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            NO.22




13.コペンハ−ゲン・・・ サイクリングとマ−メイドとカ−ニバルと

列車ごと海を渡る
聞きなれないエンジン音にふと目を覚まし時計を見ると、まだ朝の五時である。眠っている間に列車ごとフェリ−に積み込まれ、いま海峡を渡っているところなのだ。眠い目をこすりながら列車から降りてしばし船内見学に出かける。カフェテリア、売店、免税店などがそろっている。免税店には、食品雑貨類やアルコ−ル類がス−パ−の感じで並べてある。ひとわたり巡回してから、すぐに戻って再び眠りに入る。
 

七時ごろ目覚めて窓のカ−テンを開けると、デンマ−クの静かな風景が飛び込んでくる。この国は、大小約五百の島からなる九州より少し大きいぐらいのこぢんまりした国で、人口も五一四万人と少ない。その首都コペンハ−ゲンはチボリ公園と人魚の像で知られ、童話の父アンデルセンと実存哲学の始祖キルケゴ−ルを世に送り出した所でもある。
 

八時ごろ、注文の朝食がやってくる。角パン二枚、黒パン一枚、バタ−、ジャムに真空パックのハム数枚、それにコ−ヒ−とオレンジジュ−スである。(一三・五〇マルク=八三〇円)朝はさすがに冷やついていて、日本の三月初旬の気候である。デンマ−クに上陸してからは雨も上がり、次第に晴れ上がってくる。朝もやの中に広がる美しい田園風景の中を突っ走りながら、列車は十五分遅れて八時四十五分コペン中央駅へ到着。さすがに人は少なく観光客もあまりいない。
 

早速、両替をすませ、案内所でホテルの予約を取る。駅の裏口近くのホテルで一泊四〇〇クロ−ネ=六、四〇〇円(朝食付き)。あまり良い部屋ではなく、布団も薄くて毛布一枚。冷やついているのにこれだけで大丈夫なのだろうか。そして、洗面流しも小さくてシャワ−室の区切りもなく、バスル−ム全体が水浸しになる。これでは洗濯もできないぞ、とボヤキたくなる。 


市内観光
シャワ−を浴び一休みしてから、午後一時からの市内と港めぐり二時間半の観光に参加する。切符売りの若い娘が、底抜けに明るくて面白い。彼女は英語、ドイツ語、フランス語を話す。フランスのコルシカに一年間勉強に行ったそうだ。乗客は二十人足らずでひっそりとしている。前半はバスで市内遊覧、後半はボ−トで港めぐりである。愛想のいいブロンド美人のガイド嬢は、数ヶ国語をあやつりながら案内する。彼女はまだ日本に来たことがなく、ぜひ行きたいというので、一緒に来たらどうかと冷やかすと、大笑いするばかりである。隣席の老カップルのオヤジさんは愉快なアメリカ人で、ガイドが「日曜日はキオスクを除いて商店はみんなお休みです。」と説明すると、すかさず「じゃ、ここでは教会もみんな休みかね?」とおどけてみせ、みんなの爆笑を買う。
 

港めぐりでは運河を通りながら港内へ回り、マ−メイドの像が座る岸辺まで接近して案内してくれる。あの有名な人魚像が、こんな場所にその優美な姿を見せてひそやかに座っているとは意外である。船上からはよく見ないと見過ごしてしまうくらいに小柄な可愛い像である。




 
 美しい運河の風景















遊覧船上より眺めた岸辺のマーメイド










コペンの町に来るとなんとなくホッとした気分になる。歩いている人の数も少なく、走っている車も少ない。街並みは美しく、古い歴史にしっとりと落ち着いた雰囲気がただよっている。並木や公園のしたたるような緑が街中にあふれ、道行く人々をなごませてくれる。小さな漁船が停泊する波止場は、いかにも北欧らしい風景を描き出している。


ボ−トから上がって、そこからホテルまでぶらぶら歩いて帰る。気温も十度台で快適である。夕方までホテルで午睡をとり、夕食に駅のカフェテリアへ出向いてチキンにフライドポテト、ビ−ルでお腹を満たす。ホテルの近くには、本場らしくポルノショップがあちこちに点在している。こんなに多くて商売になるのだろうかと、余計な心配が胸をよぎる。夜十時過ぎというのに、空はまだほの白い。白夜というのは、こんな感じでいつまでも夜が来ないのだろうか。白みがかった夜の空は初体験である。  


第二日目。朝七時半までぐっすりと眠り、疲れもすっかり取れて気分爽快。空は快晴だ。朝食はベルリンのホテルとは比較にならないが、パン二切れにバタ−をたっぷりぬり付け、ソ−セ−ジ、ゆで卵、ミルク、紅茶をいただく。旅行しているとすぐお腹が空くので、朝食もしっかり食べておかなくてはもたない。
 

サイクリングで市内観光
駅にレンタサイクルがあるというので、十時ごろから出かけてまず昼食用にハムサンドと牛乳を買い込み、窓口でレンタサイクルを申し込む。一人一日五〇クロ−ネ=八二〇円である。係の若いお兄さんが貸してくれたのは赤色のサラピン自転車で、乗り心地満点。私を見るなり、サドルを最低にまで引き下げて渡してくれる。こちらが何もいわないのに、私の短足を察して調整してくれるのがいかにも小憎らしい。それでも爪先だってやっとこさ地面に足がつく。この地では女性でもサドルは最低より十センチも高くし、ブロンドの髪をなびかせながら、すんなりと長い足で颯爽と走っているというのに!
 

地図を片手にいざ出発。快晴の下、いい眺めの海岸線に沿って走るサイクリングはもう最高。アムステルダムで果たせなかった夢が実現し、ルンルン気分である。アムス同様、ここも自転車が多く、専用のレ−ンや信号まであってなかなか整備されていて走りやすい。マ−メイド像を今度は海岸から見てみようと、その公園まで走らせる。                   


船上から見るマ−メイドとは違って、間近から見る彼女の像はまた一段と艶めかしい。訪れた観光 客が、入れ替わり立ち替わり像の前で写真を撮っている。私も近くの青年に頼んで、像の前で一枚写してもらう。裏手の旧城郭の公園の緑陰で弁当を広げて昼食、この気分はまた最高である。





マーメイド(人魚の像)















マーメイドの側にある公園の噴水















とある場所でノミの市が・・・















 市内の広場












カーニバル
一時から街の中心部でカ−ニバルのパレ−ドがあると聞いていたので、そこへ自転車を走らせる。 今日五月二十一日から土、日、月の三日間、恒例のコペンハ−ゲン・カ−ニバルが開催されるそうだ。うまく来合わせたもので、こんな北欧の地でカ−ニバルが見られるとはなんとラッキ−なことだろう。出発地点に行くと、たくさんのグル−プがすでに集合し、華やかな雰囲気に包まれている。サンバの激しいリズムに乗ってパレ−ドが始まる。グル−プごとに思い思いのコスチュ−ムに身を包み、音楽も工夫してサンバのリズムで踊りまくる。カラフルなコスチュ−ムが、北欧の陽光に映えてなんとも美しい。この日は幸いなことにポカポカ陽気で、ビキニスタイルのコスチュ−ムにもうってつけの気温である。





華やかなコペンのカーニバル













 
 同 上















 同 上











美しい女性軍のスタイルとコスチュ−ムに見とれて一時間を過ごし、その後は公園めぐりへ繰り出す。どの公園も静かで美しく、土曜日というのに人込みが見られない。恋人のカップル、老人のカップル、子供連れの家族などが、グリ−ンの芝生の上にまばらに見られる程度である。コペンに来て初めて気付いたのだが、ここで見る太陽はダイヤモンドのように白く輝いて美しく、空はどこまでも抜けるように青く澄み切って見える。太陽が赤くないのである。太陽の色も国によって違って見えるというのは本当なのだ。日本で見る太陽、赤道近くの南国で見る太陽、北欧で見る太陽など、それぞれに色が違って見える。十国十色、国際交流のむずかしさがそこにある。
 

北欧の春風に乗ってサイクリングを満喫できたコペンの休日は最高である。北欧まで足を伸ばしたのは本当に正解である。夕食は駅のカフェテリアで、ビフテ−キとビ−ル(一、二〇〇円)で満たす。夜は早目にゆっくり休息。ところで、コペンの観光案内パンフは日本語版も用意されていて、サ−ビスが行き届いている。日本人観光客が多いのだろうか。出張で来たという三人組に出会った以外は、日本人の姿は見当たらない。
                   

第三日目。昨日のカ−ニバルの写真が、今朝の新聞に載っている。去年よりも規模は小さかったとのことである。今夜九時四十五分発のストックホルム行き夜行列車の時間まで、今日一日チボリ公園でのんびり過ごす予定である。チボリは一八四三年に開設された遊園地の元祖で、世界の国々から多くの入園者を迎えているそうだ。今年は百五十周年を迎えて、特別のアトラクションが催されている。今シ−ズンの開園期間は四月二十七日から九月十八日までとなっている。
 

チボリ公園
十時過ぎ、ホテルをチェックアウトし、駅のロッカ−にバッグを預けてチボリへ出かける。ディズニ−ランドほどの規模はないが、さまざまな遊具やアトラクションがあって子供も大人も楽しめる緑深き静かな遊園地である。今日は日曜日とあって、家族連れで賑わっている。ゆっくりと時間をかけて園内を一周してから、色とりどりの花が咲き乱れる美しい庭園の前のベンチに陣取って、時の流れを忘れてみようと腰を下ろす。







世界的に有名な美しいチボリ公園













 同 上















 同 上










ところが、今日は生憎と曇りで日差しはなく、風も出て、昨日のうららかさとは打って変わって冬に逆戻りしたように寒く、じっと座っていると震え上がるばかりである。昼食に温かそうなホカホカの大きな焼きポテトとサラダ、ジュ−スを取ってのんびり過ごす。
 

夜になるとパレ−ドやアトラクションがあるので、それまでねばろうと思うが、この寒さにはどうにも耐えられず、予定変更して二時過ぎチボリ公園から退散する。出てきたものの、頼みのガイドブックは駅のロッカ−に預けているし、案内所も日曜で休みだし、どこで時間過ごしをするか思案投げ首である。寒いから屋内で過ごす所を見つけなくてはと思い付近を徘徊するが、映画館も見当たらずショウシァ−タ−もお休みと来ている。仕方なく駅のコンコ−スへ戻り、ベンチに腰掛けて乗降客の様子を眺めて過ごす羽目となる。
 

その後、カフェテリアでチキンにフライドポテト、ビ−ルの夕食で一時間、ファ−ストフ−ド店でコ−ヒ一杯で一時間をそれぞれ費やし、九時過ぎにロッカ−からバッグを取り出してホ−ムへと移動する。一等寝台車へ乗ってみると部屋はデラックスで、これまでのピカ一、今夜も一人独占となる。十分遅れで九時五十五分発車、乗り心地も満点である。北欧の鉄道はゆったりしていて水準も高い。
 

ストックホルムへ
間もなく列車ごとフェリ−に乗船して海峡を渡る。しばらくすると珍しく税関の検閲がある。係員がやってきて「カスタムス オフィサ−(税関の役人)」というので、「ノ− デクラレイション(申告するものはない)」というと、「ナショナリティ?」と聞き返すので「ジャパニ−ズ」というと「サンキュウ」といって立ち去る。間もなくしてスウェ−デンに上陸すると、今度は女性の係官がやってきて「パスポ−ト コントロ−ル」というのでパスポ−トを見せると、「サンキュウ」といって立ち去る。これまで列車で国境を何度も越えて来たが、車内検閲を受けたのはこれが初めてである。闇の中を列車はストックホルムへ向けて走り出す。



(次ページは「スウェーデン・ストックホルム編」です。)










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