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        N0.4




5.上海市内観光(2)

上海の旅4日目。早くも今日は帰国の日である。楽しみの時は、いつもあっという間に過ぎ去ってしまう。これから日常の世界に戻ることになる。少々寂しい思いがするが、たまに旅という非日常の異次元の世界に身を置くからこそ、旅もより楽しくなるのかもしれない。惜しい気持ちがあってこそ、楽しみも大きいというものだろう。


さて、今日は旅の最終日で、午後には上海を離れて帰国する。その前に時間の許すかぎり市内観光めぐりを行って、空港へ向かう予定である。


今朝も6時に起床。空は曇りで気温マイナス2度と空気は冷え込んでいる。昨日の夜から急に冷えてきたようだ。いつものようにバイキング朝食を済ませると、少ない荷物をまとめて帰国準備OKである。


魯迅公園散策
専用バスに乗って9時にホテルを出発。まずは北へ走って魯迅公園へ向かう。しばらく走ると、公園到着である。この公園は20世紀初頭に活躍した中国の偉大な文学者、魯迅にゆかりのある地であることから、この名がつけられたという。池や森のある広大な公園の中には、魯迅の紀念館や墓があり、その傍ら、ボート遊びや太極拳を楽しむ市民の姿も見られる。


公園に入ると、森に囲まれた広大な敷地が広がり、その中では多くの人たちがグループに分かれて太極拳、社交ダンスなどと、さまざまに楽しんでいる。趣味仲間がどこからともなくこの公園に集まって、それぞれ思い思いに楽しんでいるのだ。見るところ、ダンスのグループが多いようだ。


魯迅公園の片隅でダンスに興じるグループ


こちらでは太極拳


こちらではダンスに興じる大集団

人々の様子を見ながら奥へ進んで行くと、路傍に扇子売りのおじさんが座っている。広げて見せる扇子には、達筆の小文字で漢詩をびっしりと書き込んでいる。記念の品には面白いかなと思いながらも見過ごすことにする。


扇子売りのおじさん

さらに奥へ進んで行くと、数人の老人が路面に何やら文字を書いている。なんと筆を水に濡らして路面に水書きしているのだ。なるほど、これなら路面も汚さないし、すぐに乾くので何度でも書ける。中国の人たちの知恵は素晴らしい。さすがに筆字の本場らしく、見事な達筆で書き上げる。そのお手並みには恐れ入るばかりだ。


路面に水の筆で達筆を揮う


見事な達筆の跡が路面に残る

その向こうに、今度はさらにすごい路面書家がいる。ビンに水を入れ、その口に丸くカットしたスポンジを取り付けて筆代わりにして文字を書く。それも普通に書くのではなく、逆さまに書いたり、反対文字を書いたり、果ては両手2本のビン筆で左右対称の反対文字を流れるように書いて行く。これには舌を巻くばかり。そして、われわれが日本人と分かるや、“中日人民友好萬歳”と書いてみせる。文字を書きながら国際友好を図る意図が、なんとも心温まる思いである。


水を入れたビンの先にスポンジを付けてすらすらと書く。反対の文字を書いている。


逆さま文字をすらすらと書く


我々に向けて逆さまに書いてくれた


両手で左右対称に裏返し文字を書いてくれる。そのすごい技に驚嘆。

路面書家に感嘆しながら公園の端まで行くと、そこは魯迅のお墓になっている。その奥には魯迅の座像が静かに鎮座しながら、世の転変を眺めている。彼はここに眠りながら、今の世をどのように思いめぐらしているのだろう。若き日、日本の仙台医専(現在の東北大学医学部)に留学した経験があるという彼だが、今の日本をどう見るのだろうか? その思いを知りたいものだ。


魯迅の墓碑


魯迅の座像


内山書店
公園から移動して、内山書店跡に回る。1917年に内山完造が上海北四川路に最初の上海内山書店を開店したが、その書店跡が今も残っている。建物の2階に当時の資料が置かれている。魯迅と親交のあった内山完造だが、その内山書店は現在も東京神田で現存している。


内山書店跡の屋内には内山と魯迅の記念碑が壁に掲げられている


日本租界
内山書店を後にすると、今度は日本租界のある方へ移動する。フランス租界のように当時をしのばせる建物は残っておらず、閑静な通りと現在の家並みがあるのみである。


日本租界があった界隈

ストリートを通り抜けていると、繊細な絵柄を水晶玉に描き込んだみやげ品を売っている店が見える。その小さな店頭では、職人が目の前で絵付けを実演している。繰り抜かれたガラス玉の内側に、底に開けられた小さな穴からL字型に曲がった筆で微細な絵模様を描いている。それは見事なテクニックで、完成した玉を眺めると、美しい絵が玉の中に浮いているように見える。目の前でその芸を見れるのは珍しい光景である。


ガラスの内側に特殊筆で絵柄を入れている


趣のあるストリート


ブランド名店街の見物
このストリートを通り抜けると、そこからバスで移動して、おしゃれな高級ブランド店が集まる瀟洒なビルの見物に回る。ここにはシャネルをはじめ、世界の高級ブランド店が一堂に会した新感覚の総合ビルである。恐らく上海のセレブたちがショッピングを楽しむ場所なのだろう。およそ庶民には縁のないビルのようだ。


ビル内は垢抜けしたセンスあふれる内装で、白亜に輝いている。中央部は広い吹き抜けになっていて、高い天井からは自然の陽光が差し込んでビル内を明るく照らしている。その吹き抜けの中心には天井からぶら下げられた長く赤い装飾のカーテンが壮観である。しばらくビル内の様子を見物するだけで引きあげる。


ビルの1階フロアにはクリスマスツリーのデコレーションが・・・


1階フロアにはシャネルなどの有名ブランド店が並ぶ


2階フロアの様子


壮観な吹き抜け


昼食は北京ダック
昼時となって天目西路のレストランへ移動する。上海最後の昼食は北京ダックで、場所は北京に本店を持つその有名店として名高いレストラン「全衆徳」である。二階に上がると、満州族の民族衣装を着たレジ係の小姐が出迎えてくれる。店内は中国ランタンがぶら下がって部屋いっぱいに中華ムードがただよっている。 

北京ダック料理の有名レストラン「全衆徳」の入口看板


満州族の民族衣装を身に着けてお出迎え


店内は中華ムードがただよう

食事が始まる前に奥の厨房を垣間見せてもらう。そこには何匹もの裸にされたアヒルがぶら下げられ、焼かれるのを待っている。これが飴色に焼き上げられて食卓に出されるわけである。



(動画)北京ダックの厨房の様子


見物している間に、我らがテーブルのダックが運ばれてくる。側のワゴンに載せられたダックの調理が始まる。マスクに手袋をつけたコックが、ナイフを片手にスライスし始める。最初はあめ色に焼けた表面の皮部分を薄く剥ぐようにスライスし、皿に並べて置く。次は残りの肉の部分をスライスして皿に並べると完了である。北京ダックのメインはこのあめ色の薄皮部分である。



(動画)北京ダックの調理の様子



これが北京ダックの皮の部分

幾皿かに分けられた肉がテーブルに置かれると、食事が始まる。薄皮部分と肉を適量取り合わせ、これに味噌ダレをつけて皮の包餅の上に置き、これに細長ネギを添えて折りたたみ、包み込んで手に握り、がぶりとかぶりつく。北京ダックは香港旅行の時に次いで二度目の体験である。今度もそうだが、どうもダックは淡白な味でうま味がない。鴨肉の濃厚な味には劣るものだなあと思うのは、私だけだろうか?


肉とネギを包餅に載せ・・・


包んでいく


包み込んだらがぶりと食べる


一口食べたところ。左は味噌ダレとネギ。

ダック料理を食べ始めると、中華料理が次々と運ばれてくる。本場の料理はこれが最後だとばかりに、しっかりと噛みしめながら心行くまで味わう。心満たされる思いで最後の昼食を終える。








右側は北京ダックの肉の部分



(動画)料理の数々・・・


新天地
北京ダックのレストランを出ると、今度は路線バスに乗って新天地へ向かう。上海旅行最後の観光地は新天地である。


路線バスの車内

ここは2001年にオープンした新しい上海のコンセプトを感じさせるスポット。上海の伝統建築、石庫門の住宅地に誕生したアミューズメント・スポットで、旧フランス租界時代のノスタルジックな雰囲気を生かす石庫門造りの街並みにハイセンスでおしゃれなレストランやカフェ、ショップが並ぶ。香港・端安グループの指揮の下、アメリカ人デザイナーによって蘇った新天地は、古今東西の交錯するレトロ&モダンな上海でも最先端を行く流行発信基地となっている。


新天地のメインストリートは歩行者天国になっていて、広くはなく、しかもその途中で車が往来する道路で分断されている。通りの両側にはおしゃれな感覚のレストランやショップが立ち並んで、落ち着いた雰囲気がただよっている。細い裏通りにも、ひっそりとショップが並んでいる。また、この界隈の端には中国共産党の第一回大会が開かれた記念館の建物がある。


新天地のメインストリート


ストリートにはクリスマスのデコレーションが・・・


新天地のメインストリート。カフェテラスが並ぶ。


新天地のメインストリート


新天地の片隅には昔のしゃれた建物が・・・。フランス租界時代の建物?


中国共産党の第一回大会が開かれた記念の建物


建物の壁に記念の銘が張られている


空港へ
新天地でしばらくぶらついた後、いよいよ空港へ移動する。これで短い上海観光も終わりを告げることになる。バスは黄浦江にかかる長い橋を渡りながら浦東地区に入る。いま、未開発のこの地区一帯では、来年(2010年)の上海万博に備えてパビリオンやホテルの建設が急ピッチで進んでいる。来年になれば、この一帯もビル群が林立して、見違えるようになっているのだろう。


黄浦江を渡って浦東地区へ至り、空港へ向かう。川の左が浦東地区。


浦東地区には上海万博のパビリオンが建設中。右側の大きな構造物は
建設中の中国パビリオン。



浦東地区にはこんな広大な未開発地域が残っている。万博までにはビル
群で埋まるのだろう。


窓外の景色を眺めながら、そんな思いに耽っていると、上海浦東国際空港に到着である。3泊4日の短い旅ながら、充実した旅の思い出を胸にしまいながら、空港に降り立つ。搭乗機は福岡行き便で18時の出発である。


上海浦東国際空港のしゃれた出発ロビー


あとがき
今度の旅は長崎市内に事務所を置く「上海遊友倶楽部」という団体が主催する上海旅行であった。その会長さんが団長となって旅行したわけだが、団長さんが中国語を流暢に操り、しかも上海に精通されているだけに、普通の個人旅行やツアーとは一味も二味も異なるものであった。ほんとに手作りの旅行という感じで、個人旅行でも体験できない楽しい旅ができたことに心より感謝している。


レストランでもその場でメニューを見ながら料理を注文したり、観光も普通のツアーでは周らない場所をめぐったり、また時間に制約されず自由な雰囲気で楽しむことができた。そのため短時日の旅ではあったが、上海の素顔を存分に堪能できた旅行体験でもあった。


この旅行団には、「KTNテレビ長崎」の取材班2名が同行し、旅行取材が行われた。帰国後、その模様が「できたてGopan」の番組で放映された。


そしてまた、現地旅行社(上海錦江旅遊)の女性ガイド呉さんが終始同行して案内してくれた。日本語を流暢に話し、読み書きもできるという素敵な女性であった。


現地旅行社のガイド・呉さん

こうして思いつきで急遽参加した旅であったが、同行仲間の皆さんともどもにお世話になりながら、無事4日間の充実の旅を終えることができたことに、心より感謝している。


尽きない旅の魅力に取り付かれ、これからも「地球の旅」を元気に続けて行きたいものである。
                                         (完)
                                09年1月30日脱稿)
                     










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