『安易な自殺願望を防ごう』
先日、座間で9人の切断遺体事件が起こったが、
実に痛ましいことだった。被害者の皆が自殺願望
者だったという。それぞれに深い悩みを持ってい
たのだろう。それにしても容易に集い寄ったものだ。
こうした衝動的な行為を食い止めるには幼児教育
から学校教育にいたる人間教育と人との絆なだろ
う。教育によって人の命の大切さを知り、そして身
近な者同士で慰め励まし合う人の絆だろう。
人との絆が強ければ強いほど効果的で、相手を
どうにでも左右することができ る。だから正しい方
向へ導けば何も問題は起こらない。人を孤独に
追い込むのは絆が断たれた時で、そこから問題
が生じる場合が多い。
絆さえしっかりしていれば孤立は避けられ、ゆが
んだ考えが生じる隙間は生まれない。だから正し
い教育を受け、強固な絆で結ばれていれば、間
違った方向に進むことはない。だから正しい方向
に進むには、教育と人間の絆が不可欠なのだ。
(17年11月)
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『認知症ドライバー対策を急げ』
くるまは人間が考案した夢の乗り物である。だが、
その運転テクニックが問題で、人により個人差が
あり、また年齢によっても差が生じる。これは事
故につながるだけに深刻な問題である。
このほど認知機能検査を受けた75歳以上の高齢
ドライバーのうち3万人超が認知症の恐れがあると
判定された。認知機能が劣れば正常な判断ができ
ず、事故につながるのは必至。死亡事故となれば
本人はもちろん、家族も巻き込んで責任を負う。
そこで急がれることは、厳しい認知 症検査とその早
期発見で、該当した場合は免許の即時停止と運転
の即時停止を求めることである。この場合、家族も
同時責任を負うべきである。
高齢化が加速するなか、認知症患者はますます増
加する。それにつれ認知症ドライバーも急増する。
したがって、その対策を抜きにしては健全なくるま
社会の維持はできない。高齢化くるま社会の出現
はこれまでとは異なる視点での対策が必要だ。
(17年11月)
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『いじめはなくせないのか?』
文科省によれば、2016年度に小中高校などで
把握されたいじめ件数は過去最多の32万件超
となった。増えはしてもなかなか減らないいじめ。
いったいどうしたら減らすことができるのか?家
庭、学校、本人の立場から考えてみたい。
まず家庭では子供との対話を日ごろから行って
いるなかで、いじめにあった時の対応を話し合
ったりしておくこと。学校であったことや困ったこ
となど、常に親子とのコミュニケーションを図っ
ておくことである。
次に学校では 教師が子供たちの日ごろの行動を
見守り、問題児がいれば注意した上で説得し、言
い聞かせ、納得させることである。
最後にいじめられる本人だが、とにかく強くなるこ
とである。いじめる相手に対して、「やめろ!」と怒
鳴る勇気を持つことだ。
こうした地道な努力の積み重ねによって、いじめ
をノックアウトする必要がある。
(17年10月)
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『ギャンブル依存症の対策を急げ』
国勢調査のデータによると、ギャンブル依存症が
320万人に上るとされる。これがカジノ解禁でさら
に増加すると見込まれる。その主なものは「パチン
コ・パチスロ」で、ギャンブルへの賭け金は平均月
5・8万円だった。
これが高じれば自己の生活破綻、家庭崩壊へとつ
ながり、また勤労意欲は失われて社会は疲弊し、
活力を失う。こうなると社会の発展は望めず、後退
するのみである。
そこで必要なのはリハビリ施設の増設とスタッフの
増員である。人口 集密度の高い地域を中心に増設
し、依存症の人たちが気軽にリハビリを受けられる
体制を整えることである。
依存症は病気であり、正しい治療を受ければ必ず
離脱できることを自己認識すること。そして、早期
に正常な生活に戻れるよう、家族周囲も惜しみな
い協力の手を差し伸べるべきである。
(17年10月
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『待機児童の解消で少子化に歯止めを』
保育施設不足で待機児童が推計34万人という。
入所を希望してもなかなか入れないのだ。その解
消には施設を増やせばいいわけだが、設置場所
の問題や保育士不足がネックになって、なかなか
実現できない。
保育士は幼児を対象とするため片時も目が離せ
ず、なかなか休憩する間もないハードな仕事であ
る。その割には待遇が悪く、全職種平均(469万
円)に対して66%の低い水準にとどまっている。
そのため魅力がなく資格はあっても働こうとしない。
<div>もう一つは設置場所の問題である。場所さえあれ
ばどこでもというわけには行かない。近隣住民との
関係があるからだ。保育所の騒音問題で敬遠され、
反対されるケースが多いという。
この状況下では出産を思い留まるケースが多々出
て来る可能性が高くなる。こうした懸念を払しょくす
るには、保育士の処遇大幅改善と、子供たちを社
会全体で育てるという意識の改善が必要だ。こうし
て少子化に少しでも歯止めをかける必要がある。
(17年10月)
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『一人暮らし世帯の対策を急げ』
総務省によると、全世帯の3分の1強が一人暮ら
し世帯で、過去最多となった。少子高齢化が進む
なかで、親と同居する人は減っており、お年寄り
の一人暮らしが増えている。
その背景には若者の未婚化の進展や離婚の増加な
どがあげられ、将来的には一人暮らし世帯がます
ます増えることが予測される。そうなれば社会の
様相は次第に変貌を遂げ、その対応策が求められ
てくる。
高齢化に伴って独居老人が増え、それがコミュニ
ティとの交流もなくなって孤独老人が増える傾向
になるのは必至の状況で ある。それが最悪の場合
は孤独死という悲しい結末を招くことになる。実
に悲しいことではある。
こうした社会をなくすために考えられるのは、
「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」
などを一体的に提供する包括支援のシステム構築
である。現在、地域ごとに包括支援センターが置
かれているが、より充実したきめ細やかな支援体
制が求められる。
(17年9月)
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『糖尿病予防は自助努力で』
糖尿病は血糖値が高く、血管が痛んでボロボロに
なる病気で、悪化すれば失明に至る恐ろしい病気
だ。その上、厳しい食事制限も求められる。そん
な糖尿病患者数が初の1千万人台になったという。
糖尿病が悪化すれば人工透析が必要となり、多額
の医療費がかかる。そうなると国の医療費も大き
く膨れあがる。そのため糖尿病を予防することが
不可欠で、メタボ気味の人は予防のための努力が
必要だ。
糖尿病予防は体の新陳代謝を図ることが先決で、
それによって血中糖度を下げることができる。新
陳代謝は血中の糖 分を使って身体を動かすことだ
から、運動すれば血中糖分は消耗され糖尿は改善
される。
運動で簡単・効果的なのはウォーキングで、これ
を生活習慣に取り入れれば糖尿病予防に役立つ。
各自がこうした自助努力を行えば糖尿病予備軍は
激減し、健康社会が実現する。筆者は長年、毎日
40分のウォーキングを励行している。
(17年9月)
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『総選挙スローガンに疑問』
安倍首相は次期総選挙のスローガンに「全世代型
社会保障」を掲げた。2019年10月に消費税
を10%に増税した際の、増収分の使い道の変更
だ。当初は高齢者の社会保障制度を維持するため
の増税のはずだった。
だが、それを幼児教育の無償化や高等教育の負担
軽減など、子育て支援にあてるという。これはバ
ラマキ政策になる恐れがある。「ゆりかごから墓
場まで」の北欧型福祉社会を目指すものであり、
同調できる方向ではない。
そうなると人々は安穏な道を選び、個人間の競争
心は薄れて経済は停滞し、結 局、経済成長は望め
なくなる。これは過去のイギリスの歴史をみればわ
かるように、歴然としたことだ。
要するに、個人間の差別化を図り、適度な競争心
を持たせるのが経済活性化の道である。経済成長
ができなければ個人所得は目減りして高福祉も実
現できない。安易な福祉策は経済成長の芽をそぐ
ものである。
(17年9月)
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『加速する高齢化・・・どう対応する?』
総務省の発表によると90歳以上の人口が1年前
より14万人増えて206万人となり、初めて
200万人を突破した。こうした長寿社会に対応
した社会システムの構築が喫緊の課題だ。
社会的には医療費や年金など社会保障費の増加を
どうするのか、個人的には人生90年時代に備え
て健康面や経済面をどう維持するかが重要課題だ。
いずれにしても最終的には個人的負担の増加は必
至の状況だ。
医療費を抑制するには一にも二にも、各自が健康
長寿のための自助努力を惜しまないこと。そう で
なければ寝たきり生活になったりして、介護費や
医療はかさむばかり。その上、介護要員も必要に
なってくる。
個人的には、人生90年に備えて経済的な蓄えが
必要となる。そのため元気で働けるうちは働き続
けて収入を得、その中から蓄えに回すなどの工夫
が必要だ。こうして社会、個人の両面から高齢社
会に果敢に対応することが必要だ。
【17年9月)
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『共謀罪』・・・キノコ採りも対象
このほど「共謀罪」が成立した。一番の目的は国際
組織犯罪防止条約への締結である。締結国の間で
組織犯罪捜査の協力が強化され、逃亡犯罪人の引
き渡しが円滑になるからだ。187カ国・地域が締結し
ている。
テロは世界中、国境を越えていたる所で発生するが、
2020年の東京オリンピック・パラリンピックという一
大イベントを控え、条約を締結して国際的な捜査協
力の体制を整える必要があるわけだ。
一般の団体であっても「組織的犯罪集団に一変した 」
と見なされれば、処罰の対象になる。「テロの実行」
「薬物」「人身に関する搾取」「その他資金源」「司法
妨害」の5類型になっている。
この中には、キノコ採りも含まれているが、これは経
済的利益を生じる場合があり、テロ組織の資金源に
なり得るからだ。問題は捜査当局による法律の乱用
だが、取り調べの録音・録画(可視化)の導入による
適正捜査が必要だ。
(17年6月)
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『ツバメの子育てに思う』
ツバメが飛来する時季となった。近所の消防署の軒
裏には2つの巣が並んでいて、親鳥がせっせと餌を
運んで子育てをしている。一つの巣には可愛いヒナ
たちが大きな口をあんぐり開けて親から餌をもらおう
と必死の様子。それも昨日、無事に巣立って行った。
もう一つの巣にはヒナの姿はまだ見えないが、親鳥
が懸命に餌を運んで口移しに餌を与えている。巣の
中にヒナが育っているのだろう。こうした親の子育て
風景を見るにつけ、心打たれるものがある。
これに比し、人間社会は どうだろう。児童虐待のなん
と多いことか。身体的、性的、心理的、育児放棄など
枚挙にいとまがない。2000年に児童虐待防止法が
成立したものの件数は9万件と増えこそすれ、減るこ
とはない。
本来、子育ては保護者の責任だが、児童虐待につな
がる場合は親権停止などの措置がとられるべきであ
る。その一方で、虐待を受けた児童の保護および自
立支援のための社会システムの確立が不可欠だ。
【17年6月)
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『喫煙をなくそう』
喫煙は三つの点で問題をもつ。一つは健康面で喫煙
者自身の健康を害する点で、これによる余分な医療
費は1兆4900億円と推計されている。二つ目は受動
喫煙問題で、これによる余分な医療費は3200億円
と推計されている。
三つ目は吸い殻のポイ捨てで、路上や駅ホームの線
路上を汚すことになる。このように喫煙は健康面でも
社会面でも問題を惹起している。
ある研究によると、ファミレスの場合、「全席禁煙」と
した場合、2年後の営業収入は3.4%増加したとい
う。 分煙の場合は、あまり差はなかったという。
いま、日本のタバコ規制が国会で論議されているが、
公共の場では全面禁煙が望ましい。「タバコを吸う人
の権利」も考慮するのかが問題となるが、この際は
スルーしてもやむ得まい。禁煙は世界的な流れであ
り、20年のオリンピック・パラリンピックを控えて、真
剣に取り組むべきである。
(17年6月)
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『自殺行為は防げるか?』
自殺対策白書によると、去年1年間に自殺した人の
数は2万1897人で22年ぶりに2万2000人を下回
った。しかし、国際比較によると、人口10万人あたり
の自殺者数は、約90の国と地域のうち、日本で自殺
した人は6番目に多く、特に女性は3番目に多かった。
また、日本の15歳から39歳では自殺が死因の1位
で、「若い世代の自殺は深刻な状況だ」としている。
その原因や動機は「健康問題」のほか、「経済・生活
問題」や「家庭問題」が2割程度となっている。それは
ともかく、折角この世に生を受けながら、自ら命を絶
つことほど悲しいことはない。
自殺予防については、個人と社会の両面から考える
必要がある。個人面では、相手の気持ちや話を素直
に聞く姿勢が必要だし、自殺や心の病気についてオ
ープンに話すこと。社会面では駅ホームや橋に防護
柵設置などを設けて手段を奪うことである。
肝心なことは「自殺のことで相談しない」「自分の辛さ
を誰も理解してくれないと思った」といった状況をつく
り出さないことである。自殺を考えている人が、周囲
の人々がその気持ちを理解し、自殺行為を思いとど
まるような環境社会をつくり出すことが必要だ。
(17年5月)
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『テロの連鎖は防げないのか』
厳戒態勢下の英・マンチェスターで22日、幼い子供た
ち22人が死亡する爆破事件が起きた。また、24日夜、
インドネシアの首都ジャカルタで爆発事件があり、2人
が死亡、5人が負傷した。こうしてみると、テロが日常
茶飯事となった感が強い。
それぞれのテロの目的はわからないが、殺戮のため
の殺戮を繰り返すのが目的なのか。それに巻き込ま
れるのが不運とあきらめるしかないのか。厳戒態勢を
敷いても、それをかいくぐってテロは実行される。
そうなると 防ぎようがなく、どこでもテロは起こり得ると
想定して、自己防衛するしか手はない。イベント会場
やマーケットなど、人の集まるところには行かない、な
どの注意が必要だ。
それはともかく、テロの温床となる宗教問題、資金源、
貧困などの対応策を考えるべきである。こうした施策
によって、テロリストが育つ環境を消滅させ、多発する
テロの連鎖を断ち切るしかない。
(17年5月)
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『テロ等準備罪・・・過度の監視社会を防げ』
共謀罪の構成要件を改めて、テロ等準備罪を新設する法
案が19日、衆議院法務委員会で可決された。2020年の
オリンピックを控え、テロ組織ISが日本を標的にしているこ
とを睨んだものだろう。
わが国では1995年に「地下鉄サリン事件」で同時多発テ
ロを経験しているが、年数の経過とともに忘れ去られた感
が強い。しかし、今度の法案で改めて再認識を強くしてい
いる。
こうしたテロ行為は未然に防ぐべきだが、人権保障との関
係で、どこ まで個人の内心に踏み込めるかが問題となる。
踏み込みが足りなければ、未然の防止は不可能となり、
無意味化してしまう。その境界の線引きが難しいところで
ある。
しかし、テロ防止のためとは言え、個人の内心の自由まで
侵害するのは過度の監視であり、許されるべきではない。
それでは、個人の人権は保障されなくなり、自由な発想、
発言が制約を受けるからである。その意味で、過度の監視
は抑制されるべきである。
(17年5月)
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『成年後見制度の悪用を防げ』
成年後見制度を悪用する事件が後を絶たないという。後
見人として選任された弁護士や家族が、認知症や障害
で判断力が低下していることをいいことにして、被後見人
の財産を横領、着服する事例が多く見られるのだ。
本来、成年後見制度は認知症など精神障害により判断
力が不十分な人が不利益を被らないように家庭裁判所
に申し立て、その人を援助してくれる人を付けてもらう制
度である。
ところが信頼された後見人が背信行為を行えば、後見
制度の創設趣旨は生かされず、制度そのものが形骸化
してしまうことになる。
今後、高齢化社会の進展で、認知症などの患者が増え
るのは必至。このまま制度の悪用がすすめば、本来の
趣旨からはずれて制度は崩壊してしまう。したがって、
その防止策を早急に創設して、制度運用の厳正化を図
る必要がある。
(17年3月)
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『 春をください』
日足は確実に少しずつ伸びてはいるものの、春の足音
はまだまだ遠く、聞こえて来ない。自宅前の桜のつぼみ
もまだまだ固くて膨らみさえ見えず、眠り続けている。そ
んな中、ウグイスの初鳴きが聞かれた。「春をください」
と言わんばかりに鳴き始めている。
しかし、気温はまだまだ低く、今年の最低気温を続けて
いる。毎朝のウォーキングではマフラーが欠かせず、つ
ける手袋の指が痛いほど冷たい。晴天の日には放射冷
却で一段と気温は低く、吐く息が冷気に触れて真っ白に
流れる。
その寒気の中でも沈丁花の花は開き、水仙も咲き誇っ
ている。この時季、いち早くつぼみを膨らませるのが白
木蓮である。大きな純白の花芽をはじけんばかりに膨
らませている。開き始めると、あっという間に開花がす
すむ。
春の主役は誰が何といっても“桜”であろう。咲いてよ
し、散ってよしの桜。自宅前の桜の大木が路地に花の
トンネルをつくるのも間もなくだ。皆が首を長くして待ち
望む爛漫の春。早く春をください。
(17年3月)
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『個人の存在を無視したカジノ解禁法案』
このほど、同法案が衆院内閣委員会で可決された。カ
ジノやホテル、会議施設などを含む総合型リゾートを目
指すという。すでに各地で名乗りを上げる自治体も出て
いる。この法案の問題は個人の存在と尊厳を無視した
点である。
確かに施設設備の投資で経済効果は出るが、その一
方でギャンブル依存症に陥って人生破たんに追い込ま
れる人が生まれるのは必至である。この点を無視した
法案は大きな問題をはらむ。経済効果と集客効果さえ
得られればそれでいいのか。
一個人の存在を無視することは人間軽視というほかは
ない。たとえ健全なギャンブルであっても依存症は必
ず出現する。パチンコがそのいい例である。多額の借
金を抱え、生活破たんする例も見られる。
ギャンブル性の極めて高いカジノの場合、依存症によ
る破たん者が続出するに決まっている。筆者はラスベ
ガス、モナコ、マカオのカジノを体験したことがあるが、
ビギナーズラックで一獲千金を得ると、のめり込み、最
後は負けて人生破たんするのがオチである。
(
16年12月5日:朝日新聞「声」欄掲載)
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『電通女子の悲劇、二度と繰り返すな』
電通に勤務していた女性新入社員が昨年末、過労自殺
した。労使協定が認めていない月70時間超の時
間外労働をさせられたらしく、実際には130時
間なんてこともあったらしいが、70時間以内と
過小申告させていたらしい。
世界の労働時間と比較すると、日本の労働時間は長いほ
うから15番目となっており、それが短いフランスより約30
0時間も多い(2012年OECDデータ)。そのためウサギ小
屋に住む仕事中毒と揶揄されたこともあるほどだ。
先日、たまたまバス車内で出会ったフランス人男性によれ
ば、フランスでは年間3か月のバカンスを取るのが一般的
だという。日本の場合を聞かれたので、非常に短いと答え
ると1週間ぐらい?と言うので、いや数日間だと言うと、驚
いた様子を見せた。
彼はそのバカンスを利用して、いま九州一周旅行を楽しん
でいるところだと言う。日本の場合は有給休暇はあっても、
実際問題として取れないケースが多く、切り捨てざるを得
ないのが現状だ。せめて上司が率先して休暇をとる職場
環境にしたいものだ。
(16年11月)
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『縮小社会日本の未来に備えよ』
総務省の発表によれば日本の総人口は96万人減の
1億2千万人超となった。現在の出生率1.3が続けば
50年後には9千万人を割り込むと推計されている。そ
の一方で、高齢化が進み、65歳以下の現役世代1.3
人で1人の高齢者を支える構図になる。
これから見えてくることは労働力人口の減少、年金、医
療費などの問題だ。現役世代が支える相互扶助制度の
年金は崩壊し、医療財政も膨らんでパンクする。また、
経済活動を支える労働力人口の減少は経済活動の縮小
につながる。
経済成長の要因は人口増加、資本蓄積、技術革新だが、
このうち人口増加が欠落して成長を阻害する。そうなると
海外からの労働力移入を考えないといけないし、新たな
雇用政策が必要となる。
そして投資環境の整備や技術革新の強力な推進策も
必要となる。これらの施策を長期的視野に立って推し
進める必要があるが、いずれにしても日本が縮小社会
に向かうのは必至である。したがって、その中で縮小均
衡社会を実現することが不可欠だろう。
(16年10月)
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『華やかに彩られた平和の花火』
先日、2夜にわたり長崎港祭りで打ち上げ花火大会が
あった。夜空に広がる1万発の大輪の花火は観衆を魅
了した。その4km先には原爆の落下地点がある。だが
観衆の若い世代は、そのことを誰も知らない。
次々に打ちあがる花火を見上げながら、平和な時代に
なったものだなあ・・・と一人感慨深い思いにふける。戦
時中は、花火に代わって高射機関銃の曳光弾が夜空を
彩り、震えながら見上げたものだった。
戦後70年、多くの戦死者の墓標の上に、なんとか平和
を築きあげてきた。それだけに今の平和はかけがえのな
いものであり、現代に生きる者は何としても守り続ける義
務と責任がある。それができなければ、生きる者としての
存在意義がない。
打ちあがる花火に歓声を上げながら見上げるひとときは
実に貴重なものである。平和な時代でなければ、それは
実現不可能だ。そのことをかみしめながら平和の貴重さ
を思い知らされたのは私一人だけだろうか・・・。
(16年8月3日:朝日新聞「声」欄掲載
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