5.クイ−ンズタウン散策
今日はクイ−ンズタウン滞在4日目で、最終日となる。今朝はゆっくりと目を覚ます。夜はマオリのディナ−ショ−を予約している。今日は余裕の1日で、夕方まで何をして過ごそう? この地には、パラグライダ−やバンジ−ジャンプ、ラフティングなど、お好みに応じたアクティビティがいろいろ揃っているが、いずれも私には冒険的過ぎる。遠慮したが無難だろう。となるとレンタサイクルはどうだろう?
これならよさそうだ。でも急ぐことはない。ゆっくりと過ごそう。
とにかく天候を確認しておこう。カ−テンを開けて窓外を眺めると、今日の空は曇りだ。だが、雨の心配はなさそう。雨に遭わないのが、実にありがたい。旅先での雨がいちばん困りものである。テラスに出て、朝の景色をぼんやりと眺め入る。前方には穏やかな湖面がいつものように広がっている。その遠く背後には、冠雪した山並みが横たわって、美しい風景を演出している。このシ−ンも今日で見収めだが、なんとなく心寂しい思いがする。ほんとに、この湖畔の町はこぢんまりとした素敵な町で住みよさそうだ。そんな思いに耽りながらゆっくりと時を過ごす。
湖面を挟んだ向こう岸には、こんもり茂った森が見える。そこはいったいなんだろう? 着いた初日から気になっている所だ。今日は、そこを探索してみよう。そんなことを思いながら洗面を済ませ、食堂へ出向く。そういえば、昨日1階ロビ−に「橋本聖子さんとNZを楽しむ会様」と書いた掲示板が出ていたが、国会議員さんもこんな余裕時間があるのだろうか? 一緒に参加すれば、何か役得があるのだろうか? 恐らくこれも議員活動の一つなのだろう。このグル−プの姿が食堂に見えないところをみると、すでにミルフォ−ドに出発した後なのだろう。
のんびりと時間をかけて和食の朝食を済ませる。ここの食堂にも若い日本人女性が働いている。ちょと話を聞いてみると、まだここで働き始めて3日目だという。彼女もワ−キング・ホリデ−でこの地にやってきて、このホテルに職を見つけたのだという。他にもう一人、フロントにもワ−ホリ上がりの日本人女性が働いている。彼女はもう4年になるという。こんな具合で、この町には日本人女性が結構働いているようだ。
彼女らをうらやましく思いながら部屋に引きあげ、一服する。ベッドにごろっと横になりながら、ロビ−でかき集めたパンフレットを広げて眺め入る。ロビ−のパンフ棚にはびっしりと様々な観光パンフが並んでいる。こんなに種類豊富な町も珍しい。さすがに観光立国だけのことはある。
公園散策
こうして時間を過ごした後、身仕度を整えて近郊探索へ出かける。街角で見かけたレンタサイクルの広告看板につられて、その店を訪ねてみる。看板とは少し離れた湖寄りの奥まった所にあり、その店には販売用の新品自転車や貸し自転車を揃えている。店頭で働いている主人に、サイクリングのことでいろいろ尋ねてみる。コ−スとしては、湖畔沿いに郊外へ走るそうだが、かなりのアップダウンコ−スになっていると言う。いろいろ考えた結果、サイクリングは断念することにする。平坦なコ−スならともかく、上りが多いと結局歩いて押すことになり、膝にも負担がかかるからである。
そうとなれば、近郊の散策をするしかない。その前に、昼食を調達しておこう。モ−ル・ストリ−トに珍しく寿司店を発見したので入ってみる。こぢんまりとした店内には、中年の日本人夫婦が働いている。話を聞くと、当地で開業してから3年になるという。米をはじめ、寿司の材料や調味料などはすべて日本から取り寄せ、本物の味を提供していると自慢気に話している。それじゃということで、海苔巻きといなり寿司を買うことにする。
次は飲物にビ−ルを調達しなくてはと、コンビニへ行って缶ビ−ルを1本買い込む。これで昼食の準備はOKだ。そこで到着以来、窓から見える湖の向こう岸に行ってみようと、湖岸をコの字に曲がりながらぶらぶら歩き出す。向こう岸にたどり着くと、森のように鬱蒼と茂る木々の間に、小道が湖岸沿いに走っている。その一角の岸辺に腰を下ろし、お弁当開きとする。 雲は多いが晴間ものぞく穏やかな天候で、辺りには早春の雰囲気がただよっている。
ここからは、これまでとは逆方向に市街地を眺めることになり、また違った雰囲気が楽しめる。目の前に横たわる湖面のさざなみが春の陽光を浴びてきらめいている。湖水の向こう正面はビ−チ・ストリ−トで、私の宿泊ホテルも見える。その背後には標高440mのボブズ・ヒルが裾野を広げて立ち塞がっている。いま戻って来たばかりの蒸気船ア−ンスロ−号が、桟橋に着こうとしている。なかなか素敵な風景である。こうして眺めていると、この町の時間はゆっくりと流れているようだ。私の時間も、この雰囲気に合わせて、ゆっくりと流そう。 |
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