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     N0.13






旅のコース





15.世界自然遺産・イシュケル国立公園

チュニジア6日目。朝6時に起床。旅も最終段階に入って来たが、身体的な疲労もほとんどなく、体調はいたって快調である。夜早く床に就き、睡眠も十分取れるからだろう。快晴続きの天候と同様に、身体の方も最後まで快調続きであってほしいものだ。旅の最後はチュニスに3泊しながら、ここを基点に観光する。


さて、今日の観光コースはチュニジア北端部にあるイシュケル国立公園を見物し、そこから南下して世界遺産・ドゥッガ遺跡を観光、その後チュニスへ戻る予定である。今日もかなりの走行距離のようだ。これに備えて、まずはバイキング料理の朝食で腹ごしらえである。高級ホテルだけに、品揃えは豊富である。


食事を終えて玄関先に出てみると、早朝というのに前のストリートは激しい車の往来でいっぱいだ。


ホテル前のストリート・朝の風景

部屋に戻って窓外の景色を眺めると、周囲は森に覆われてなかなかの好環境である。だが、大都市らしくスモッグがただよっている。都市部はどこの国も同様のようだ。これでは世界的な地球温暖化の進行もうなづける。そんなことを思いながら一息つくと、そろそろ出発の時間である。



 ホテルの窓より眺めた朝のチュニス市街。上空にはスモッグがただよう。




8時半に出発したバスは北部を目指して郊外の道をひた走る。車窓に流れる風景は、昨日までのオリーブ畑の風景とは異なって、美しい草原が広がる光景が飛び込んでくる。う〜ん、これはまさにヨーロッパの田園風景ではないか! まさかこのアフリカの大地でこんな風景を目にしようとは、思いもよらぬ想定外のことである。その朝日に輝く美しいシーンに見とれながらひと時を過ごす。


アフリカの地とは思えない草原の風景


美しい草原の風景はヨーロッパを連想させる


美しいグリーンが目にしみる

チュニスから1時間45分走ったところでイシュケル国立公園入口に到着。ゲート横の事務所で手続きを済ませると、バス1台がやっと通れる細道をさらに奥へと進んで行く。この先、果たして駐車場はあるのだろうか?と危惧するほどの状況である。ゲートから10分ほど走ったところで道が開け、その先に整備された駐車場が見える。ちゃんと観光用に設備が整えられているのだ。その側には温泉が楽しめる建物もある。こんな所に温泉が湧くのだ。


今では国立公園になっているが、この地域にはもともと住み着いている住民の住居も見られ、牛や羊などの放牧をしている様子が見られる。世界遺産に登録されたことでもあり、将来的には他の場所に移住してもらう予定らしいが、住民の生活がかかっているだけに、そう簡単には行かないのが実情のようだ。


パーキングから急階段をしばらく上って行くと展望台に出る。ところが展望台としてベンチなども設けられているが周囲の木陰が邪魔して眺望がきかない。これでは展望の意味がないじゃないのとがっかりする。この展望所の片隅には小さな博物館の建物があり、その中にはこの公園内に生息する動植物の種類や分類、それに多数の野鳥の写真などが展示されている。


この博物館の横手から上にのぼる山道が続いている。この展望所は山の中腹に設けられているのでよく眺望できないわけだ。そこで、もっと高所に登れば大湿原の全景が見えるに違いないと思い、山道を上り始める。息を弾ませながらしばらく登って行くと、雑木林を切り開いた斜面が現れ、そこから180度ぐらいの範囲の眺望ができる。ここまで登らないと展望できないわけだ。


だが、これでは不満足で、もっと360度の眺望がほしいところだ。そのためには、前方に広がる斜面を登りあがり、その頂上に立つしかない。駐車場からかなりの階段や山道を登って来たので、少々疲れている。だが、多分その向こうにあるはずの頂上まで登ってみたい。そう心に決めると、雑木林を切り開いただけの道なき道を踏み分けながら、息を切らして登って行く。雑木林を切り開いているところをみると、そのうちこの場所に新しい展望台を設ける予定なのだろうか?


しばらく登り続けると、その向こうがぱっと開けて360度の大景観が飛び込んでくる。やっと頂上に到達したのだ。ここで深呼吸一番、呼吸を整えてからゆっくりと周囲を見回す。ここからは、まさに全方位が見渡せる絶好のビューポイントで、眼下には陽光に映える広大な湖と湿原が静かに広がっている。しかし、距離が遠いせいか、動物や鳥類の動きは何一つとして視野に入らない。まさに動きのない眠った世界のようで、これでは世界遺産の名が泣こうというもの。



 イシュケル国立公園の全景。ほぼ360度の景観。右端の石ころだらけの道なき道を登ってくる。




この大湿原は1980年に世界自然遺産に登録さているが、その総面積は126平方キロ、約200種類の鳥や動物たちがここで冬を越し、500種類以上の植物が生い茂っている。ここにはチェコやドイツなどの中欧地域から飛来する渡り鳥が冬を越すらしい。またこの湖では、うなぎ、ボラ、ヒラメ、スズキ、エビなどの漁業も盛んに行われているという。そんな自然公園なのだが近年、密猟者、干拓、環境汚染などで荒廃が進み、96年には危機遺産にも登録されている。実に悲しいことである。



(次ページへつづく・・・。)










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