写真を中心にした簡略版はこちら→ 「地球の旅(ブログ版)」






               No.6




5.クイ−ンズタウン散策
 
今日はクイ−ンズタウン滞在4日目で、最終日となる。今朝はゆっくりと目を覚ます。夜はマオリのディナ−ショ−を予約している。今日は余裕の1日で、夕方まで何をして過ごそう? この地には、パラグライダ−やバンジ−ジャンプ、ラフティングなど、お好みに応じたアクティビティがいろいろ揃っているが、いずれも私には冒険的過ぎる。遠慮したが無難だろう。となるとレンタサイクルはどうだろう?  これならよさそうだ。でも急ぐことはない。ゆっくりと過ごそう。
 

とにかく天候を確認しておこう。カ−テンを開けて窓外を眺めると、今日の空は曇りだ。だが、雨の心配はなさそう。雨に遭わないのが、実にありがたい。旅先での雨がいちばん困りものである。テラスに出て、朝の景色をぼんやりと眺め入る。前方には穏やかな湖面がいつものように広がっている。その遠く背後には、冠雪した山並みが横たわって、美しい風景を演出している。このシ−ンも今日で見収めだが、なんとなく心寂しい思いがする。ほんとに、この湖畔の町はこぢんまりとした素敵な町で住みよさそうだ。そんな思いに耽りながらゆっくりと時を過ごす。
 

湖面を挟んだ向こう岸には、こんもり茂った森が見える。そこはいったいなんだろう? 着いた初日から気になっている所だ。今日は、そこを探索してみよう。そんなことを思いながら洗面を済ませ、食堂へ出向く。そういえば、昨日1階ロビ−に「橋本聖子さんとNZを楽しむ会様」と書いた掲示板が出ていたが、国会議員さんもこんな余裕時間があるのだろうか? 一緒に参加すれば、何か役得があるのだろうか? 恐らくこれも議員活動の一つなのだろう。このグル−プの姿が食堂に見えないところをみると、すでにミルフォ−ドに出発した後なのだろう。
 

のんびりと時間をかけて和食の朝食を済ませる。ここの食堂にも若い日本人女性が働いている。ちょと話を聞いてみると、まだここで働き始めて3日目だという。彼女もワ−キング・ホリデ−でこの地にやってきて、このホテルに職を見つけたのだという。他にもう一人、フロントにもワ−ホリ上がりの日本人女性が働いている。彼女はもう4年になるという。こんな具合で、この町には日本人女性が結構働いているようだ。
 

彼女らをうらやましく思いながら部屋に引きあげ、一服する。ベッドにごろっと横になりながら、ロビ−でかき集めたパンフレットを広げて眺め入る。ロビ−のパンフ棚にはびっしりと様々な観光パンフが並んでいる。こんなに種類豊富な町も珍しい。さすがに観光立国だけのことはある。


公園散策
こうして時間を過ごした後、身仕度を整えて近郊探索へ出かける。街角で見かけたレンタサイクルの広告看板につられて、その店を訪ねてみる。看板とは少し離れた湖寄りの奥まった所にあり、その店には販売用の新品自転車や貸し自転車を揃えている。店頭で働いている主人に、サイクリングのことでいろいろ尋ねてみる。コ−スとしては、湖畔沿いに郊外へ走るそうだが、かなりのアップダウンコ−スになっていると言う。いろいろ考えた結果、サイクリングは断念することにする。平坦なコ−スならともかく、上りが多いと結局歩いて押すことになり、膝にも負担がかかるからである。
 

そうとなれば、近郊の散策をするしかない。その前に、昼食を調達しておこう。モ−ル・ストリ−トに珍しく寿司店を発見したので入ってみる。こぢんまりとした店内には、中年の日本人夫婦が働いている。話を聞くと、当地で開業してから3年になるという。米をはじめ、寿司の材料や調味料などはすべて日本から取り寄せ、本物の味を提供していると自慢気に話している。それじゃということで、海苔巻きといなり寿司を買うことにする。
 

次は飲物にビ−ルを調達しなくてはと、コンビニへ行って缶ビ−ルを1本買い込む。これで昼食の準備はOKだ。そこで到着以来、窓から見える湖の向こう岸に行ってみようと、湖岸をコの字に曲がりながらぶらぶら歩き出す。向こう岸にたどり着くと、森のように鬱蒼と茂る木々の間に、小道が湖岸沿いに走っている。その一角の岸辺に腰を下ろし、お弁当開きとする。 雲は多いが晴間ものぞく穏やかな天候で、辺りには早春の雰囲気がただよっている。


ここからは、これまでとは逆方向に市街地を眺めることになり、また違った雰囲気が楽しめる。目の前に横たわる湖面のさざなみが春の陽光を浴びてきらめいている。湖水の向こう正面はビ−チ・ストリ−トで、私の宿泊ホテルも見える。その背後には標高440mのボブズ・ヒルが裾野を広げて立ち塞がっている。いま戻って来たばかりの蒸気船ア−ンスロ−号が、桟橋に着こうとしている。なかなか素敵な風景である。こうして眺めていると、この町の時間はゆっくりと流れているようだ。私の時間も、この雰囲気に合わせて、ゆっくりと流そう。



 正面の小山がボブズ・ヒル、右端奥が中心街。正面の湖岸線がビーチ・ストリート、煙を吐くのは蒸気船アーンスロー号。




こうして、ずいぶんとのどかなを時間を過ごした後、ゆっくりと腰をあげて移動する。こちらの湖畔沿いには、木立ちの間に素敵な散歩道が続いている。湖を眺めながらここを歩けば気持ちが良さそうだが、どこまで歩いても切りがなさそうだ。この小道沿いには森のように見える背の高い木立ちが並んでいる。松ぼっくりがついているところを見ると、松の類であうろう。黒松にも似ているが、そうではなさそうだ。
 





湖岸沿いの小道










途中で木立ちを抜けて中へ入って行くと、なんとそこにはよく手入れされたガ−デンが広がっている。「クイ−ンズタウン・ガ−デン」なのだ。この界隈では唯一の公園なのだろう。その周りには背の高い松の木が生い茂り、内側には緑の芝生を取り囲むように様々な木々が植えられて落ち着いた静かな雰囲気を醸し出している。辺りには作業員の姿が木陰に見えるぐらいで、人影もほとんどなく、静まり返っている。ここがいちばん奥まったところである。芝生に腰を下ろして、ここでもしばし憩って行こう。




 木々に囲まれた静かな「クイーンズタウン・ガーデン」



ここから入口門の方へ移動して行くと、色とりどりの花が咲き乱れ、春の雰囲気を目いっぱいにふりまいている。ここは樹木の多い公園でもある。



 さまざまな花が咲き乱れる公園




さらに移動していくと、中央に浅い池が現れる。そして、その中央に石でできた小さな太鼓橋が掛かっている。なんだか、日本庭園を思わせる雰囲気である。






日本庭園の雰囲気がただよう池









この横を通り抜けて行くと、入口門に到達する。そこには「Queenstown Garden」と表示されている。ここは市民のよき憩いの場所になるのだろうが、この町全体がそんな雰囲気だから、地元の人たちにはわざわざ訪れる必要がないのかもしれない。
 

旅先で、こんなにもゆったりと時間を過ごせるのは、なんと贅沢なことか。団体ツア−だと、休む間もなく次から次へと駆けずり回る。主催旅行社としては、いかに効率良く盛りだくさんの観光ポイントを回るかが至上命題で、ゆとりの時間を与えるのに恐怖心さえ持っているのかもしれない。そんな旅のスタイルを求めるツア−客のせいでもあるのだろうが……。
 

ここでゆったりとのどかな時を過ごした後は中心街へ移動し、ストリ−トをぶらつきながらホテルへと戻る。部屋で一服しながら、7時からのマオリ・ショ−に備える。


マオリ・コンサ−ト&フィ−スト
7時からディナ−が始まるので、そろそろ出かけることにする。このシア−タ−は町外れの目立たない一角にあり、ホテルから歩いて10分ほどの距離である。中に入ると、大ざっぱな感じのホ−ルで、テ−ブルと椅子が並んでいる。すでに先客たちが座っている。自由に席を選んで座ると、早速バイキング式のディナ−で食事を始める。各種の肉・魚料理をはじめ、ス−プ、サラダなどが並び、デザ−トにはフル−ツ、アイスクリ−ム、ケ−キなどが揃っている。一通り食事が終わって満腹し、一服すると、いよいよショ−の始まりである。
 

舞台に登場したのは、男女6人のマオリ族のメンバ−で、男性はみんな上半身裸で腰蓑を着け、女性はタンクトップ姿である。そして男性は顔面全体に装飾刺青を施し、女性は顎の部分にその装飾を施している。こうして、全員で踊り歌ったり、男女に分かれて踊ったりなど、いろいろなパフォ−マンスを見せてくれる。歌のメロディは、ポリネシア系の流れをくむ民族だけに、いずれもハワイアンのメロディによく似ている。
 





 マオリ族のダンス










彼らのダンスの中で特徴的なものをあげれば、男性が踊るハカ(haka)がある。これは敵を威圧し、戦意を高めて戦いに備えるための踊りで、最初は「カマテ、カマテ」という言葉から始まる。そして、踊りながら舌を出したり、膝を叩いたりする。現在ではニュ−ジ−ランドのラグビ−チ−ム、オ−ルブラックスが試合のキックオフ前に踊る習慣になっているようだ。 






「ハカ」の踊りはこんな感じ









他の一つは、女性が踊るポイダンスである。女性が白い玉のついた紐(ポイ)を手に持ち、それを回しながら歌い踊るのである。この踊りは、カヌ−を漕ぐマオリ人の元気づけのため、船の上で踊れない彼らの代わりに玉が踊るというもの。また狩猟の時、この玉を投げてその紐を鳥の足にからめて捕えるというように、その武器としても使われたという。
 





ポイダンス
女性が白い玉の付いた ヒモを振り回している。








ショ−の中盤に入ると、今度は代わって観客の出番である。まず男性全員を舞台に上げ、先にあげたハカを演舞させるのである。舞台の上で半円形に並ばせ、彼らが見本を見せてそれに倣わせる。中腰になってカマテ、カマテ……と叫びながら足を踏み鳴らし、膝を叩き、そして目をかっと見開いて舌を出し、怒りの形相を見せながら雄叫びをあげて終わる。客席の女性たちは大笑いである。
 

ところが女性たちも笑っている場合ではない。今度は彼女らも全員舞台に上げられ、女性向きの踊りを踊らされる羽目に。こうして会場は笑いの渦に包まれ、和やかな雰囲気のうちに観客のショ−は終わりとなる。この後、再び彼らのショ−があり、フィナ−レとなる。1時間半あまりの舞台が終わると、観客との記念撮影に応じるなどサ−ビスしてくれる。
 

来場者は意外と少なく、30名足らずの小人数である。団体ツア−客が見に来ることもあるのだろうか? この場所は意外と知られていないのかもしれない。外に出ると、まだ夜気は冷たく、思わず襟を立てながら帰路を急ぐ。こうして、クイ−ンズタウン最後の夜は更けていく。


(次ページは「オークランド編」です。)










inserted by FC2 system