それもそのはず、この城は1684年の火事で崩壊し、中世の城のほとんどは失われて石造りの塔Record
Towerが一部修復されて残っているだけなのだ。現在の建物は17、18世紀にウィリアム・ロビンソンによって建て替えられたものという。ダブリン城は1204年にジョン王によって建てられ、1922年まで約700年間にわたってイギリス支配のシンボルであったという。その意味で、この城はダブリンの歴史の中心とも言えるものである。
現在のお城は、普通のありきたりの建物の感じで、お城としての外観や風格はどこにも見られない。城内の様子はガイド付きで見学できるようになっているが、あまり興味がわかないので省略することにする。
ギネス・ストアハウス( Guinness Storehouse )
ダブリン城を後にすると、次は楽しみのギネスビールの総本山の見学である。しょぼ降る雨の中、やって来たバスに飛び乗ってDame Street を西へ走り、James’s Street に入るとギネス前に到着。そこで下車すると、大きな工場のようなストアハウスが出迎える。
ストアハウス前の建物に“Guinness”のシンボルマークが・・・
小さな入口を入ると、1階ホールの広い空間があり、そこにはギネス固有の各種グッズの売り場や数箇所の入場チケット売り場が設けられている。
各チケット売り場には入場者の長蛇の列ができており、なかなかの人気ぶりを示している。アイルランドと言えばなんと言ってもギネスビール。そのギネスビールが生まれた場所を訪ねずしてダブリン観光なしといっても過言ではない。だから、観光客はこぞってここを訪れることになる。だが、ここでも入場料が必要なのだ。
ここアイルランドに来てからは想定外の料金を取られることが多い。まず、エアー・リンガスの機内サービス、次いでケルズの書の見学、そしてこのギネスの本山である。私の頭の中では、これらは無料のはずとばかり思っていたのである。機内サービスは普通無料だし、大学図書館の展示であれば無料だろうし、日本国内のビール工場見学は無料の上、最後には生まれたてのビールを振舞ってくれる。そんな感覚が残っているので、予想が裏切られてしまう。
心外な気持ちでチケット売り場の行列に並ぶ。シニア割引があるので、それを申し出て料金9.5ユーロ(1425円)を払うと、「どちらの国から来られましたか?」と尋ねる。どうも訪問者の出身地別統計を取っているようだ。そして、館内の案内パンフとギネスビールが封じ込められた記念の品(プラスチックでできた円形の球)を手渡してくれる。そして、この球の裏面に取り付けられた輪ゴムを見せながら、「これを7階のスタンドバーで提示すると、それと引き換えにビールが提供されます。」と説明する。
早速、これを持って奥の入口から館内に入る。薄暗い館内の片側に何やらうず高く山積みされた物が見える。よく見ると、それはビールの原料の麦芽の山なのだ。穀物のかすかな匂いがするだけで、特別の香りはない。
大量に積まれた麦芽の山
次はエスカレーターで2階のフロアーに上る。そこには醸造装置の展示があったりビールの大樽の保存の様子が見られる。3階はギネスの数々の広告の歴史などが展示され、4〜5階は会議やセミナーなどの学習センター、6階は各種のバーがある。
多数のビール樽が積まれている
多分3階だったと思うが、そのフロアの片隅にごうごうと滝のように流れるセットが置かれている。これはいったい何なのだろう? 何か意味があるのだろうが、よく分からない。これはひょっとするとギネスビールの滝なのかもしれない。一人であれこれ想像してみるが、結局分からずじまいである。
ギネスビールの滝? それはナゾ
最上階の7階はガラス張りの円形展望ラウンジになっており、ここで絶景の眺望を楽しみながらギネスビールが飲めることになっている。ラウンジの中央にはバーカウンターがあり、そこで例の“球”を差し出すと付着しているゴムのワッカを引き取り、それと交換にギネスビール1パイント分(0.57リットル)が貰える。
7階の展望ラウンジ。このカウンターバーでビールと引き換える。
各階へはエスカレーターまたはリフトで昇れるようになっており、時間のない団体客はリフトで7階まで直行しているようである。私は3階まで見学した後、リフトで7階へ上り、ビールと交換して初のギネスを試飲してみる。係が「1パイントにしますか?」と尋ねるので、「ハーフパイントでお願いします。」と申し出る。夕食時でもないので、私には1パイントは多過ぎる分量である。
ビールの注ぎ方を見ていると、少し変わっている。一度カップにビールを注ぎ入れてカウンターに置く。そこでこれを受け取ろうとすると、それを制してちょっと待つように言う。??と思って見ていると、コップの中の泡が落ち着くのを待っているのだ。このビールの泡は一種独特のとても木目細やかな微粒子で、なめらかな泡立ちをしている。それが落ち着いたところで、再度その上から注ぎ入れる。
こうして受け取ったのが写真のカップで、早速グ〜ッと一口飲んでみる。黒々としたビールの色で、飲み慣れない私にはちょっと抵抗感がある。コクのあり過ぎる味で、ラガービールに慣れた私には少し重過ぎる。窓側にセットされたテーブルに座り、眼下に広がる市街の眺望に見入りながら、ゆっくりと味わう。これがこの地の名物・ギネスビールなのだ。このラウンジには、たまたま日本からやって来た団体客の姿も見える。私もそうだが、日本から遠くはるばると、よくこの地に来たものだ。
これがハーフパイントのギネスビール。一口飲んだので少し減っている。
このラウンジは円形だけに360度の眺望が開けているのだが、今日は生憎の雨天で折角の景色が霞んでいる。このダブリン市内には高い展望塔がないだけに、この展望ラウンジは市内唯一の展望塔になっている。その意味でも、このギネス・ストアハウスのラウンジは唯一最大の観光名所なのかもしれない。多くの観光客が押し寄せるわけである。
ラウンジの様子(みんな逆光になって写真が暗い)
眼下に広がる風景を眺めながら、のんびりとギネスを味わう
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