N0.2
(&カンボジア)











3.世界遺産・ハロン湾観光
 
朝の風景
2日目。早朝5時半に起きて窓外を眺めると、朝ぼらけの中にハノイの街が夜の眠りから静かに目覚めようとしている。こうして見ると、赤屋根が多いことを除けば、日本の街の風景とほとんど変わりがない。やはり、ここもアジア圏だからだろうか? 今朝もいい天気のようだ。だが、少し風が出ている。ハロン湾の海上は大丈夫だろうか? 気にかかるところである。もう少し明るくなってからパノラマ写真を撮ってみよう。朝の気温は25度、北部だけあってなかなか快適に過ごせる。




ハノイ市街の朝明けの風景(ホテルのテラスより)




昨夜は部屋にフル−ツのサ−ビスがあり、夕食から帰ってみると形の良いリンゴが1個テ−ブルの上に置かれていた。だが、食後の満腹では入る余地がない。今日、帰ってからいただくことにしよう。
 

今日はホテルを7時15分に出発し、待望のハロン湾観光へ繰り出す。途中、「陶芸の里」バッチャン村に立ち寄りながら、ハロン湾まで3時間の行程となっている。また夜には「水上人形劇」の観賞の予定があり、なかなか多彩な観光の1日になりそうだ。食堂は6時に開くとのことなので、早々に朝食に向かう。ハム、ソ−セ−ジをはじめ、ベトナム料理らしき肉、魚、サラダ、それに春巻きなども揃い、お粥も用意されている。これに各種のパン、フル−ツが付いている。少しずつ取り分けてミルクとコ−ヒ−で朝食を楽しむ。
 

通勤風景
食後に玄関前に出てみると、通りはバイクの列である。すでにラッシュのピ−クを過ぎたのか、割りと少ない感じである。この地では、バイクが全体の75%を占め、他は自転車が25%で、車はほんの少しという割合だそうだ。これまではホンダ、スズキのバイクが多かったらしいが、今では中国製のバイクが多くなったとのこと。これだと5万円程度買えるが、ホンダなどは15万円程度もするという。これはインドネシアでも同様だ。
 

朝の通勤風景。左の並木の白ペンキに注目。

バイク乗車は2人までの規制になっているが、3人乗りはよく見かけられ、時々4人も乗っている光景に出くわす。運転者の夫の前に子供1人、その後部にもう1人、そして最後部に母親といった具合である。ヘルメット着用は義務づけられていないそうで、女性の中にはホコリと排気ガス防護のためか、スカ−フで覆面スタイルにした姿が多く見られる。
 

幹の白ペンキは?
上の写真の左側の並木の幹の下部には白いペンキ様のものが塗ってあるが、その理由を尋ねてみると、虫除けのためだという。この光景は町中の到る所で見られるのだが、樹木とは無関係のコンクリ−ト製の電柱にまで白く塗ってあるので、その理由が分からない。この白塗り光景は、ウズベキスタンでも見られ、そこでも同じ虫除けのためだと言っていたのだが……。
 

陶器の里バッチャン村へ
部屋に戻り、カメラ、フィルム、水をバッグに入れると、いざ出発である。早朝の7時15分にホテルを出発したバスは、一路ハロン湾を目指して走り出す。郊外にさしかかると道を右にそれて川岸に出、その堤防の上の凸凹道を走って行く。ガイド君曰く、「みなさん。しばらく朝の運動をしてください。」だと。バスの揺れをうまくジョ−クでかわすガイド君のウィットに免じて我慢しよう。
 

こうして河岸沿いののどかな風景を見ながら悪路を走ること40分、ようやく第一の目的地バッチャン村に到着である。ひなびた田舎の一角にのどかな通りがあり、その両側に陶器専門店が軒を連ねて並んでいる。まだ時間が早いせいか、あまり人の姿は見られない。ここはハロン湾観光に向かう団体観光客が立ち寄るコ−スになっているようだ。
 

陶器店がずらりと並ぶのどかなバッチャン村の通り

バスはその1軒の陶器店前に停車し、ここで見学兼ショッピングの時間となる。4、5階建てのこの店舗は、各階陶器がびっしり陳列されている。この最上階は工房になっており、まずはここへ案内される。作業場では数人の職人が絵付けの真っ最中だ。細筆で皿に一枚一枚手書きで器用に絵柄を描いていく。縁取りも見事だ。別の場所ではロクロを回して粘土の型どり作業をしている。この風景はどこの国も同じなのだ。
 

店内には陶器がびっしり








 絵付け作業の最中
















ロクロを回すのはいずこも同じ

工房の見学が終わると、あとは階下に下りながらショッピングである。この地の陶器は有名らしく、海外へもかなりの輸出をしているとのこと。とはいうものの、こちらとしてはこの重い陶器をみやげにするのには二の足を踏む。結構、安いものもあるようだが……。


接待のお茶をいただくと、時間を持て余して外に出る。建物の裏手に回ってみると、そこには静かな川が流れるのどかな田舎の風景が広がっている。遠く彼方に、建物が散在しているのが見える。なんとも心休まる風景である。だが、さすがに直射日光に当たるとじりじりと暑い。



静かに川が流れるのどかな田園風景。川向こうの堤防をバスは走ってきた。




村の市場
ここで40分ばかりを過ごした後、ようやく出発である。ここから幹線道路に通じる田舎道を走って行く。その途中に村の市場がり、取れ立ての野菜や果物が路傍に広げられている。いかにも田舎の市場といった感じで、どれもこれも新鮮でおいしそうだ。ノン(ベトナム特有の三角帽子)をかぶって並ぶ売り子のおばさんたちが絵になる風景をつくり出している。この帽子はヤシの葉で作られた軽くて頑丈なもので、スコ−ルが降っても心配なしのようだ。みやげ品店で売ってはいるが、かさばって荷物になるのが難点だ。
 

村の市場の風景。おばさんたちのノン姿がさまになっている。

制限速度50km
幹線道路に出ると、広いアスファルト道路をスピ−ドを上げて走行する。スピ−ドを出すといっても、ここの制限速度は時速50kmまでで、オ−バ−するとかなり高額の罰金が課されるらしい。この道路なら80kmまでは行けそうだが、そこは社会主義国家のこと、なかなか時代に即した改変ができないとガイド君はボヤク。そこで、取り締まり官の有無によってスピ−ドが異なることになる。今日はいないとみれば、かなりのスピ−ドアップをして走行する。だからお互い、対向車が警官の有無をライト点滅で教え合っている。これは日本の風景と同じである。
 

ハノイからハロン湾までの所要時間は一応3時間となっているが、これは警官がいないことを前提にしたハイスピ−ドで測られた時間である。だからもし、警官の取り締まりがあると、4時間近くかかってしまう。要は取り締まり警官の出動如何によって所要時間が大きく左右されるのである。
 

途中の風景は・・・
左右の車窓から流れる風景は、のどかな田園風景で、どこまでも田圃が広がっている。今の時季は刈り取られたところが多く、ところどころに青田が残っている。この地方もバリ島と同じく、田植えや稲刈りの時季は各農家でまちまちである。年三毛作だから、田植えの時季など、さほど気にすることはないのだろう。
 

ハロン湾へ向かう途中の風景


同 上。どこまでも田園風景がつづく。

Humanity center
かなりの距離を走ったところで、途中休憩をするという。横道にそれて入って行くと、そこには“Humanity center”と大きく書かれた看板が出ている。ここは人道支援センタ−だそうで、ベトナム戦乱などで身障者になった人々を救援するための施設だそうだ。ここにはすでに多くの観光バスが集いより、狭い駐車場に押し合いへし合いで止まっている。欧米人の観光客もいっぱいだ。
 

下車して用足しを済ませると、大きな施設の建物に入ってみる。そこには宝飾品、衣類、土産品、食品など数多くの品々が展示販売され、各国の観光客で賑わっている。韓国、中国、ドイツ、フランス、英語と各国語が入り乱れて飛び交い、騒然としている。そしてその一角には刺繍の作業場が設けてあり、数十名の女子職人たちが刺繍を縫っている。その見事な手捌きにしばし見入る。
 

多数の女性職人さんが刺繍縫いに従事している。


見事な刺繍縫いの手さばき

ここで働く人たちは、みんな身障者の人々で、こうした商品の売り上げ収入が彼らを支えているらしい。ハロン湾観光に向かう観光客は、トイレ休憩を兼ねて、すべてここに立ち寄るコ−スになっているようで、自然とお金が落とされる仕組みになっている。ここをはじめ、ベトナムでのショッピングなどは、すべて米ドル支払いでOKである。ただし、釣り銭が1ドル未満になると現地通貨のドンで支払われるから注意が必要だ。だから、ドルさえあれば日本円は不要であるが、逆に日本円は通用しない。米ドル強しである。
 

ここで40分あまりの休憩を取ると、再びバスは幹線道路に戻って走り出す。この道路は広くて高速道路の感じがするが、そうではないそうで、普通の有料道路となっている。その料金支払いの方法が変わっていて、一定区間の距離ごとに料金所が設けられており、その都度支払うことになる。ハロン湾に至るまでに3ヶ所の料金所があり、都合3回も支払うことになるのだとガイド君は説明する。
 

ブタはバイクに乗って
かなり走ったところで支線にそれ、やや狭くなった田舎道に入る。ここで珍しい光景が目に飛び込んでくる。ガイド君が「これ珍しいでしょう?」と案内するので、その方向を見ると、なんとバイクの荷台に大きなブタを乗せて走っているのだ。胴体を縛られて仰向けに寝かされているのだが、身動きできないためか、じっとしておとなしく暴れもしない。ブタ君も南国の強い陽射しにお腹をさらして、さぞや暑いことだろう。だが、こんな時でなければ、お腹を日干しすることはないだろうから、彼らにとっては貴重な?機会なのかもしれない。こんなのどかなシ−ンは、日本ではまず見られない光景であろう。
 

ブタとバイク。縛られて仰向けに乗せられたブタ君

今日は生憎と警官の取り締まりが多い様子で、あまりスピ−ドアップができないらしい。そのため、ずいぶんと時間を要してようやくハロン湾近郊まで来たようだ。右手遠くに、ぽっこりと竹の子のように盛り上がった山並みが見え始め、これがハロン湾に近づいたことを教えている。もう間もなくのようだ。
 

ハロン湾到着
やがて右手に海岸線が見え始めると、とある町の中に入る。この海岸の一角に遊覧船の発着場があり、ハロン湾観光のバスはすべてこの広いモ−タ−プ−ルに集結する。


ハロン湾遊覧船発着所前のモータープール

これまで世界遺産として有名なハロン湾の風景を何度となく写真などで見てきたが、これからいよいよその実際をこの目で見るのかと思うと、大きな期待にわくわくと胸が高鳴る。果たして、どんな姿を見せてくれるのだろう? 今日の天候は申し分ないのだが、やや風が出ている。鏡のような海面に浮かぶ奇岩の風景を見たいのだが……。
 

下車してしばらく待っていると、ガイド君が遊覧船の乗船券を買い揃え、いよいよ乗船開始である。ここの船溜まりには無数のジャンク船が係留され、観光客の乗船を待ち受けている。その光景は壮観で、それほどハロン湾クル−ズの観光客が多いということだろう。こうして並みいるジャンク船を眺めていると、なんとなく中国の風景が思い出される。この地のすぐ隣は中国なのだ。そのこともあって、ベトナムへの観光客数の1位は中国だそうだ。あと、欧米、日本、韓国と続く。



遊覧船(ジャンク船)の船溜まり風景。無数のジャンク船がひしめいている。




ハロン湾クル−ズの料金
ハロン湾クル−ズには、さまざまなツア−プログラムが用意され、時間単位から1日〜3日間の設定があって、それぞれ料金が異なる。あるクル−ズ会社の料金によれば、36人乗りの場合:−

*4時間…………400,000ドン(=2,600円)
*6時間…………550,000ドン(=3,600円)
*7時間…………680,000ドン(=4,800円)   
*9時間…………900,000ドン(=5,900円)

このほか、ジャンク船に寝泊まりしながらカヤックを楽しんだりする2泊3日のクル−ズもある。宿泊プランだと、サンライズやサンセットの風景が楽しめるし、また月光に照らされる幽玄の世界も楽しめて素敵なハロン湾が満喫できそうだ。時間があれば、1〜2泊のクル−ズを楽しむのも優雅なことだろう。今日のわれわれのクル−ズは3時間コ−スで、ハロン湾のハイライトコ−スの周遊と島に上陸して鍾乳洞を見物する。
 

いよいよ乗船
遊覧券にパンチを入れてもらうと、改札口を通って桟橋に向かう。海水は茶色にくすんで濁っている。お世辞にもきれいな海とは言い難い。そこに列をなして並んでいるジャンク船の1隻に乗船する。それが、われわれ一行のチャ−タ−船である。
 

乗船の改札口


これがわれらのチャーター船

船内キャビンは両サイドに分かれて4人掛けのテ−ブルが配置され、しゃれた雰囲気になっている。ここで海鮮料理の昼食を食べながらハロン湾を巡るのである。なんと素敵で豪奢なこと! 宿泊できるジャンク船は2階建てになっており、個室キャビンになっていて各部屋にベッドが置かれている。この船は遊覧だけで、その宿泊設備はない。

船内風景。こちらを振り向いている若い女性は現地人のガイド研修生。
まだ大学生だが、日本語ペラペラ。


もたつく出航
いよいよ出港しようにも、周りを他のジャンク船に取り囲まれて身動きが取れない。いったいどうするのかと他人ごとのように眺めていると、周りの船が少しずつ譲り合って進路を開け、それらと入れ代わりながら徐々に離岸する。だが、前進、後退を繰り返しながらもたついているので、隣船に乗っている欧米の観光客たちに、「この船、いったいどっちへ行くんだい?」とからかわれる始末。
 

船はようやくジャンク船のもつれから解き放たれ、沖へ向かって静かにゆっくりと動き出す。このジャンク船、もともとスピ−ドが出ないのか、それとも抑えているのか分からないが、のんびりとした速度で航行する。これくらいのスピ−ドがハロン湾の景観を観光するのにはちょうどいいのかもしれない。あまり早いと、景色があっという間に過ぎ去り、ゆっくりと観賞できないからである。
 

船上昼食は海鮮料理
はるか遠くの彼方に島陰が見えるが、そこに本命の景観遊覧コ−スがあるのだろう。そこまではかなりの距離があるようで、その間に昼食を取ることになる。船首部分に調理室があり、そこで料理されてテ−ブルへ運ばれる。今日の料理はこの海で獲れた海鮮料理である。ビ−ル(2ドル)を注文して食事が始まる。
 

まず最初はゆがいた車海老である。なかなか型のよい海老で、両手で殻をむしりながら口に頬ばる。う〜ん、海老だけに、なかなかおいしい。次はカニである。ズワイガニや毛ガニのような大型のカニではなく、普通の小型カニ(ワタリガニ?)である。むしってもあまり身はないが、やはり味はよい。そして今度は、シャコの登場だ。ここでも獲れるのだ。これもゆがいたもので、海老に比べると若干味は劣る。これらの甲殻類は、ひょっとすると日本にも輸出されているのかもしれない。
 

海鮮は以上で終わり、次は揚げ春巻き、ス−プ、野菜、ご飯と次々に登場する。やはり、ご飯はス−プをかけて食べるのがおいしい。最後のデザ−トはモンキ−バナナである。ビ−ルを傾けながらこれらの料理をいただくと、もうお腹は満腹である。海上はやや風があるが、さざ波程度のものだけに、船の揺れはまったく感じられない。これが時化の海だったら、満腹のお腹ではとてもたまらない。船酔いで観光どころではなくなるだろう。
 

その心配もなく、ジャンク船は食事の間にもゆっくりと進んで行く。食事が終わって二階のデッキに上がってみると、前方に起伏に富んだ島並みが見えている。いったい、あのどこに世界遺産登録の絶景が隠れているのだろう? 楽しみにしながら船の行方を追っていると、少し面舵に切って右前方に転進して行く。海上には三々五々とジャンク船が浮かびながら、同じ方向を目指している。



起伏に富んだ島並みの遠望。ここから右方向へ進んでいく。




ザボン売りの船
だんだんと島に近づくと、その一角にある狭い海峡のような水路を目指して行く。なるほど、ここが絶景シ−ンが展開する海峡の入口関門なのだ。すべての観光クル−ズ船が、ここを目指して一列に並ぶようにして集まってくる。


ここが絶景コースの入口海峡。1列に並んで遊覧船がとおる。

ふと気づくと、船側に小船が音もなく近寄ってくる。見ると、大きなザボンの実を山積みした船で、一人の少年が身軽に本船に飛び移ってセ−ルスを始めている。
 

ザボン売りの船。家族ぐるみで商売している。

ザボン漬けならともかく、生実のままでは淡泊すぎておいしくない。みんなは、その珍しい物売り船の様子を眺めるだけで、だれも食指を動かさない。よく考えると、この船はすべての観光船が集中するこのポイントに待ち構えて、セ−ルス効果を上げようとしているのだ。なかなかの知恵である。
 

(次ページへつづく・・・。)










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