写真を中心にした簡略版はこちら→ 「地球の旅(ブログ版)」






        N0.3





旅のコース






4.水郷の町・同里の観光

上海3日目。今朝も6時に起床。部屋でくつろぎながら朝食前のひと時を過ごす。昨夜の足つぼマッサージで足の疲れも取れてフットワークも軽い。効果満点である。今日の予定は水郷の町・同里の観光と本場の上海蟹を味わうことになっている。


ようやく白んできた窓外を見ると、残念なことに霧雨が降っている。いやな天気だが、じゃじゃ降りでないだけましと思わなくては・・・。慣れた食堂へ出向き、バイキング料理でお腹を満たすと、出発準備OKである。


同里へ
早目の朝8時半にホテルを出発し、車で1時間半ほど走った郊外にある同里の町へ向かう。行程の半分ほどは高速道路を走り、その後は田舎道を走る。ガイドさんの話によると、今日12月21日は冬至節で、中国では春の清明節(春分の15日後)と合わせて年2回の墓参をする日だとのこと。中国では古来、この2節季には先祖を敬う風習があるという。墓の多くは郊外にあるので、今日は道路が込むかもしれないとのこと。


バスは高速に乗って霧雨の中を西へ向かって疾走する。予想に反して、意外と車は多くない。かなり走って普通道路に出ると、のどかな風景の中を走行する。やがて右手に霧に霞む大きな湖が見えてくる。これは淀山湖という湖なのだ。この湖畔に沿ってしばらく走り、ここを通り抜けてさらに走ると古鎮同里(古鎮=古い町のこと)に至る。


雨の高速道路を同里に向かって走る


上海郊外の風景(高速道路を走る車の車窓より)


霧に霞む淀山湖


同里のこと
同里は東洋のベニスとも呼ばれ、上海から西へ90km、蘇州から南東に25キロの地点に位置する古鎮(古鎮=古い村のこと)である。宋代から続く千年の歴史を持ち、多数の科挙合格者、文人を輩出した文化の薫り高い町でもある。周辺には5つの湖があり、全長6kmにおよぶ小さな川(水路)が縦横に流れている。川を臨んで建てられている民家は江蘇省で最も保存状態が良く、規模は周庄よりも大きいという。町内の民家は明、清時代のものが主である。


北京から杭州まで1700kmに及ぶ大運河が造られているが、同里はその運河のほとりに位置している。この大運河は万里の長城と並ぶ中国古代の二大工事といわれており、時の皇帝が南部を訪問するのに、時間のかかる陸路を通らなくてもすむように造られたものだという。


同里は水路が縦横に走る町だけに橋が多く、49個の橋があり、このうち唐時代から清時代にかけて造られた古橋が29もある。これら大小さまざまの橋が街の風景に風情を添えている。一番小さい橋は三尺足らずの「独木橋」、最も古い橋は「思本橋」で700年以上の歴史を持つという。


この町には名所旧跡も多く、明清時代の主な建築としては世界遺産に登録されている退思園をはじめ、耕楽堂、崇本堂などがある。特にこの退思園は、蘇州の古典庭園の傑作の一つとされている。


この同里地区に入るには、入場料80元(1120円)が必要である。


電気自動車で町の中心へ
上海からバスで走ること1時間半、ようやく霧雨煙る同里の町はずれの専用パーキングに到着。ここで入場券を購入し、用意された小型電気自動車に分乗して町内に向かう。町並みを通り抜けて終点で下車すると、そこからてくてく歩いて同里の中心へ向かう。


同里の外れにある観光専用パーキング


同里の入場料金や開門時間などを掲示している


この小型電気自動車に乗って同里の中心へ移動する


同里の中心へ向かって走行中(電気自動車の車窓より)


商店街を通り抜けて同里の中心へ


しばらく歩くと、その向こうに「古鎮同里」と書かれた石門が見える。ここが入場門になっており、これに続いて水路を渡る石橋になっている。橋の上に立つと、まず目に留まるのは静かな水路の風景である。目の前には趣のある石橋がかかり、水路の両側には静かな家並みのたたずまいが見える。水面には観光用の遊覧船が浮かんで影を落としている。風情のある風景に見とれながら、奥へと進んで行く。


同里の中心への入場門


上の門をくぐったところの橋上から眺めた水路の風景


屋形船が静かに浮かんでいる

こぎれいなみやげ品店が並ぶ石畳の道を歩んで行く。一軒の店で鶏の足やぶつ切り肉を売っているのが珍しい。通りを先へ進んで行くと、ちょっとした広場があり、その一角に立派な舞台つきの屋形が建っている。いまちょうど、演劇が上演されている真っ最中である。ガイドさんの話では、地元の伝統芸能による劇らしい。こうして来訪した観光客向けに上演しているのだという。


商店が並ぶ通りをさらに進んで行く


鶏の足や鶏肉を売っている


舞台では郷土芸能の劇が上演されている


玉子売りのおじさん


世界遺産・「退思園」
同里観光の中心は、この「退思園」である。「退思」とは「反省」の意味だそうで、人間常に反省の心を持とうとの思いから名付けられたという。この園は清の光緒年代(1885〜1887年)に安徽方面の軍隊の長であった任蘭生という人が、故郷へ戻った際に建てたもので、7500平米の敷地を持ち、住宅部分と庭園部分に分かれている。この建設を担った袁龍が詩や画を好み名画の収集家であったというところから、各所に芸術的工夫が施されている。晩清を代表する江南様式の庭園として世界的に知られている。


任蘭生が隠居生活を楽しむためにつくったのだろうが、それだけに全体的に質素で手狭な感じである。小さな池を囲むように家屋が建てられ、各建物の内外には繊細な彫刻装飾が施されているのが印象的である。また、中庭の敷石にも手間をかけた繊細な工夫が施されている。


「退思園」の門


「退思園」の中庭


「退思園」の中庭。敷石に繊細な工夫が施されている。


「退思園」の屋内

ここの庭園の庭石にも太湖石が使われている。これらは2日目の豫園観光の箇所でも記述したように、上海郊外にある太湖の湖底から引き上げられた石で、湖底における長年月の浸食作用で石面に多数の穴ができて趣を出しているのが特徴である。



(動画)「退思園」の風景



(動画)「退思園」の風景



(動画)「退思園」の風景



(動画)「退思園」の風景



 「退思園」の静かなたたずまい


  「退思園」の閑静な雰囲気。池を取り囲むように建物が配置されている。




水郷めぐり
退思園を後にすると、水路が流れる町並みを見物に回る。途中にはアメの生地を伸ばしてアメを作っている店があったり、路上ではアヒルやお菓子を売っている。


アメ屋さんではアメの生地を伸ばしている


路上でアヒルを売っている(これは違法とか)


甘い?お菓子の路上売り

珍しそうに眺めながら歩いて行くと、その向こうに水路が見えてくる。水路の両側には細い並木道があり、それに沿って住居が軒を連ねている。その家のほとんどが、みやげ品を売っている。どこも似た物ばかり売っているので、代わり映えがしない。いつの間にか霧雨は止んで傘もいらなくなり、たたんでバッグにしまい込む。


水路には遊覧船が休んでいる


水路沿いには石畳の道が・・・

水路の風景は趣があって、なかなか風情がある。水は濁っているが、風景づくりには支障がない。清流よりも、かえってこの濁り水が似合うのかもしれない。水の都、ヴェネチアだって汚れた水に囲まれている。ここ東洋のベニスと言われる水郷も同様で、仕方のないことなのだろう。


水路沿いの道をぶらりぶらりと歩いて行くと、水路めぐりの遊覧船が見える。切符売り場をのぞいて見ると、6人乗りの船で25分間70元(1000円)となっている。今日は雨模様なので客足は少ないようだ。


遊覧船のチケット売り場


こんな細い路地があちこちにある


石橋と水路の風景

とある店先をのぞくと、割れた玉子らしきものを鍋で煮ている。のぞいてよく見ると、孵化する寸前の雛が入った玉子を煮ているのだ。殻の中には小さな雛がうずくまって入っている。土地の人は、これを買って食べるのだろうか? 肉としては一番柔らかい時期のものかもしれないが、量も少なく、産毛ばかりのように見えるのだが・・・。所変われば品変わるで、珍しいものがあるのものだ。


玉子の中には孵化中の雛がはいっている

途中にある「宗本堂」に立ち寄り、屋内を見物。年季の入った建物で、当時の風俗や衣装を着た人形がいたり、寝屋の様子が見られたりする。


宗本堂は呉江県指定の文化財?


宗本堂の屋内。主人が何やらしている様子(すべて人形)。


ムードたっぷりの寝屋の様子(宗本堂)

ここを後にして先へ進む。水路沿いにゆっくりと歩きながら、たたずむ家並みの風景を眺めていると、なんとも心を和ませる風情があり、気持ちもほっとして癒やされる思いがする。やはり人間には水と緑が必要で、これなくしては生き辛い思いがする。


水路の交差点のところに、鵜飼いの小船が浮かんでいる。鵜匠のおじさんが数羽の鵜を泳がせている。この時季、魚も少ないだろうに、トレーニングでもさせているのだろうか? 鵜飼を眺めていると、その側を遊覧船がのどかに通り過ぎて行く。その様子を眺めていると、九州の水郷・柳川のどんこ舟を思い出す。こうして水路をめぐりながら水郷の町・同里で約3時間を過ごし、パーキングへ向かう。


向こう岸の船には鵜を乗せている



(動画)遊覧船と鵜飼



堅固な石橋の風景


赤提灯が風情に趣を添えている


陽澄湖(ようちょうこ)へ
同里の町を後にすると、次は北へ向かって陽澄湖を目指す。その目的は名物「上海蟹」の賞味である。陽澄湖は江蘇省蘇州市に位置する淡水の湖で、面積は119.04平方キロメートル、水深は2m足らずという。ここで採れる蟹が有名で中国随一の産地となっている。陽澄湖産のものは海外でも有名であり、高値で取り引きされるという。香港や台湾などの業者から予約が入っていて、主に輸出に回されており、上海などに出回る比率はかなり低いという。


上海蟹
チュウゴクモクズガニという淡水に生息するイワガニ科の一種だそうで、日本では一般に上海蟹と呼ばれている。この有名な産地は前述の陽澄湖で、型は小型でズワイガニやタラバガニのような大型の海産の物ではない。秋が旬で、10月は雌の、11月は雄の旬となっている。


これを藁で縛ったままの状態で蒸し器に入れて、15分〜20分ほど蒸し上げる。蟹は体を冷やす性質の食べ物なので、体を温める作用のある生姜と酢で食べるという。


上海蟹の昼食
同里からバスで走ること1時間、ようやく上海蟹の本場、陽澄湖の町へ到着。ストリートの両側には派手な看板を掲げた蟹の専門レストランがずらりと並んで壮観である。その中にある1軒のレストランが本日の昼食場所で、もちろん上海蟹も賞味することになっている。


陽澄湖の町には蟹専門レストランがずらりと並ぶ

二階に通されて部屋に入ると、円卓にはすでに配膳準備がされて、前菜が置かれている。一同みんな座席について昼食が始まる。次々に料理が運ばれて食事が進む。


食卓には前菜が用意されている


これが生きている上海蟹。紐でくくられている。

















小さなミナ貝。すすり出して中身を食べる。










かなり食べ終わった頃に、主役の蟹様が登場である。真っ赤に蒸かし上がった上海蟹が鉢に盛られて登場する。思ったよりも小型である。ツメを広げればもっと大きく見えるのだろうが・・・。


蒸かして赤くなった上海蟹。これを手前の薬味入り酢で食べる。

1杯の蟹を小皿に取っていただく。まず甲羅を逆さまにし、腹からぱくりと殻をむいて甲羅を離す。そして甲羅についているカニミソをほじって食べる。それが終わると胴体の身をほじり、次いで足とツメを割っていただく。これらを用意された薬味入りの酢で食べるのである。私は蟹の自然の味を味わいたいので、生のままで食べる。味はなかなか結構なものだが、タラバやズワイ蟹などのように大きくて肉量がないため、食べごたえがない。


食べ終わった頃に、お茶を入れたフィンガーボールが出されるので、これで手を洗う。お茶入りが指についた臭みを取る効果があるらしい。


最後は麺をいただいて、ご馳走さまとなる。




蟹の養殖場
同行しているテレビの取材班が蟹の養殖場を取材するというので、連れ立って見物へ。店の裏手の広場の片隅にフェンスで囲った池がある。これが養殖池で蟹がうようよ泳いでいる。養殖は陽澄湖の湖水中で行われるのかと想像していたのだが、予想に反して、湖水を引き込んだ養殖池で行われている。まさに陽澄湖の水だけが命というわけで、この湖水で育った蟹が高値を呼ぶことになる。食卓に上るのは、湖水に生息する天然の蟹ではなく、養殖された蟹なのだ。意外な裏面を見た感じで、少々気落ちする。


レストランの裏手に上海蟹の養殖池がある。フェンスで囲まれている。


ネットが張られた養殖池には上海蟹がうようよ。エサは大きな貝。



(動画)上海蟹の養殖池



上海へ
お腹満腹となったところで、上海へ向かって帰途に着く。陽澄湖から2時間のドライブで市内に到着。夕食までには時間の余裕があるということで、市内の大手スーパー、カルフールに立ち寄って庶民の暮らしの様子をうかがうことに。このフランス系スーパーは中国国内のいたる所に出店している大型スーパーで、日本の関東地区や関西地区にも出店している。


広大なフロアには日用品雑貨をはじめ、生鮮食料品、衣類その他種々の商品が陳列してある。食品売り場には、生簀に飼われた上海蟹も置いてある。その値段を見ると、生きた蟹1匹が2000円〜4000円台もする高値で売られている。これでは庶民の口にはとても届かない高級食品なのだ。



(動画)スーパー・カルフルールの売り場



(動画)食品売り場の風景。肉類など。



(動画)上海蟹の売り場。生簀に入れて売っている。(カルフールにて)


夕食は広東料理
スーパーで小1時間を過ごした後、淮海路と茂名路との交差点にある人気レストラン「蘇浙匯(JADE GARDEN)盧湾店」に向かう。今夕は上海最後の晩餐で、ここで広東料理のご馳走をいただこうというわけである。この広東料理は、材料の持ち味を生かしたあっさりとした味付けが特徴で、日本人の口によく合うといわれている。


店内に入ると、吹き抜けの二階フロアもあるしゃれたレストランで、洋風のムードがただよう広々とした感じのお店である。奥まったテーブルに着くと、食事が始まる。次々においしい料理が運ばれ、舌鼓を打ちながら賞味する。最後のデザートは、ここでもお決まりのスイカだが、そのスライスの仕方がひと工夫されている。切断面にゆるやかなカーブをつけているのだ。こんなところにも趣向を凝らすところが中国らしく、なかなか粋なものである。


ビールで乾杯(レストラン「蘇浙匯(JADE GARDEN)にて)























スイカの断面にカーブがつけられている



(動画)レストラン「蘇浙匯(JADE GARDEN)盧湾店」の風景



地下鉄でホテルへ
ご馳走でお腹を満たしてレストランを出ると、てくてく歩いて地下鉄1号線の陜西南路駅へ。そこから2駅先の人民広場駅まで地下鉄に乗車する。料金は3元(42円)。地下鉄料金は距離によって最低3元から最高6元までの範囲に決められている。中国の地下鉄初乗り体験である。


上海の地下鉄の券売機


地下鉄のチケット

地下ホームに下りると、ホームと線路側がパネルで完全遮蔽されている。つまり、人は線路内には飛び下りもできない状態になっていて、立ち入ることはできないのである。これだと誤って線路内に落下したりしないので安全である。車両が到着すると、ドア部分と同じ幅の扉が開いて乗降できるようになっている。


地下鉄のホーム。右の線路側はパネルで遮蔽されている。


ゆったりした車内(上海の地下鉄)

車内はゆったりとして、乗り心地も快適。2駅の区間はあっという間に走り過ぎ、人民広場駅に到着。ここから地上に出ると、宿泊ホテルは目の前だ。こうしてホテルに帰着したのは夜の9時半である。上海最後の夜は、こうして静かにふけて行く。明日は早くも帰国する日だ。



(次ページは「上海市内観光(2)」編です)











inserted by FC2 system