様を見られることである。これは世界初の完全透視・防水の海中トンネルで、この方式はその後世界中の水族館のモデルとなったものである。このトンネルを動きながらガラス越しに眺める水中は壮観で、大きなサメをはじめ、巨大ウナギ、エイ、大イセエビなど、ニュ−ジ−ランド沿岸にしか生息しない1,500種にのぼる海洋生物を目の当りにすることができる。
海中トンネルの様子
(ぶれて不鮮明だが感じはつかめる?)
また、暖房の効いた雪上車に乗って氷の上を横断し、模擬南極地に飼育されているキング・ペンギンの群れをディズニ−ランド気分で間近に観察することができる。ここは南極の環境条件を模してつくられ、季節の変化も巧妙に作り出されているという。彼らは天敵もいない快適な環境で、餌にも不自由せず気楽に暮らしている。なかには、卵を抱いているペンギンたちもいる。
雪上車で氷のトンネルを行く
模擬南極地のキング・ ペンギン
卵を抱くペンギン
この施設の入口付近には、世界初の南極点到達をめざしたスコット探検隊長が、1911年に南極基地で使用した宿舎小屋が当時の実物大に複製されて展示されている。その居室を見ると、ミシンや小型印刷機まで置いてあるのには驚く。よく、こんな物まで南極に持ち込んだものだと感心させられる。
スコット隊長の宿舎小屋
この施設を概観すると以上のようだが、なかなか見応えがあって飽かせない。オ−クランド観光には欠かせないポイントの一つと言えよう。この館内でかなりの枚数の写真を撮ったのだが、フラッシュ禁止のためうまく撮れず全部ボツになった。入場料はシニア割引でNZ$18(=1,100円)である。
ROSEPARK GARDENS
海岸に突き出た水族館の出口から出ると、道路に立ってエクスプロ−ラ−・バスが来るのを待つ。しばらくするとミッション・ベイへ向かうバスがやってくる。そこで手をあげてストップを頼むと、ドライバ−はこちらを見ながらストップもせずに無視して走り去ってしまう。いったいどうしたのだろう?と怪訝に思いながら、今度はその帰路を待ち伏せるため、道路の向かい側に立って待つことにする。ミッション・ベイは、ここから1km先にあるから、すぐに戻って来るはずである。
間もなくやってきた戻りのバスに、再び手を振ってストップの合図を送ると、ドライバ−が前方を指差しながら走り去ってしまう。おや?
何の合図だろう? ひょっとして停留所が先の方だというのだろうか? そう思って、とにかくそちらの方向へ駆け寄って行く。するとカ−ブを曲がった100mほど先にバスが止まっており、ドライバ−が降りてこちらだと手を振って合図している。バスストップは入口の前だったのだ。出口の場所が入口の建物とよく似ているものだから、私が勝手に勘違いしていたのだ。やっとバスにたどり着き、にっこり笑うドライバ−に礼を言って乗り込む。
バスはしばらく走ってゆるやかなスロ−プを上ると、静かな雰囲気の丘陵地帯に出る。ロ−ズ・ガ−デンは、その道路沿いにある。ここは文字通りのバラ園で、規模はそれほど大きくはないが、よく手入れされたガ−デンにとりどりのバラが咲き乱れており、見物は自由である。手入れ作業中の女性に尋ねてみると、数十種類のバラを植えているという。ここで降りる観光客も少なく、見物客もまばらである。次のバスまで半時間もあるので、ほのかに香るバラ園内をゆっくりと見て回る。 |
|