写真を中心にした簡略版はこちら「地球の旅(ブログ版)」   




           NO.7





5.ロ−マへ

朝七時半発ロ−マ行きの飛行機に乗るために、大事を取って早朝四時半に起床。五時過ぎにホテルを出てバス停へ急ぐ。もう外は結構明るい。空港行きバスは二十四時間運行しているというので、聞いたとおりのバス停に行って待つ。しかし、三〇分近く待ってもバスはやって来ない。おかしいなあと思っていると、一台のタクシーが目の前に止まり、「どこへ行くのか。」と運転手が声をかけてくる。「空港行きのバスを待っている。」というと、バスはまだ来ないから乗れという。旅行社やホテルで聞いた話と違うなあと思いながらも、バスが来そうにないので「空港までいくらだ。」と聞くと、「一、三〇〇ドラクマ(=五五〇円)」だという。仕方なくタクシーを拾って空港まで乗りつけ、チップを渡して無事到着。 
 

通貨の両替は他国に持ち出して交換するより、その発行国で交換するほうが得だと勉強していたので、残ったドラクマ通貨をイタリア・リラに替えようと空港の両替所に行って頼む。ところが係がいうには、イタリアで替えたほうが得だという。レ−トはここのほうがいいだろうと問い返すと、確かにそうだがコミッションが高いので結果的に損するのだという。折角彼がいうので、アドバイスに従うことにする。
 

アリタリア航空のカウンターに行き、いつものように「通路側で禁煙席、出口に近い席をお願いします。」といいながら座席を決めると、「預ける荷物はないのか」と聞くので、機内持ち込みだけだと答える。すると今度は、その荷物を見せろというのでショルダーバッグを差し出すと、これを秤に乗せて計量しOKと了承してくれる。なかなかうるさいんだなあと思いながら機上の人となる。
 

機内では、たまたま千葉から来たという若いOL二人と前後の座席に座り合わせる。話を聞くと、ロ−マとアテネを周遊(八日間で二十八万円)し終えて、ローマから日本に帰国するところだという。二人だけの個人旅行だそうで、送迎と必要な案内の他は自分たちだけで過ごしてきたそうだ。英語が話せないので手振り身振りで何とか通してきたというつわものたちである。ロ−マに着いてからの乗り継ぎがよく分からないというので、スチュワードにいろいろたずねて教えてやる。
 

ローマ到着
約一時間ほどで、ローマのレオナルド・ダ・ヴィンチ空港へ到着。ここでは入国カ−ドも不要で、パスポートも手に取って見ようともせず、ただ一瞥するだけでフリーパスである。だからスタンプも何もなく、訪問した証拠が残らない。


さあ、いよいよここからユ−レイルパスの使い始めだ。早速、両替をすませて案内所へ行き、使い始めの確認スタンプを押してもらう。ローマ・テルミニ駅の近くに宿を取ろうと思うので、そこまで空港から国鉄と地下鉄を乗り継いで行かねばならない。鉄道への連絡口をたずねながらやっとフィウミチ−ノ駅ホームへ到着、ここから終着駅まで二十五分間と短時間だが、外国の鉄道の旅初体験である。ローマはドロボー天国でトラブルが多いと聞かされているので少し緊張する。


ホテル探し
地下鉄を乗り継いで、名画「終着駅」で名高いテルミニ駅に到着。出口を迷いながらもやっとのことで陸上に上がり、ガイドブックで目星を付けていた駅に近い安ホテルを探し始める。周辺の通りを行きつ戻りつしながら、やっと目当てのホテルの小さな看板を見つける。古い石造りの建物の中を入っていくと、アテネのホテルよりも古い型のエレベーターがある。昔の洋画に出てくるアコーディオン型の鉄格子シャッター扉である。リフトの中はもちろん、それを吊るしているワイヤロープまでまる見えである。扉の開け方が分からないので、三階まで階段を上る。入り口を探しブザーを鳴らすと、中からホテルの人が出てきて、ここはフロントの入り口とは違うのだといって、フロントへ案内してくれる。 
 

ホテルでの交渉は、ここからが初めてである。「ブォンジョールノ。シャワー、トイレ付きのシングルル−ムありますか?」と聞くと、一泊九〇、〇〇〇リラ(約六、〇〇〇円)だけどいいかという。「四泊すのでもっと安くならないか。」と頼むと、割り引けないという。ガイドブックでは五〇、〇〇〇リラ(三、三〇〇円)となっていたのに、どうもおかしい。すると、この部屋だといいながら案内して見せてくれる。部屋は総大理石張りでツインベッド、シャワー・トイレも美しい。予算より高いが、これならいいかと思い、「じゃ、この部屋にします。」といって泊まることにする。宿を確保すると、何よりもほっと安心する。観光案内パンフをもらって部屋に入り、旅装を解く。
 

早速、フロントで明日の観光の予約を頼む。ナポリ・ポンペイ・ソレントの一日観光である。(ランチ付きで一二五、〇〇〇リラ=八、三〇〇円) 彼女の話によると、自分たち姉妹と母親の三人でこのホテルを経営しているそうで、そんな話をしているうちに姉と母親がやってくる。娘の二人は上手に英語を話すので助かる。そこでホテル案内をもらって外出する。まず、テルミニ駅でヴェネツィア行き特急の予約をしておかなくてはいけない。エレベーターの乗り方を教わって階下へ降りる。鉄の二重シャッター扉を手で開けて乗り、中から再びそれをいちいち閉めなくてはいけない。クラシックもいいとこである。階下でホテル案内のカードをふと見ると、最初の目当てのホテルの名前と違っているではないか。どうもおかしいと思ったら、間違って別のホテルに入り込んでしまったらしい。玄関の看板を確かめて入ったのだが、同じ建物の中に幾つかホテルが同居しているので、間違えて高いほうのホテルに入ってしまったらしい。これでナゾが解けた。
 

列車の予約
テルミニ駅の予約窓口には人の列ができている。後ろに並ぼうとすると、前の人が、「午前の受け付けは自分で終わりで、後は一時半からだ。」と教えてくれる。まだ十二時なのでバルベリーニ広場まで両替に行くことにする。ここでは両替のコミッションが不要だとガイドブックに書いてあるからだ。駅のファーストフード店で昼食をすませ、地下鉄でバルベリーニ広場へ出かける。トーマスクックの両替所はすぐに見つかり、「地球の歩き方ヨーロッパ編」の本を示して両替を頼むと、OKといってコミッションなしで両替してくれる。すぐ近くに素敵な雰囲気のカフェがある。そこのテラスのイスに腰掛け、たっぷり盛られたアイスクリーム(一〇、〇〇〇リラ=六七〇円)を食べながらローマのひとときを憩うことにする。
 

テルミニ駅に戻り、予約窓口で用意したメモとユーレイルパスを見せながら「レザヴェイション・プリーズ」といってヴェネツィア行き特急の予約をする。予約料二三、〇〇〇リラ=一、五三〇円である。窓口で見せたメモ書きはガイドブックに載っている要領で書いたもので、これでバッチリである。それは次のように書いたメモである。

  Vorrei prenotare(予約したいのですが)
   30 Aprile(4月30日)
   P504(列車番号)
   Roma Termini(8:50)→Venezia s.l.(ロ-マ・テルミニ駅8:50分発 ヴェネツ
                        ィア・サンタルチア行き                                             

   UNO(1枚)
   Prima classe(1等クラス)
   Non fumatori(禁煙席)
   Alla finestrina(窓側席)
 

ロ−マはやはり噂どおり、何かとうさん臭い町である。地下鉄への階段を下りていると、ジプシ−母娘がス−ッと寄ってきて袖口をつかみ、お金をくれと手を差し出しながら離れようとしない。ポケットには何も入れていないので安心だが、振り払うのに一苦労である。また、ホテルの近くを歩いていると、たむろしている若者たちが「チョットマッテネ。コンニチワ。」と日本語で話しかけ、呼び止めようとする。そ知らぬふりをして足早に通らないと、どんなことに巻き込まれるかも知れない。用心、用心。
 

(次ページは「ナポリ・ポンペイ・ソレント編」です。)











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