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            NO.33




25.インタ−ラ−ケン・ユングフラウヨッホ・・・ 3,454メ−トルのラ
                            ンチ

夜中より霧雨が降り出している。外気は冷やついて気持ちがいい。パンだけというお粗末な朝食をすませて、九時半発の列車に乗り込む。今日はベルンまで出て列車を乗り換え、そこからインタ−ラ−ケンへ行く移動日である。ベルン駅乗り換えのインタ−ラ−ケン行きは何時に接続しているのかと車掌に確認すると、十一時二十八分で四番ホ−ムだと即答してくれる。さすがは本職だと感心する。ベルンに着いて待ち合わせ時間が十八分あるので、サンドイッチと牛乳を昼食用に仕入れる。当初の予定ではベルンにも一泊する予定だったが、追加したモンブラン登山のため取り止めることにする。
 

インターラーケン到着
一等車が離れたところに止まったので、移動するのもめんどうだと二等車に初めて乗り込む。空いている席を見つけて座ると、前に日本人らしき青年が座っている。声を掛けると台湾人だという。アメリカ・ボストンに滞在してピアノを勉強しているという。十九日間のヨ−ロッパ旅行に来ているそうだ。十二時半ごろ、霧雨の降るインタ−ラ−ケン東駅に到着。この駅はユングフラウへ行く登山電車の発着駅でもあるが、小さな田舎駅の感じである。インタ−ラ−ケンの町は、スイスアルプスのハイライト、ユングフラウやアイガ−に登る人たちの基地になっている町で、ヨ−ロッパ屈指のリゾ−ト地でもある。
 

まだシ−ズンが始まったばかりなのか、駅前付近もひっそりとしている。ユ−スに泊まるという台湾青年と別れ、早速お目当てのホテルへ直行してみるが、生憎満室という。適当なホテルを紹介してくれというと、ホテルの案内パンフを渡してくれる。それを頼りに探し回り、二軒目で部屋が取れる。一泊九七スイスフラン=七、〇六〇円(朝食付き)で、バスタブは付いているがテレビはない。すぐに洗濯をして一服する。
 

インタ−ラ−ケン西駅に通じるメインストリ−トを西駅までゆっくりと歩いてみる。やはりアルプスの麓だけあって、豊かな自然に囲まれた静かで上品な町である。西駅のほうに商店街が多く、観光客で結構賑わっている。案内所で明日の天気予報を聞いてみると、今日と同じく小雨で冷たく、すっきりしない天気だという。明後日は変わりやすい天気で、降ったり照ったりだという。折角来たのだから、明日がだめならもう一日延泊してみるか。雲だけを見に登ってもしようがないだろう。空は終日どんよりとして垂れ込め、気温も下がって手が冷たい。
 

まだ五時前だというのにお腹が空いてきたので、途中で見かけた珍しい日本食レストランに立ち寄る。六時までは軽食しかできないというので、カレ−ライスとウドンを注文する。日本人がいるのかと思ったら、どこにもその姿は見えない。外国人が運んで来るウドンを見ると、どうしてもそのイメ−ジがわいてこず、なんだか奇妙な感じがする。味ももうひとつで、いただけない。カレ−ライスのほうは、肉だけはたくさん入っている。これらにビ−ルを取って三二・七二スイスフラン=二、三八〇円とバカ高。
 

この町にもレストランばかりで、カフェテリアなどの安食堂が見当たらない。オレンジ三個を買ってホテルへ戻る。六時前には早々と入浴をすませ、持て余す時間を列車の時刻調べなどでゆっくりと過ごす。遅くには雨も止んだが、明日の天気回復を祈るばかりだ。
 

ユングフラウ・ツア−
第二日目。昨夜は八時前から床についたので、今朝は五時半に目覚める。明るくなるのを待って空を見上げると少し晴れかかって、そびえる山が朝日に輝き始めている。天気予報が良いほうに外れて、これはラッキ−なことだ。そこでユングフラウ・ツア−のチケット(ランチ付き)を買って登山することにする。独りで登るより、ガイドの説明を聞きながらのほうが素敵に違いないとの思いからである。厚手のソックス二枚を履き、メリヤスパッチに長袖の肌着シャツを増やし、その上に毛のセ−タ−を重ね着してから上着を着込み、武装して出かける。
 

八時五分発の登山電車なので時間前に行ってみると、駅のホ−ムにはすでにツア−のプラカ−ドを持ったガイドが待っている。二十人足らずのツア−客が集まっていよいよ出発、ここから山頂ハウスのある標高三、四五四メ−トルまで二時間半の行程である。車内では香港から来たという男女四人組と同席し、写真を撮り合ったりしながら賑やかに過ごす。彼らは会社勤めで、休暇を取って旅行しているという。






ユングフラウに向かう登山電車の中で









九七年の香港の中国返還後はどうするのかと聞くと、まだ考えていないが特に心配していないという。ガイドはなかなか愉快なオヤジさんで、窓越しの素晴らしい景色を説明しながらも、時々ジョ−クを飛ばしてみんなをよく笑わせる。英語のガイドなのだが、よく聞き取れないところがあって、時折一緒に笑えないのが残念だが……。 


登山電車は、軌道の間に敷設してあるノコの歯のように刻まれた特別の軌道に、車両に付いている歯車をかませて回転させ、ゆっくりと登って行く。次々に展開する絶景が息をのむ暇もないくらいに目に飛び込んでくる。眼下を見下ろせば、グリ−ンに覆われた深い山あいのあちこちに小さな村の家々が点在して、オトギの世界をつくり出している。






ユングフラウへ向かう途中の景色















 同 上















 同 上















見下ろす谷間に小さな村が















谷間に点在する村落










視線を上のほうに移すと、冠雪して朝日に映える雄大なアルプスの山々が迫力画面のように迫ってくる。間もなく電車は、切り立つようなアイガ−北壁を見上げながら通過し、やがて長いトンネルの中に入って行く。






ガスに包まれたアイガー










このトンネルを一時間かかって終点にたどりつく。トンネルの中には二ヶ所の駅があり、そこで下車して岸壁をくりぬいた岩の窓からアルプスの雄姿を鑑賞することができる。「山頂に着いたら急がないようにスロ−、スロ−で歩くこと。酸素が薄いので息をはずませると気分が悪くなりますよ。」と、何度も注意してくれる。


終点ヨッホ駅で下車し、トンネルの通路を歩いて行くと山頂ハウスに到着する。数階建てのハウスは暖房完備でなかなか美しく、レストラン、ビュッフェ、コ−ヒ−ショップからみやげ品店、郵便ポストまでそろっている。しかしここは、まだ経験したことのない標高三、四五四メ−トルの世界なのだ。そういえば、なんだか体が重いような感じがする。外の気温はマイナス二度。






山頂にあるアイスパレスの氷像

















 同 上















まだ十一時前というのに、山頂レストランで早すぎる昼食を取らされる。ス−プにスパゲッティとソ−セ−ジ一本、それにアイスクリ−ムとコ−ヒ−である。飲物はビ−ルを注文する。これが三、四五四メ−トルのランチである。山頂ハウスはガラス張りで百八十度の展望ができるようになっているが、一方側だけで三百六十度のパノラマ風景は望めない。外のテラスがないので室内からの展望だけである。眼前に広がる大氷河の迫力、間近に迫るアルプスの偉容は息をのむばかりである。何の苦労もなしに、わずか二時間半で一気にここまで登れ、素晴らしい大自然の景観に感動できるとは、ありがたい時代になったものである。 






ユングフラウヨッホ山頂ハウスからの景観









昼頃になるとガスが出てきて視界がきかなくなる。今日の登山は午前中だけが勝負で、本当にラッキ−といえる。一時発の電車で下山し、途中のグリンデルワルトで下車して散策する。ここはアルプスのなだらかな山裾に広がる美しい村で、日本人観光客には馴染みの深いところである。結構お土産品店なども多く、観光客で賑わっている。やはり、日本人の団体さん二グル−プの姿も見られる。






グリンデルワルトの村落










あちらこちらで、のどかなカウベルを鳴らしながら牛の群れが緑の牧草を食んでいる。上のほうには白い雪を頂いたアルプスの山々、その麓の山あいには点在する村の家々と牧場、まるで絵のように美しい風景である。商店街にきれいな果物屋があったので、オレンジとリンゴ一個ずつを買って帰る。奇跡的にも天候に恵まれ、アルプスの雄大で素晴らしい大自然にふれることができた満足感にひたりながら帰途につく。



(次ページは「フランスのシャモニ・モンブラン編」です。)










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