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     N0.9




旅のコース









7.エジンバラ観光(1)

旅行開始から早くも6日目。今日から後半のイギリスの旅が始まる。ゴルウェー駅から一番列車でダブリンへ移動し、そこからダブリン空港へ向かう。そして午後1時過ぎの飛行便でイギリス・エジンバラへ飛ぶ予定だ。


今朝は5時起きで出発に備える。早速、空をのぞくと曇り空で雨はなし。移動日は特にこの雨が心配で、今朝は晴れ間も少し見えるので一安心だ。だが、この地の天候のこと、決して油断はできない。


最後のアイリッシュ・ブレークファースト
洗面を済ませ、荷物をまとめてそのまま持参し、食堂へ。今朝は定刻より1時間早い7時の朝食をお願いしていたのだが、約束どおりマダムはちゃんと準備してくれる。昨日と同じアイリッシュ・ブレークファーストをしっかりといただき、今朝の腹ごしらえを済ませる。20分過ぎ、マダムに礼を言って別れを告げる。


ゴルウェー発の一番列車は7時45分発。ウィークデーなら、これより早い列車があるのだが、今日は土曜日週末なのでその列車は間引きされてない。それでもダブリン着は10時15分なので、午後1時20分発の航空便には何とか間に合いそうである。一応、国際便だから出発2時間前には空港に到着していなくてはいけない。


宿から駅までは徒歩5分の距離で、実に便利が良い。至便なところを探して正解である。これが郊外だと不便この上ない。宿は至便なところにかぎる。早朝のカレッジ通りをてくてく歩いてゴルウェー駅に到着。この駅のトイレは無料である。ダブリンのヒューストン駅は15ユーロセント(23円)の有料だが、駅によってまちまちなのだ。


一番列車でダブリンへ
ホームにはすでに列車が待っている。適当に車両を探して乗り込むと、乗客は少なく、座席はがら〜んとして空いている。間もなく通路を挟んだ隣席に若い男女のカップルが幼い少年を連れてやってくる。家族連れなのだろうか? そんなことを推察しているうちに、列車は定刻に発車する。窓外には見慣れた海岸の風景や草原風景を見せながら快適に走行する。


草原の車窓風景

折をみて、そのカップルに話しかけてみる。

「家族でお出かけですか?」

すると、若いカップルは顔を見合わせてにやにや笑っている。間を置いて、彼が答える。

「この子は僕の弟なんですよ。」
「そうなんですか! てっきりお子さんかと思いましたよ。じゃ、恋人同士なんですね!」

その弟とは少々年齢が離れて見えるので、こちらが勘違いしてしまったのだ。すると、今度は彼女が答える。

「私たち、2年前から交際しているんです。」
「2人の間はうまく行っているようですね。」
「えゝ、うまく行っています。時々、喧嘩はしますけど・・・。」
「じゃ、将来は結婚するつもりですか?」

すると2人は、これまた顔を見合わせてにやにやしている。

「将来のことはまだ分かりません。愛し合っていることは確かですが・・・。」
「お二人のハッピーエンドを願っていますよ。ところで、今日はダブリン行きなんですか?」
「えゝ、日帰りでショッピングに出かけているんです。」

こんな会話を交わしながら、列車は走り続ける。そして、幾つかの駅で停車するこごとに、次第に乗客は増え続け、とうとう最後は満席状態になる。今日は週末で、きっとダブリン行きが多いのだろう。車内の様子を見ていると、いずこも同じでよく騒ぐ人たちがいる。数人の老年グループが乗り合わせているのだが、彼らのよく騒ぐこと。車内いっぱいに響く傍若無人ぶりの大声で談笑し合っている。


ダブリン空港へ
そんな様子を眺めているうちに、列車は予定通り10時15分にヒューストン駅に到着。すぐさま駅玄関前のバス停に行くと、空港バスの発車までには10分の待ち合わせがある。ここから折返し運転らしく、ちょうど到着したばかりのバスに乗り込もうとすると、ドライバーはドアをロックしてどこかへ去ってしまう。休憩にでも行ったのだろう。


発車時刻直前にドライバーは戻り、ドアが開けられてみんな乗り込む。私はダブルデッカーバスの二階先頭座席に陣取り、車外の様子を楽しむことにする。この席は階上だけに、周りの風景がよく眺められる。発車したバスは、やがてダブリンのメインストリート、オコンネル通りに差し掛かる。見慣れた通りで、分離帯には彫像が立っている。青空を背景に首都の町並みが見える。これがダブリンの見納めである。


首都ダブリンのメインストリート・オコンネル通り

通りを過ぎると、半時間ほどでダブリン空港に到着である。二階の出発ロビーに行くと、すごい人で大混雑である。到着時には、こんなに大きな空港とは思えなかったのだが、かなりの規模の大きさである。人込みを掻き分け、エアーリンガスのカウンターを尋ねながらやっと到着。行列に並んで、チェックイン。自宅からオンラインブッキングし、それをプリントアウトして持参したのだが、果たしてうまく行くのだろうか? 


ダブリン空港のビルが見えてきた


乗客で混雑する出発ロビー

三度のセキュリティ・チェック
プリントを係に提示し、窓側の席を指定する。難なく通過し、ほっと胸を撫で下ろす。エジンバラまで1時間足らずの飛行時間なので、窓側から窓外の風景を撮るために窓側にしたのである。チェックインが終わると、すぐに出発セキュリティへ。そこで荷物のチェックを受けるのだが、バッグの方は難なく通過したのに、この私本人がチェックに引っかかり、都合三度もやり直しされる。つまり、二度目は靴を脱がされ、これでもダメで三度目はとうとう上着と腰のベルトまで脱がされてしまう。こんなことは初めてのことである。この空港のなんと厳しいこと。


出国審査なし
これでようやくチェックを通過し、搭乗口へ向かう。おや、出国審査のパスポートコントロールはどこにも見当たらない。ずべてフリーパスである。これは簡略でありがたい。出発時間までかなりの時間があるので、ここで昼食としよう。途中のコンビニ店でいつもの三角サンドとオレンジジュースを購入。これだけで5ユーロと少々(750円以上)と高い。それを待合ベンチへ持ち込んで昼食とする。


お腹は満腹、あとは搭乗を待つばかりだ。ここで英ポンドへの両替をしておこうと両替所へ出向く。イギリスに到着してからの無駄な時間を省くためである。ところが係が説明するには、イギリス現地でポンドに両替する方が有利ですよという。やはり思っていた通りで、この原則はどこの場合も通用する。そこまで言われると、こちらも引き下がらざるを得ない。あきらめて搭乗口へ引き返す。


ユーロ残金の使い切り方
ところで、ユーロ通貨の残金が5ユーロ(750円)とコインが少々ある。これをこの場で使い切りたいと、いろいろ買い物を検討してみる。そこで、目の前にあるスナックショップのカウンターにオレンジが売ってあるのを発見。荷物が重くなるのを覚悟で、よし、これを買ってやろうとカウンターへ行き、この残金全部で買えるだけのオレンジをくれと申し出る。ここには飲み物類、ケーキ類、フルーツ類などが売ってある。


私の申し出に、店の若い男性店員は目を丸くして仰天している。側の女性店員も驚いている。なぜ? 彼が言うには、オレンジ1個が15ユーロセント(約26円)ぐらいだから、すごい数になりますよという。う〜ん、そうなのか・・・。それも困るなあと引き下がってベンチに腰掛ける。しばらく時を過ごしてから、再度カウンターへ出向き、何か適当な物はないかと物色し始める。すると、男性店員が「何か考えつきましたか?」と、にやにやしながら応対している。


こうして、とうとう彼らと仲良しになり、いろいろ話を始める。いま、店は暇なのだ。男性店員は20歳前後のハンサムボーイで、中国・上海出身。女性店員はモンゴル・ウランバートル出身で同年代の様子。2人ともダブリンに留学中で、1年になるという。この店でアルバイトしながら、2人で取り仕切っているという。2年の留学で帰国するのだという。いろいろ雑談しながら、結局、マフィンケーキを3個買って残金をほぼ使い果たす。結構大きいマフィンなので、少々かさばるのだが、オレンジほど重くないので助かる。


空路エジンバラへ
こうしてどうにか時を過ごし、ようやく搭乗時間となる。午後1時20分に機は出発し、一路アイリッシュ海を越えて英国エジンバラへ向かう。機内の座席は両側3列ずつで、その60%ぐらいが乗客で埋まっており、空席が目立つ。私の列はこの私が1人だけで、3席を独占して悠々と過ごす。空はほぼ半分ぐらい青空が広がり、上々の天気である。離陸してすぐ、真っ青なアイリッシュ海を眼下に見ながら北東へ向けて飛行する。


ダブリン空港の様子


離陸直後の風景


真っ青なアイリッシュ海

この海を渡ると、すぐに目的地のエジンバラだ。飛行時間は45分間で、それに離陸・着陸などの時間を含めて1時間の所要時間である。14時20分にエジンバラ空港に到着。いよいよ12年ぶりの英国入りだが、ここでイギリスのことについて少しまとめておこう。なにせ、この国の成り立ちは分かりにくいのだ。


イギリスという国


英国の地域構成図

<国名の呼称>
この国の国名の呼び方がなかなか分かりにくい。海外で出会う英国人に、「お国はどちらですか?」と尋ねると、次のように人によってさまざまな答が返ってくるので戸惑うことが多い。
・グレートブリテーン(Great Britain)
・イングランド
・スコットランド
・UK(United Kingdom)

また、サッカーの場合でも、代表にイングランドという名称が使われており、どうしてイングリッシュと呼ばないのだろうか?などと、素朴な疑問がわいてくる。


この国の正式国名は「The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」と長ったらしい名称となっている。日本語表記では「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」となっており、通称はイギリスや英国が一般的となっている。連合王国やUKと呼ばれることもあるらしい。この通称については、本国内でも統一見解はないらしい。こうしたまちまちの呼称が生まれる理由は、この国のそもそもの成り立ちを知らないことには理解しがたいものがる。


<国の歴史>
そこで、この国の歴史と成り立ちについて少し触れてみよう。この国の国土は、グレートブリテン島とアイルランド海を隔てたアイルランド島の北部(北アイルランド)およびその周辺のいくつかの島からなっている。そして、グレートブリテン島はその中部から南部を占めるイングランド、西部のウェールズ、北部のスコットランドの3区域に大別される。これだけみてもなんだか複雑な構成というイメージが拭われない。どうしてアイルランド島の一部だけが英国の領域になっているのかという疑問もわいてくる。(上の地図をご参照)


1066年にウィリアム征服王がイングランドを制圧して王国の体制を整え、その後、ウェールズ地方を正式に併合する。そして、1707年のスコットランド合併法により、イングランドとスコットランドは合併し、グレートブリテン王国となる。


その後、1801年のアイルランド合併法によりグレートブリテン王国はアイルランド王国を併合し、グレートブリテンおよびアイルランド連合王国となる。1922年には北アイルランドを除く26州がアイルランド自由国として独立し、27年に現在の名称グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国へと改名する。


こうして連合王国となったいわゆる英国は、世界に先駆けて産業革命を達成し、19世紀なると7つの海の覇権を握って世界中を侵略し、カナダ、オーストラリア、インド、香港など広大な植民地を経営するイギリス帝国を建設する。しかし、第一次大戦後はこれに代わってアメリカが強大国として台頭することになる。


“連合王国”の名が示すように、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドなどの各地域は、それぞれ独自色がきわめて強く、各地方によって地方行政制度が異なっている。このように、各地域は一つの王国としての意識が強く、地域住民もその意識が強いらしい。


<国旗の由来>
英国の国旗ユニオンジャック(Union Jack)は1801年に連合国となったときにスコットランド、イングランド、アイルランドの国旗を組み合わせて作られたもので、次のような構成になっている。もう一つの連合国であるウェールズは、早くからイングランドに併合されていたため、赤い竜のデザインは英国旗の中には採用されていない。





エジンバラ到着
やがて機は高度を下げてきたかと思うと、緑豊かな田園地帯の上空に至り、着陸態勢に入る。上空から見ると、このスコットランドの首都エジンバラは、意外と北海の沿岸ぎりぎりに位置している街なのである。これだと気候も温暖で、内陸部のように思ったより冷え込みはないのかもしれない。機はスムーズにエジンバラ空港にランディング。気温は20度とのことである。


イギリス上空。エジンバラ空港に近づいてきた。


空港周辺の田園風景


エジンバラ空港到着

スコットランドの名物
この王国には次のような幾つかの名物がある。その名物といえば・・・

(スコッチ)
スコッチとはスコットランドで蒸留されるウイスキーの代名詞。スコットランドの法律では、スコッチ・ウイスキーは「大麦麦芽の酵素により糖化させた穀類の液をスコットランド内で蒸留し、木製の樽で最低3年間、保税倉庫で熟成したもの」と定義されている。だから、アメリカやアイルランドで醸造されたものはスコッチとは呼ばない。

(バグパイプ)
バグパイプもスコットランドの名物になっているが、それもあってか、日本ではバグパイプ=スコットランドのものとのイメージが強い。しかし、これはスコットランド移民の多いカナダ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどでも盛んに演奏されているという。また、アイルランドをはじめ、スペイン、トルコに至るまでの広範にわたり、独自のバグパイプが存在しているという。だが、その発祥は定かではなく、古くはローマ時代にまで遡ると考えられている。

(ハギス)
スコットランドの名物料理といえば、このハギス。これは羊の肉・内臓・血などをオート麦やたまねぎなどの野菜、香辛料と共に調理し、羊の胃袋に詰めてさらに加熱したソーセージ状のもの。こってりしたもので、スコッチ・ウィスキーによく合うという。


エジンバラ市内へ
降機したロビーは、どうも国内便の区域のようである。その証拠に入国審査も何もなく、ストレートに到着ロビーへ出られたのである。アイルランドと英国はシェンゲン協定にも加入していない国なので、国境間のフリーパス制度はないはずなのだが、この両国の間は特別の関係にあるのだろう。とまれ、面倒がなくて助かる。


ところで、忘れないうちにまずは帰路の航空券のリコンファームと両替をしておこう。近くのブリティッシュ・エアウェイズのカウンターに行ってリコンファームを頼むと、「必要ないんですよ。」と言いながら一応チェックしてくれる。最近は不要のエアーラインが多くなり、手間が省けてありがたい。


次は両替だ。1階の両替所で英ポンドに交換すると、レートはコミッションを含め £1=235円(日本円のキャッシュでの交換。06年7月1日現在)である。中心レートは210円台だから、かなりの上乗せがある。両替所は2階の出発ロビーにもある。さあ、これで準備OKだ。


便利な空港バス
玄関へ出ると、目の前に市内行きの空港バスが待っている。この空港バスは空港とシティ・センター(プリンセス通りのWaverley Bridge=つまりWaverley Stationの上)間を10分間隔で頻繁に往復するもので、至極便利である。料金は片道£3(705円)、往復チケットを買えば£5とお得(06年7月1日現在)。もちろん私は往復チケットを買って乗車する。乗車の際にドライバーから購入できる。


バスはお定まりのダブルデッカーで、荷物のある私は1階席に陣取る。バスは郊外の田園地帯を抜けると、間もなく町並みが見えてくる。なんとなく風格のある建物が多いようだ。バスは約25分でエジンバラの中心駅・ウェーバリー駅(Waverley Station)の上の橋に到着。ここが終点で、空港バスや観光バスの発着点になっている。


エジンバラの中心駅・Waverley Station
この駅の位置が変わっていて、平地ではなく谷間の低地に造られており、ストリートから見下ろす位置にある。だから、駅前広場も何もなく、駅の姿が見えないので初めての訪問者はやや戸惑うことになる。さて、これから宿探しが始まるのだが、予約しているゲストハウスなので、その場所を探すだけである。そこでまずはウェーバリー駅へ下りてみる。この駅を基点に探すのが分かりやすいと思ったからである。


ウェーバリー駅へ下るスロープ。この下りた先が駅コンコース。

手間取る宿探し
バスから降りたすぐ横にスロープがあり、これを下りて行くと駅に出る。コンコースに出ると早速、駅員に地図を示して方向を尋ねる。彼が言うには、「そっちの道路を進んで行くと、すぐに分かる。ものの5分で行けるよ。」という。駅から徒歩圏内の宿を決めていたので、これだと助かる。教えられた道路は人気のない坂道で、なんだか方向がよく分からない。やっと出会った通行人に尋ねながら、どうにか大通りに出る。


ところが分岐点ばかりあって、どちらへ行くのやら見当がつかない。この駅付近の道路は上ったり、下ったりとスロープだらけで何だか安定感がない。坂の町長崎に住む私ながら、この不安定な道路には“坂酔い”するようだ。行きつ戻りつしながら、再三通行人に尋ねまくり、やっとのことで宿のあるストリートにたどり着く。宿はその通りのコーナーにある。もう汗だくである。最初、私が駅へ下りたのがまずかったようだ。バス停で尋ねれば、こんな回り道をせずに楽に到着できたはずなのだ。


ドアのベルを鳴らすと、ガチャリとロックが外されてドアが開く。1階がフロントかと思うとそうではなく、なんと3階まで上らされることに。そこに係が待っており、予約を告げるとうなずいて、テーブルの上にあるゲストブックに住所氏名を書き込んでくれという。受付カウンターも何もない殺風景なもので、記入が終わると外部ドアと部屋のキー2本をもらって部屋に入る。午後4時過ぎのことである。


このハウスは料金がやや高目だけに、部屋はなかなかのもので、ちょっとしたホテルの感じである。シャワー室もガラス張りで区切られ、申し分なしである。旅装を解くと、まずはシャワーを浴びて汗だくの身体を流す。そして次は、汗びしょになった下着類や上着シャツなどの洗濯にかかる。これを干しあげて、やっと爽やか気分となる。ここでベッドに横たわり、地図や観光パンフなどを見ながら一休みしよう。


快適なルームとベッド

エジンバラのこと
ここエジンバラは世界遺産に指定されているスコットランドの首都であり、政治と文化の中心都市でもある。中世からの家並みが残るオールドタウンと、18世紀のなかでもジョージ王朝時代の建物が並ぶニュータウンに二分される。


周りの自然と街並みがよく調和した町として有名で「近代のアテネ」とも呼ばれている。町そのものよりエジンバラ城の歴史のほうが古く、起源は6世紀頃までさかのぼるという。また、建築史上または歴史上、貴重といわれる建築物の数は16,000にも上ると言われている。人口は約40万人。


街の中心にカールトン・ヒルと呼ばれる小高い丘があり、そこで毎年8月、エディンバラ・フェスティバルと呼ばれる芸術祭典が行われ、多くの観光客で賑わう。また、この街のカフェで作家J・K・ローリングが「ハリー・ポッターと賢者の石」を書き上げたという話は有名である。


街の探索
7時ごろになって、やおら夕食がてらに街の探索に出かける。そこでまず宿の人に近くのパブを尋ねると、前の通りを歩いてすぐのコーナーに「コナンドイル」という名の素敵なパブがあるという。この街出身で、超有名な名探偵シャーロック・ホームズの生みの親である作家、アーサー・コナン・ドイルに因んで名づけたのだろう。でも、いつも込んでいるという。まずはそこへ行ってみよう。


宿から数十メートルと離れていないそのパブはすぐに見つかる。だが、入口前に行くと、中は客であふれている。そして、すごい歓声があがっている。いったいどうしたのだ? 数段の階段を上がって中に入ろうとするが、そこから立錐の余地もないほどの混雑振りで、みんな立ったままTVに釘付けになっている。例のワールドカップ・サッカーの放送中なのだ。


前の女性に尋ねてみると、イングランドとポルトガルの試合中だという。スコットランドの地元チームではないが、同じ国のチームだけいに、大声援が飛ぶのは至極当然のことであろう。だから、ゴールでもしようものなら、やんやの大拍手と大歓声でパブのホールが揺れるほど響き渡っている。なるほど、これで状況が察せられる。


これでは食事どころではない。しばらく様子を見てから、ほうほうのていで退散する。この街でいちばん賑やかなショッピングストリートであるプリンセス・ストリート(Princes Street)は宿から指呼の間にある。宿まで迷いながら来たお蔭で、街の地理がほぼ頭に入り込んでいる。宿のあるクイーン・ストリート(Queen Street)から通りを南にひとまたぎすると、ほんの4〜5分でプリンセス通りに出る。そして、この通りから見下ろす谷底にウェーバリー駅がある。


ショッピングストリート・プリンセス通り
プリンセス通りに出ると、夕日を浴びたストリートには車があふれている。遠く向こうには歴史のある尖塔がそびえて古都の雰囲気がただよう中、現代のシンボルである自動車が列をなしており、そのコントラストがなかなか面白い。ここは幾つものデパートが並ぶショッピング通りで、エジンバラ城や旧市街を見晴らす賑やかで華やかなストリートである。


道路を横切り、駅側の歩道に出てぶらついていると、インフォメーションの看板が目に留まる。時間が遅いので閉まっているかなと思いながらドアを開けると、なんとまだ仕事をしている。これはありがたいと早速、カウンターへ。


夕暮れ時のプリンセス通り(午後7時過ぎ)


午後8時過ぎごろのプリンセス通り。左側が低地の公園(ガーデン)地帯。



プリンセス通りの賑わい(午後7時過ぎ)。右手の高い尖塔はスコット記念碑。





営業時間のことを係に尋ねると、毎日夜8時まで開いているという。この街のインフォメーションはサービス満点である。そこで、明日の市内観光バスのチケットを購入する。この街でも、ダブリンと同様に“Hop On−Hop 
Off”の乗り降り自由の市内観光バスがある。料金は大人£9、シニア£8(1880円)。安く周れるので、観光はこれにかぎる。しかもマルチリンガル案内で、日本語版がヘッドフォンで聞けるようになっているのでありがたい。


パブでフィッシュ&チップスの夕食
ついでに、近くのパブの紹介を頼んでみる。すると、地図の上にマークを付けてくれ、すぐ近くの通り一帯に多くのパブがあると教えてくれる。礼を言って、その通りを目指して歩いて行く。そこはこのプリンセス通りから入り込んだ一つ目〜二つ目の通りで、ぶらぶら歩いて行くと数軒のパブが見つかる。通りの角まで来ると、そこにもパブがあり、感じがよさそうなので中をのぞいてみる。すでにサッカー中継は終わったのか、店内は客も少なく落ち着いている。よし、ここに決めよう。


夕食を取ったパブ

ウェイトレスをとらまえて、「フィッシュ&チップス(Fish & Chips)はできますか?」と尋ねてみる。すると「えゝ、できますよ。」という返事。「じゃ、それをください。」と告げて、奥の座席に着く。このフィッシュ&チップス料理は英国の国民食と言われるほど庶民的な魚料理だそうで、持ち帰りも簡単にできるいわばファーストフードでもあるわけだ。内容はタラ(cod or 
haddock)やカレイ(plaice)のような白身魚のバカデカい切り身に衣をつけて揚げたもので、チップスというのはフレンチ・フライ(French fries)より太いタイプのフライドポテトのことである。


まだ一度も試食したことはなく、この機会にぜひ味わってみたいと思っていたのだ。ナイフとフォークを持ってきたウェイトレスが「飲み物は何にされますか?」と尋ねるので、「この地でお勧めのビールありますか?」と問い返す。すると、「あちらのお客さんが飲んでいるのが人気です。」と壁際の客が飲んでいる濃い色のビールを指差して教えてくれる。「じゃ、それをお願いします。」 後でそのビール名を尋ねると、“CALEDONIAN 80%”という。かなり度数が高いのだ。


ビールが先に運ばれ、それを飲みながら料理を待つ。少々コクのある地ビールである。やがて運ばれてきたフィッシュ&チップスは、次の写真で見るとおりである。なんとデカイ魚料理だ! 魚の名前を尋ねると、“haddock”とメモしてくれる。やはりタラの身なのだ。白身で骨はなく、ぱさついてはいるが、あっさりした味で結構おいしい。タラはポルトガル名物の塩タラの料理を食べたことがあるが、こちらの方が生身だけにおいしい。


これが名物“フィッシュ&チップス”

それにしても分量が多く、これにチップスとグリーンピースまで添えてあるので、これらのすべてを食べるには少々無理してお腹に押し込まないといけない。時間をかけて、独りゆっくりと賞味する。二人でシェアしても行けそうなボリュームである。ただ、骨付きの魚に慣れた私には、いつ骨が出てくるのかとビクつきながら食べるのだが、とうとう最後まで骨の1本も出てこない。やはり大きい魚は骨も少なくて食べやすく、欧米人向きなのだろう。



(次ページへつづく・・・。)










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