(ブラジル編)
6.イグアスの滝(ブラジル側より)・・・・“悪魔ののどぶえ”・ゴムボ−
ト・遊覧飛行
定刻の午後1時に飛び立った機はほぼ満席で、待望のイグアスへ進路を西に向けて飛行する。窓側3席の通路側に腰を下ろすと、すぐ隣には若い男性、その隣の窓際には中年男性が座っており、いずれもブラジル人のようである。
いつものように早速、話しかけてみる。隣席の若い男性は英語が話せるので、いろいろ会話がはずむ。彼はエンジニアだそうで、今日は会社の出張でイグアスの郊外である会合に出席するのだという。サン・パウロの近くの町に母親と一緒に暮らしていて、まだ独身だという。
そのうち機内食が運ばれて来るが、弁当を食べた直後だけに、お腹は余裕がない。これが分かっていれば、いっそのこと弁当を食べなければよかったのだ。とにかく、少しずつ試食しながら、青年と話を続ける。ふと、彼の足下を見ると、膝が前席につかえそうなまでに長く突き出ている。なんと長い足なのだろう。きっと、身長が高いに違いない。そこで、「とても足が長そうだけど、身長はどのくらいですか?」と尋ねると、なんと195cmもあるという。驚きである。彼は大男なのだ。話を聞くと、案の定スポ−ツは何でもやってきたという。でも、やはりサッカ−が大好きだという。
その後、窓側の紳士も話に加わり、片言の英語で話し始める。彼はサン・パウロに住むブラジル人で、ちょうど今、息子さんが日本へ長期演奏旅行中だという。その息子さんはミュ−ジシャンだそうで、バイオリンを弾くのだという。楽団のメンバ−と一緒に、1ヶ月ほどかけて日本国内の各地を演奏して回っているという。意外な話に親近感を覚え、また一段と話がはずむ。時には、青年が通訳に入ってくれたりする。
こうしていろいろ話しているうちに、機は高度を下げ始める。イグアスが近づいて来たのだ。期待に胸がふくらむ。上空からイグアスの滝が見えるかもしれない。折角のチャンスだから上空写真を撮りたい。そこで、窓際の紳士にカメラを渡して撮影をお願いする。やがて機内放送があり、イグアスの滝が右下に見えると案内している。ラッキ−なことに、われわれの座席は右側なので、よく見えそうだ。半立ちになって窓からのぞくと、斜め下に真っ白な水煙を上げながらU字形に広がる滝のカ−テンが見える。これがイグアスなのだ! 思わず胸が高鳴る。ここは今度の旅行の大きな楽しみのポイントなのだ。しかし、まだその滝の全貌は分からない。地上から、じっくりと楽しもう。
イグアスの滝
機上からの眺め
サン・パウロから1時間半の飛行で無事着陸。嬉しいことに、南国の強い太陽が照りつける快晴である。が、気温は33度と蒸し暑い。早速、出迎えのバスでホテルへ移動する。案内のガイド氏は、福岡の高校でサッカ−の指導を2年間やっていたという日本語の上手なブラジル人元プロサッカ−選手である。これからの予定は、ホテルに入った後、ブラジル側からの滝の見物と、その後は希望者のみでボ−トによる滝見物の予定である。
このイグアスの滝は、70年ほど前にスペイン人(名前は失念)によって発見されたもので、ブラジルでも1、2を争う観光名所となっている。このブラジルとアルゼンチンの国境を流れるイグアス川は、最大落差約80m、毎秒6万5千tという途方もない水量で、幅4kmにわたる世界最大という滝のペ−ゼントを南米の大地に生み出している。大小300もの滝が虹を描きながら豪快に流れ落ちる様は、想像をはるかに超える壮観さである。その滝の流れは、90%がアルゼンチン側から流れているという。
かつてイグアスの滝を訪れたル−ズベルト米国大統領婦人が、「かわいそうな私のナイアガラよ!」と有名な言葉をつぶやかせたほど、そのスケ−ルの大きさはナイアガラの比ではない。今日現在の滝全体の水量は80%で、滝の眺めには適度な水量だという。あまり少なくなると滝の流れる幅が途切れて、壮観さが見られなくなるという。雨になれば水量は増えるが、アルゼンチン側からは滝の見物ができなくなる。それに、晴天で太陽光が降り注がないと滝にかかる美しい虹も見ることはできないのだ。そんなわけで、この大瀑布を十分に観賞するには、いろいろと好条件がそろう必要があるのだ。今日は、お日柄もよろしくというわけで、幸いにも好条件で雄大な滝の見物ができそうだ。
やがてバスは、瀟洒でロマンティックなホテルに到着。今夜の宿は、滝の真ん前に建つ「トロピカル ダス カタラタス ホテル」という名のホテルである。イグアスのベストロケ−ションにあるだけに、ここは新婚さんに人気があり、なかなか予約が取れないという。このホテルについては、後ほど述べることにしよう。
部屋に入って旅装を解くと、一服する間もなく滝の観光である。ガイドさんに案内されて出発だ。ホテルの玄関を出ると、ごうごうという地響きと地鳴りのような音が地面と空間から伝わってくる。前の広いグリ−ンの庭園を抜けて歩くと、すぐ目の前にイグアスのパノラマ大景観が広がっている。眼前いっぱいに滝の帯が広がり、それが轟音と地響きを立てながら2段、3段と階段状に落下して白い水煙を上げる様は、なんとも表現のしようがない壮観さである。豪快−壮観−迫力−驚嘆という単語を幾つも重ね合わせて表現しないとできそうにない。このすばらしい景観は、すべてアルゼンチン側から流れ落ちる滝で生み出されている。 |
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