24金の護身符
ゆっくりと身仕度を整え、最上階の素敵な展望食堂へ上って行く。「ザオシャン ハオ(おはよう)」と係員に挨拶を振りまきながら、楽しい中華のバイキング料理を取り分けて皿に盛り付ける。席に着いて食事していると、隣の席に3人連れの中国僧が食事している。ガイド氏の話によると、彼らはこの地に寺院を建立する事業の打ち合わせに上海から来ているという。
その僧の1人が、食事を終えて立ち去ろうとする私を呼び止め、何やら差し出して手渡そうとする。見ると、朱色のカバ−に入ったお守りである。それがなんと金色に輝くクレジットカ−ド大の護身符で、24金と書かれている。表には菩薩像が刻印され、上部に「南無観世音菩薩」、下部に「開光護身符」と書かれている。裏面には色即是空、空即是色の「般若経」がびっしりと書かれている。
護 身 符
24Kと書かれたカバー 表には観世音菩薩 裏には般若経
上質の純金製だけにプラスティックと違って少々の重みがある。これは貴重な記念物を戴いたものだと、丁寧に礼を述べて感謝する。中国語を話せないのが残念で、“シエシェ(ありがとう)”以外の語は話せず、どうしようもない。ただただ深くお辞儀をするだけで、あとは手振り身ぶりで謝意を表すのみ。なんとももどかしいかぎりである。
朝の街路の様子
この場を去ると階下の玄関前に出て、通りの様子をうかがう。前を走る北京南路は、まだひっそりとして走る車の数も少ない。ここには鬱蒼と茂る並木が続いているのだが、これほどの緑陰ができれば、道路の日照りも避けられて気温の上昇も防げるだろう。だが、落ち葉の掃除が難題で、その維持管理は大変に違いない。そんな思いを浮かべながら、あとは部屋へ引きあげ、出発までのひとときをゆっくりと過ごす。
ホテル前を走る北京南路の風景
待ち時間表示の信号機
9時半になってホテルを出発、最初の観光ポイントである博物館へ向かう。バスの中から通りを眺めていると、ふと交通信号に目が留まる。この街の信号機はなかなか合理的で進んでいる。というのは、信号が変わるまでのタイム表示機が取り付けられているのだ。だらか、信号待ちしていても、いらいらせずにすむというわけだ。日本国内では歩行者用にそれに似た表示があるが、ここのように車両向けのものはない。これは見習うべきものだろう。
ウルムチ市内の道路。街燈ランプもちゃんと設けてある。
信号機に待ち時間の表示板が設置されている。写真では小さくてよく見えない。
市民憩いの場所・紅山公園
博物館に到着してみると、まだ開館していない。週末土曜日で開館時間が遅いようだ。そこで予定を変更し、今度は紅山公園へ向かう。ここは市内の北側に突起する岩山で海抜910m。ウルムチの街自体の海抜が900mなので、ちょっとした丘といったところである。市民の憩いの場となっているようで、夜のアベック散策にはもってこいの場所のようだ。
バスは博物館から少し南へ移動すると紅山公園の入口に出る。そこから赤いゲ−トを通り抜けてスロ−プを上って行く。園内は緑豊かな樹木が生い茂り、それが日照りを遮って格好の緑陰を提供している。
紅山公園の入口
頂上付近で下車し、散策する。敷地は広くないが左手に展望台があったり、朱塗りの遠眺楼が望めたりする。
中国風建物・遠眺楼
ここは展望台
そして、いちばん奥の突端の断崖上には清代に荒れる川を鎮めるために造られたという9層の鎮龍塔がそびえ、格好の記念撮影のポイントとなっている。夜になればきれいな電光飾でアップされるという。
突端にそびえる鎮龍塔
ここを訪れる観光客にとっては、何といってもここからの市街の眺望だろう。ほどよい高さからの眺めは、市内の中心部に近いだけあってクロ−ズアップされて迫ってくる。こうして眺めると、日本や欧米の大都市とほとんど変わらない風景を呈している。林立する高層ビル群が見え、多くの車両が走る広い舗装道路が見える。ただ違うのは、スモッグがないことと、市街地の回りが砂漠で取り囲まれているという点だろうか? 今日は砂嵐もなく、空気が澄んでいて遠くまでくっきりと眺められ、絵葉書のような風景を見せている。(実はスモッグが多いらしいのだが……。) |
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