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  No.2
(フィンランド)




10.ヘルシンキ市内観光

8日目。7時起床。昨日の雨も止んで、運良く今朝は青空が見える。絶好の観光日和だ。今日はシベリウス公園とセウラサ−リ野外博物館へ行ってみよう。7年前の旅で行ったところでもあるので、馴染みの場所だ。ホテル近くのバス停からシベリウス公園方面行きのバスが9時4分に出るという。それまでに朝食を済ませて準備しておこう。
 

1階の食堂に行くと、ここでも品揃え十分で文句なしだ。これで4軒目のホテルになるが、いずれの朝食もご馳走で言うことはない。なかでも部屋の設備、眺め、食事ともに揃っていたのは、やはりヴィリニュスのホテルだろう。ここはやや中心から外れた位置にあったが、環境抜群の場所だった。リガとタ−リンのホテルは観光その他の立地がよく、その点で劣るのがこのホテルである。そんな比較をしながら、たっぷりと朝食をいただく。
 

シベリウス公園へ
部屋に戻って一息つくと、昼食用のパン、ミルク、ジュ−ス、バナナ、リンゴ、水をバッグに入れて出発だ。それに忘れてならないのがカメラと傘である。時間までにバス停に行って待っているが、なかなかやって来ない。バス停を間違えたのかな?と心配になって確かめるが、24番バスが通るのはここに間違いない。やきもきしていると、やっとバスの影が遠くに見え始める。間違いなく24番バスだ。前回の旅では市内観光バスに乗ってめぐったのだが、今度は様子も分かっていることだし、自分でのんびり回ってみたいのだ。
 

手をあげて合図するとストップする。そこで、シベリウス公園へは行くのかをドライバ−に尋ねるとOKとのこと。ヘルシンキカ−ドを見せながら、安心して乗り込む。乗客は少なく、がらんとしている。走り出したバスの窓から風景を眺めていると、どうも中央駅方面へ行っているようだ。バスにまかせて乗っていると、駅近くの大通りに入って港の方へ曲がって行く。すると間もなく、モ−タ−プ−ルらしき停留所に入ってストップする。乗客は全部降りている。そこでドライバ−が私に向かい、「心配しないで、このまま乗っていてください。ドライバ−がここで交替し、それから公園の方に行きます。」と教えてくれる。なるほど、このモ−タ−プ−ルは運転手の交替場所なのだ。
 





中央駅付近の大通り










間もなく、入れ代わりに別のドライバ−が乗り込み、間違いなく公園の方向へ走り出す。街の中心部から外れて間もなく走ると、シベリウス公園が見えてくる。バスから降りて道路を横切り、隣接した公園に入ると人影はなくひっそりと静まり返っている。まだ、観光客には時間が早いのかもしれない。
 

広場の片隅には以前と変わらぬステンレスパイプ製のモニュメントとシベリウスの首から上の肖像が朝日に輝いている。






左がパイプのモニュメント
右側岩の上に首の肖像が・・・








それと反対側の片隅には、これも変わらず小さな噴水池が水をたたえている。この公園は国民的英雄であり、交響詩「フィンランディア」でも有名な作曲家ジャン・シベリウスを記念して造られたもの。ステンレスパイプは1967年に女流彫刻家の作によるもので、夜には美しくライトアップされるという。
 

モニュメントのある広場のすぐ側には、ヨットがたむろする小さな入り江のある海が広がっており、その岸辺には遊歩道があってジョギングやウォ−キングする人々の姿が見られる。




 静かな海の側に広がるシベリウス公園。




こちらのウォ−キングは少し変わっていて手ぶらで歩くのではなく、ノルディックスキ−のように両手にスティックを持って歩く“ノルディックウォ−キング”なのである。この方が疲れないのだろうか?
 





これがノルディックウォ−キングのスタイル(パンフレットより転載)








知らぬ間に、モニュメントの広場には欧米の観光客が押し寄せ始めている。その中にまじって日本人団体客の姿も見える。尋ねてみると、北欧周遊中の30人のグル−プだそうである。側の道路際には次々と観光バスが止まり始めている。その道路を横切って向こう側の公園に出てみる。バス通りがこの公園を貫通して分断しているのだが、なんとも惜しいことである。そこには人気のない白樺の林が広がっており、春の穏やかな木漏れ日が静かに降り注いでいる。芝生の上には春の陽射しをいっぱいに受けながら、小さな黄色い花が一面に咲き広がっている。なんとも心休まる風景である。
 





芝生の中一面に黄色い小花が咲き乱れている










セウラサ−リ野外博物館
ひとしきり散策し終わるとバス停へ戻り、次のセウラサ−リ野外博物館を目指す。しばらく待って、やって来たバスに乗ると、その終点が目指すセウラサ−リである。この公園から遠くはなく、間もなく走ると終点に到着である。この辺りはちょっとした郊外の感じで、海岸になっている。バス停前が博物館のある島への入口になっている。この博物館は「野外」と銘打ってあるように一つの離れ島全体が国立公園になっており、その木立ちの中に18〜19世紀の家屋や教会が点在しながら展示されている。
 

この島へは細く白いスマ−トな木造橋でつながっており、これを渡ったところに料金支払い所がある。今日はどうしたことか閉まっていて係員の姿が見えない。11時開園になっているのだが、門がないのでみんな自由に出入りできる。私の場合はヘルシンキカ−ドがあるので無料になる。ここは道が何本にも分岐しているので迷いやすい。だから、よく案内図を見てから回らないと無駄足を踏んでしまう。
 





橋の向こうが野外博物館のある島









料金所を過ぎて左手の海岸に沿って歩いて行くと、ひょっこり何処からともなく可愛いリスが姿を現す。7年前に来た時とまったく同じ風景だ。少し進むとまたぴょんぴょんと木陰を飛び跳ねながら走り回っている。どうも、前回の時より数が多くなっているみたいだ。ここでパンクズをやってみよう。手の平にパンを少しもみほぐして差し出すと、遠くからそれをめがけて駆け寄って来る。その様がなんとも可愛いものだ。手の平に前足を乗せて食べるものもいれば、足を乗せるだけでそっぽ向いて食べないリスもいる。きっとパンは食べ飽きているのだろう。
 





 リスの散歩















ん、これおいしいなあ










ここのリスは茶色っぽい毛でお腹の部分は白い毛になっている。あちこちで出没するリスたちと戯れていると、時間が過ぎるのを忘れてしまう。そうこうするうちに、今度は上空からホバ−リングしながら小鳥が舞い降りてくる。やはり、いたっ! 前回の時も、昼食を取っているとエサを欲しがってやって来たのだ。手の平にパンくずを載せると、ホバ−リングしながら上手に手の上に乗り、エサをついばむ。その人懐こい動作に、思わず感動したものだが、その仲間の小鳥たちが今も健在なのだ。ほんとに人懐こい習性を持った小鳥である。
 

そのうち、今度は鴨さんが腰を振り振りエサを求めてやって来る。その中に可愛い子鴨を引き連れた親子がいたりして、訪れる者の心を癒してくれる。ここは子供の入園は無料だし、親子連れのピクニックには絶好の場所である。事実、今日は日曜日とあって、家族連れの姿が目立つ。そんな中にまじって観光客の団体も見られる。日本人のグル−プかな?と思っていると、韓国の人たちだったり、なかなかまぎらわしい。なかには日本語で話しかける韓国人もいたりして驚かされる。
 





カモの親子連れ
離れちゃダメよ









ひとしきり、小動物たちと戯れた後、優しい木漏れ日が降り注ぐ林の中の道を奥の方へ進んで行く。すると、ところどころに昔の教会や建物が木陰の中に姿を現してくる。そんな建物の中をちょっと覗いたりしながら、さらに奥へ進み海岸線に出る。以前、訪れた折に格好の岩場があったのを覚えており、そこでまた昼食にしようと探すことにする。だが、海岸線に出ても見覚えのある岩場は見当たらず、やむなく岸辺の草むらに腰を下ろして昼食にする。多分、海岸線に出る小路を間違えたのだろう。
 





木漏れ日のそそぐ林の道















木陰に昔の教会が・・・










食事を終えて周りの風景にのんびりひたっていると、それまで陽射しが差して暖かだったのに、急に暗雲が広がり始めて日陰になり、途端に冷え込んでくる。ここが潮時とばかりに腰を上げ、帰り支度を始める。てくてくと林の中を周回しながら出口の方へ向かって歩いていると、急に風が強くなり、霰がパラパラと降り始める。その豹変ぶりに驚きながら、傘を取り出して急ぎ足になる。食事をしていた時とは打って変わり、気温が一気に下がって傘を差す手が冷たい。みんな何処に散らばったのか、姿が見えない。
 

出口の架橋を渡りながら向こう岸を見ると、ちょうどバスが来て待っている。それに飛び乗って市内へ戻る。そのころになると、先ほどの霰を降らせた暗雲は何処かへ消え去り、再び穏やかな春の陽射しが降り注ぎ始めている。朝と同じ駅近くのモ−タ−プルに着くとそこで下車してトラムに乗り換える。これから波止場の方へ行ってみよう。
 

マーケット広場
波止場前でトラムを降りると、その前にはエスプラナ−ディ公園が以前と変わらぬ美しい姿を見せて市民の憩いの場になっている。この波止場に向かって細長く伸びる公園の両側には、ポホヨイスエスプラナ−ディ通りとエテラエスプラナ−ディ通りが走っており、それぞれインフォメ−ションや高級な店舗が並んでいる。
 





エスプラナ−ディ公園
右側はポホヨイスエスプラナ−ディ通り













東西に長く伸びるエスプラナ−ディ公園










公園を出て電車の線路を横切り波止場へ向かうと、その手前にバルト海の乙女「ハ−ビス・アマンダ」の像が4頭のオットセイに囲まれて噴水の中に変わらぬ姿で立っている。






バルト海の乙女「ハ−ビス・アマンダ」の像









ここを通り過ぎると波止場に出る。そこにはテント張りのマ−ケットが並び、観光客などの人出で賑わっている。こうして以前と変わらぬ様子を眺めていると、なんだかうれしい気持ちになってくる。ここからふと北の方を眺めると、その向こうの丘の上にチョコレ−ト色のウスペンスキ−寺院が建っているのが見える。
 





マーケット広場の賑わい















丘の上にはウスペンスキ−寺院が・・・









マ−ケットをひとめぐりしていると、いい匂いがただよってくる。その方向に近寄って見ると、サ−モンやポテトなどを鉄板の上でジ−ジ−と焼いている店がある。本場のサ−モンがおいしそうなので、つい魅かれて食べることに。そこで、サ−モン一切れにポテトを添えてもらい、それにビ−ルを求める。テント横のテ−ブルに腰掛けて食べ始めると、なかなかの味でおいしい。結構な腹ごしらえで、昼食はすでに済ませているのに、すんなりとお腹に入ってしまう。
 





サーモンの鉄板焼き










他の店では、でかいサ−モンの切り身を売っている。本場らしい店頭風景である。これを丸ごとムニエルにすると、なかなかのサ−モン料理になる。この大型切り身のサ−モンの姿を見ると、前回の旅で食べたホテルのサ−モン料理が思い出されてならない。
 





でかいサーモンの切り身











カイヴォプイスト公園
マ−ケットから引き返し、今度は港の突端に広がるカイヴォプイスト公園に向かう。マ−ケット前の電停からトラムに乗って2つ目の停留所で降りると、その前が公園である。ここから、ほとんど人影の見えない美しい林の緑陰を散策しながら奥の方へ進んで行く。そして突端の土手を上りあがると、バルト海を見渡せる海岸線に出る。ここからの景色がとても素晴らしく、静かな海に小島やヨットまで浮かんで興趣を添えている。海に向かって、何かを叫びたい衝動に駆られる。
 





美しいカイヴォプイスト公園の緑陰



 カイヴォプイスト公園の突端からの眺望。向こうの海はバルト海。




カフェでコーヒーブレイク
ひとしきりバルト海風景を楽しむと、もとの電停へ戻り、再び波止場のマ−ケット前まで引き返す。すぐ前のエスプラナ−ディ公園の入口にある有名レストラン“カッペリ”に入って一休みしよう。ここは1780年代以来の老舗のレストランで、建物も中の雰囲気もなかなか感じのいいところである。コ−ヒ−やケ−キなどはセフサ−ビスになっているので、気楽に過ごせる。そこでコ−ヒを大カップになみなみと注ぎ、窓際の席に着いてコ−ヒ−ブレイクとする。目の前の公園を眺めたり、電車の往来や遠くにマ−ケットを眺めたりしながら、ゆっくりとくつろぐ。
 





レストラン“カッペリ”











ム−ミングッズ
公園の横の通りに小さな玩具店が目に留まる。ム−ミンに関するグッズがないかとカフェを出てから行ってみる。狭い店内には様々なぬいぐるみその他の可愛い子供用品が揃えてあり、その中にム−ミングッズが少し並べてある。そこで、スナフキンとミ−の小物グッズをお土産に買う。それにしても、この街ではあまりム−ミンに関する宣伝めいたものが見当たらないので、女性の店主に「この地の人たちはあまりム−ミンには興味関心はないのですか?」と尋ねると、「フィンランド人はナチュラルな人間ですから……。」という返事が返ってる。ム−ミンはフィンランドを代表する目玉の一つでもあるのだろうに、観光向けにもっと宣伝してもよさそうなものだが、現地の人たちはそこまで思わないらしい。
 

トラムで遊覧
折角、乗り放題のヘルシンキカ−ドを持っているのだから、フルに活用してみよう。3Bのトラムは環状線になっているので、これに乗って車上からの市内遊覧を試みてみる。2両連結のスマ−トな電車は乗り心地もよく、静かに走行する。ビルの谷間を走るかと思えば、美しい並木通りを走ったりと、なかなか楽しませてくれる。この街はほんとに静かで、慌ただしさの雰囲気がどこにも感じられない。今日は日曜日なので、特にひっそりとしているようだ。北欧の街を訪れると、何かしらほっとするのは、やはり人込みが見られないからだろうか?
 





トラムの車窓からの風景















美しい並木道を走る











中華で夕食
少し早いが、ついでに夕食を取って帰ろうと中央駅付近の電停で下車し、通りを歩いているとショッピングセンタ−らしき建物が目に留まる。中に入るとすぐに中華レストランが目に入る。割りと大きな店で、中国人のスタッフが立ち働いている。席に案内され、メニュ−を見てタンメンス−プとヤキソバ、それにビ−ルを注文する。多分、これがヤキソバ風の料理だろうと推測したのがうまく的中し、ボリュ−ムたっぷりの麺をス−プと一緒にいただく。なかなかの味に満足して中華夕食を終える。料金は12ユ−ロ(1,640円)と結構高い。北欧は東京と同じで、高物価が問題である。
 

あとは満腹のお腹を抱えながら、まだ明るすぎる夕暮れの通りをホテルへ向けてゆっくりと歩いて行く。明日一日でヘルシンキともお別れかと思うと、思わず夕空を見上げて新鮮な空気を深呼吸したくなる。また今度来れ足取りでホテルに戻る。



(次ページは「市内観光2日目」編です。)










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