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   NO.8




7.パペ−テ市内観光
 
いよいよ今日が旅の最終日。深夜には帰国の途につく。夢に見たタヒチの旅もあっという間に過ぎ去り、もうお別れの時である。なんとなくもの悲しい気持ちになりならが7時に起床。空は晴れて暑そうだ。だが、雨季とあって時折シャワ−がやってくる。最終日の今日は9時発のシャトルバスに予約を取ってダウンタウンに出かける予定である。
 

最後の時を惜しむように、ゆっくりと洗面を済ませ、胸いっぱいに深呼吸をしながらタヒチの新鮮な空気を吸い込む。オ−プンテラスの食堂に出向くと、今朝も早くから変わらず小鳥たちがご出勤だ。彼らと仲良く食物を取り合いながら、とりどりの品を少しずつ選んで皿に盛り付ける。これに牛乳とジュ−ス、コ−ヒ−を揃えて、最後の豪華な朝食をゆっくりと味わう。食後のデザ−トはパイン、スイカ、パパイヤのフル−ツでしめくくるとしよう。
 

ダウンタウンへ
素敵な雰囲気の中で朝食を堪能した後、部屋に戻ると水とカメラと傘をバッグに入れて出発の用意をする。玄関前に出ると、すでにシャトルバスが乗客を待っている。9時になると、数人の乗客を乗せてダウンタウンへ向け走り出す。これから走ること30分、一昨日と同じルロットの波止場に停車する。今日は昼間なので、辺りの様子がはっきりと見える。これから12時の出発まで2時間半が過ごせる。
 





ホテルのシャトルバス
ル・トラックと同じ型









埠頭には大小のスマ−トな豪華クル−ザ−や貨物船が停泊している。これで数泊をかけながらタヒチの島々をめぐって豪華な旅をするわけだ。それにしても、常時そんな豪遊する乗船客が集まるのだろうか? 世の中は広いから、余計なお世話かもしれない。




 豪華クルーザーが停泊するパペーテの埠頭



目を広場に移すと、夜のルロットの姿は跡形もなく消え去り、レンガ敷きの地面にはシャワ−が降ったのか水溜りができている。雨上がりの緑の木々が一段と美しく、生き生きとしたように見える。その片隅には、柔らかいクリ−ム色の花がきれいな房になってぶら下がりながら咲き揃っている。
 





 雨上がりの公園















片隅には美しい花が・・・









この広場の一角に瀟洒な観光案内所がある。まずはそこで情報を仕入れよう。中に入ると、男性のスタッフが1人いるだけで、旅行者の姿も見られず、ひっそりとしている。そこでダウンタウン界隈の地図を求めると、すぐに用意したものを出してくれる。すかさず、この区域で見るべき観光ポイントはどこなのかを尋ねてマ−クを付けてもらう。彼が印したのは、マルシェ(公共市場)、シティホ−ル、ノ−トルダム寺院、バイマ・ショッピングセンタ−(真珠博物館)の4ヶ所である。そこで、これに沿ってめぐることにする。それほど広い区域ではないので、すべて徒歩の圏内である。
 

マルシェ(公共市場)
車が混雑する広場前のポマレ通りを横切り、マルシェ(公共市場)へ向かう。






混雑するポマレ通り









地図で見ると広場からすぐの所だが、実際にはどれがそうなのか分かりにくい。屋内の市場らしく、オ−プンになっていないので外から分かりにくいのだ。そこで通行人に尋ねて場所を確認する。市場の建物はかなり大きな2階建てで、中に入るとその壮観な光景に圧倒される。この広い屋内には整然と区画されたブロックごとに、野菜類、果物類、魚類、肉類などの食品を中心に衣類、日曜雑貨類、手工芸品類、それに花まで揃って並べられ、活気に満ちている。ここがパペ−テ市民の胃袋を満たす食料品市場なのだ。




           市民の胃袋、マルシェ(公共市場)の風景



まずは場内を一巡りしてみよう。さすがに南国らしく、おいしそうな果物が豊富である。バナナ、パパイヤ、マンゴ、スイカなど全部地元産の取り立てで、フレッシュそのものだ。思わず食べたくなり、その場で食べられるバナナを数本買うことにする。昼食用のデザ−トにも持ち帰るとしよう。






花びらでレイを作っている















 果物の山










魚屋の店頭に行くと、大小の見かけない魚がずらりと並んでいる。島だけに、どれも水揚げされたばかりで新鮮そうだ。その隣では何本ものマグロを女性の細腕で見事にさばいている。タヒチアンは刺身にして食べる習慣はあるのだろうか? 小ぶりのためか、見たところではトロ身の部分があまりなさそうだ。
 





 新鮮な魚が並ぶ















マグロをさばいている











ノ−トルダム寺院
賑やかな市場を後にして、その斜め裏にそびえるカテドラルへ足を向ける。これがノ−トルダム寺院で、この街のシンボル的存在になっているようだ。建物の大きさの割りには尖塔が高く、赤と白のツ−ト−ンカラ−が印象的だ。寺院前はノ−トルダム広場になっているが、名ばかりで狭く、前の道路は車の往来が激しい。人気のない寺院の内部に入ると、簡素な祭壇が設けられ、ステンドガラスの入った細い天窓からは、南国の日差しが柔らかく差し込んでいる。しばし椅子に座って、心を清めて行こう。
 

         寺院の内部                  ノートルダム寺院

ル・トラック
次の目標であるシティホ−ルへ向かっていると、ル・トラック(乗り合いバス)が停留所に止まっている。これはトラックの改造車で、荷台の上にベンチを両側に並べて屋根を付けただけの簡素なバスである。ホテルのシャトルバスもこれと同型だ。これがこの島の唯一の公共交通機関だそうで、市民の足となっているわけだ。






 市民の足ル・トラック










このバスは面白いことに、その経営がドライバ−個人になっているそうで、ただ運行や料金などを政府が管理しているという。だから最終バスに乗るとドライバ−の自宅が終着点となるらしい。発車はドライバ−の気分次第で、いつ動くのかはドライバ−任せ。のんびり構えて待つしかないらしい。
 




 
 マルシェ前の通り











シティホ−ル
地図を見ながらシティホ−ルを目指して行くのだが、なかなか方向が分からない。そこで通行人に何度も尋ねながら、やっとホ−ルに到着。教えられた建物の中に入って行くと、なんと警察署みたいな所で警官がいるではないか! おやおやと思いながら、ホ−ルはどこですかと尋ねると、この反対側の方だと言う。どうもホ−ルの裏手にある警察関係の部屋に迷い込んだらしい。ホ−ルの玄関は外に出てぐるっと回らなければならない。それを見兼ねて、親切にも室内通路を案内してくれ、玄関ホ−ルまで誘導してくれる。
 





 シティホール










礼を言って階上へ上って行くと、何やら展示会があっている。日本人の係がいるので尋ねると、「ジャパン・フェスティバル」の展示で今日が最終日だという。数日前から日本の文化芸術などを紹介するイベントが開催されているのだ。この展示場には絵画、書道などが展示され、洋画や日本画など個人の趣味で描かれた作品が展示されている。別の劇場ホ−ルでは日本舞踊、和太鼓、詩吟、剣舞などの演舞があり盛況だったという。この文化交流は、日本びいきのシラク仏大統領の要請で行なわれたらしい。幾部屋かの展示室を見て回ると、他に見るべきものはなさそうなので、ホ−ルを後にする。
 

ホテルへ
ここで時計を見ると、シャトルバスの出発時刻が近づいている。そろそろ引き揚げて波止場の方へ戻るとしよう。昼下がりの広場はぎらぎらと南国の太陽が照りつけて暑い。出発前のひとときを木陰のベンチに腰を下ろして、先ほど買ったバナナを口にする。現地産のバナナだけに、味にもコクがあっておいしい。これでこの街も見納めかと思うと、なんだかもの悲しい気分に襲われる。その気持ちを振り払うように立ち上がり、車上の人となる。
 

この波止場から国際空港までは車で10分の距離。そこを通り過ぎて20分でホテルに到着である。フロントのロビ−を歩いていると、階下からのどかなタヒチアンミュ−ジックが流れてくる。何があってるのだろうと興味がわき、階下へ下りて行くと、食堂で3人のタヒチアンが女性歌手を交えて演奏しているのだ。今、ランチタイムで、お客へのサ−ビスなのだ。タヒチアンミュ−ジックが流れると、いかにものどかな雰囲気が辺りにただよい、心がとても和む思いがする。女性歌手の裸足がこの場の雰囲気によく似合っている。
 





食堂ではミュージックの演奏が・・・









部屋に戻ると、コ−ヒ−を沸かし、先日買ったパンや牛乳、リンゴ、ビ−ルなどを取り出し、今日のバナナを加えて昼食とする。それにしては、なかなか立派である。食後は予定がないので、ゆっくり午睡でもしよう。今夜は深夜便で寝不足になる。夕方になったら、ビ−チに出てカヌ−にでも乗ってみよう。
 

のんびりと過ごしている間に、夕方の5時を回ったので、海水着に着替えてビ−チへ向かう。管理小屋にいる係にカヌ−の貸し出しを申し出ると、5時半で閉めるので時間がなく、今日は無理だと言う。な〜んだ、それならもっと早く来るべきだった。折角、水着姿で来ているのだから、プ−ルにでもつかって行こう。ここのプ−ルは先に写真でも紹介したように、段差のないビ−チのような感じになっており、砂を敷きつめた独特のプ−ルになっている。それだけに深さは浅く、のんびりと水と戯れるのには適している。しばらく、戯れることにしよう。
 

最後の夕食
プ−ルから上がって部屋に戻ると、シャワ−を浴び、ゆっくりと入浴して爽快気分になる。よし、これで日本へ帰る心準備はできた。おっと、その前に夕食を取らなくては……。そうと決まると着衣を済ませ、昨夜の中華レストランへ出向く。今日は何にしようかな?と考えながら店内に入る。今夜もひっそりとして客は少ない。メニュ−をもらって眺めながら、やはり無難なところで行こうと焼き飯とス−プ、それにビ−ルを注文する。 
 

ライスがどうなのか心配したが、運ばれて来た焼き飯はことのほかおいしく、ライスも意外とぱさついていない。どこ産の米なのだろう? 気をよくして、味のよいス−プと一緒に最後の晩餐を楽しむ。店を出ると夜空を見上げながらゆっくりと歩いて行く。いよいよこれでタヒチの夜ともお別れかと思うと、メランコリ−な気持ちにさせられる。時は容赦なく日本へ引き戻そうとする。人間の無力さを感じながら、とぼとぼとホテルへ向かう。
 

帰国の旅
帰国便は深夜の1時半発。10時過ぎに出迎えの車が来るまで、このデラックスホテルと別れを惜しむ。少ない荷物をバッグに詰め込むと、チェックアウトを済ませて出発準備OKだ。今度は予定通りに間違いなくやって来た出迎えの車に乗って、夜道を一路空港へ向かう。出発ロビ−に到着すると、帰国する日本人の姿ばかりだ。それぞれにタヒチの思い出をいっぱいに詰め込んでいるのだろう。


無事チェックインを終えると、出発までたっぷりと待ち時間がある。空いているベンチに腰掛けて、これまで過ごしてきた夢のようなタヒチの6日間をじっくりと振り返りながら、最後の思い出に耽る。そのひとときを邪魔するように、隣に日本人の老夫妻が腰を下ろす。自然とお互いの思い出話に花を咲かせていると、こんなことを話し始める。実は、その奥さんが帰路の航空券を紛失してしまったそうで、ホテルを出発する直前にそれが分かったらしい。


そこで関係している現地旅行社(サウス・パシフィック・ツアーズ)にその旨を告げると迅速な対応でエアー・タヒチと交渉してくれ、小額の手数料で再発行してもらえたのだという。それが認められなければ、正規料金の片道20数万円を払わなければいけないとろだったと言う。その夫妻は胸を撫で下ろしながら、この対応に当たってくれた旅行社の尽力とエアー・タヒチ・ヌイの心あたたかな対応ぶりに心から感謝している様子である。旅にはいろんなハプニングがつきものだが、現地事情にうとい旅人には、旅先での心優しい対応が生涯忘れ得ない好印象として残るものだ。お互い心したいものである。

 
このエピソードは、この夫妻にとって、きっとタヒチのよき思い出になることだろう。そんな懐の深いタヒチなのだが、今度また、あの歓迎ミュ−ジックと花のレイを貰えるのはいつの日のことだろうか? それまで変わらぬ美しい自然をそのままに保っていてほしい。そして、あの明るく人懐こいタヒチの人たちの人情もそのまま変わらずにいてほしい。きっとまた来るから……そう心でつぶやきながら自分に言い聞かせる。人が動き始めた。そろそろ搭乗時間が来たようだ。                            (完)

                          (2004年3月20日脱稿)



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