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3.カイザリア・メギド・アッコ
2日目。5時過ぎに起床。日付が変わった今日の午前1時過ぎに就寝したのだが、早起きの習慣で目が覚めてしまう。長旅の疲れもあって熟睡できたので、疲労感は残っていない。
出発まで時間がたっぷりあるので、ベッドの上で柔軟体操をして身体をゆっくりと目覚めさせたり、テレビを見たりしながらのんびり過ごす。
今日2日目から、いよいよ本格的な観光が始まる。昨夜は遅い到着ということで、今朝の出発はゆっくりと9時半スタートである。本日の予定はカイザリア、メギド、アッコを1日かけてめぐる予定である。
窓外を眺めると、今朝は快晴の青い空が広がっている。少々ビルかげで視界が塞がってはいるが、ビルの向こうには青い海が見える。地中海なのだ! 海岸は近そうなので、後で出かけてみよう。雨の少ない時期なので滞在中、雨の心配はなさそうだ。だが、気温30℃前後の暑い日が続くのかもしれない。
朝 食
6時半から朝食OKというので、洗面、身支度を整え、食堂へ出向く。ビュッフェスタイルで、魚料理、肉料理、卵、各種野菜、各種パン、フルーツ、ジュースと揃っている。でも、ユダヤ教のコーシェル(食事戒律)からハム、ソーセージがないのが寂しい。パンとその他の料理を少しずつ皿に盛りつけ、コーヒーを傾けながらゆっくりといただく。
ビーチへ
朝食を終えると海岸へ出かける。フロントで海岸への行き方を尋ねると、玄関前の道路を右へ真っ直ぐ進めばビーチへ出るという。玄関から100m足らずの距離を歩くと、眼前に素敵なビーチが広がっている。そして、海岸に沿って広いプロムナードが設けられており、地元の人たちが早朝からジョギングやウォーキングに励んでいる。いずこの国でも同じ風景が見られる。
ヤッフォのビーチ・プロムナード
ビーチ沿いにはホテルなどが林立
お〜、なかなか素敵なビーチではないか! ビーチ沿いにはホテルなどのビル群が林立し、リゾートのムードをただよわせている。今朝は風が強く、上着を着てちょうどいい気温である。しばらく地中海の風に吹かれながら海辺のひと時を過ごし、ホテルへ引きあげる。
(動画)ヤッフォのホテルから眺めた地中海の風景(朝)
(動画)ヤッフォのホテル近くのビーチ。広がる海は地中海。(朝)
ローマ時代の遺跡カイザリアへ
9時半、ホテル出発。まずテルアビブの北約50km地点にあるカイザリアへ向かう。途中、車窓から麦秋の風景やのどかな草原の風景を眺めながら、ハイウェーを快適に走行する。ここでは緑の風景が眺められるが、イスラエルの国土の60%は荒野地帯の砂漠で緑は貴重な面積なのだ。その維持のために並々ならぬ努力が払われているという。
カイザリアへ向かう途中の風景。沿道には花が・・・。
麦秋の風景
発電所の煙突が見えてきた。カイザリアはもうすぐそこだ。
テルアビブから走ること約1時間、カイザリアへ到着。この地は紀元前後、ローマ帝国屈指の港町として栄えた地で、ローマ王ヘロデ王がアテネを目標に建立し、カイザリアと命名した町である。13世紀には十字軍の砦がつくられている。また、使徒パウロがローマへの宣教に旅立った港として聖書にも登場しており、キリスト教徒にとっては大事な聖地の一つでもある。
ここにはローマ遺跡定番の円形劇場や戦車競技場、それにヘロデ王の宮殿跡の列柱などの遺跡が残っている。これらの遺跡が地中海の波打ち際に静かに広がっており、潮風に吹かれながら眺めていると、いにしえへのロマンをかきたてられる。すでに宮殿遺跡の一部は波打ち際の海底に沈んでいるようだ。
カイザリア:ローマ遺跡の入場口
入場口を入ると、正面に円形劇場の高い外壁が迫って見える。一見、野球場のスタンド外壁みたいだ。その側には発掘された数体の彫像が並べて展示されている。通路をくぐって劇場内に入ると、30段あまりのきれいな半円形の劇場が西向きの海側を向いて建てられている。設けられたステージの上に立って円形階段を見渡すと当時の民衆の歓声やヤジが聞こえてくるようだ。どんな集会やイベントがあっていたのだろう。今ではきちんと修復されて、コンサートなど各種のイベント会場として利用されているそうだが、3000人の収容能力があるという。
ローマ遺跡の全景模型。上端が円形劇場。左手前下に水道橋が見える。
円形劇場の外壁
外壁側に立つ彫像
円形劇場の側壁
円形劇場の復元図
(動画)カイザリアのローマ遺跡・円形劇場
(動画)カイザリアのローマ遺跡・円形劇場(舞台側からの眺め)
劇場を出て横手の方へ移動すると、海沿いに広大な遺跡が広がっているのが見える。手前には宮殿跡の列柱が並び、その向こうには戦車競技場(ヒッポドローム)の広い敷地が広がっている。きれいに整地された競技場には、今でも砂煙を上げながら走る二輪馬車の車輪の音や観客の歓声怒号が聞こえるようだ。映画「ベン・ハー」のシーンが目に浮かぶ。隣国ヨルダンの
ジェラシュ遺跡
にも同じ戦車競技場があり、ここでは今でも当時のコスチュームに身をかためた兵士によるショーが行われている。
大きな石棺が・・・
広大な戦車競技場
(動画)カイザリアのローマ遺跡全景
ローマ遺跡の全景。背後が円形劇場。
水道橋
ここで小1時間を過ごすと、次の水道橋の遺跡へ移動する。バスに乗って5分ほど海岸沿いに走ったところに、ローマ時代の水道橋遺跡がある。人が住むには水は不可欠。それは昔も今も不変の鉄則だ。カイザリアの町には水がなく、飲用水や灌漑用の水を確保する必要があった。そこでヘロデ王はカルメル山から長さ30kmに及ぶ壮大な導水橋を建設したという。この水道橋もローマ遺跡にはよく見られるものである。
この水道橋はビーチ沿いに設けてあり、数百メートルの遺跡が残っている。このビーチは海水浴客で賑わうところでもあるようだ。ここでは写真撮影のみで、すぐにバスに戻る。
水道橋(陸地側)
水道橋(ビーチ側)
(動画)カイザリアのローマ遺跡:水道橋
駐車場には物売りが・・・
世界遺産メギド
水道橋を後にすると、次は東の内陸部へ向けて移動する。ここから52km先のメギドを目指して走行する。約30分ほど走るとメギド到着である。時計はお昼の12時を差している。
メギドへ向かう途中の風景
メギドは「聖書のテル群」の一つとして05年に文化遺産として登録されている地である。この地は聖書ゆかりの地であり、イスラエル北部のエズレル地方にあって地中海と内陸部を結ぶ交通の要衝であったため、旧約聖書の時代(紀元前7000年〜)から幾度となく戦場になってきた名高い古戦場である。
エジプトのトトメス3世をして、「メギドを制することは千の町を制することである。」と言わしめたほどの要衝地だったという。この地は トトメス3世が行った第1回西アジア軍事遠征での戦闘地だったことでも有名である。
有名な“ハルマゲドン”は、今では比喩的に世界の最終的・破滅的な戦争そのものを指す言葉として用いられているが、そもそもの語源は新約聖書のヨハネの黙示録で記述される、世界の終末における善と悪の最終的な決戦の地を表す言葉で、ヘブライ語で「メギドの丘」を意味すると考えられている。
我々が見学するのは「ヘル・メギド」(ヘル=丘・遺跡の丘)と呼ばれる遺跡の丘で、古代からの遺跡が40の地層に積み重なって高くなっており、40の違う時代の古代都市の跡が見られるという。ここには先史人が住んでいた丘状の集落があり、地下水を収集する装置も作られて集落に水を提供するシステムが出来上がっていたという。
この遺跡には博物館があり、そこに古代遺跡全体の模型が展示されている。それを見物して全体像のイメージを頭にインプットした上で、屋外に広がる遺跡を見学する。
メギド遺跡の全体模型。広大な都市だったことがわかる。(博物館)
博物館側にはジャカランダの花が咲いていた
きれいな花も咲いている
小高い丘に広がる遺跡群には紀元前4000年ごろの石段があったり、石積みの城門シティー・ゲート跡や宮殿・寺院跡、神殿跡、大きく掘り込まれた穀物貯蔵庫、石の餌桶が並ぶ厩舎跡などが残っている。紀元前12世紀頃のメギドはイスラエル人たちによって攻め落とされ、破壊された。
石積みの城門跡
(動画)世界遺産メギド遺跡
紀元前10世紀頃のメギドは古代で最も進んだ軍事拠点だったらしく、城内には17の軍部隊が配置され、450頭の馬がいたことも考古学的に証明されている。そのメギドも紀元前600年代にエジプト軍に敗北し、ユダ王国は滅亡。その後、最終的にはローマ軍によって占拠されている。
遺跡の展望台から眺めるメギドの風景はのどかなもので、丘の麓から広がる平野は遠く向こうに見える低い山並みまで続き、肥沃な耕作地となっているようだ。左側遠くの山の麓にはナザレの町があり、その隣にタボル山、モレの丘と続いている。この遺跡の丘の真下にカーメル断層が走っていて地殻変動が激しかっらしく、何度となく大地震があったのだろう。
メギド遺跡の展望台から眺めた風景。肥沃な平野が広がっている。古戦場とはとても思えないのどかな風景が広がる。左手遠くの麓にナザレの町、右隣がタボル山、その右隣がモレの丘。
この遺跡で圧巻なのは地下水路の遺跡で、紀元前1000年ごろに造られたものという。その水路トンネルは丘の上の中ほどから地下へ深さ35mの地底にあり、そこへの下り階段は183段、長さ約80mのトンネルを抜けると87段の階段を上って地上に出る。この水路は城塞の外の水源地に通じており、その水源は敵に見えないように、うまく隠されていたという。この水の確保で、メギドは持久戦になっても持ちこたえられたという。地下の泉には今でも水が湧いている。
地下水道の断面図
地下水路トンネルへの下り階段
地下水路トンネル入り口
入口から入ると螺旋階段が地底へ続く
水路トンネル
地底にはきれない湧水が・・・
水路トンネルの出口
(次ページへつづく・・・)