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   N0.4
(&ルクセンブルク)




5.ブリュッセル市内観光
 
三日目の朝、7時に起きて窓外を眺めると、昨日までの鉛色の空とは打って変わり、明るく澄んで輝いている。雲一つない快晴の朝なのだ。これで雨の心配もなく、快適な旅ができるかと思うと心も弾む。
 

充実した朝食を済ませると、荷物をまとめてグラン・プラスのホテルへ移動開始である。勝手知った南駅前からトラムとメトロを乗り継いでグラン・プラスへ向かう。ブロッケル方面は何番電車に乗ればいいのかをチケット売り場の窓口で確認し、ここから四つ目のブロッケルでメトロに乗り換えると次の駅が中央駅である。ここからグラン・プラスの方向へ進むとすぐに目指すホテルがある。
 

その方向が分かっているので、今度は近道を行ってやろうと自信を持って駅前のメリディアンホテルの建物の中を通り抜け、どんどん進んで行く。だが、なかなかグラン・プラスの広場が出てこない。市庁舎の塔が見えているのだが、どの道を行くのか分からない。とうとう探しあぐねて、あちこち尋ね回りながら、やっとのことで広場にたどり着く。駅前からグラン・プラスに通じる直線の1本道はなく、かなり入り組んでいて慣れないと分かりにくいのだ。とんだ失敗を演じてしまう。
 

無事、ホテルにたどり着くと、ホテルのフロントには先日の係とは違うホテルマンがいて応対してくれる。予約しているのだが今からチェックインできるかと尋ねると、午後3時からでないと駄目だと言う。それではと言うことで荷物を預かってもらい、観光に繰り出すことに。これまでのホテルは早朝からチェックインできて助かったのだが、このホテルは準備ができていないのか受け入れてくれない。


ラ−ケン公園へ
ブリュッセルの北の郊外にあるヘイゼル駅の一帯には、アトミウムをはじめ、ミニヨ−ロッパ、ヘイゼル宮、ラ−ケン王宮などがあり、家族連れで楽しめる打ってつけの場所である。まず、ここを目指そうとホテルマンにアトミウムへの行き方を尋ねると、中央駅からメトロ(地下鉄)に乗ってヘイゼル駅で下車すればよいと教えてくれる。ここは北の郊外にあるので、もらった路線図を見ると中央駅から13番目の駅とかなり遠い。だが、乗り換えなしの一直線だから問題ない。
 

このホテルから中央駅へ出る最短のコ−スはあるのかと尋ねると、玄関前の道路を横切って向かいの中段に設けられた小さな広場を通り抜け、大通りに上りあがれば2分で行けると言う。そこで、教えられたとおりに行くと、すぐに中央駅に着く。確かに近くて便利だ。Mマ−クの付いた地下入口を下りてチケット売り場に出ると、そこで便利なように10回券を9.2ユ−ロ(1,300円)で求める。ヘイゼル方面行きの下り口を聞いてホ−ムに下り立つと、やって来た列車に乗って注意深く駅を数えながら13番目のヘイゼル駅で無事下車。


アトミウム
地上に出ると、一帯には行儀よく生い茂る木立の中にグリ−ンの芝生が美しい広大な緑地・ラ−ケン公園が広がっている。左手を見れば、その一方の端を塞ぐように階段状の変わった建物が屏風のように建っている。これがヘイゼル宮なのか定かでない。







階段状の変った建物はヘイゼル宮か?








右手を見れば、芝生の中央部に大きなアトミウムのモニュメントが立っている。これは1958年の万国博覧会のために造られたもので、原子構造の模型をイメ−ジした巨大な構造物である。昼間は太陽光にきらきらと輝き、夜にはライトアップされて幻想的な姿を見せるという。各ボ−ルはエレベ−タ−で結ばれ、中央のボ−ルは高さ102mもある。








 
これがアトミウム。高さ102m。
















スパッゲッティで昼食

時計を見ると、もう12時だ。ここで休憩しながら昼食でも取ろうと入場口まで行って尋ねると、ここにはレストランはないと言う。そこでアトミウムへの入場はあきらめ、仕方なく引き返して食事処を探し始める。すると芝生の横手側に区画された緑地があり、その一角にレストランが並ぶ建物がある。そこを一軒一軒全部見て回りながら看板に出ている各種料理のメニュ−も調べ、結局いちばん手前のレストランでスパゲッティを食べることに決める。
 

 右側がレストランの並ぶ建物。左側奥にミニヨーロッパがある。


屋外のテント張りの席に座り、例によってトマトソ−スのスパゲッティを注文する。飲み物はWit Bierを注文する。これまで飲んだビ−ルでいちばん口にあった銘柄なのだ。面白いことに、ここベルギ−ではビ−ルの銘柄ごとにコップが決まっていて、それぞれ形が違うのだ。でも、ビ−ルの種類の多いこの国のこと、なかなか大変である。そのため、レストランなどではスタンドに多種類のグラスがずらりと並んでいる。ここまで凝るとは、さすがにビ−ル王国のことだけはある。なかなかの味のスパゲッティをビ−ルを傾けながら、ゆっくりと味わう。昼食代は締めて9ユ−ロ(1,300円)。
 

この区域に隣接してテ−マパ−クのミニヨ−ロッパがあるのだが、ここにはEU加盟諸国の有名な建物や町並みが25分の1のスケ−ルで再現され、ブリュッセルの名所となっている。他にもこの公園一帯にはラ−ケン王宮や日本館、中国館など見所があちこちあるのだが、すべてを見る間はない。


ノ−トルダム・デュ・サブロン教会
お腹が落ち着いたところで、ここから市内中央部へ移動してノ−トルダム教会を目指したい。そこで地下鉄ヘ−ゼル駅に戻り、チケット窓口でそこへの行き方を尋ねると、「そこから発車する81番トラムに乗ってブルシュ駅で下車し、そこから34番バスに乗って行けばよい。」と教えてくれる。それにしても、遠く離れた場所にいるのに、よく詳しくバスの番号まで覚えているなあ〜……。
 

地下鉄駅とは反対の方向にトラムの終点駅がある。ちょうどそこに止まっている81番電車に乗って市街中央部へ向かう。後で分かったことだが、ブルシュ駅は中央駅に近いところである。このル−トはかなりの区間地上を走るので、その間は車窓から流れる町並みの風景をのんびり眺めながら過ごしていると、途中から地下に潜ってしまう。
 





 トラムの車内風景










ブルシュ駅で下車して地上に出ると、バス停を探す。付近には見当たらないので店の人に尋ねると、どこまで行くのかと聞くので、ノ−トルダム教会だと答える。すると、バス停はあちらだけど、その教会ならこの道を歩いて行けば10分で着くと教えてくれる。だが、バスで行きたいのだ。折角、10回券を買っているのだから……。
 

バス停を見つけて待っていると、34番バスは反対方向のバスばかりが通って、教会方向へ向かうバスがなかなかやって来ない。それどころか、横の角から34番バスが教会方向へ通り抜けている。ここは停留所が違うのかな?と思って、あちこち探したあげく、通りを曲がった裏側にバスの発着基地を発見。ここから出ているのだ。
 





 市内を走るバス
















 バスの車内風景









やっと34番バスに乗ると、ドライバ−に「ノ−トルダム教会へ行きますか?」と尋ねて確認し、「最寄りのバス停が来たら教えてください。」と頼んで前の席に座る。バスはしばらく走って角を曲がり、スロ−プを上ると目の前に優雅な姿でそびえる教会が見える。バスはそのど真ん前で止まるのだ。これではドライバ−に頼むまでもない。
 





ノートルダム教会
繊細な外壁の装飾が美しい








フランボワイヤン・ゴシック建築の繊細で美しい装飾をもつこの教会は、1304年に射手(ギルド)の手によって建てられ、その後巡礼地となって大きく拡大されたという。急傾斜の屋根は高く、その中央には鋭い鉛筆の芯のような尖塔がそびえている。内部に入ると、見上げるような高い天井は、思わず天使に誘われて昇天するような錯覚を覚える。それだけにひときわ広い空間が広がって荘厳な雰囲気がただよっている。中央祭壇は珍しく全面総ステンドグラス張りの窓を背後に控え、そこから後光が差すように太陽光がいっぱいに差し込んでいる。
 





 明るい教会の祭壇










人気のない広いフロアには整然と椅子が並び、それがいっそう静寂な雰囲気を醸し出している。ふと背後を振り返ると、階上の壁面には重厚なパイプオルガンが並び、今にも賛美歌の響きが伝わって来るようだ。








 階上にはパイプオルガンが・・・















夜になると、教会全体が灯籠のように灯り、美しいステンドグラスを通して内部の光りが漏れ出て幻想的な雰囲気をただよわせるそうだ。この時期だと日没が遅いので夜の10時頃にならないとその光景は見られないだろう。


プチ・サブロン広場
教会の前はトラムが走る大通りになっており、その道向かいにこぢんまりとした菱形の美しい庭園がある。これがプチ・サブロン広場で、その中央には2人の人物像が立っている。この周囲にも庭園を見守るように人物像が幾つか立っている。美しい緑陰の向こうには、エグモン宮の一部が見えている。
 





緑に覆われたプチ・サブロン広場









ここは広場というよりも庭園と呼ぶのにふさわしく、中央に設けられたベンチには、のんびり憩う人影が見える。狭い庭園ながらも良く手入れされており、この緑に埋もれた庭園の中にたたずんでいると、心が洗われるようである。


ロワイヤル広場・王宮・ブリュッセル公園
ここからトラムに乗って王宮方面へ移動しようと思い停留所を探すがよく分からない。というのは、その表示らしい表示もなく、線路沿いには小さなホ−ムさえ設けてない。反対方向のトラムの乗客の様子を見ていると、歩道で待ちながら電車がやって来ると信号もない道路を横切って線路際まで進み、そして止まった電車に乗っている。車が走る中を横切るので危険この上ない。
 

王宮方面行きの停留所もその真向かいだろうと推測して歩道で待つことにする。だが、この場所にはだれもいない。やがてやって来たトラムを止めようと手を振って合図を送ると、運転手が後方を指差して、ここではないことを知らせてくれる。しかし、その方向を見ても停留所らしい場所は見当たらない。もっと遠くにあるのかもしれない。
 

そう判断すると、逆戻りするよりもそのまま王宮方面へ歩いたがましだと思い、てくてく歩き始める。地図で見ると、400mほどの距離ぐらいだから、それほど遠くはない。このトラムが走る広いRegence通りは、ブリュッセル公園まで一直線に走っている。そこをしばらく歩いて行くと、前方にロワイヤル広場の空間が見え、その向こうに公園の緑が見えて来る。そして、広場まで達して交差点まで出ると、右手に王宮の建物が見える。
 

このロワイヤル広場は、何の変哲もないただの空き地といった感じで、その中央に1096年の第一次十字軍の指導者、ゴドフロワ・ド・ブイヨンの騎馬像があり、これが唯一その存在意義を顕示しているといった風情である。この広場に面して3階建てのホワイトハウス2棟があるのだが、これが簡潔単純ながら左右対称に造られ設置されているのが面白い。
 





殺風景なロワイヤル広場
左右対称の建物に注目









この広場を通り過ぎて交差点を右へ回り込むと、すぐ右手に重厚な横長の建物がどっしりと構えている。これが王宮で、目の前に広がる広大なブリュッセル公園を庭園にしている感じで、その正面に建っている。その屋根の上には3色のベルギ−国旗がひるがえり、現在、国王が国内滞在中であることを示している。国王はここには住んでおられないそうだが、国内滞在中には国旗が掲揚されることになっており、夏期には一般公開されるという。
 





どっしりとした王宮
屋根には国旗がひるがえる








道路を挟んで王宮の目の前にはブリュッセル公園の広大な緑地帯が広がっている。昔は狩猟場だったそうだが、1775年にフランス風の公園に造り変えられたという。公園の入口には宮殿かと思わせるような彫像が載った大きい白亜の門柱がでんと建っている。






ブリュッセル公園入口門










それを通り抜けて中に入ると、背の高い木々に覆われた森林が鬱蒼と繁り、その木立の合間にグリ−ンベルトの通路が通っている。遠く奥の方には噴水の上がるのが見えるが、疲れた身体にはそこまで足を伸ばす元気はなく、途中から横道を抜けてロワイヤル通りに出る。
 





緑豊かなブリュッセル公園









公園を含むこの一帯はロワイヤル広場を中心に西側には美術館、図書館、博物館などが並び、東側には王宮やブリュッセル公園が位置して、市街地とは異なる「芸術の丘」と呼ばれるにふさわしい雰囲気がただよっている。


ホテルへ
公園内を左に抜ける横道へそれてロワイヤル通りに出ると、そこを横切ってそのまま一直線に緩やかな下り坂を進んで行く。この公園一帯はブリュッセルの山の手になっていて市街地を見下ろせるやや小高い丘陵地帯になっている。突き当たった広い道路を右手に折れて、緩やかにカ−ブする下り坂を進んで行くと、中央駅の横手に出る。ここからホテルまで2分の距離である。通い慣れた道を通って、やっとホテルに到着。
 

ここで預けた荷物を受け取り、チェックインする。係が「表通りが見える部屋にしますか?それとも裏の静かな部屋にしますか?」と尋ねるので、「裏側の部屋をお願い。」と答えてキ−を受け取る。ここのエレベ−タ−は昔ながらのクラシックなもので、ドアを自分で開くと内部は壁がむき出し状態で危険。ヨ−ロッパの古いホテルではたまに見かけるリフトである。壁に注意しながら目指す階まで上がると、止まった途端にライトが消えて内部は真暗になる。驚いて思わずドアを押し開けフロアに出る。節電のためなのだろうか? いろいろ体験させられるものだ。
 

部屋に入ると、お湯の出方などをチェックし、問題ないことを確認すると旅装を解いてベッドに横たわる。これからしばらく休息しよう。夕食はそれからだ。


中華料理で夕食
休息のあと、いい時間になったので夕食と行きたい。ホテルを一歩出ると、グラン・プラスに近いこの付近にはレストランがひしめき合って選ぶのに困るほどである。だが、この界隈に中華レストランが見当たらない。今夕は中華料理を食べてみたいのだ。そこでホテルマンに中華レストランの在処を尋ねると、グラン・プラスの北のコ−ナ−から路地を入って行くとその先にあるから、そこでまた尋ねるようにという。
 

教えられたとおりに歩いて行き、途中で付近の人に尋ねながら進んで行くと、その向こうに数軒の中華レストランを発見。そこでいちばん手前の店に入ることにする。結構大きなレストランだが、まだ時間が早いのかお客を見かけない。案内されて席に座ると、出されたメニュ−の説明を受けながら目を通す。すると、「バイキング式の料理もあります。これだと5分で用意ができます。」という。その内容を尋ねてみると、種類も多く、良さそうなので、これに決めることにする。メニュ−を見ても、よく分からないからである。
 

早速、ビ−ルは“WIT BIER”を注文して喉を潤し始めると、料理の準備が整う。なるほど、調理場から各種の料理を運んでバイキング台に載せ、それぞれの器ごと湯煎にして温めているのだ。これだと料理が冷めずにいただける。
 

その料理はス−プ、焼き飯、ギョウザ、シュウマイ、鳥肉・豚肉料理、魚料理、巻寿司、各種のサラダ、フル−ツと豊富に並んでいる。豊かな気分になりながら、それぞれ少しずつ皿に盛りながらいただく。焼き飯も意外とおいしく、海苔巻き寿司も結構なものである。米が案外パサつかずに粘り気があるのだ。そこでウェィタ−に米の産地を尋ねると、中国米とのことである。他の外米と違って、意外とおいしい感じがする。
 

こうして何度か料理を取り寄せながら食べているうちに、お腹は満腹となる。すぐにお腹いっぱいになるのがもったいないくらいである。もっと食べたいのだが、あまり食べ過ぎて旅先でお腹を壊すと困ることになる。ほどほどにして、おしまいにする。代金は締めて17.6ユ−ロ(2,500円)。
 

外に出ると、終日快晴続きの空はまだまだ明るく、この分では明日も好天が続きそうだ。夕暮れ時のグラン・プラスの風景を眺めながらホテルへゆっくりと足を運ぶ。



(次ページは「アントワープ観光編」です。)










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