写真を中心にした簡略版はこちら→ 「地球の旅(ブログ版)」



            NO.27




19.ハイデルベルク・・・ お城とワインと
 
ドイツの作家ヴィルヘルム・マイヤ−・フェルタ−の戯曲「アルト・ハイデルベルク」で有名になった町。また、「ここから望む眺めには世界のいずれの橋も及ぶまい」とゲ−テがたたえ、その恋人マリアンネとともに古城やネッカ−河畔を散策した所でもある。私も一度は訪れてみたいと念願していた町である。
 

ハイデルベルクへ
今日から六月入り、今朝もスゴイ快晴で気温二十五度の予報、暑くなりそうだ。パンとコ−ヒ−と玉子しかないお粗末な朝食をすませ、駅でオレンジ二個を仕入れてから九時四十七分発の列車に乗車。一等車はガランとして空いている。途中から婦人が乗車してきたので、いろいろと話し込む。あまり英語がうまくないが、一生懸命に英語で話してくれるのが嬉しい。このあたり一帯はブドウが沢山とれる。私の町は人口四万五千人で、フォルクスワ−ゲンの工場がある。子供二人は成人して独立し、今は独りで暮らしているという。話しているうちに列車は一時間でハイデルベルクへ到着、終点まで行くのだという婦人に別れを告げて下車する。


チェックイン後、市内散策
駅のすぐ横手にホテルが見えたので直行し、チェックインする。一泊一三〇マルク=八、〇〇〇円(朝食付き)とやや高いが、便利できれいだし、ツインの部屋だから仕方あるまい。早速、洗濯をすませ、駅へレンタサイクルを頼みに行くが、すでに全部貸し出し中で遅すぎるといわれ、がっかり。緑深きネッカ−河畔や古城をサイクリングしようと思っていたのに、残念至極である。もう十二時だから、ないのも無理はない。気を取り直して徒歩で歩き回ることにする。そこでサンドイッチ、牛乳、ファンタオレンジを買い込み、ネッカ−河畔をめざしてテクテク歩き出す。緑に包まれた静かで落ち着きのある美しい町である。


ネッカ−川にかかる橋の上から眺める風景は、ゲ−テがたたえたのもうなずける美しい眺めである。緑深き森の中に赤いレンガ色の屋根が点在して、なんともいえない美しいコントラストを見せている。






ネッカー川にかかる橋の上か らの眺め









だが、この川もライン河と同じように茶色に濁っているのが惜しまれてならない。川縁の芝生に下りて木陰を探し、そこで昼食とする。芝生のあちこちには、多くの男女学生たちがたむろしながら日光浴を楽しんでいる。そうだ、ここはドイツ哲学を代表する由緒あるハイデルベルク大学がある学生の町でもあるのだ。若き日を思い出しながら、青春を謳歌している彼らの姿に自分をだぶらせて、過ぎ去りし若き日に思いを馳せる。
 

目の前で一人の老人が釣りをしている。先程から食事しながら眺めているのだが、なかなか当たりがない。何が釣れるんだろうと思っていると、突然釣竿が大きくしなって何やら釣り上げる。拍手をしながら近寄って見ると、フナに似た二十センチ級の魚が釣れている。老人は笑みをもらしながら、嬉しそうに籠の中にしまい込む。中を見ると、すでに二匹入っている。こんな泥水の中でも、よく魚が釣れるものだと感心する。
 

ハイデルベルク城
二時からの城内ガイドに間に合うように、ハイデルベルク城へ向けて歩き出す。かなり歩かされた上に、高台にある古城なので、最後は相当の坂と階段を上らされる。息をはずませながらやっと辿り着き、入場料二マルク=一二〇円を払って城内へ。ガイド付きの案内で城内の館に入るには、さらに四マルク=二四〇円を払わなければならい。数ヶ国語のガイドがあり、英語のガイドを選んで入城する。


一時間かかって城内を見学、一部崩壊したところもあるが歴史の重みと風格が感じられる。お城のテラスから市街を見渡す眺望は抜群で、ネッカ−川を挟むように立ち並ぶレンガ色の赤い屋根々々を眺めていると、まるで中世時代にいるような錯覚に陥る。           






ハイデルベルク城からの眺望









お城の地下室に世界一のワインの大樽があり、ワインの試飲もできるというので見物に行く。なるほど、これはデカイ大樽だ。高さ八メ−トルもある木製の樽で、その上に乗って立つ人の姿もさすがに小さく見える。









 地下室にあるワインの大樽














その傍でワインをグラスについで売っている。一杯三・五マルク=二一〇円というので、試飲してみる。つがれた可愛いグラスは、おみやげに持ち帰ってよいという。よく冷やされた白ワインが、渇いたのどにしみて何ともいえずおいしい。その昔、ファッケラ−という人がお城でつくり始めたワインだそうで、その名がつけられているという。
 

ここで飲むのはもったいないと再びテラスへ上がり、そこのベンチに腰掛けながらワインを味わう。一人のんびり座っていると、「コンニチワ」と日本語で話しかけてくる老夫婦がいる。話を聞くと、オ−ストラリアから来てヨ−ロッパ旅行をしているとのこと。半月後に帰国する予定で、レンタカ−で回っているという。私より年配の夫妻なのに元気なものだ。数年前には、日本の東京、大阪、京都、広島、福岡と旅行したそうだ。


また、日本人の団体さんもやってくる。隣に老カップルが来たので話しかけてみると、ライン河下りとロマンティック街道をめぐる八日間の旅だそうで、福岡から来たという。「こちらにお住まいですか?」と聞かれて、いい気持ちになる。長旅をしていると、その地に溶け込んで見えるのだろうか。
 

再び市内散策
ほろ酔い機嫌でお城を下り降りると、そこから長い商店街が続いている。道の両側にはきれいな商店がズラリと並び、多数の観光客で賑わっている。結構、日本人の顔も見られる。この地域は団体ツア−のポピュラ−コ−スになっているので無理もない。途中でス−パ−に立ち寄り、トマト一個とバナナ二本を買う。果物類の買い方が合理的で面白い。買った品物を種類別に自動ハカリに載せ、それと同じ絵のついたボタンを押すと重さと金額が記入されたチケットが出てくる。これを果物にペタリとくっつけてレジに持って行くのである。ヨ−ロッパには、こういう店が多い。
 





丘の上にハイデルベルク城を 望む









町の端にあるお城からこの商店街を通り抜け、駅までゆっくり歩いて一時間かかる。町全体が静かなたたずまいで、山の緑に囲まれたお城の雰囲気とネッカ−川流域の閑静で風情のある景色が演出効果を高めている。予報どおり日中は気温がどんどん上昇し、初夏の暑さで薄着しているのに汗だくである。駅のカフェテリアでポ−ク、マカロニサラダ、ビ−ルをとって夕食。代金一二マルク=七四〇円。今日はよく歩いたので、さすがに疲れる。



(次ページは「古城街道・ローテンブルク編」です。)









inserted by FC2 system