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3.上海市内観光(1)

上海2日目。6時に起きて窓外を見ると、外はまだ真っ暗。この時季の夜明けはどこも遅い。柔軟体操で目を覚まし、お湯を沸かしてお茶を入れる。テレビを見ると、中国や欧米、日本のテレビなど多数のチャンネルが観られる。結局、NHKの日本放送を観ることに。


ようやく明けかかった空は雲が多く、晴れ間は見えない。だが、雨の心配はなさそうだ。


ホテルの窓より眺めた朝の風景。向かいは人民公園。

洗面を済ませて衣服を整えると食堂へ。バイキング方式の朝食は、食パン、クロワッサンなど数種類がそろい、バター、ジャムなども置かれている。2種類のお粥、豆腐やワカメの味噌汁など、和食系もそろえてある。洋食系ではハム、ソーセージ、ポテト、スパゲッティなど、中華系ではチャーハンなどがそろえてある。フルーツはスイカやフルーツポンチなど、飲み物はミルク、コーヒー、紅茶、ジュース類がそろう。これに片隅では玉子の目玉焼きを作ってくれる。少しずつピックアップしていただくと、お腹いっぱい。


朝の散策
食事を済ませたその足でホテル前のストリートへ出てみる。通りを横切った向こうには人民広場の公園が見えるが、人の姿はまだ見えない。ふと歩道の先を見ると、何やら人だかりがしている。近づいてみると、大勢の老人たちが集まって、それぞれに所用を足している。ある人は散髪、別の人は電気製品の修理の依頼、その他血圧の測定や体重測定、衣服類の補修など、老人たちのさまざまな要求に応じて専門家が作業を行っている。これを街頭で行うというのが、のどかで面白い。


散髪をしてもらっている


ラジオの修理をしてもらっている

早朝から面白いことをするものだと思いながらホテルに戻り、フロントで尋ねてみると、なんと警官たちがボランティアで毎月1回、高齢者向けに前述のような活動を行っているという。たまたま今朝がその日に当たっているというわけだ。日本では見かけない活動だけに、珍しい光景である。無料奉仕なので、これを利用する老人たちは助かるだろう。


早朝のストリートは人気も車の姿もなく、広々とした空間だけが静かに広がっている。宣伝用のアドバルーンがふわりふわりと、無風の空中にのどかに浮かんでいる。静かな朝の風景である。


早朝の西蔵中路の風景


朝の南京西路の風景。宿泊ホテル前にて。


上海博物館
ホテルを9時に出発した一行は、ぶらりぶらりと徒歩で前の人民広場を通り抜け、そのはずれにある博物館へ移動する。しばらく歩くと、その向こうに空飛ぶ円盤のような円形の風変わりな建物が見えてくる。これが博物館で、1952年に南京西路に開設され、1996年に現在の場所で新たにオープンしたもので国宝級の文物約12万点が収蔵されている。


人民公園を歩いて行く


人民公園内の公衆トイレ


上海博物館の建物が見えてきた

玄関前の外側には、左右それぞれ4頭の勇壮な獅子像が置かれている。それを愛でながら館内に入ると、中央部は4階まで吹き抜けになっており、天井部からの自然の採光が館内を明るくしている。


博物館の玄関前に並ぶ獅子像


同 上


博物館の玄関入口

ここで1時間を費やして館内を見学。書画、掛け軸、玉石、陶磁器、青銅器などが4階にわたって展示されている。珍しく写真撮影はOKなのだが、きりがないので止めておく。台北の故宮博物院で見学した経験があるだけに、類似の分野ばかりで代わり映えがしない。それでも展示室を1時間も回遊し、疲れてしまう。


陶磁器製の像


同 上


同 上


フランス租界
「租界」とは 国家が土地を租借するという意味で、1842年に清朝がアヘン戦争に破れ、上海は南京条約により開港を強いられた。これを契機にイギリス、フランスなどの租界が形成され、その後、日本も共同で租界を持ち、中国進出の拠点としたのである。


この租界は、清国(後に中華民国)内における外国人居留地であり、大きな租界では自治行政組織が設置されて、住民から住民税や営業税などの租税を徴収して道路や水道建設、警察、消防などの行政を行った。こうして租界は、一種の治外法権的な外国人居留地の性格を持つものであった。


上海にはイギリス租界、アメリカ租界(後に合併して共同租界)、フランス租界、日本租界があり、河岸地帯の通称バンドと呼ばれる黄浦江の西岸エリアの外灘地区には、当時建てられた銀行や商社の建物が今もその威容を誇っている。現在はブランドショップ、エステティック、レストランなど上海セレブ御用達のスポットができたりして人気の場所ともなっている。また、当時の民家の町並みも残っており、ノスタルジーを感じさせる地域でもある。


博物館見学を終わると、徒歩でぶらぶらストリートを西へ歩きながらフランス租界の方へ移動する。やがて閑静でしゃれた感じの町並みが現れる。これが旧フランス租界の町並みである。通りにはベージュ色のしゃれた建物が並び、庭園を備えた邸宅も見られる。今は誰が住んでいるのか分からないが、多分地元の人が住んでいるのだろう。


フランス租界へ向かう途中のストリート


フランス租界に並ぶ建物が往時をしのばせる


庭を備えた邸宅もある


孫文旧居
フランス租界を通り過ぎると、次は「孫文旧居」へ向かう。孫文(1866年〜1925年)は中国の政治家、革命家で、日本にも一時亡命したこともある。初代中華民国臨時大統領で、辛亥革命を起こし、「中国革命の父」と呼ばれる。号は中山と称し、中国では孫文よりも孫中山の名称が一般的であり、尊敬の念をこめて「孫中山先生」と呼ばれている。彼は日本亡命中(1913年〜16年)に、資金面その他の面で彼を支援した日本人、梅屋庄吉の縁結びにより、宋嘉樹の次女の宋慶齢と結婚したとされる。彼女は蒋介石夫人となった宋美齢の姉に当たる。


旧居は小ぢんまりとした二階建ての木造建築になっており、質素なたたずまいである。表の庭には孫文のりりしい坐像が置かれている。旧居は記念館になっていて、孫文ゆかりの品々や写真などが二階にわたって展示されている。内部は写真撮影禁止になっているのが残念である。


孫文記念館(孫文の旧居)


孫文の座像


昼食は飲茶
ここからバスで移動し、昼食となる。レストランは「丁香花園店」で、閑静な公園みたいな場所にあり、なかなか雰囲気のあるしゃれたレストランである。クリスマス間近ということで、サンタクロースの赤帽子をかぶったスタッフたちがムードを盛り上げ歓迎してくれる。


しゃれたレストランの雰囲気


クリスマスムードで出迎えてくれる


広いガラス窓越しに素敵な庭園を眺めながら食事が始まる。


素敵な雰囲気のレストラン内部


窓の外にはテラスも・・・

次々に出される飲茶料理に舌鼓を打ちながら、パクパクといただく。その名料理を写真で紹介しよう。











エビのシュウマイがとてもうまい





おいしそうな肉饅頭


中にはスープが入っている


豫園・豫園商城
お腹を満たした後は、上海随一の観光地・豫園へ向かう。この地は上海老街沿いにあり、400年の歴史をもつ庭園(豫園)と、これに隣接するショッピングセンター(豫園商城)や旧市街が渾然一体となった一大観光地である。豫園界隈は19世紀半ばまで上海の街の中心だったところで、豫園を中心に下町の活気あふれる豫園商城は今でも上海観光のハイライトとなっている。豫園商城は明清時代の建物風格を模した朱塗りの商業ビルが建ち並ぶレトロな通りで、とんがり屋根の建物が印象的である。


豫園商城の入口


賑わう豫園界隈のストリート


同 上

豫園商城に入ると、そこは古の中国に迷い込んだかのような錯覚を覚える雰囲気である。両側には中国風の朱塗りのきらびやかな建物がずらりと並び、すごい人出でごった返している。主にみやげ品店や食品店など、さまざまな店舗が並んでいる。


豫園商城の賑わい。いにしえの中国に迷い込んだよう。


同 上

ここを通り抜けると、その奥にちょっとした広場が見える。ここは人の溜まり場になっており、買った食べ物を立ち食いする人、見物する人など、多くの観光客でごった返している。中国らしい活気が感じられる所である。この側には池があり、多くの鯉が群れをなして泳いでいる。また、中央には女性の立像や噴水があって雰囲気を出している。


商城の中心にある広場


広場の側の池には鯉がいっぱい


池の中央にはj女人像が・・・


池には噴水もある


豫 園
商城の見物はそこそこに、ガイドさんに案内されて隣にある豫園の見物に回る。この豫園は、明代の役人が1559年に造園を始め、19年余りをかけて完成したもので、広さ2万uの趣のある庭園となっている。多数の池、古石で造った数々の築山、屋根の端が反り上がった楼閣などがいくつも園内に配置されていて、独特の中国風庭園となっている。隣の商城の喧騒とは打って変わって、そこには静けさがただよっている。


入園料30元(約400円)を払って園内に入ると、多くの築山と池が目につく。これらの築山の石は、上海郊外にある太湖の底から引き上げてきた石で、太湖石と言うのだそうだ。中には名石もあったり、何かを連想させる石もあったりと多種多様の石が使われている。また、園内の一角には京劇などを観劇したという屋形や舞台も残っている。


豫園の中には江沢民氏の筆になる石碑が・・・


この門をくぐって豫園の奥へ


豫園の中の塀には竜の装飾彫塑が・・・


楼閣の奥に築山が見える


楼閣を背景に見事な築山が・・・


趣のある池と楼閣の風景



 素敵な雰囲気を醸し出す庭園



 見事な築山。これらの石は上海郊外の太湖の底から引き上げて運んできたという太湖石で造られている。



 中央の舞台では京劇などが行われ、両側のソデから観賞したらしい。



 素敵な楼閣と回廊の風景




この園での一番の名石は一面に数十個の小穴があいた石なのだが、その頂上の穴から酒を流すと、次々にすべての穴を通って流れ落ちるというもの。また最下部の穴から線香の煙を立てると、これまたすべての穴を通って上へ立ち上るという。実際にその様子を見てみたいものだが、それができないだけに、その真実のほどは分からない。


中央が豫園内随一の名石。数十の穴を伝って下まで流れ落ちるという。

趣のある園内にひたること半時間ほどで豫園を出ると、再び商城へ戻って人込みの中を散策する。餅菓子屋の前を通りがかると、職人さんが餅つきの真っ最中。なかなかおいしそうだが、眺めるだけで遠慮する。


商城内のストリート


餅菓子屋の前では職人さんが餅をついている


ホテルへ
豫園界隈でおよそ2時間ほどを過ごした後、宿泊ホテルへ引きあげる。黄浦江沿いに走るバスの車窓から、川向こうにそびえる上海ヒルズの高層ビルが見える。スモッグか霧か不明の霞の中に、ぼんやりとその姿を見せている。それを横目で見ながらホテルへ向かう。4時半に到着後は、夕食タイムまで、しばしの休憩となる。




夕食は四川料理
6時になって夕食に出かける。今宵の夕食は四川料理で有名な定西路にある「巴国布衣風味酒楼」というレストランである。ここでは“茶芸”と“変面ショー”の2つの中国秘技が見られるので人気のレストランとなっている。


四川料理はピリ辛で有名だが、これは揚子江上流の四川省で発達した料理で、その土地柄から寒暑が厳しく疫病が多かったので、毒消しや薬効のある香辛料が多く使われるようになったという。そのため料理はスパイシィで、ぴりぴりと辛いのが特徴である。ピリ辛が苦手な人は覚悟して食することである。


このレストランのフロアは2階建てになっていて広い吹き抜けのスペースが四角に取られて。その一辺の中央部に舞台が設けられ、ここで茶芸と変面のショーが行われる。このショーは7時45分ごろから始まることになっている(08年12月現在)。それまでに食事を終わらせるようにするのがベターである。


茶 芸
2階のテーブルに案内されると、黄色の衣装に身を包んだ若い茶芸師のお兄さんが待っている。手には1mもある長く細い管の付いた黄金のヤカンを持っている。これが茶芸用のヤカンなのである。席に着くと早速、茶芸の披露が始まる。この細長い管を通してお茶を注いでくれるのである。その所作が芸術的で独特の動きで見事なお茶の注ぎを見せてくれる。


黄金のヤカンを手に持つ茶芸師


(動画)見事な茶芸



(動画)お茶注ぎにもこんな茶芸が・・・。


普通のヤカンで注いでもお茶の味は少しも変わらないのだろうが、それでは何の変哲も趣もない。そこでわざわざ大げさに黄金のヤカンに入れ、それも長い管を通して芸を見せながら注ぐところに、中国の奥ゆかしさが感じられる。


やがて円卓には料理が次々と運ばれてくる。早々に、麻婆豆腐が出される。これぞ四川の本場の料理である。これまで食べた麻婆豆腐より一段とピリ辛が強く、さすがに本場の味とは言うものの、そんなにパクパクと食べられたものではない。それでも私は結構辛さには強い(鈍感?)ので、この際に本場の味をしっかりと味わっておく。


これが四川本場の麻婆豆腐








スープがなかなかおいしい


骨付き豚肉











料理の最後はスイカでしめくくる

四川料理は最初からやみくもに、がぶりと食べると大変なことになる。口内が火事場のようにぴりぴりと燃え広がってしまう。だから、最初は少量を試食し、それも時間をかけて食べたが良い。と言うのは、食べてしばらくしてからピリ辛が感じられるからである。人間の舌にはタイムラグがあるらしい。


ほとんどがピリ辛料理だから、食べながらよくお茶を飲むことになる。その結果、茶瓶がすぐ空っぽになる。タイミングよく、そのころを見計らって茶芸師がやって来る。そして、その都度、見事な注ぎの茶芸を見せながら茶瓶に注ぎ入れてくれるのである。お茶の給湯にも熟練の芸を見せながら注ぐところに、中国の伝統が感じられる。


茶芸を見せながら茶瓶にお茶を注ぐ


「変面ショー」と「茶芸ショー」
一通りの料理が出されると、最後にスイカのデザートでしめくくる。料理が終わると、そろそろショータイムである。舞台の対面にある階段に陣取ってショーが始まるのを待つ。まずは「変面ショー」の始まりである。これは四川の伝統技だそうで、その仕組みは一子相伝の秘伝とされており、中国では第2級国家機密に指定されているそうだ。それがうなずける見事な技が披露される。


やがて音楽が鳴り始めると、衣装を身に着け、マントを羽織り、独特の帽子をかぶった1人の変面師が登場。この出で立ちは民族衣装なのだろうか? 顔面には面をつけている。この面がこのショーの注目点であり、圧巻なのだ。 


音楽に合わせて踊りながら、一瞬にして顔面のお面を変化させ、取り替えて見せるのである。何枚の面の在庫があるのか分からないが、それぞれ形相の異なる10種類ぐらいの面が用意されているようで、それがどこに隠され、どのようなからくりで一瞬の早業で変面するのか誰にも分からない。目の前で見ていても手品のように分からないのだから不思議である。その特技が秘中の秘というわけだ。



(動画)変面ショー。その見事な秘技をご覧あれ。顔面に注目。



(動画)変面ショー。顔面に注目。



(動画)変面ショー。踊り手は舞台を下りて観衆の中へ繰り出す。目の前で変面!



(動画)変面ショー。1階の観衆にもその秘技を見せる。



(動画)変面ショー。最後に素顔を見せる。女性なのか?


変面がある度に観衆は歓声をあげ、拍手を送り、どよめく。その早業の見事さは舌をまくばかりである。舞台でひとしきり演技すると、今度は舞台を離れて場内をめぐりながら観衆と握手を交わす。そして、皆の面前で変面して見せてくれるので大うけである。それでもそのからくりは分からないままだ。私も機会を逃さず握手する。


一巡してから舞台に戻り、最後のショーに入るのだが、その時、最後に面を取り去って素顔を見せてくれる。なんと、その顔は女性のようである。その意外さに皆のどよめきが響く。こうして、約15分ほどの変面ショーは幕を閉じる。


後日、テレビでこの変面ショーの放映があったが、その折のスローモーション撮影でも、そのからくりは分からない。私の推察だが多分、面を重ねてかぶっており、それを特殊なからくりで一瞬のうちに変面するのではないかと思われる。とにかく、見事な秘技であることは間違いない。


次は変面ショーに続いて、“茶芸ショー”が行われる。先ほどテーブルに配茶してくれた若者の茶芸師と女性茶芸師の2人がその芸を見せてくれる。ソロでの演技や2人での共演を見せてくれる。ただのお茶を注ぐだけの行為なのに、ここまでの芸域に高める中国の奥深さに感銘することしきりである。拳法、太極拳、その他さまざまな技や芸を生み出す中国の素晴らしさは、その長い歴史とともに深い感銘を与えるものである。



(動画)茶芸ショー。ソロで演技する。



(動画)茶芸ショー。2人での演技。


足つぼマッサージ
8時過ぎにショーが終わると、いったんホテルへ戻り、希望者だけが案内されて足つぼマッサージへ。これは香港、台湾で経験済みだが、観光で疲れた足には最良のマッサージである。


ホテル前から西蔵中路を横切り、南京東路の歩行者天国をてくてく歩いて行く。土曜日とあって、さすがに人出は多く、ストリートの電光飾も派手に輝いている。観光用のミニトレインも走っている。そんな中を15分ほど歩いた歩行者天国の末端近くに目指すビルがある。


(動画)夜景・ホテル前の道路を歩く



(動画)夜景・南京東路の歩行者天国を歩く


(動画)夜景・南京東路の歩行者天国を歩く。ミニトレインも走る。


店はその階上にあり、エレベーターで上がって店内に入る。なかなか雰囲気のある店内で、珍しく琴を弾いている女性がいる。それを聞いたりしながら、順番待ちである。混雑しているらしく、かなりの時間待たされてから、皆一緒に部屋に通される。



(動画)琴の演奏


係がついて、マッサージが始まる。ここは足湯にもつけてくれたりなど、行き届いたサービスぶり。足つぼとは言え、肩から背中までマッサージしてくれる。約1時間のコースで料金は60元(840円)と、驚きの安さである。


すっかり足の疲れが取れたところで、電光も消されて薄暗くなった道をホテルへ戻る。床に就いたのは11時半のことである。



(次ページは「水郷同里の町観光」編です。)











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