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            NO.9




7.七色に変化する世界最大の一枚岩・・・・ エア−ズ・ロック
 
今日は胸踊るエア−ズ・ロック行きだ。一番の気掛かりは現地の天候だが、今朝のテレビを見てもロック地域の予報は「サンダ− スト−ム」になっている。朝食をすませ、八時半に予約していた空港バスに乗ってケアンズ空港へ向かう。エア−ズ・ロック行きの出発時間が当初の予定より二時間早く繰り上がって九時五〇分となり、そのお陰で不可能と思われたマウント・オルガの観光が間に合いそうで有難い。


チェックインしながら、「今日の予報によればエア−ズ・ロックはサンダ−スト−ムということだが、フライトは予定通りですか?」と尋ねると、「えゝ、心配いりません。予定通りです。」という返事。一安心しながらロビ−を見回すと、ケアンズに来る時機内で一緒だった新婚カップルの姿が見える。話を聞くと、昨日はエイジンコ−ト・リ−フではなく、別のリ−フに案内されたそうだ。どうりで、船中に姿が見えなかったわけだ。
 

エア−ズ・ロックへ
機は定刻に発進し、厚い雲に覆われた空を突き抜けて上空に機首を出しながら、一路オ−ストラリア大陸のど真中エア−ズ・ロックに向けて進路をとる。これから先の雲行きが気掛かりだ。一時間経っても安定した飛行を続け、嵐の気配は何一つない。それどころか、次第に雲間が広がって下界が見え始める。どうなるのかと気を揉んでいると、エア−ズ・ロックに近づくにつれ、雲はきれいに消え去って快晴の透き通るような青空が広がってくる。


眼下には赤茶けた鉄サビ色の大地が果てしなく続くのみで、ほとんど緑の草木も見えない。時折、その広大な地面の中に細い糸を引いたように一直線にのびる道路が白く光っているのが見える。この炎熱の中、これではとても人は住めないわけだ。予報が良いほうにはずれ、なんだか狐につままれたようだ。最高の観光日和になりそうな気配にワクワクと心が踊り、思わず心の中でラッキ−と叫んでしまう。これまでの好天続きに天の神に感謝しよう。
 

やがて機は高度を下げ、着陸態勢に入る。と突然、平地に忽然と突き出たエア−ズ・ロックの全景が窓から手に取るように見えてくる。絶好のシャッタ−チャンスなのに、フィルム切れとはなんという失態! やはり、搭乗する前にフィルムを入れ替えておくべきだったと悔やまれてならない。バッグを預けているので、どうしようもない。舌打ちしている間に、機は殺風景の小さな空港に到着する。ここの気温三十七度、ケアンズから二時間ちょっとの飛行である。時計の針を三〇分戻して現地時間に合わせる。荷物を待っている間に案内所で観光パンフレットをもらい、今日の予定をたてる。
 

このエア−ズ・ロックは、グレ−ト・バリア・リ−フと並ぶ有名観光地としてオ−ストラリアでは古くから多くの観光客を魅了してきた場所である。ここの観光拠点であるリゾ−ト地区は、赤茶けた砂漠のど真中に忽然と存在するエア−ズ・ロックとマウント・オルガの観光のためだけに設けられたもので、それ以外に見るべきところは何もなく、ただ茫漠たる砂漠が広がるのみである。ここのリゾ−ト地区には五千人収容の宿泊施設あってほぼ一ヶ所にまとまっており、現在九百人のスタッフで運営されている。この地に来てみると、この不毛の砂漠と炎暑の中で、仕事とはいえ毎日よくぞ働けるなあと感心させられる。
 

この地の特殊性もあって、空港バスはすべて無料サ−ビスで飛行機の発着時間に合わせて送迎してくれる。空港玄関に待ち受けているバスに乗ってホテルへ向かう。ここのホテルの予約を取るのには手間がかかった。当初、日本のホテル予約専門会社に予約を依頼したのだが、まだ一か月以上も前というのにどのホテルも満室でキャンセル待ちになっているという。旅行社に問い合わせても同じ答えが返ってくる。ここは砂漠のど真中という特殊な地域だけに、もしホテルが取れなければどうしようもない。


そこで、現地のインフォメ−ション・センタ−に電話したところ、ここでは予約受付はできず、ホテルに直接連絡しても受け付けないことになっている。エア−ズ・ロックのホテル予約は、シドニ−にある予約センタ−で一括扱っているという。そこで、その電話番号を聞いて早速シドニ−へ電話してみると、簡単に予約が取れる。どうもこのセンタ−が別枠の部屋割りを持っているらしい。
 

ホテルやショッピングセンタ−が集まっているリゾ−ト地区に着くと、そこにはほこりっぽい赤土の上に平屋建てのホテルや建物が並んでいるだけで殺風景このうえない。ホテルに着いてフロントで天候のことを尋ねてみると、二日前は荒天だったがそれ以後は晴天続きだという。運が良かった! と思いながらチェックインをすませると、すぐ横のデスクで待ち受けている観光受付係で二時半出発の「マウント・オルガとエア−ズ・ロック・サンセット」の観光と明日の「エア−ズロック・サンライズ&ベ−ス・ツア−」を申し込む。前者はオルガを観光した後、日没を待って夕日に映えるエア−ズ・ロックを眺めるコ−スで、後者は日の出のエア−ズ・ロックを観光した後その麓を一周しながら観光するコ−スである。


このホテルは棟が幾つにも分散してロッジ風になっており、部屋を探すのが大変である。フロントで案内図をもらったのだが、案内表示の悪いこともあってなかなか辿り着かない。汗だくになりながらやっと部屋を探し当て、ク−ラ−を入れて一服する。この棟はフロントの建物から随分離れた場所になっているので、もし雨風にでもなったら移動するのが大変だろう。


昼食を取ろうと、この一角にあるスナック店でハムサンドとバナナ、ミネラル水を買ってお腹を満たす。出発時間になってロビ−に行ってみると、ミネラル水がセルフサ−ビスで売ってある。壁に貼ってある掲示を見ると、「外出時は一時間に一リットルの割合で飲み水が必要です。外出時間に合わせて水を用意しましょう。」と書いてある。暑いからとはいえ、そんなに水が必要なのだろうかと半信半疑になるが、念のために小ビン一本を買っておく。
                     

マウント・オルガとエア−ズ・ロック・サンセット観光
やって来たバスはダブルデッカ−バス(二階建てバス)で、二階に上がると窓外の景色が一段とよく見える。バスはエア−ズ・ロックを真近に見ならがら昼下がりの炎熱の道をマウント・オルガへと向かう。ここはリゾ−ト基地から二十二kmのところにある三十六個の岩の寄せ集まりからなった奇岩である。ロックの頂上から遠望できる距離にあり、地元オ−ジ−たちにはエア−ズ・ロックよりも人気があるらしい。


これら両地域を含む一帯は国立公園になっていて、十ドルの入園料が必要だ。五日間有効のこのチケットは観光申し込み時に一緒に買わされるのだが、公園区域に入る時はバスの窓からチケットを手にかざしてレンジャ−に見せることになっている。このチケットの裏面には、この地域に住む原住民アボリジニの老婦人ア−チストがスティックで描いた美しいヘビの絵が載っている。
                     

やがて、大きなジャガイモをランダムに並べたようなマウント・オルガの姿が現れてくる。






バスの車窓から見たエアーズロック















バスの車窓から見たマント・オルガ










バスはオルガの全景が見渡せる展望所で三十分の休息を取り、前方になだらかな起伏を見せながら広がるマウント・オルガの姿を屋根付きの展望台から遠望する。






展望所から眺めたマント・オルガ











 マウント・オルガの全景


反対側を見れば、遠く地平線にエア−ズ・ロックが浮かんでいる。傍に老夫婦が憩っているので「どこから来たのですか?」と尋ねると、ニュ−ジ−ランドから来たという。かなりの高年らしく、四十度近い熱射にほとほと参っている様子。


帽子をかぶっていても目がくらくらするほど暑いが、湿度が低いせいか日陰に入ると涼しく感じられる。サングラスを掛けると一層涼しく感じられるが、どうも自然の配色が分かりにくく、はるばる持参したものの以後は使わないことにしよう。乗客の中に日本人青年がいるので話しかけてみると、彼は福島在住で現在大学四年生という。卒業後は家業の節句人形造りを継いで人形師になるのだという。学業もほぼ終わったので、一週間の一人旅に出かけたという。
                     

鈴木というこの好青年と同席しながら、バスはオルガの麓へと向かう。このバスの運転手の声はアナウンサ−のように美しく、その流れるような案内口調が耳になんとも心地よい。これまでのガイドの中ではナンバ−ワンだ。オ−ストラリア英語にも大分慣れてきた。「ei」と発音する部分を「ai」と発音し、「NO」は「ノ−」ではなく「ノイ」と発音する。


この独特の英語にはとまどうことがある。例えば数字の「8」は「エイト」ではなく、「アイト」と発音するのである。バスの案内所で発車時間を聞いたところ、「アイト オクロック」という返事。そこで、「エイト オクロック?」と問い質すと「アイト オクロック!」と強い口調で、こちらの発音には合わせてくれようとしない。また、車内でガイドの話を聞いていると「ハワイ」というので、「おや? こんなところで何故ハワイの話が出てくるのかなあ」と怪訝に思っていると、それは「ハイウェイ」のことをいっているのだ。そして、「Today」は「トゥデイ」ではなく「トゥダイ」となる。
 

バスがオルガの近くに到着すると、運転手が「ここから片道三〇分のウォ−キングをして下 さい。」といいながらオルガの麓の一角を指差す。それにしても、この炎天下に往復一時間も歩くのかと思うと少々気が重くなる。気持ちを入れ替えて、鈴木青年と二人真っ先に歩き始める。人気のない赤土のデコボコ道をオルガに向かって進んで行くと、だんだんとその一角にある巨大岩石が目前に迫ってくる。そこには巨大な二つの岩石がくっつき合って深い谷間をつくっている。これがオルガ渓谷なのだ。






  オルガ峡谷










広い谷間を通りながらさらに進んで行くと、その間隔が次第に狭まってくる。そして、巨大岩石が重なり合うように狭くなったところで、大空にクサビを打ち込んだように渓谷は鋭角のV字型を形づくっている。
             







 V字型の峡谷が美しい





















 すごい絶壁






                      









ここを通り抜けた向こうには、どんな景観が待ち受けているのだろうと楽しみにしていると、道はそこで途切れて木製の展望台に到着だ。ここから見上げる巨大な渓谷の眺めは壮観で、そのV字型空間に濃紺の絵の具を溶かして流し込んだように真っ青な空が埋まっている。その雲ひとつない空の青さは、これまで見たこともない色の濃さで、多分人工衛星から眺める空もこんな紺碧の空に違いない。(実際は暗黒の世界なのだが)                   


カメラを構えても、被写体があまりにも巨大すぎてうまくアングルに収まらない。ひとしきり写真を撮り終えると、もと来た道を汗だくになりながら戻り始める。終わりに近づいたころ、日本人ツア−グル−プの一行がやって来て急に賑やかさを増してくる。その中に、前に出会った新婚カップルの姿があり、手を振って挨拶をかわす。
                     

バスに戻ると冷水が用意してあり、早速コップをもらってゴクリゴクリと喉の渇きを潤す。心得たバス会社の冷水サ−ビスに生き返る思いがし、なるほどこの分だとホテルの掲示にあった“一時間一リットル”の水補給は確かな事実なのだとうなずける。みんなが戻るのを待って、バスはエア−ズ・ロックのサンセット観光へと向かう。
                     

まだ日没までに間があり、バスはエア−ズ・ロックの登山口にやって来て小休止する。見上げると、目の前には急斜面のロックの岩肌に取り付けられた登山のための長いクサリのラインが白く光っている。そのル−トは中腹になると一段と急傾斜になっていて、見るからにしゅん巡したくなりそうな嶮しいル−トである。四十五度に近い傾斜ではなかろうか。さすがに日中は炎暑のため、だれ一人登山する者はいない。(日中は登山禁止)                     

 






 ロックの登山口















よし、ベ−スから五、六〇メ−トル登ったところにあるクサリの取っ手まで登ってみよう。そこまでの斜面はまだ緩やかなのだが、それでも登り始めてみるととても嶮しく感じられる。ツルツルの岩肌だが、取り付いてみると意外と靴のゴム底がしっかりと岩盤をとらえ、この革靴でもスリップの心配はなさそうだ。上の急斜面は、ガイドのクサリをつたって行けるのだから何とかなるだろう、みんな登っているのだから。折角の機会だから明日は予定を変更し、思い切って登ってみようか。
                     







 ロックのベースから少し登ったところ















この試し登りの機会は、私に絶好の翻意するチャンスをもたらしてくれる。それまでは、当初からエア−ズ・ロック登山はあきらめており、ズック、ジャ−ジ、手袋など何も準備して来なかったのだ。エア−ズ・ロック到着が旅行日程の終わりに近く、かなり体力を消耗していること、再度ヨ −ロッパ旅行時のような足の痙攣が山上で起こったら困ること、その上ヒザの不調もあること、などの理由で、このハ−ドな登山は無理だろうと判断し断念していたわけである。でも、この快晴の下で念願の巨大ロックを目の当りにしてみると、昨日スノ−ケリングした疲れも忘れて、なんとしても登ってみたいという衝動に駆られてくる。これで決心がついた。明日は登山コ−スに変更だ。このままの服装と革靴で挑戦してみよう。そう心に決める。


ここで再び冷水を補給し、二〇分間の休憩の後、バスはここから少し離れたサンセット・ビュ−・ ポイントへ向かう。そこは、夕日を背にしてロックの全景を適度な距離から眺望できる展望所なのだ。前方には、時間によって七色の変化を見せるというエア−ズ・ロックが、夕日の沈むのを待つかのように静かに横たわっている。すでに先着の観光客がボツボツ集まっている。この展望所は、ただ赤土の草原を整地してその中にクイを打ち込んで針金を張りめぐらしただけのものである。


その一角では、正装したウェイタ−が純白のクロスを張ったテ−ブルを用意し、その上にシャンペングラスを並べて冷えたシャンペンを注ぎ込んでいる。売物だろうかと思い「これは一杯いくらですか?」と近づいて尋ねてみると、「これはプライベ−トのものです。」という返事。はやとちりでちょっと恥かいたが、シャンペンを傾けながらサンセットを眺めるなんて、なんとおつなことをするやからたちよと、そのスマ−トさに感心させられる。もう一ヶ所、少し離れた場所でも同じ光景が見られる。
                     

どんなグル−プがシャンペンを飲むのだろうと興味津々としながら待っていると、やがて到着したバスから日本人ツア−の一行がテ−ブルのほうへ近づいてくるではないか。な〜んだ、日本人のグル−プがこんなことをやっているのか。もう一ヶ所のテ−ブルも、やはり日本人グル−プのものである。この光景を見ているうちに、そのイキな趣向を羨む気持ちがたちまち不愉快な気分に早変わりしてしまう。そこには日本人の成金趣味が見え見えだからだ。


並み居る外国人の中には、そんな趣味をこの場所の中にまで持ち込む者はだれもいない。周囲の外国人観光客も、優越感に浸りながらシャンペンを飲む日本人グル−プを横目で眺めている。なんだか、こちらまで恥じ入る気持ちに晒されるのは、ちと思い過ごしだろうか。見ているうちに、こちらも喉が渇いてきたのでコップに冷水を注ぎ、“これは特上のシャンペンだ”と皮肉をたっぷり込めながら周りの外国人たちと笑いながら乾杯する。
                     

一服していると、あのシャンペングル−プの女性ガイドがこちらへ歩いて来るので、彼女を引き留めながら話を聞き出す。話によると日本人ツア−客専門の現地旅行社だそうで、あのシャンペンは旅行代金の中に含まれており、何時もこのようにしてサ−ビスするのだという。彼女自身は、ここのリゾ−ト地区にあるスタッフ専用の施設に入って暮らしているという。
                     

そうこうしているうちに、日没時間が刻々と迫ってくる。この世のものとは思えないほど、夕日に映えて真っ赤に燃え上がるエア−ズ・ロックの姿が見られるのは、年に数えるほどしかないという。微妙に雲が広がっていないと、なかなか真っ赤にならないらしい。残念ながら今日は一片の雲もない快晴なので、燃えるロックは拝めそうにない。前方のロックをじっと眺めていると、昼下がりに見た時よりも太陽の傾き加減でロック全体にくっきりと陰影が生じ、一段と立体感をました姿が実に美しい。
                     





サンセット風景
太陽が傾き陰影が増してきた









やがて陽は十分に傾き始め、黒い影が広大な草原をなめるように背後からロックに向けてゆっくりと覆い尽くしていく。その影が迫るにつれて、ロックはこの日最後の夕日を浴びながら夕空の中に一段と輝きを増し始める。






 黒い影が迫ってくる










そして、その影に辺りが覆われてしまうと、ロックの岩肌は赤みを帯びた美しい鉄サビ色に変わっていく。気象条件が整えば、きっとこの瞬間にロックは真っ赤に燃え上がるのだろう。それが過ぎると、次第に黒ずんだ色に変わっていく。なんとも素晴らしいサンセット風景である。その刻々と変わり行く光景を時間を追いながらカメラに収める。


                    


鉄サビ色に変わっていく
















その後次第に黒ずんでくる










 エアーズ・ロックのサンセット風景:この日、最後の輝きを見せる一瞬


ふと後のほうを振り返ると、果てしなく続く地平線の彼方に沈んだ夕日が、まるで後光をさしたように見事な黄金の光を放っている。“オゥ ナイス ビュ−”と思わず心の中で叫びたくなる風景だ。そしてその光の環の中には、マウント・オルガが遠くに小さなシルエットを浮かべている。この大自然が造り出す息を呑むようなサンセット風景にうっとりしながら見とれていると、深い感動が体の底からじわっと込み上げてくる。どれもこれも、晴天ならではのたまものなのだ。サンセット・タイムは午後七時五分である。


                     


サンセット風景
右端はマウント・オルガ










すっかり陽が沈むと辺りは薄暗くなり、砂漠の大平原に夜のとばりが静かにおり始める。みんなはぞろぞろと各自のバスに戻り、帰り支度を始める。バスはライトを照らしながら夜道をリゾ−ト基地へと急ぐ。鈴木青年と座っていると、隣席の日本人の新婚カップルが「夕食はどこでされるんですか?」と尋ねてくる。そこで、「ショッピングセンタ−に行って適当な安い店を探してみようと思っているんです。」と答えると、「われわれも一緒によろしいですか。みなさんと一緒のほうが食事も楽しいですから。」と、新婚さんらしからぬ言葉が返ってくる。二人だけの世界に浸っている方がいいのだろうにと思いながらも、では一緒に行ってみましょうということになり、ショッピングセンタ−前でバスを降りる。
 

そこには小型ス−パ−や小さな食品店、土産品店などが少々あるのみで、適当な食事処は見当たらない。エア−ズ・ロック自体が特殊な地域だけに、それは無理もない話だ。「じゃ、自分たちのホテルにバイキング料理があるので、そこで食事しまんせんか。」と新婚さんが提案してくる。このホテルはこの地一番の高級ホテルなので、ここでの食事となると料金が高くなる。そこで、鈴木青年の懐具合を思いやりながら「どうする?」と聞いてみると、「ボク、かまいませんよ。」という返事。それを合図に、すぐ近くにあるホテルへ移動する。
 

ホテルに入ると、そこには砂漠の中とは思えない快適空間が広がっている。私たちが泊まっているホテルとはやはり段違いだ。まだ人気のないバイキング・レストランの一角に四人一緒に座ってビ−ルを注文し、賑やかな食事が始まる。独り旅のボッソリした食事と違って、話相手のいる食事はやはりいいものだ。料理もなかなか豪華で種類も豊富、日本人向けにスシまで用意されている。


最初のうちは空いていた座席もいつの間にか満席となり、すでに入口には入場を待つ人の列ができている。サンセット観光から帰って一旦部屋に戻り、シャワ−を浴びて出直すとこんな人込みに合ってしまう。新婚さんが、われわれと一緒にレストランへ直行したのが正解だったといって喜んでいる。料理を何度かお代わりし、デザ−トのケ−キやフル−ツまでたらふく食べ上げてから会食を終わりにする。レジで示された伝票を見ると四十二ドル(三、二〇〇円)となっている。やはり高くついた夕食ではある。
 

鈴木青年と二人、リゾ−ト内を巡回する無料のシャトルバスに乗って、地区のはずれにポツンと一軒だけ遠く離れて位置するホテルに戻ったのが十時ごろ。明日の登山用にと、閉まりかかったスナックでサンドイッチとミルクを買い求める。明日のサンライズ観光は早朝の四時半出発だから早く戻って休もうと思っていると、青年が「後から部屋に遊びに行きます。」という。


ジュ−スで喉を潤してからシャワ−を浴びていると、彼が部屋を訪ねてやって来る。しばらくの間、旅行のテクニックなどについて手解きした後、今夜のうちにホテル代の精算を済ませておこうと二人で夜道をフロントまで出向く。そして支払いを済ませ、明日の再開を約してそれぞれの部屋へ戻る。空には満点の星が降り注ぐように輝いている。明日も快晴疑いなしだ。



(次ページは「サンライズ観賞とロック登岩編」です。)









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