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     N0.7





旅のコース





5.太魯閣峡谷

台湾の旅の後半に入る4日目。朝5時半に目覚めて浴槽に温泉を注ぎ入れ、満タンになったところで、ざんぶりと身をひたす。朝風呂に入ることは滅多にしないのだが、温泉だけは例外である。部屋に居ながらにして温泉に入れるなんて、これ以上の贅沢はない。夜は温泉につかって寝入り、朝は温泉に入って目覚める。なんというくつろぎの時間だろう。


ゆったりと温泉につかり、全身が目覚めたところで窓外のヴェランダに立つ。なんと心地よい朝の風景だろう。小鳥がさえずる中、眼前にはちょっとした深山幽谷といった雰囲気の景色が広がっているのだ。折り重なる緑の山々が立体感あふれる風景をつくり出して深山の雰囲気をただよわせている。このホテルは実に素敵な環境に立地したものだ。おや、横手を見ると寺院らしきものが見えるぞ。早速、出かけてみよう。



       部屋のヴェランダから眺めた朝の風景。深山に囲まれた雰囲気は素晴らしい。




玄関を出て少し歩くと、「清覚寺」と書かれた朱塗りの大きな山門が見える。ホテルはこの寺院と隣接して建っているのだ。門をくぐって中に入ると、人気のない境内が広がっており、その奥にどっしりとした本殿が建っている。物音一つしない静かな環境の中で、鳥のさえずりのみが朝のしじまを破っている。身も心も洗い流される思いだ。


ホテルに隣接する清覚寺の山門


どっしりと構えた本殿

本日の行程は知本温泉より台湾東部の海岸線を北上しながら太魯閣峡谷への入口の町・花蓮市へ向かう。そこからさらに山間部に分け入って台湾きっての景勝地・太魯閣(タロコ)峡谷へ向かう。台湾のグランドキャニオンとうたわれる太魯閣峡谷だが、果たしてどんな景観を見せてくれるのか楽しみだ。走行距離は250kmである。


バイキングの種類豊富な料理とバナナでお腹を満たすと、いざ出発である。7時45分に出発した専用バスは、ハイウェーを快適に走行しながら一路花蓮市へ向かう。車窓から眺める空は雲が多く、青空は顔を見せない。


花蓮へ向かうハイウェーを快走中


三仙台
出発して1時間ほど走ると、道をそれて海浜へ出る。バスを降りて海岸線へ出ると、海辺には吹き寄せる強風で波しぶきが泡立っている。その彼方に8つのアーチを描きながら沖の小島にかかる太鼓橋が見える。ここが三仙台という観光ポイントだそうだ。


三仙台の案内表示板


8つのアーチを描く太鼓橋。その先端が三仙台島。

沖合いの島に三つの巨石があることから、八仙(中国の昔話で伝えられている八人の仙人)が海を渡る時、その内の3人の仙人がかつてここに上陸したという言い伝えがあり、それで有名になっている所だという。一見、何の変哲もないただの岩礁と小島だが、元はひとつの岬だったそうで、長年の海水の侵食により、その中間部分が徐々にえぐられて消失し、岬の突端が離れ島になったという。


この離れ島の三仙台に渡るには、以前は干潮時にしか渡れなかったそうだが、20年ほど前に8つの橋脚をもつ太鼓橋が架けられ、陸地とつながったという。この橋は一頭の巨龍が海上に伏しているように見えるというのだが・・・。その橋を渡って島を探索する時間はなく、手前から遠望するのみである。


麦飯石(バクハンセキ)
ガイド氏によれば、この海辺には麦飯石(バクハンセキ)が転がっているという。この石は米粒大の黄白色の粒状結晶がつまっている岩石のことで、無数の微細な孔が水などの浄化作用をするのだという。炊飯器に入れるとおいしいご飯が炊けたり、水道水のカルキ抜きなどに効用があるらしい。そこでみんなは海辺をほっつき歩き、バクハンセキの石ころ拾いに余念がない。


これがバクハンセキ? 白い結晶が詰まっている。

八仙洞
三仙台からしばらく海岸線を走ると、次の観光ポイント八仙洞に到着。ここは5〜6千年前に原住民が住居として使っていた遺跡で、国家一級古跡に指定されている自然の洞穴である。海辺に近い断崖に、その昔、海蝕によって形成された洞穴が十数個あり、その最大のものは高さ130mもあるという。


参道沿いにはパパイヤの実が・・・

現在では各洞穴に観音様が祀られており、見上げる大洞穴の中の祭壇には立派な観音像が安置されている。参詣者は各洞穴をめぐり歩いてお参りができるようになっている。洞穴に上る手前の池には108体の白亜の観音像が立ち並んでいて壮観である。









 巨大洞穴には観音像が並ぶ
















別の洞穴にも観音像が・・・


108体の像が池の周囲に立ち並んで壮観


北回帰線の標塔
八仙洞を後にし、荒波が打ち寄せる海岸線をしばらく走っていると、左手に白い標柱が見えてくる。これが台湾東部側の北回帰線通過地点の標塔である。バスはここでフォトストップし、しばし休憩となる。西部側の北回帰線は、すでに2日目の嘉義の町で通過し、宇宙船のような標塔を見たところである。


前方左手に白い標塔が見えてきた

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北回帰線
回帰線とは、地球の北緯・南緯それぞれ約23°26'の緯線のことをいうのだそうだ。つまり夏至と冬至の南中時刻に、太陽が完全に真上(90°)にくるのが回帰線上の地域で、太陽がそこまでくるとまた赤道の方へ回帰していくことから、回帰線の名がつけられた。この場合、北緯23°26'の緯線を北回帰線、南緯23°26'の緯線を南回帰線というのだそうだ。

例えば、夏至の日の正午には太陽が地面の垂直の位置に来て、理屈上は影がなくなることになる。だから、この日に嘉義の町に居れば、影のない瞬間が体験できるに違いない。

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ここには円柱の標塔が土台の上に立っているだけで、周りには何もない殺風景なことろである。観光客が、ただ標柱をバックに記念撮影をするだけの場所となっている。この円柱だと影がよく分かるので、夏至と冬至の南中時刻には影のない瞬間がよく判定できるのかもしれない。


北回帰線の通過ポイントを示す標塔


北回帰線通過証明書
船舶の場合は赤道を通過する際に「赤道祭」が行われるようだが、回帰線通過の際のお祭りは聞かないようだ。われわれは台湾西部と東部の陸上で北回帰線を通過したのだが、昨夜宿泊した知本老爺大酒店がその通過証明書を発行してくれたのである。素敵な記念として大事に保管しよう。次の写真がその証明書である。




昼食は郷土料理
再びバスに乗り、左手に素敵な山の稜線を眺めながらしばらく走ると、昼食休憩となる。1階に宝飾店が入っている建物の2階に案内され、そこでこの地方の郷土料理がふるまわれる。野菜主体の素朴な田舎料理で、内容としてはこれまでで一番貧弱なものである。


山並みを眺めながら花蓮へ向かう道路を走行中

ここへ案内された主目的は、どうも1階にある宝飾店でのショッピングらしく、食事が終わると階下へそのまま案内される。この店には全員が日本語を上手に話す店員が揃っていて、太魯閣峡谷の山岳地帯から採取されたさまざまな鉱石類の宝飾品(ヒスイ、水晶など)が多数陳列されている。めぼしい物はどれも万単位の価格だが、産地だけに多少割安なのかもしれない。パワー・ストーンが新陳代謝にいかに有効かを盛んにPRしてセールスに懸命である。


昼食を取ったレストランと宝飾店のある建物


花蓮市へ
食事とショッピングを終えると、バスは太魯閣峡谷への入口の町・花蓮市へ向けて海岸線を北上する。間もなく走ると海岸線から左へそれて山間部へ入って行く。七曲がりの道を上ったり下ったりしながらかなりの距離を走行し、再び海岸線へ出て行く。


海岸線を花蓮へ向けて走行中

ここからしばらく走ると大理石の産地・花蓮の町に入る。ここは台湾三大国際港の一つとして発展した町で、大理石が豊富に採れることでも有名である。人口10万の町らしいが、ひっそりと静かなたたずまいを見せている。この町には当然のように大理石の加工場が多いという。またこの町は沖縄の与那国町と姉妹都市関係を結んでいるという。


花蓮の町に入ってきた



(次ページへつづく・・・)











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