ベネズエラ(エンジェルフォール)の旅  N0.





(9 日 間)

秘境ギアナ高地にある滝つぼのない滝
世界最大の落差を誇るエンジェルフォール
その高さ1000mから落下する豪快な滝しぶきは壮観


(2009年9月5日〜9月13日)



旅のコース





ギアナ高地旅行日程
日付 日数 ル − ト 泊数 タイムテ−ブル・内容
2009年
/
(土)
 成 田 → ヒューストン       ヒューストン → カラカス  機内 15:55発 → 13:55着                23:59発 →  翌5:19着         
     
6(日)  カラカス → プエルトオルダス
 プエルトオルダス → ルエパ→
 サンタエレナ
11:00発 → 12:00着
13:00発 → 14:00着 ジープで移動
7(月)  サンタエレナ → カバナヤン ヘリで卓上台地着陸、カマの滝、チナクの滝観光 
8(火)  カバナヤン→カバック→カナイマ チャーター機で移動、タバナベレパの滝、ユリの滝
9(水)  カナイマ    エンジェルフォール観光、サポの滝観光   
10(木)  カナイマ→プエルトオルダス→
 カラカス
ラグーンクルーズ、エンジェルフォール遊覧飛行
14:00発→15:15着、18:20発→19:20着
11(金)  カラカス → ヒューストン 8:20発 → 13:05着 
12(土)   8  ヒューストン → 成 田 機内 10:50発 → 
13(日)  成 田 14:20着
 ユーラシア旅行社のツアーに参加





1.はじめに
世界の三大滝(ナイアガラ、ビクトリア、イグアス)を実際に検分した私は、もう他に見るべき滝はないものとばかり思っていた。ところがその後、エンジェルフォールという落差1000mもある途方もない滝があることを知り、この目で実際に見てみたいという強い衝動に駆られ始めた。それ以来、憧れの滝となって私の胸の内に宿ることになった。


しかし調べてみると、その観光ベストシーズンが雨期の7月〜9月に限られていること、そしてかなりハードな行程であることが分かり、他の滝見物のように物見遊山的な気持ちでは到底できないなあと気にかかり始めた。その上、蚊などが媒介する黄熱病の予防接種や防虫対策が必要なことも分かった。さらにまた最近に至り、ベネズエラ国内の都市部や郊外では身代金目当ての誘拐事件が多発しているとの危険情報が外務省から発出されていることも分かった。


こうしてあれやこれや考えていると、私の気持ちは少々びびり始めた。しかし、どうしてもこの目で見てみたいという強い気持ちが消えず、これらを乗り越えてなんとか念願を達成したいとの思いが強くなった。ところが身辺の諸事情が許さず、昨年は泣く泣くキャンセルせざるを得なかった。そこで今年の捲土重来を期して、静かに今シーズンを待たざるを得なかった。


今シーズンに入り、旅行社に問い合わせて事情を尋ねてみたところ、毎月問題なく実施されていることを知り、背中を押される気持ちで申し込むことにした。ここから私の二度目の挑戦が始まった。


2.旅の準備
秘境の旅と言うこともあって、これまでとは異なり、さまざまな用具の準備が必要だった。また、アメリカ経由でベネズエラに入国するため、アメリカ向けの特別の手続きが必要となった。これらのことについて、以下にまとめておこう。

(ESTA)
2009年1月12日から米国の入国制度が大きく変更された。事前に電子渡航認証システムElectronic System for Travel Authorization:ESTA)に従って申請を行い、認証を受けていないと、米国政府によれば、米国行きの航空機等への搭乗や米国入国を拒否されることになった。これはアメリカ経由で第三国へ行く場合も同様である。これは取得後、2年間有効となる。
◎ESTAの申請手続き⇒ こちら 


今度のベネズエラ行きは、米国ヒューストン経由で行くので、このESTA(日本語版)の事前取得が必要だった。私の場合は、自分でネットからオンライン手続きを済ませた。難しい内容はないが、文章を読まされるので少々時間がかかる。約15分で完了した。この手続きは無料。これを旅行社に依頼すれば、手数料5千円超がかかる。


(予防接種)
ベネズエラ国では、黄熱リスク国からの渡航者には黄熱予防接種証明書が要求されているが、その他の国の場合は「予防接種の推奨」となっている。つまり、推奨はするが、義務付けはないということ。私の場合は、この予防接種で少々不具合になるケースがある旨を伝え聞いたので、接種せずで出かけた。しかし、蚊の防御には神経を使った。


(米ドルの準備)
ベネズエラでは米ドルが通用するので、ドルの準備をするとよい。この旅行コースでは現地のボリバル通貨は特に必要なかった。ボリバル表示でも支払いはドルに換算してくれる。


(必携物・・・必ず持参すべき物)
・虫よけ(ノンガス式)
蚊とプリプリという虫対策。蚊にはあまり出遭わなかったが、現地でプリプリと呼ばれる小バエより少し大き目の虫が草原や滝周辺の至る所に生息し、そこに足を踏み入れると知らぬ間に噛まれる。噛まれると痛痒く、根が張った丘状痕ができる。それが治まるのには3〜4日かかる。虫よけを塗布しても、このプリプリは完全には防げない。とにかく、手のひらや指の間まで知らぬ間に噛まれるので手に負えない。また、綿の厚いソックスの上からも、タオルを被った頭まで噛まれるのだから始末に負えない。同行のメンバーの中には旅行中、通算59ヶ所も噛まれた人もいた。


プリプリに噛まれて赤く腫れている

・虫さされ薬
プリプリに噛まれると痛痒いので塗布する必要がある。ムヒを持参したが効果のほどは不明。

・蚊取り線香と使い捨てライター(電子ライターは機内不可)
部屋で使用するもの。窓にネットも張られてないロッジもあり、外から蚊や虫が自由に侵入する。早朝、部屋の中にまで鳥が挨拶に来たところが2部屋あった。

・懐中電灯
辺鄙なロッジには送電がなく、自家発電になるので夜9時過ぎには停電する。部屋にはローソクが準備されているが、適当な小型ライトが必要。

・軍手
ジャングルウォークで岩を握ったり、木の枝や幹を握ったりするので手の保護に必要。また虫よけのためにも必要。

・レインコート
エンジェルフォール行きではボートで延べ4時間もさかのぼるわけだが、時折急流があり、波しぶきをかぶる。また早朝のボート移動になるので冷たい風を切って進むことになるが、その時の防寒にも必要。さらにまた、雨期であれば、突然のシャワー(スコール)がやって来るのでこれに備える必要がある。

・小型リュック
ジャングルウォークでは急坂や危険個所があるので、両手が使えるようにしていないと危険。そのため手提げやショルダーは不可。

・シューズ
ジャングルウォークや川原など、足場の悪いところを歩行するので、履きなれたスニーカーやウォーキングシューズなどが必要。

・サングラス、帽子、日焼け止め
赤道に近いベネズエラの日射は強い。UVカットのサングラスや帽子は必携。女性は日焼け止めが必要。

・マスク
もちろん新型インフルエンザ予防のためである。私の場合、電車内、空港、機内など、人込みの多いところや密閉空間では怠らずマスクを着用した。一般の様子を見ると、車内でも成田空港でもマスク姿は稀にしか見られなかった。空港職員もすべてマスクなし。尋ねてみると、特に指示が出されていないので使用しないとのこと。初期のころの異様なマスク姿とはさまかわりの様子である。また、国際線の機内でもマスク姿は日本人乗客がちらほらいるぐらいで、外国人客にはマスク姿は皆無であった。アメリカやベネズエラ国内でもマスク姿は皆無だった。


(持参したがよい物・・・なくてもさほど問題ない)
・防虫ネット
養蜂家などが使う頭からすっぽり被るネット。虫刺されなどから顔を守るために使うのだが、虫よけを塗れば、ネットがなくても通用する。私の場合、1回だけ使用した。


防虫ネットを被った姿

・携帯用ベープ
行程では常にジャングルや草原地帯を歩くことになるので、これを常用すると虫よけ防止になる。確かに効果があるようだ。蚊は困るが、少々虫に噛まれてもかまわないのであれば不要。私の場合は不使用。

・替え用シューズ
ウォターシューズなどを持参して履き替えれば問題ないが、川の中を渡ったりするのでシューズが濡れる場合がある。それに備えて替えのシューズかウォーターシューズを持参するとよい。しかし、濡れた靴を履き通せば、それでもOK。私の場合は持参せず。川を渡る時は靴を脱いでソックス履きのまま渡った。

・水 着
滝で泳いだり、水遊びができるので、楽しみたければ水着を持参するとよい。私の場合は持参したが泳がずだった。

(服装、スタイル)
私の場合、最後までジャージ姿で通した。これに長そでシャツを着用。帽子は野球帽を持参したが、途中からタオル鉢巻で通した。これが意外と耳も隠れてよいし、ボートで航行中に帽子が吹き飛ぶ心配もなかった。靴は普通のウォーキングシューズ。

(洗 濯)
私の場合、着替えは下着類の各1枚だけなので、毎日洗濯した。湿度が高いと言われたが、乾燥は一晩でばっちりだった。エンジェルフォール行きの日は、ものすごい汗まみれになったので、長シャツなどの他、すべてを洗濯。これらもエアコンの送風を利用して一晩できれいに乾燥した。

(飲用水)
現地で宿泊するロッジでミネラル水が調達できる。小ビンで2ドル。


3・ギアナ高地の気温
9月初旬にギアナの気温実績を事前に調べてみると、最低20℃台〜最高30℃台の範囲で推移していた。そして週間天気予報は毎日のように雷雨となっていた。これは実際に現地で体験してみると、この予報どおりで、毎日午後になると空の一角に黒い雨雲が浮かび、局地的にシャワーを降らせていた。稲妻もよく走っていた。旅行中、2度ほどシャワーに遭遇したが、いずれも15分ほどで通過するので、その間雨宿りをすれば問題はない。


4.ヒューストンへ
待望のエンジェルフォールへの旅初日。いよいよ出発の日がやってきた。いつもの旅よりかさばるバッグ(総重量5.6kg)を肩に抱えながら、前泊したホテルをゆっくりと出る。空は晴れ上がった青空だ。空港行き電車に乗ると、さすがに車内はスーツケースのオンパレード。この路線だけに見られる特有の車内風景なのだろう。


成田空港行きの電車内はスーツケースのオンパレード

10分で空港駅に到着し、集合場所の成田空港第一ターミナル北ウィング4階の出発ロビーへ向かう。ツアーの参加者一行12名だが、まだ全員の顔ぶれが揃っていないようだ。とにかく航空券をもらって行列に並び、チェックインを済ませる。ついでにマイレージを申し込み、カラカスまでの往復分を登録してもらう。


成田空港第一ターミナル北ウィング4階の出発ロビー


同上、出発便の案内掲示板

時間になり、参加者メンバー全員がそろったところで、いざ出国へ。セキュリティチェックを受け、出国審査を受けて通過すれば、そこはもう外国だ。搭乗ゲートでしばらく待つと、いよいよ搭乗開始だ。グループの場合、いつも座席は後方ばかりだ。個人の場合は、前方座席が選ばれるのだが、グループだとそれができない。後方座席は配膳がいつも後回しになるので、メニューの選択ができない場合があり、不愉快な気分にさせられる。


12時間の飛行
晴れ渡った空に吸い込まれるように飛び立ったコンチネンタルCO6便機は、満席の乗客を乗せて東へ向けて飛行する。珍しく定刻13時55分の離陸である。これから12時間の長い空の旅が始まるのだ。まずは米国ヒューストンへ飛び、そこで乗り継いでベネズエラの首都カラカスへ向かう。東へ向かうのは9年前の南米旅行の時以来で、地球の裏側へ飛ぶのは今度で2回目だ。12時間の飛行と言えば、ヨーロッパ並みの飛行時間なので、その感覚はつかめている。


3人掛けのシートには私と日本人の新婚カップルが同席する。名古屋在住という新婚さんは、2年前に結婚式を挙げたそうだが、共働き夫婦なので2人の休暇が揃って取れず、今日まで新婚旅行を延期していたのだと言う。今度晴れて憧れのアメリカ旅行へ行くのだと嬉々として話す。フロリダのディズニーワールドとニューヨークを訪れるそうだ。


新婦がまだ高校生時代に出会ったと言うハンサムな新郎と素敵な新婦のナイスカップルで、その初々しい様子がなかなか好感の持てる新婚さんだ。新郎は以前からアメリカに憧れていて、今度その夢が実現できると喜んでいる。だが、英語が苦手で思うにまかせず、出発までに少々英会話の予習をしてきたと言う。機内でも書きとめたノートを開いて懸命に勉強している。新郎は海外旅行が初めてで、しかも初の個人旅行ということで、本番を前に少々緊張気味の様子である。私も加わって一緒に英会話の勉強が始まる。


フライトマップを見ていると、機はアリューシャン列島沿いに弧を描くように北米大陸へ向けて飛行している。気の遠くなるような長い飛行時間の後、やっとカリフォルニア上空に達し、アメリカ南部を横断しながらテキサス州のヒューストンへ飛行する。その間、出発直後の食事と軽い中間食、そして到着前にホットドッグなどの軽食が出される。飲食時以外は、しっかりとマスクを着用し、睡眠も少しうとうとしたようだ。


出入国カード、税関申告書の作成
日米間には査証免除取極めが結ばれており、米国内に90日以内の短期滞在の場合はビザが免除される。しかし、前述のESTAの取得と査証免除プログラムによる入国の場合はI-94W(緑色の出入国記入用紙)並びに、署名済みの関税申告書を作成提示する必要がある。これらの用紙は到着間近になると機内で配布される。なお、出入国カードの出国部分の半券は出国審査の際に渡すので、出国まで大事に保管する。(実際は出国審査はなく、登場ゲートで回収される) 


出入国カードの主な記入項目は、次のとおりである。
・姓と名、生年月日、性別
・国籍
・旅券番号
・便名
・居住国
・搭乗地
・米国滞在中の住所

裏面にはA〜Gまでの質問事項があり、これらの質問に1つでも「はい」と答えた場合は米国への入国が拒否される可能性がある。


税関申告書の主な記入項目は次のとおりである。
・姓と名
・生年月日
・米国内の住所or行先
・旅券発行国
・居住国
・米国到着前に訪問した国
・搭乗機番号
この他に6項目の質問事項がある。


ヒューストン到着
やがて機は着陸態勢に入り、次第に高度を下げて行く。緊張の瞬間である。しばらくしてドスンと無事着陸。ほぼ定刻の13時20分の到着で、長い空の旅も終わり、まずはやれやれである。気温は30度台と東京の気温とあまり変わらず。これから先、まだ何度も飛行機を利用することになるので、ただただ無事の飛行を祈るばかりだ。ここで時差マイナス13時間の調整を行う。つまり時計の針を遅らせるわけだ。これを忘れると、集合時間がとんだことになる。


ヒューストン空港着陸間近の風景


ヒューストン空港

ここヒューストンは、メキシコ湾に近い人口220万のテキサス州最大、全米第4の都市である。19世紀後半には海港や鉄道交通の中心として栄え、また綿花の集散地としても栄えた。その後、油田が発見されると石油精製、石油化学の中心地として成長を遂げた。20世紀半ばには世界最大の医療機関テキサス医療センターやNASAのジョンソン宇宙センターが設置され、スペースシャトルの管制などで、よくその名をTVなどで知らされた。


ここの観光名所と言えば、郊外にあるNASAのジョンソン宇宙センターがあるほか、ヒューストン自然科学博物館やヒューストン動物園、それに大小多くの公園緑地があるくらいで、華やかな観光名所はないようだ。


入国審査
いよいよ入国審査だ。うるさいアメリカのこと、一番気をつかうところである。預け荷物はスルーでカラカスまで直行となるので、ここで受け取る必要はない。みんな手荷物だけを持って審査ブースへ。ブースの数が多いので、さほどの混雑は見られない。指紋調査になってから初体験だけに、興味津々である。


行列に並んでしばらく待つと、いよいよ自分の番だ。「ハロ〜」と声をかけながら係官にパスポート、出入国カードを提示。すると間もなく、右手の4本指を指紋撮影機の上に載せろという。かざして数秒すると、次に今度は親指を載せろという。これが終わると、次は左手指の撮影が同じ要領で行われる。両手の指紋撮りが終わると、今度はこのレンズを見つめよと言って、顔写真の撮影を行う。都合、すべてが終わるのに40秒程度の時間がかかる。


撮影関係が終わると、スタンプを押して出入国カードの出国カード部分を切り取って渡してくれる。これは出国時に必要となるので大切に保管する。私の場合は何の質問もなく、審査は無事終了。グループなので特に質問の必要もなかったのだろう。それとも係官の気まぐれか?


預け荷物はないので、荷物受け取り所は通過して、そのまま税関へ。そこで税関申告書を提出して難なく通過。ここでも質問なしでフリーパス状態である。こうして晴れて、米国内へ第一歩を踏み入れる。


ヒューストン空港の到着ロビー


ホテルへ
ここから次はカラカスへ移動するわけだが、ここで10時間の乗り継ぎ待ち時間がある。そのためいったんホテルへ移動してしばしの休憩となる。出迎えのバスに乗って空港から車で10分ほど走った便利なホテルである。チェックインを済ませると、部屋に入ってシャワーを浴び、すっきりなったところで仮眠態勢に入る。


ヒューストン空港からホテルへ向かう途中の風景

3時間ほど熟睡したところで起床。深夜発の飛行便まで間があるので、日本から持ち込んだパンとおにぎりで腹ごしらえをする。後は備え付けのコーヒーを沸かして憩いのひとときを過ごす。深夜23時59分発のカラカス行きで、本格的なギアナ高地の旅が始まるわけだ。期待に胸がふくらむ。


秘境の旅初日はこうして時差13時間の移動に明け暮れて過ごすことになる。


(次ページは「サンタ・エレナへの道」編です)











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