N0.6
6.モンブラン、シヨン城、グリンデルワルト・・・16年ぶりの再訪
スイスの旅6日目。今度の旅もいよいよ終盤にさしかかる。残すところあと2日である。旅の終わりが近づくと、毎回のように寂寥感が襲ってくる。旅も間もなく終わりかと思うと、寂しい気持ちにさせられるのだ。
そんな気持ちを振り払って、今朝も5時に起床。外の様子は曇りで雨は降っていない様子。これでひとまず安心というところ。
今日の旅程は、まずロープウェーで登ってヨーロッパの最高峰モンブランを観賞。その後はユングフラウヨッホの麓の町、グリンデルワルトまで移動し宿泊する。その移動の途中、レマン湖のほとりに位置するシヨン城を観光する予定である。これらはいずれも16年前に一人旅で訪れた懐かしの場所でもある。
朝食前に付近の散策に出かける。シャモニーの町はずれで何もないところだが、冠雪した山の麓に位置しているので、環境は静かで素敵な雰囲気がただよっている。山には雲がかかって全景は見えないが、いまその冠雪した山の頂が雲間から姿を見せ、朝日に輝く素敵な風景を見せている。
冠雪した山が朝日に輝く
ホテル前の道路は人影もなく、1台の車も通っていない。だが、通りを2つ隔てた向こうはハイウェーが通っていて、近づくと騒音が絶え間ない。道路沿いの建物は騒音で大変だろう。
静かに休む我らがチャーターバス
宿泊ホテルの風景
人影もなくひっそりとしたホテル前のストリート
モンブラン観賞
朝食を済ませると、8時30分にホテルを出発。これからヨーロッパ最高峰のモンブラン(Mont Blanc)の雄姿を観賞するのだ。とは言え、このモンブランはマッターホルンやユングフラウヨッホの山々とは異なり、あまり特徴のある山ではなく、一見してどれがモンブランなのか判別できず、説明を聞いて初めて分かると言った感じである。形がなだらか過ぎて急峻な山の形ではないからである。
年間50万人が訪れるというロープウェー駅に到着すると、すでに多くの観光客で埋まっている。以前に訪れた時には一番ゴンドラに乗ったのだが、これほどの混雑はなかった。また出発駅舎も08年に改装工事がなされており、瀟洒な駅舎に変わっている。これから標高2317mの中継駅プラン・ド・レギ−ユまで一気に昇り上がる。
改装されたロープウェーの発着ステーション
行列をつくる観光客
搭乗を待つ乗客
ロープウェーはピストン輸送で乗客を運んでいる。ようやく順番が来てゴンドラに乗る。ここのロープウェーは急角度で上昇するので、すごい迫力がある。山頂駅は雲の中に隠れて何も見えない。ワゴン内から見渡す光景は実に素晴らしく、息を呑むパノラマ大景観である。急斜面に沿って移動するので目がくらむような感じで、高所恐怖症の人には不向きであろう。
山頂駅は雲の中
モンブランに続く山並み
ゴンドラは標高2317mの中継駅プラン・ド・レギ−ユまで10分で一気に昇り上がる。そこでゴンドラを乗り換え、3778mの終着駅北峰まで10分で昇り詰める。ここから橋を渡って中央峰へ移り、エレベ−タ−で頂上テラスへ昇り上がる。ここが3842mの頂上
エギュイユ・デュ・ミディ
(南を指す針の意味)である。
向こうの山頂駅へ上って行く
目もくらむ懸垂氷河
同 上
氷河が流れる
シャモニーの町が眼下に見える
(動画)中継駅へ上るロープウェーよりの風景
(動画)頂上駅へ向かうロープウェーからの眺め
この頂上テラスへ上るためのエレベーターは小さく、少人数しか搭乗できない。そのため長い行列が幾重にも蛇行しており、待つこと約30分でようやく搭乗である。エレベーターは1分とかからずに頂上テラスへ到着する。
頂上テラスの表示板
狭いテラスに出ると、視界が一気に開けて青空の下に広がるヨーロッパアルプスの大景観が眺望できる。ラッキーなことに、今日の天気は快晴で遠くの山並みまで遠望できる。その中に、昨日見たマッターホルンのシルエットも確認できる。これは好天でないと、なかなか見られない光景である。
冠雪した山並み
(動画)エギュイユ・デュ・ミディの山頂テラスよりの眺望
(動画)エギュイユ・デュ・ミディの山頂テラスよりの眺望。眼前にモンブラン山が見える。
アルプスの大景観。遠くにマッターホルンが見える。
眼前には真っ白に冠雪した2つのふくらみが見える。前回の訪問時にも感じたのだが、女性の胸元を連想させる柔らかなふくらみである。その左側の高いふくらみがヨーロッパ最高峰のモンブラン(標高4807m)なのだ。普通、アルプスの山と言えば峻嶮なそそり立つ姿をイメージするが、このモンブランは意外にも峻嶮さのない女性的な山なのだ。だから、ついつい見逃してしまう恐れがある。昔と変わらぬ懐かしいシーンに、しばし見とれる。
モンブランは女性的な山
エギュイユ・デュ・ミディのてっぺん
テラスからのパノラマ大景観の観賞が終わると、エレベーターで頂上駅に戻り、これも懐かしの
エルブロンネ
へ渡るロープウェー乗り場へ行ってみる。ここは大型のワゴンではなく、数人乗りの小型ワゴンがぶら下がってエンドレスに循環している。これで40分かけてイタリア国境のエルブロンネ展望台まで氷河などの息を呑む光景に見とれながら行けるのだ。そして、その先はイタリア領へ下ることもできる。
頂上テラスから降りるエレベーターの順番待ち行列
エルブロンネ行きロープウェーの乗り場
エルブロンネ行きのロープウェーは3連結のキャビン
こんなキャビンがエンドレスに循環している
16年前に乗った時のキャビン
しかし、このロープウェーは天候に弱く、少々風が吹いたり、吹雪いたりするなど悪天候の場合は運休となる。また、冬季も運休となる。エギュイユ・デュ・ミディまで上ったからには、このロープウェーに乗らない手はない。間違いなく感動体験ができるはずである。ただし、個人旅行でないと時間が取れないので、ツアーの場合は断念せざるを得ない。
ロープウェー乗り場に行ってみると、今日は穏やかな好天なので運行されている。昔、訪れた時よりしゃれたワゴンに変わっている。この青空の下なら、素晴らしいロープウェーの旅ができそうだ。乗りたい衝動に駆られて心ははやるが、ツアーの身では如何ともし難い。
ここがアルプス登山やヴァレー・ブランシュを滑るスキーヤーの出発地点
しばし思い出に耽ると、後は下山するのみ。頂上駅にはカフェや土産品店などがあるが、素通りして下りのロープウェーに乗り込む。麓の出発駅に11時15分の集合になっている。少し時間を残して無事帰着である。
頂上駅のショップ
シャモニーの町が見えて来た
ロープワエーゴンドラの内部
(動画)出発駅に下るロープウェーよりの風景。シャモニーの町が見える。
昼食はホテルレストランで
昼食は町中にあるホテルの日本料理レストランである。メニューはシャケ&味噌汁とご飯である。久々の日本食に、みんな舌鼓を打つ。ご飯がおいしいのでどこの産米なのかを尋ねると、なんとカリフォルニア産のコシヒカリだそうである。噂には聞いていたが、初めての試食となる。
シャモニーの町並み
ランチに出されたシャケの料理
スタッフの話では、ここ数日ずっとぐずついた雨模様の天気が続いていたそうで、今日は久々の好天となり、ラッキーでしたねと言われる。山の観賞は天気に左右され、常に運、不運がつきまとう。こればかりは、なかなかうまく行くものではない。
シヨン城(CHILLON)へ
おいしい日本食でお腹を満たした後は、再びスイスに戻り、レマン湖のほとりに浮かぶシヨン城に立ち寄る。そこで元来た山越えの道を通ってレマン湖を目指す。再び国境の峠を越えてスイス領に入り、1時間半ほど走るとようやくレマン湖が見えてくる。懐かしのレマン湖である。間もなく湖畔にたたずむシヨン城が見えてくる。昔と変わらぬたたずまいに心は躍る。
峠にあるフランスの税関
「DOUANES」=フランス語で税関のこと
レマン湖が見えてきた
シヨン城構内への入口
シヨン城の風景
塔が見える
高い城壁と塔
このお城の歴史は古く、12世紀のサヴォワ家領時代にさかのぼる。この城についての最古の記述は1150年にさかのぼる。それから分かることはサヴォワ家がこの要塞とレマン湖沿いの通路をすでに支配下に置いていたことがうかがえるという。1536年ベルン地方のスイス人がヴォー地方を征服して以来、260年以上にわたり、城は要塞、武器庫、牢獄として使用された。
ここで城内見学である。日本人スタッフの案内で城内を見学する。お城の規模はかなり大きく、各階に中庭が設けられ、地下貯蔵室、牢獄、地下礼拝堂、拷問の部屋など、約50におよぶ見学個所がある。オーディオガイドの貸し出しもあるので、訪問者は利用するとよい(日本語もあり)。
城門
アーチ型の天井
囚人が置かれたいた?
ここにもアーチ型の天井が・・・
囚人がこのわっかに繋がれていた
英国の詩人バイロンのサイン(鉄枠内)
ダイニングルーム
家具調度品
細かな細工の天井
紋章
狭い通路
寝室とベッド
いろいろな紋章が並ぶ紋章の部屋
入浴シーンの絵画
トイレ
しゃれた天井模様
回 廊
甲 冑
大 砲
シヨン城の幾つかの広間はディナーショー、カクテルパーティ、コンサートなどの会場として利用できるようになっている。また子供(7〜12歳)の誕生パーティを開くこともできる。
ガイドによる案内が終わった後は出発まで少し余裕時間がある。そこで、昔懐かしのお城の撮影ポイントまで行ってみることにする。お城の前の道路をかなり遠くまで移動し、道路が湾曲になった位置から湖畔に突き出たお城の風景が見られるのだ。これがなかなか素敵な絵になる風景なので、この機会を利用して再訪してみようと試みる。
ところが歩きだしてみると、かなりの距離があることが分かり、これでは時間を喰って集合時間に間に合いそうにない。そこであきらめ、途中から引き返す羽目になる。こうして撮影ポイントへの再訪は断念せざるを得ないことに。こうしてみれば、16年前にはよく歩いたものだと感心させられる。その折、撮影したお城の写真は次のものである。
16年前に撮影したシヨン城の遠景(湖面に突き出たところ)
シヨン城の風景(遊覧船が発着する桟橋より)
グリンデルワルト(Grindelwald)へ
シヨン城の見学で1時間ほどを過ごした後、今宵の宿泊地グリンデルワルトへ向かって移動開始である。バスは思い出深いレマン湖畔を走り抜けて行く。その昔、1日がかりでこのレマン湖遊覧を蒸気汽船で楽しんだものだ。今もその蒸気汽船は健在で、優美な姿を見せている。今日の湖面は、ややさざ波立っている。
優美な姿のレマン湖遊覧船
今日のレマン湖はさざ波立っている
レマン湖に別れを告げると、今度はインターラーケンの街沿いにあるトゥーン湖を目指して走行する。2時間ほど走ると目指すトゥーン湖が見えてくる。この湖は明後日に遊覧船で観光する予定になっている。ここまで来れば目的地のグリンデルワルトは、もう間もなくだ。
トゥーン湖が見えて来た
ユングフラウヨッホ登山の基地の町、インターラーケンの側を通り抜けながら、バスは坂道に入りグリンデルワルトへ向かう。ここを上りあがって間もなく到着である。
草原が見える(車窓風景)
グリンデルワルト
はアイガーの麓に位置する小さな村で人口約4000人。ユングフラウヨッホ登山やハイキング、トレッキング、スキーなどの観光拠点となっている。日本人観光客には人気の村で、多数の日本人訪問客で賑わっている。町中には日本人向けの「日本語観光案内所」まで特設されているほどである。
グリンデルワルト到着
シヨン城を出発してから約2時間半の走行で夕方5時半過ぎごろに到着である。ツェルマットほどの賑わいはなく、わりとひっそりとしている。駅前の通りにはアイガーの岸壁が迫っている。16年前には、ユングフラウからの下山の途中に降り立って、この村をしばらく見物したのが懐かしく思われる。その折の印象では何もない小さな村だなあと思ったことである。
グリンデルワルト駅
駅にはロッカー設備がある
グリンデルワルト駅ホーム
チケット売り場
グリンデルワルト駅前通り。正面突当りが日本語観光案内所。
日本語観光案内所
グリンデルワルトの商店街。通りは短く100mぐらい。
「COOP」はスイス版生協の店。そのグリンデルワルト店で何でも安い。
グリンデルワルト駅前のストリート風景。右端が駅。
今宵のホテルは駅から直ぐのところにある超便利なホテルである。チェックインすると、なんと私宛てにFAXが届いている。思いもかけぬ意外なことに驚きながら発信人を見ると、なんと初日のチューリッヒのホテルに面会に来てくれたHさんからのFAXである。その優しい心配りに感激することしきりである。
宿泊ホテルの入口
夕食はミートフォンデュ
今夕食はスイスの名物料理ミートフォンデュということで、近くのレストランへ出かける。村のメインストリートをぶらついた後、レストランに入り、テーブルにつく。この料理は私にとっては初体験だけに、どんな料理なのか楽しみである。
この料理は金属製の小鍋に油を満たして熱し、これに細切りにした牛肉を1〜2切れ分串刺しにして油にひたし、ほどなく煮あがったところを鍋より取り出して食するわけである。言うなればスイス版鍋料理といった感じで日本のしゃぶしゃぶに似たところがある。これがなかなかの美味で、ビールを飲みながら食べると最高である。フォンデュ料理にはチーズフォンデュもあるが、これは未体験に終わる。
ミートフォンデュ料理の鍋。中には油が入っており、これに串刺しにした肉を入れて揚げる。
これがミートフォンジュ料理のセット。中央が肉。
煮あがった肉片を串に差したまま取り出して食べる
デザートは大好物のアイスクリームで、料理と言い、デザートと言い、最高の美味に舌鼓を打ちながら、心満ちる夕食となる。
満足の思いにお腹を撫でながらホテルへ戻る。床に就いたのは10時のことである。明日はユングフラウの山観賞だけに、ひたすら好天を祈るのみである。今度で二度目の挑戦だが、果たしてうまく見られるのだろうか? 幸運の女神のみぞ知るである。
(次ページは「ユングフラウ観光&絶景ハイキング」編です。)