十字軍の城砦クラック・デ・シュバリエ
くるまは斜面に広がる小さな村を通りながら坂道を上って行く。その丘の頂上にがっちりと石造りで固められた堅固な城砦が見えてくる。これがクラック・デ・シュバリエである。眼下には緑の田園が広がる素晴らしいパノラマ景観が見られる。ここで下車し、この城を見学する。
クラック・デ・シュバリエ城砦の全景(丘の上のレストランより望む)
このクラック・デ・シュバリエは、高さ750mの丘の上に築かれた難攻不落の城砦で、かの有名なイスラムの英雄サラディンでさえ、この砦を一目みるなり、この攻略をあきらめたという、いわく付きの城でもある。ここはもともと11世紀にホムスの王が築いた砦であったが、12世紀になって十字軍に占拠され、その後大幅な増改築が行われたという。
この城は、中近東地域に点在する十字軍の要塞の中でも最も保存状態がよいといわれ、美しい要塞として有名でもある。昨日見たパルミュラのアラブ城砦に似て、このクラック・デ・シュバリエも急勾配の丘の上に建てられており、二重の城壁に囲まれて4000人以上の守備兵を収容できる広さを誇っている。
これも13世紀後半にはイスラム軍の手に落ち、その後増改築が行われたらしい。そのため城内にはモスク跡があるなど、東西文化の融合が見られて面白い。こうしてみると、静かにたたずむこの城砦も、キリストとイスラムの宗教対立の攻防の嵐の中に巻き込まれた悲しい城でもあるわけだ。この両者の対立関係は、現代においてもなお尽きることなく続いている。これは実に悲しいことで、それがテロ頻発の根源にもなっていると思われる。
暗い大部屋を通り抜けて奥に入ると、深い堀がめぐらされて二重の城壁で守られているのが見える。下から見上げる城壁はそびえるように高く、いかにも堅固そのもので重厚な構えを見せている。城砦の上にのぼってみると、そこには360度に開ける素晴らしいパノラマ大景観が広がっている。緑に囲まれた田園地帯や斜面に広がる緑の農地の景色が一望の下に俯瞰される。青空の中に流れる空気も実にうまい。たっぷりと吸って、おみやげにしよう。
広い部屋が・・・
堀がめぐらされている
見上げる城壁 |
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