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    N0.2
(ヨルダン・シリア・レバノン)




3.死海浮遊体験

中近東の旅3日目。時差による睡眠不足も6時まで熟睡したことですっきり解消。カーテンを開けて窓外を眺めると、日の出前の白みがかった空が広がっている。今日も雲ひとつない快晴の天気のようだ。今日の予定は、8時半から待望の死海浮遊体験を楽しみ、その後はワディ・ラム砂漠を目指して移動する。そこで砂漠ドライブを楽しんだ後、今夜の宿泊地ペトラへ移動する。本日の走行距離430kmというかなりの長距離移動で、バス乗りまくりの1日になりそうだ。


起きぬけの柔軟体操で身体をほぐすと、まずはビーチへ朝の様子を見に出かける。昨夕と同じ展望台に出て、人気のない静まり返った朝ぼらけのシーンを独り占めしながら観賞する。空には半月がかかり、穏やかな死海の湖面は朝もやに包まれて対岸のイスラエルも霞んでいる。今朝は絶好の浮遊体験ができそうだ。風が強いと白波が打ち寄せることもあるので、ゆっくりと楽しめない。




           朝もやに包まれた死海の風景。左端上空には半月が見える。このホテルはプール施設も充実。




展望台から移動してビーチに下りてみる。そこは赤茶けた荒い砂が広がったビーチで、裸足では痛そうだ。なぎさ近くには白いビーチチェアが並べられ、また手前にはパラソルが立てられて、いかにもリゾートらしい雰囲気をかもし出している。浮遊体験時の貴重品の管理を心配していたが、これだとこのチェアに置いて泳げば心配なさそうだ。




          ビーチにはチェアも並ぶ。赤茶けた荒い砂は素足では少々痛い。




なぎさに近寄り水中に指をつけてみると、意外と冷たくはない。水温25度というのだが、うなづける。指を舐めてみると、舌がビリビリするほど塩辛い。さすがに塩分濃度世界一のことはある。身体に傷を持つ人は水中に入らないほうがよいという。この塩辛さで、ひりひりと傷が痛むらしい。その水がうっかり目にでも入ると、これも痛いらしい。浮遊体験時にはご用心である。


なぎさに立って、今度は陸側を眺めてみる。背後には低い山並みが伸び、その山の端からいまちょうど曙光が差し始めたところである。ホテルのビーチの範囲は一応それらしく整地されているが、一歩離れるとその先は荒地の状況でとてもビーチといえる感じではない。この死海沿岸は次々とリゾート開発が行われているらしく、ここでも建設中のホテルが見える。イスラエル側の湖岸でも負けじと競っている様子で、死海は両国の観光目玉となっているようだ。



           なぎさから陸側を眺めた様子。左手の高いビルは建設中のホテル。パラソルが並ぶその上段が宿泊ホテルだが建物は見えない。右手は荒地の状態で、これから開発されるのだろう。




静かな風景をただ独り眺めていると、1人の老欧米人がパンツ1枚姿でやってくる。すでに幾日か滞在しているのだろうか? 慣れた様子で水中に入り、腰までつかって何やら手を動かして底を掻いている様子。どうやら泥土をすくって足にでも塗っているのだろう。皮膚病や関節に効能があるらしいので、膝にでも塗っているのだろうか?


早朝の死海に欧米人が1人つかっている。

早朝のビーチ探索を終えると部屋へ引き返し、身支度を整えて食堂へ。バイキングの朝食で、ナン、エッグ、ハム、ソーセージ、スープ、クロワッサン、コーヒー、オレンジなどでお腹を満たす。他にトマト、ズッキーニなどの新鮮野菜類も揃っている。色鮮やかなトマトはご自慢の地元産なのだろうが、果肉が硬いのが難点。肥沃なヨルダン渓谷の産地が近いだけに、野菜類は豊富である。


食後の一息を入れると、集合時間の8時半になる。カメラと貴重品をまとめてビニール袋に入れると、やおら脱衣して海水パンツ1枚になる。上にジャンバーを羽織り、裸足では痛そうなので素足に短靴を履いて出かける。変な格好だが、目をつぶろう。やはりゴム草履を持参すべきだったかな? でも、荷物が増えるし・・・。ままよとばかりに、このスタイルで部屋を飛び出す。おっと、部屋のタオルを1枚拝借して行こう。チェックイン時にビーチ用タオルの引換券を渡されたのだが、念のためである。


ロビーに出ると、すでに皆はビーチへ出かけている。後を追っかけるようにビーチへ下りる。その途中にタオル貸し出し場所があり、そこで引換券を提示してタオルを受け取る。ちゃんとビニール袋にパック詰めされたバスタオルである。これを小脇に抱え、スタスタとビーチへ下りる。外部の一般人はいないし、滞在客も先の欧米人だけで、ビーチはわれわれ一行の貸し切り状態である。これだと盗難の心配もない。みんな一つのビーチチェアに荷物をまとめて、いざ浮遊体験へ。


事前に注意を受けたのは、底には石ころが多く、怪我をしやすいので注意するようにとのこと。そこで添乗さんに記念撮影用のカメラを預け、恐る恐る水中に歩を進める。とたんに、石ころが足底に触れ、それが痛くてバランスを崩しそうになる。足元を注意しながら沖へ進むが、トゲのある石ころだらけで、それを思わず踏み込んでボチャンと水中にこけてしまう。


これでは歩くよりも身体を水中に浮かべながら移動するほうが楽ではないかと思い、膝の深さになったところで水中に横たわる。多少、身体が浮き始めるが、まだお尻が底についている。そのお尻が石ころに当たって痛い。歩いても足が痛いし、横たわっても尻が痛いしで、難儀なことである。念のために、その石ころを拾い上げてみると、なんとそれは岩塩の結晶だったのだ!


その結晶は灰色で、大きさ数cm〜20cmぐらいの大小さまざまの塊が水底一面に転がっているのである。しかもその表面はトゲトゲになっているので触ると痛いのである。ちょうどイチゴのぶつぶつ表面が小さなトゲになっていると思えばよい。だから、これを踏みつけると痛いのである。なぎさ近くになると水位が浅く、それが日射で塩田状態になって塩の結晶ができるのだろう。


ごろごろの石ころに注意しながら、仰向けになって後ろ向きに手で底を掻き分けながら静かに沖へ進む。お尻は完全に水底から離れ、全身がぷかりと浮き始める。宇宙遊泳の感覚である。この死海だけでしか体験できない初の浮遊体験を実感する。ここで皆にならって両手両足を上げ、その浮力を試してみる。面白いほどよく浮かぶ。これだと、確かに新聞雑誌・本などの読書もできるはずである。


なぜこのように身体が浮くのかというと、地表にある海水の約10倍もの高い濃度の塩化化合物のためで、死海はその比重が1.2であり、すべての有機物を浮かせることができるのである。この摩訶不思議の浮遊体験の様子をしっかりとカメラに収めてもらう。この時のために、事前に添乗さんにカメラを預けていたのだが、彼女も皆の撮影に大忙しである。


こうして30分ほど浮遊体験を楽しんだ後、ビーチにあがる。その時わかったことだが、水底が石ころだらけの場所と、田んぼのように泥土でぬかるんだ場所とがあるということ。この泥土部分にはまり込むと、足のふくらはぎまで、ずぼりと入り込み、思わず足を取られてしまう。ビーチに上がってみると、両足が泥で真っ黒である。これを荒い落とすのが大変だ。この泥土が採取されて、いわゆる泥パックに使われるのだろう。


ぷかぷかと気持ちよさそうに浮かんでいる


おっと、水面で読書ですか?


ご満悦ですか? 足には泥がくっついている。

荷物を持って引き揚げにかかり、ビーチの奥に設けてあるオープンのシャワー施設で身体と泥を流し落とす。点検してみると、やはり手首と臀部数箇所に擦り傷を負っている。注意していたにもかかわらず、このざまである。仲間の1人も手指に擦り傷をつくって血をにじませている。これからすると、かなりの確率で擦り傷をつくる可能性がある。これから体験する人は注意が必要だ。


シャワーは浴びたものの靴は履けず、結局砂だらけの素足で部屋へ戻ることに。これだったら、当初から裸足で行けばよかったのだ。バスに入ってもう一度身体を洗い流し、やっとわが身に戻る。朝8時台の浮遊体験なので日焼けの心配はないが、これが日中だと日照りが心配だ。とはいっても、冬季の気温の低い時期よりはましなのかもしれない。


しばらく休息した後は、ワディ・ラム砂漠へ向けて出発である。少ない荷物をまとめにかかる。さすがに、この地は乾燥地帯だけに、洗濯物がたちまち乾いてしまうのでありがあたい。洗濯物を忘れないように仕舞い込み、さあ出発である。



(次ページは「ワディ・ラム砂漠ドライブ」編です。)










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