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                No.5
                           (シルクロード)



5.砂漠横断してブハラへ・・・・ 大ナマズ・青空トイレ・カメ・チャイハ
                   ナ・民族舞踊
      

大砂漠横断
四日目。今日はウズベキスタン第三の都市ブハラへの移動である。一日かけてのキジルクム砂漠横断なので、かなりハ−ドなバスの旅になりそうだ。しかし、個人旅行ではなかなかできないこの砂漠横断が、今度のツア−参加の大きな目的なのだから期待は大きい。昨日、だれかが「部屋に暖房が入っていて暑かった。」と話している。こんな木賃宿なのに本当かなと調べてみると、確かに窓際のヒ−タから温熱がゆらいでいる。後で聞くと、夜間は冷えるので暖房を入れているという。
 

バスでブハラへ
朝食を済ませて午前九時、二十二人のツア−客と添乗員一人、それにガイドのトリック君と運転手二人が乗り込んだバスは、快晴の空の下ブハラへ向けてウルゲンチを出発。これから先、トリック君と二人の運転手とも最終日までバスの旅を共に過ごすことになる。バスはそれほど上等とはいえず、座席のあちこちがいたんだりして、少々くたびれている。出発前から、運転手が何やらトッテンカッチンとバスの中で作業している。シ−トの故障を直しているらしい。この地でデラックスバスを望むのは、土台無理な話なのだろう。これで果たして大丈夫かな、と不安がかすめる。砂漠のど真中で立往生でもしたら、どうなることか。不安をよそに、バスは動き出す。
 

座席の配置は、前方の左右二席ずつ計八人分のシ−トを優先席に指定し、午前と午後の半日ずつを交替で入れ替わることになる。そして、他の席は自由席になっている。毎朝、出発前に添乗さんが優先席の着席者名を掲示し、それを見て各自分散して座るのである。この計算でいくと旅行中、各三回ずつぐらい優先席が回ってくるらしい。私の場合は、今日の午前中が優先席に当てられているので、まずは前の席に陣取る。二人掛けをきらってか、指名された八人全員が座らないので、独りゆっくりとシ−トに埋まる。
 

白い霜?
町中をはずれて少し郊外へ出ると、乾燥した広大な農地が広がっている。地表のところどころに、白い霜のようなものが見える。それは土中の塩分が浮き出てきているらしく、肥沃な土地でもないのに、これは厳しい農業環境である。灌漑用水でこの浮き出た塩を洗い流し、間もなく綿花の栽培が始まるらしい。少し先へ行くと、住宅の団地が見える。みんな申し合わせたように一階の平屋建てで、屋根も白っぽいセメント板みたいなスレ−ト葺きになっている。どこの団地の家も、同じ資材を使った同じ形の似たような家ばかりである。ここは農家の人たちが住んでいるのだろうか。






 郊外に広がる農地                

 












 郊外に広がる住宅











窓外にカマボコ型の変わった固まりの集団が、土塀に囲まれているのが見える。なんだかコンクリ−ト製品の置場のようだが、これは墓地の集団だという。






カマボコ型のコンクリート製墓碑が並ぶ集団墓地















ウルゲンチ郊外の風景










郊外を抜け一時間近く走ったところで、砂丘の向こうに海のように青々とした水面が見え始める。アムダリア川にさしかかったのだ。ヒマラヤ北端を源流とするこの川は、キルギスタン>タジキスタン>トルクメニスタン>ウズベキスタンの四ヶ国をほぼ北西方向に通過しながらアラル海にそそぎ込む長大な川である。この川から大規模な灌漑用水が引かれており、これらの地域ではそれなしには農業は成り立たない。その意味で、それぞれの国に多大な水の恵みをもたらしているのである。
 





アムダリア川から引き込んだ灌漑のための用水路










バザール
その川のたもとに、規模の小さなバザ−ルがある。添乗さんが、ここでストップしてナマズの唐揚げを昼食用に仕入れるという。うまくあればいいのだが……といいながらその調達に下車していく。みんなも下車して小休止をとる。バラック小屋を並べたバザ−ルでは、飲物や衣類、食料雑貨品を売っている。その中の数軒では、この川で獲れたナマズをジャ−ジャ−と油で揚げている。


大ナマズ
そこを通り抜けて裏手へ回ると、用水路の川の中に獲れた大ナマズをロ−プに通して何匹も活かしているのに出会う。カメラを構えると、これを撮ってくれといわんばかりに、若者が自慢の大ナマズを水中から引き揚げて見せてくれる。これを丸のまま十cmぐらいの長さにブツ切りして唐揚げするのである。こうして食べるのが、この地の習慣なのだ。香ばしい匂いは美味しそうだが、果たしてどんな味がするのか昼食が楽しみだ。添乗さんがガイドのトリック君を連れて仕入れてきたのは、身の丈一・六mもある大ナマズだったそうで、それを唐揚げにして持ち込んでくる。車内に香ばしいうまそうな匂いが立ち込める。
 





川を生け簀代わりに大ナマズを泳がせている














これらのナマズは唐揚げにして売られる









仕入れが済んだところで、バスは再び走り出す。ここから先は、いよいよ砂漠地帯に入って行く。おや、これは意外だ。砂丘だけが広がる大砂漠を想像していたのだが、意外なことに背の低い灌木が砂漠一面を覆っていて、サハラ砂漠のように何一つ植物もない砂だけの世界は見られない。どうしてだろうと期待はずれにがっかりしていると、ガイドがその訳を話してくれる。話によると、近年になって植物の種子を飛行機から蒔き、緑化を図ったそうだ。ひところ前までは砂漠そのものだったそうだが、そのままでは直ぐに道路が砂に埋もれて通れなくなるので、その防止のために緑化したという。大きいものでも胸ぐらいの高さまでしかない灌木だが、その根は深くて地下五〜六m、横は十m以上も張っているそうである。 


広大な砂漠を突っ切るように伸びた舗装道路をひた走る。市街地ならともかく、この砂漠を横断する道路が舗装されているとは、ちと驚きである。お陰で、バスはスピ−ドをあげながら走り続けることができる。走行する車は少なく、たまにすれ違う程度でひっそりとしている。これだと、マイカ−で走るのは、ちょっと物騒な感じがする。
 

青空トイレ
しばらく走ると、アムダリア川本流にさしかかる。道の左手に、青く澄んだ湖のように水を満々とたたえてゆっくりと流れている。こんなカラカラの砂漠地帯に、それを切り裂くようにこれほど大きな川が流れているとは想像もできない。この川こそが、この地にとっては恵みの水なのである。ここでフォトストップとトイレのために、しばらく停車する。トイレ付きのバスではないため、砂漠横断中は男女とも青空トイレである。これも旅のいい思い出になろう。
 

男性陣は川の見える素晴らしい景観が広がる斜面側で、女性陣は道路の反対側の窪地で、それぞれ分かれて用を足すことになる。この雄大な景色に包まれながら放尿できるなんて、なんと贅沢なことか。この大パノラマ風景を七枚の連続写真に収める。偶然にも、男性と女性のトイレ風景まで写っているのが笑わせる。おっと、自分の記念写真も撮ってもらおう。







  キジル・クム砂漠とアムダリア川の大景観             




再びバスは砂漠の中を走り出す。これからが長いバスの旅で、二五〇kmも続く砂漠を横断しなければならない。日照りがだんだんきつくなり、車内の冷房も次第に効かなくなる。突然、砂漠の中に取り残されたかのように、二匹のラクダが現れる。だれかが放しているのだろうが、その周辺には人影さえ見当たらない。
 





砂漠の中にポツンとラクダが・・・










おいしい赤飯おにぎり
昼食は途中のドライブインで取るとの話だが、午後一時を過ぎても見渡すかぎり砂漠が続くばかりで、建物の影さえ見えない。今朝、出発の折、添乗さんが気を利かして、赤飯のおにぎりを全員に一個ずつ渡してくれたのだが、みんなお腹が空いたと見えて、それを取り出し食べ始める。こちらもつられて食べ始める。う〜ん、なかなか美味しい。こんなに遠く離れた異国の地で、たとい一個であっても赤飯が食べられるとは、ほんとに嬉しいかぎりである。「なかなか気を遣ってくれますね。」と添乗さんに感謝しながら聞いてみると、日本より赤飯のレトルト商品を持ち込んでおり、それを今朝早くから熱湯で温め、おにぎりを握ったのだという。若い彼なのに、よくやってくれる。
 

ドライブインで昼食
ようやく、バスが道路を外れて止まり始める。どうやら目指すドライブインに着いたらしい。ところが、ドライブインとは名ばかりで、写真のように掘っ建て小屋そのものなのだ。この地では、言葉の持つイメ−ジを日本の感覚と大きく変えなければ失望することになる。ガイドのトリック君が下見に行って戻ってくると、下車OKとのこと。やっと見つけたオアシスに、みんな待ち構えたようにバスから抜け出す。朝の出発から五時間も乗りずくめなのだ。降り立つと、外は三〇度近くの日射でも風が流れて車中よりも涼しい。この地では日本のように湿気がないためか、日陰に入ると意外と爽やかで心地良い。
 





砂漠の中の瀟洒な?ドライブイン














1週間を共に過ごしたわれらがバス
左側のバスは欧米人の団体観光客







この砂漠の中に、ただ一軒だけポツンとたたずむ“ドライブイン”をのぞいて見ると、薄暗く狭い部屋に幾つかの粗末なテ−ブルとイスが並んでいる。ここでは、飲物とちょっとしたつまむ物ぐらいしかなさそうだ。ここに隣接して、小さなバザ−ルの小屋も建っている。外の日陰に一テ−ブルだけが置かれているので、涼しそうなここに腰を下ろして昼食とする。今日のランチは、ホテルから用意した弁当になっている。朝出発の時、ビニ−ル袋に入った弁当を渡されたのだが、砂漠横断ということで、途中に食堂がないためらしい。
 

弁当袋の中身を開けてみると、ゆで玉子二個、ナン一枚、リンゴ一個、炭酸水一本という、驚くほどあっさりしたものである。それでも、ナンが腹ごたえがいいので結構お腹は満たされる。その上、アムダリア川ほとりのバザ−ルで調達した大ナマズの唐揚げを賞味できたので大満足である。これは、なかなかの優れものである。身はポロポロとした骨離れのいい白身で淡白な味だが、ほどよい塩味が利いてなかなか美味しい。それをみんな手づかみで食べるのである。
 

クーラーも効かず
昼食のひとときを過ごすと、再びバスは砂漠の中を走り出す。昼食後は午後ということで、今度は優先席から後方の座席へ移ることになる。運転手も交替である。一段と気温も上がり、車内もフライパンのように暑くなってくる。ク−ラ−の送風も生暖かいだけで、まったく効かないのである。おまけに、陽が傾いて窓から日差しが差し込んでくる。窓のカ−テンを閉めても幅が短くて不完全である。この時期で、この状況だと、夏のツア−はさぞかし地獄のような暑さだろう。添乗さんの話では、暑さに参ってダウンするお客もいるそうだ。
 

砂漠のカメと遭遇
アップアップしながら車に揺られていると、急にブレ−キがかかってバスが停車する。トリック君が素早く降りて道路へ駆け出す。何事ならんと様子をうかがっていると、彼は両手にカメを捕えて戻ってくる。カメの親子が道路を横切っていたのだ。それをみんなに見せようと、バスの中まで持ってきてくれる。道路脇に放してやりながら、彼は甲羅の上に乗っかって見せる。みんなが「あゝ…」と歓声を上げながら心配そうに見守っていると、彼は余裕たっぷりに「これは砂漠に住むカメで甲羅がとても固く、大人が乗ってもビクともしません。」という。草食のカメだそうだ。カメを写そうと、ほとんどの者が下車してカメを追う。
 





砂漠の中で見つけた2匹のカメ















大人が背中に乗っても大丈夫









カメ騒動も終わり、再びバスはカンカンの日照りの中を走り出す。空は真っ青、見渡すかぎりどこまでも澄み切って、雲のかけら一つさえ見当たらない見事な青空である。ここは草木のない砂漠地帯なので、雲をつくる水蒸気が発生しないためだろう。山間部の遠くから雲が運ばれて来ないかぎり、ここでは雲も、したがって雨も生まれないのではなかろうか。それだけに、日本では見られない乾燥して澄み切った美しい青空が拝めるのだ。
 

ブハラ到着
サウナに入っているような暑さの中で、吸い込む空気も熱気のように感じられて息苦しい。ただ、じっと暑さに耐えながら、時の過ぎるのを待つしかない。うつろな目で窓外を眺めていると、周囲の景色が少し変わってくる。ポツンポツンと所々に建物が見え始めたのだ。二五〇kmの砂漠地帯をやっと走破したらしい。遠くに高くそびえる煙突から大きな火炎が揺らめいているのが見える。あれは天然ガスを生産しているプラントだそうだ。これからブハラの町の郊外へさしかかる。あと一〇〇kmの道程で、もう少しの辛抱だ。昨日、添乗さんに「ブハラのホテルもこんなにお粗末なの?」と尋ねたら、「いえ、今度はこことは格段に違う良いホテルですよ。間違いありません。」という返事が返ってきたのだが、ただそれを楽しみに暑さに耐えるしかない。
 

午後六時ごろになって、やっとブハラの町に到着。ここはかってシルクロ−ドの重要拠点として繁栄し、カラハン朝、ブハラ汗国の首都であったオアシスの町である。今では、タシケント、サマルカンドに次ぐこの国第三の都市である。
 

途中の昼食時間や青空トイレ休憩はあったものの、とにかく朝の九時から夕方六時まで九時間かかって四五〇km(郊外一〇〇km↓砂漠二五〇km↓郊外一〇〇km)を走り通したことになる。砂漠横断の旅も楽じゃない。日本のようにもっと性能のいいデラックスバスなら冷房も効いて楽かも知れないが、このレベルのバスでは少々参ってしまう。
 

瀟洒なホテル
間もなくホテル到着。見ると、瀟洒な高層ホテルで、外国人旅行客の指定ホテルになっているという。この国もロシア同様に外国人の宿泊ホテルは決められているのだ。部屋もなかなかのデラックスで、添乗さんがいったとおりの段違いのホテルである。それに気を良くして旅装を解く。ぬるま湯しか出ないが、とにかくシャワ−を浴びて一服する。
 





宿泊したブハラのホテル











夕 食
夕食の時間になって地階へ下りて行くと、ダイニングル−ムも広々として気持ちがいい。グル−プにかたまって食卓を囲む。夕食の献立はピロシキ、肉料理、サラダ、ケ−キである。これにビ−ル(三五〇スム=四九〇円)を注文して各自で乾杯。料理は満足感の得られる結構なものである。ただ、同じ小ビンのビ−ルの値段が、ウルゲンチのホテルと違って一〇〇スムも高いのには驚かされる。こちらも段違いである。
 

満腹した後は、隣接する別のホテルを探索に独り出かける。ロビ−の売店も規模が小さく、大したものは売っていない。以前はこのホテルが外国人指定ホテルだったそうだが、隣に今のホテルが新設されて変わったそうだ。期待外れでホテルへ戻り、疲れた体をベッドに横たえて眠りに就く。
 


(次ページは「ブハラ観光編」です。)





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