しばらく感慨に耽った後、もと来た道を引き返し、インフォメ−ションの方へ戻る。ここの橋のたもとにも船の発着する桟橋がある。その時刻表を見ると、次はちょうど12時発となっている。それならこの場所から乗船して帰ることにしよう。しばらく待っていると、今度は来た時とは違う小型のボ−トがやって来る。それに乗ってヘルシンキ港へ向かう。沖合から港を眺めながら走ること15分、船は朝とは違う桟橋に到着する。どうも船会社が違うようだ。そこで尋ねてみると、スオメンリンナ行きの船は2つのラインがあるそうで、このボ−トがインフォメ−ション前の桟橋との往復を運航しているという。
サーモンで昼食
マ−ケット広場に上陸すると、昨日の夢よもう一度とばかりに、サ−モンの鉄板焼きの味を思い出し、再びその店を探してみる。ところが、昨日の場所には他の店のテントが張ってあり、どこを探しても見当たらない。出店希望が多く、毎日と言うわけには行かず、日替わりで交替しながらの商売なのだろうか? やむなく別のサ−モン焼きの店で済ませることに。昨日と同様、サ−モン一切れにポテトとを添え、ビ−ルも注文する(1,200円)。やはり昨日の店の味の方がおいしく、少し失望しながらの昼食となる。
ヘルシンキ大聖堂と元老院広場
サ−モンの昼食を終えると、今度はすぐ近くのヘルシンキ大聖堂へ足を向ける。エスプラナ−ディ公園の横を走るポホヨイスエスプラナ−ディ通りから裏手へ2つ目の通りへ出ると、その前に40万個の御影石が敷きつめられた広大な元老院広場が開けている。その中心にはお供の像に囲まれたロシア皇帝アレクサンドル2世の立像が置かれている。
元老院広場
中央の立像はロシア皇帝アレクサンドル2世
その背後の階段上に白亜の大聖堂がモスグリ−ンの5つのド−ムを載せて広場を見下ろすように建っている。建築当初は真ん中の大きなド−ムだけだったのが、その後になって四隅に小さなド−ムが付け加えられたという。
ヘルシンキ大聖堂
十数段の階段を上って左手の入口から堂内へ入ってみる。すると意外にも、簡素過ぎると思われる空間が広がっており、中央にシンプルな祭壇がぽつりとあるだけで、さっぱりとしたものである。こうして多くの教会や寺院を見学して回っていると、教会内部の装飾も様々でヴィリニュスの聖ペテロ&パウロ教会のように30年もかけて凝りにこった彫刻群が施されているかと思えば、この聖堂のようにシンプルな寺院もある。その時の建築者の考えによるものだろう。
大聖堂の内部
ここを出ると前の階段に腰を下ろし、広場を見下ろしながらしばし休息とする。広場の周囲はクリ−ム色の柔らかい色合いに統一された3〜4階建ての建物で囲まれている。写真左端の建物は官庁らしく、写真には写っていないが右側にはヘルシンキ大学の建物がある。そして、広場の周りをツ−ト−ンカラ−のトラムが往き来している。7年前に訪れた時は、この広場で軍事パレ−ドが行なわれていたのだが……。
地下鉄試乗
ここで憩っている間に、地下鉄に乗ることを思いつく。乗り放題のヘルシンキカ−ドをフルに活用しなくてはとの思いからである。最寄りの地下鉄駅を通行人に尋ねながら駅ホ−ムに下り、とにかく行き先も分からないまま乗ってみることにする。乗り心地は上々である。何駅か過ぎたところで適当に下車し、地上に出てみる。ここはかなり郊外に来た感じだが、駅前はバスの発着点になっていて、各方面別のバスが止まっている。そこで、今度はバスに乗り換えて波止場まで戻ってみることにしよう。
バスで波止場へ
手前のバスドライバ−に、波止場へ行きたいのだが、どのバスに乗ればよいかを尋ねると、向こうに止まっているバスに乗ればよいと教えてくれる。そこで、そのバスの年配ドライバ−に、「ハ−バ−」とか「ポ−ト」とか、「マ−ケットスクェア」などの単語を使って尋ねてもなかなか要を得ない風である。そこで地図を示し、ここに行きたい旨を告げるとやっと理解してくれ、それならこのバスに乗りなさいと教えてくれる。
コーヒーブレイク
バスは発車すると、町中を走ったり、海の見える海岸線を走ったりしながら、見事にマ−ケット広場前のバス停に止まる。やはり、間違いなくこのコ−スを回るバスだったのだ。ドライバ−がここですよと教えてくれる。「キ−トス!(ありがとう)」と礼を言って下車すると、再び公園内のレストラン「カッペリア」に行き、コ−ヒ−ブレイクとする。前と同様に、セルフサ−ビスのコ−ヒ−をカップにたっぷりと満たし、窓際の席に座ってゆっくりとくつろぐ。昨日と変わらぬのどかな風景を見ながら、憩いのひとときを過ごす。またいつの日か訪れた時にも、こんな変わらぬ風景を見せてくれるのだろうか?
最後の夕食は中華料理
最後の見納めをすると、席を立って夕食へ向かう。昨夕と同じ中華料理店を目指す。味も分かっていることだし、あちこち探し回るより手っ取り早く無難である。目の前の電停から電車に乗って昨日と同じ停留所で下車し、見慣れた中華店に入る。今夕の献立注文は焼き飯と野菜炒め、それにお決まりのビ−ルである。やはり期待しただけあって、確かな味でどれもおいしい。ヘルシンキ最後の晩餐は、こうして中華料理で幕となる。
一息入れてからゆっくりと席を立ち、まだ明るすぎる夕暮れの街をホテル目指して歩いて行く。7年ぶりに見た懐かしい風景もこれで見納め。明日はいよいよ帰国の日だ。現実の世界に引き戻される時がやってくる。また訪れるのは、いつの日のことだろう。11日間、9泊の旅もいよいよこれで幕引きだ。とにかく予定通り無事に過ごせたことを感謝しながら、静かに別れを告げるとしよう。
《ヘルシンキ観光情報》(2004年5月現在)
ヘルシンキでは、市内はもちろん、郊外やエストニア・タ−リンへのツア−など多種に用意されており、観光には不自由しない。ただ、寒い北欧の季節柄、年中催行されているとはかぎらないので催行期間の注意が必要だ。
・ヘルシンキカ−ド
これには次の3種類がある。
24時間……25ユ−ロ(3,400円)
48時間……35ユ−ロ(4,800円)
72時間……45ユ−ロ(6,100円)
このカ−ドには市内の交通機関は無料、各種博物館は無料、その他割引になる料金が多数ある。うまく利用すればもとは取れると思う。
・バスによる市内観光
毎日、所要1時間半。料金20ユ−ロ(2,700円)。ヘルシンキカ−ドでは8
ユ−ロ
・バスとボ−トによる観光
5月末〜9月始めの期間。所要3時間。料金28ユ−ロ(3,800円)
・森と湖の観光
6月中旬〜9月中旬の期間、火・木・日。所要4時間。料金43ユ−ロ
(5,900円)
・スオメンリンナ島
6月〜9月の期間、毎日。料金14ユ−ロ(1,900円)
・エストニア・タ−リン1日観光
毎日。料金139ユ−ロ(19,000円)
(完)
(2004年7月28日脱稿) |
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