1.旅の準備
今度の旅もツアー参加である。南米は交通の便が悪く、しかも治安が悪いので短期間に効率よく回れるツアーが無難というわけだ。今度の旅で準備したものは次のとおりである。
ビザ取得
今度の旅はブラジルとボリビアの2ヶ国を訪れるわけだが、このうちブラジルのみがビザを必要とする。そこで事前に、旅行社に依頼し、ビザを取得した。
予防接種
ブラジル、ボリビアはデング熱、黄熱、マラリアなどの感染症の流行地域である。ブラジルの場合は予防接種は推奨されているが、接種の義務は要求されていない。
ボリビアでは黄熱危険指定地域を訪問する予定のある場合は入国の際、黄熱予防接種証明書(イエローカード)の呈示が義務付けられている。しかし、今度の旅は指定地域以外なので、その必要はない。ということで、今回は予防接種は受けなかった。
蚊取り線香など
ボリビアは高地の都市をめぐるので蚊の心配はないが、ブラジルでは平地に宿泊するので蚊対策が必要。そこで蚊取り線香&虫よけスプレー(手押しポンプ式)を持参。これとライター1個。しかし、蚊取り線香の出番はなかった。
高山病対策
ボリビアでは標高2000m〜4000mの高地を訪れるので高山病が発症する。しかし、過去にクスコやチチカカ湖(ペルー)で高山病を体験済みで様子は分かっており、その対策は何もしなかった。
2.サン・ルイスへ
集合場所の成田第一ターミナルに集まった一行は総勢17名。このグループで13日間の南米の旅を共にすることになる。
これから最初の目的地サンルイスまで、アトランタ(アメリカ)〜ブラジリア(ブラジル)〜サンルイス(ブラジル)と乗り継いで約1日半の長〜い空の旅が始まる。eチケットを渡され、各自でチェックインと言うので、急ぎチェックインカウンターへ。ところが機械による自動チェックインで、自分では操作要領分からず、係員の助けを受けながらチェックインする。
次いでセキュリティチェックを受け、出国審査を受けて搭乗ゲートへ。間もなく搭乗開始となり、機上の人となる。満席の機は定刻の15時30分より少し早目の離陸となる。機は晴れ上がった秋空の中へ吸い込まれて行く。
3人掛けのシートには、すでに年配の外国人夫妻が座っている。会釈をして座席に着く。これから12時間を隣席で共に過ごす機中仲間である。機が離陸して安定飛行に移ったところで話しかけてみる。温厚なタイプのご主人は、にっこり笑いながら機嫌よく応答してくれる。
夫妻はフィリピン人で、ご主人は陸軍に20年間勤め上げ、今では退役軍人だと言う。軍人時代の年金をもらって年金生活を送っていると言う。故郷はフィリピンのルソン島に近い小さな島だそうで、現在の居住地は米国フロリダ半島にある小さな町だという。退役後、すぐに移住して長年住んでいるそうだ。いま、半年間の帰郷暮らしをした後、フロリダに戻っているところだと言う。成田は乗り継ぎのためで、日本にはまだ立ち寄ったことはないと言う。
しばらく話した後は、沈黙の時間が続く。いつものように前椅子のモニター画面を開き、飛行ルートが分かるスカイマップを表示する。それによると飛行ルートは成田から北上してカムチャッカ半島に向かい、そこからアリューシャン列島沿いに東へ飛行しながら、アラスカ湾〜アラスカ〜カナダ〜アメリカ大陸と南下し、フロリダ半島近くのアトランタへ向かう。
その間、夕食と朝の軽いサンドイッチなどのスナックが配膳される。朝の食事が終わり、1時間ほど飛行するとアトランタ空港到着である。機首を下げ、高度を下げると、間もなく空港着陸である。現地時間は午後の2時過ぎ。
アトランタ空港
ここで乗り継いでブラジルの首都ブラジリアへ向かう。乗り継ぎ待ち時間は約6時間と長い。そこでこの間に家族にメールしようと、フリーのインターネットサービを探す。インフォメーションで尋ねると、フードコートの中にあるとのこと。そこへ行ってみると、確かにインターネット接続の設備があって、何人か利用している。しかし、ここにはパソコンが配置されていないから、自前のパソコン所持者でないと利用できない。
そこで再びインフォメーションに戻り、「パソコンを所持していないので、どこか他にパソコンがあるブースはないのですか?」と尋ねると、各搭乗ゲートの中にある公衆電話の隣にあるとのこと。
首をかしげながら近くの搭乗ゲートに行って電話を探すと、確かにその隣に何やら機器が壁に取り付けてある。その使用手順を見ると、現金かカードの利用で最低5ドル以上の料金で利用できるとなっている。そしてよく見ると、メール専用の機器でインターネットはできない。
たまたま通りがかった空港係員を呼び止め、使い方を教えてもらう。カードを挿入して使用開始。5ドル以内で終わろうと急ぐ。やっと自己のフリーメールに接続し、文章入力開始。ところがキーボタンの“R”がバカになっていて入力できない。頭にきて悔やむも時遅し。5ドルは無駄になってしまう。
今度は別の搭乗ゲートに移動し、そこの機器を使って再挑戦。今度はキーボタンも正常に作動し、無事メール1通を送信完了。やれやれ・・・骨が折れる。メール1通送るのに10ドルもかかってしまう。こんな大きな空港でもインターネットサービスが完備していないのが残念である。韓国ソウルの仁川(インチョン)空港を見習ってほしいものだ。
こうして長い待ち時間をやり過ごし、やっと搭乗時間となる。これからブラジリアまで9時間の長い空の旅が始まる。シートに腰掛け、出発を待っていると、なかなか出発する気配がない。悪い予感が胸をよぎる。ずいぶんと時間が経ってから、機長の機内放送が始まる。電気系統にトラブルがあり、部品交換の必要があるとのこと。予感的中!である。やれやれ、長い待ち時間の末、これではやりきれない。欠航にならなければいいが・・・。
乗客は機内に閉じ込められたまま2時間が経過。ここでようやく修理が完了したようだ。やっと機は滑走路へ向かう。これで欠航にならずに済み、ほっと胸を撫で下ろす。こうして機は2時間遅れでアトランタ空港を後にする。
3人掛けのシートには、窓側に若いオーストラリア人、真ん中に若いブラジル人が座っている。ブラジル人は英語が話せないというので、もっぱらオーストラリア人と会話を交わす。パースが故郷という彼はIT関係のエンジニアで、ブラジリアへ長期出張で滞在しているという。過去に訪れたことのあるパースやオーストラリアのことで話がはずむ。
話が途切れると、うつらうつらと浅い眠りに入る。成田を出発して以来、休息もなく徹夜状態が続いているのだ。12時間の時差があるのだが、特に体調変化の問題はない。
9時間の長〜い飛行を終えて朝の9時、やっとブラジリア空港到着である。
ブラジリアの街が見えてきた
ブラジリア空港
機内待機の2時間を含めると11時間の長旅である。これで成田を出発以来、2日目に入っている。地上に降り立つと、硬直した身体をほぐし、眠気を払拭する。ここでの乗り継ぎ待ち時間は予定通りだと3時間半もあるのだが、2時間遅れの到着で1時間半と短い。インターネットブースを探す間もなく、急ぎ搭乗ゲートへ移動する。サン・ルイス行き飛行機に間に合ってほっと胸を撫で下ろす。
いよいよ最後の飛行便に搭乗すると、目的地のサン・ルイスまでわずか2時間半の飛行である。シートに座りながら思い返すと、よくぞ飛行機を乗りまくったものである。成田〜アトランタ:12時間〜ブラジリア:9時間〜サンルイス:2時間半、合計約24時間。乗り継ぎ待ち時間を加えると1日半となる。
そんなことを考えていると、やがて機は高度を下げ、午後1時過ぎ、最終地サン・ルイス空港へ無事に着陸。
サンルイス空港ロビー
これで長い空の旅から解放されるかと思うと、気分が高まる。入国審査を済ませ、荷物を受け取って到着ロビーへ。現地ガイドの出迎えを受けて出迎えのバスへ。玄関先へ出ると、む〜っとする暑さが肌に触れる。これが日本の裏側ブラジル:サン・ルイスの空気なのだ。私の場合、これでブラジル入国は13年ぶり2度目となる。
サンルイス空港玄関
サンルイス空港屋舎
3.世界遺産の街サン・ルイスのこと
大きな地図で見る
赤道直下のマラニョン州の都サン・ルイスは、二つの川の合流地点に位置する。人口約100万の都市。この町はブラジルの東海岸に位置し、首都ブラジリアの北約1000kmの位置にある。ブラジル第16位の都市で、有名な白い大砂丘レンソイス観光の基地として人気の街の一つとなっている。
フランス人によって拓かれ、オランダ人とポルトガル人によって花開いた港町サン・ルイス。その歴史地区は世界遺産に登録され、ヨーロッパからの観光客で賑わう。そして毎年6月はブンバ・メウ・ボイ祭りで約1ヶ月間町が賑わう。
4.ホテルへ
現地ガイドの出迎えを受け、バスでホテルへ向かう。湾岸の風景を眺めながらバスは一路ホテルへ。
遠くにサンルイスの市街が見える
ホテルのすぐ近くにスーパーマーケットがあるというので、チェックインの前に立ち寄ることに。大きなスーパーで各種の商品が揃っている。オレンジが目に留まり、2個をゲット。ここで30分ほど過ごして3時前、ホテルへ。
スーパー前のフルーツショップの少年。ポーズをとってくれた。
スーパーマーケット
チェックインしたホテルは北大西洋を望む海辺に建つデラックスホテル。窓外の壮大な景色を眺めながら、やっと辿り着いた1日半の長旅の疲れを癒やす。一息つくと早速、入浴&洗濯で汗を流す。残念なことに、このホテルにもインターネット設備はない。デラックスホテルなのに、設備なしとは寂しいかぎりだ。
夕暮れ時の北大西洋を望む(ホテルの窓より)
ホテルのプール
ソケットは3種類がそろっている
夕食はホテルで
到着後、最初の夕食はホテルレストランにて。これまで機内食ばかりだったので、本格料理にお腹が鳴る。出された料理はサラダ、白身魚、ライス、これにフルーツのデザート、コーヒーorティー。それにドリンクはスイカ、グアバ、ファンタなどがお好みでサービス。
スイカのジュース。甘味が足りない。
ブラジル料理でお腹を満たすと、部屋に戻って疲れを癒やす。就寝は夜の10時。ベッドに入り、全身をしっかりと伸ばして横たわる。機内の狭い空間と違って横になれるというのは実に気持ちのいいものだ。ブラジルの初夜はこうして暮れて行く。
(次ページは「レンソイス遊覧飛行」編です)
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