N0.9





10.インチョン(仁川)国際空港乗り継ぎ
機は順調に飛行し、約12時間のフライトで韓国ソウル・インチョン空港に到着。時刻は夕方の5時前である。旅の疲れもあって、機内ではよく眠ったようで、案外退屈せずに済み、やれやれである。長時間のフライトから解放され、こわばった足腰をほぐしながらフロアをゆっくりと歩いて行く。


福岡へ
一行はここで乗り継いで成田へ向かう。一方、私一人だけ一行とは別れて福岡空港へ向かう。9日間を共に過ごした皆さんとは、ここでお別れである。福岡行き便は乗り継ぎ待ち時間1時間40分と理想的な間隔である。


素敵なインチョン空港のフロアを搭乗ゲートへ移動し、待合場所でゆっくりと腰を下ろす。これでほぼ帰国したも同然の気持ちになる。やがて搭乗時間となり、機上の人となる。インチョン空港〜福岡空港間は、わずか1時間20分の飛行時間である。それでも国際線だから、夕食の機内食がふるまわれる。


期待の機内食は韓国料理のビビンパが出され、その懐かしい久々の味に舌鼓を打つ。ずいぶんと韓国料理には御沙汰続きである。乗務員のサービスも素敵で申し分なし。


隣席には30歳前後と思われる若い男性が座っている。食事をしながら話が始まる。
「出身はどちらですか?」
「ウクライナです。船乗りの仕事をしていて、いま日本の佐世保に向かっているところです。そこに乗船する船が待っているんです。」
「航海の期間は長いのですか?」
「半年ぐらいかけて世界をめぐります。」
「ガールフレンドはいるんですか?」
「えぇ、いますよ。もう2年ぐらい同棲しています。間もなく結婚しようと思っています。」
「それはおめでたいことです。ところで、首都のキエフはきれいな街だそうですね。でも、排他的なネオ・ナチの若者グループがいるので怖いですよ。」
「そんなに心配することないですよ。割りと安全な街なんです。」

などと話していると突然、
「質問があるんですが・・・。」と言いながら、
「日本の船の名前には必ず“丸”という文字が付いていますが、あれは何の意味ですか?」


この質問には参ってしまい、ただ「う〜ん」と呻きながら戸惑うばかり。
「確かに“丸”が付いていますよね。でも残念ながら私は知りません。勉強不足でごめんなさい。今度調べておきますよ。」
と、しどろもどろの返事に終わる。外国人には不思議なネーミングに思われるのだろう。(後で調べてみると、いろいろ説があるようだが、ここでは割愛とする。)


こんなやり取りを交わしているうちに、機は早くも福岡上空に飛来。見慣れた夜景が目に入り、懐かしい気持ちにさせられる。機はスムーズなランディングで福岡到着である。エージェントが出迎えに来ているという彼と別れを告げ、見慣れた福岡空港のロビーをしかと踏みしめる。これでいよいよイスラエルの旅も終わりを告げる。無事の帰着を旅の神に感謝しながら、夜の博多の街へ吸い込まれて行く。


あとがき
今回は9日間の旅で、イスラエルの主要な観光ポイントをほぼ網羅するコースであった。イエスキリストゆかりの遺跡をいやと言うほど見せられた感じで、これらをめぐりながらイエスの人物像がなんとなくイメージできた思いである。


そして、エルサレムという三大聖地が一箇所に集中する特異な場所を訪問でき、人々がそれぞれに信じる宗教への信仰心の深さと信心深さに心打たれる思いであった。また、それがために異宗教との軋轢(あつれき)も激しいものがあり、摩擦が絶えないのも事実のようである。


今度の旅でスルーガイドを務めてくれたS氏は日本国籍を離れてイスラエルに帰化した人物で、それだけにイスラエルに関しては造詣の深い方だった。お陰でそれを駆使した奥の深いガイドを受けることができた。他に追随を許さないガイド氏ではないかと敬服のいたりであった。


イスラエルの旅で痛感したのは、事前の学習が必要だと言うこと。イエスゆかりの地をめぐるとなれば、すべて聖書に出てくるものばかりである。膨大な聖書を俄か勉強するのは到底無理なので、少なくとも訪問地関連の聖書の記述は事前に調べておくべきだったと後悔している。事前学習をしておけば遺跡への興味も倍加する上に、ガイド氏の説明もより深く理解できたはずである。


普通の物見遊山の旅なら、ふらりと出掛けてもいいのだろうが、ことイスラエルについては遺跡めぐりとなるわけで、そうなると下調べをしたかどうかで、旅の面白さ、興味関心の度合いも大きく異なるものがあろう。(イスラエルの旅=事前学習のすすめ)といってもよい。


乾季とはいえ、気温は30℃近くになることもあったが、天候に恵まれて雨にも遭わず、快適な旅ができた。天候は旅の印象を大きく左右するものだけに、これに恵まれると言うことは旅を100%満喫できるということでもある。天候は自然現象だけに、時の運に左右されてどうにもならない面があるが、旅の期間だけは天候に恵まれたいものである。


この旅行記をしたためるに当たっては、多数の旅行記サイトを閲覧し、参考にさせていただいた。皆さん、それぞれに優れた旅行記を残されているのにはほとほと感心させられるし、深い敬服の念を抱いている。


最後に、この旅でお世話になった旅行社、添乗員氏、現地ガイド氏、バスドライバー、そして同行の皆さんやイスラエルの方々に心よりお礼を申し上げたい。
                                       (完)
                          (2010年10月2日脱稿)











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