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   N0.15



10.ジャイプ−ル観光……アンベ−ル城、風の宮殿、シティパレス、
                 サリ−の着付け

 
いよいよ旅行最終日。昨日のハプニングの影響で、今日は2日分の旅程を消化することになっている。当初の予定では、昨夜のうちにジャイプ−ルに到着して1泊し、それから市内観光となっている。ところがジャイプ−ルへ行けず、アグラへ戻って宿泊したため、今日はジャイプ−ルへの移動が余分に加わることになる。というわけで、これからジャイプ−ルへ230kmの道程を移動し、そして市内観光を終えて、そこからさらに260kmの道程をデリ−へ向けて移動する。そして夜遅く、そのまま帰国するという強行軍である。覚悟を決めてかかろう。 


真夜中の出発
真夜中の2時にモ−ニングコ−ルがあり、眠い目をこすりながら何とか床を離れる。3時間足らずの睡眠しか取れていないので当然のことだろう。その上、旅の最終日でそれまでの疲労もかなり背負い込んでいる。だが泣き言はやめ、最後のエネルギ−を振りしぼって目いっぱい予定の観光を楽しもう。はるばるインドまで飛んで来ているのだ。今朝はホテルでの朝食がないので時間がかからない。ゆっくり洗面を済ませて身仕度を整える。
 

月明かりのなか、バスは昨日と同じ道をジャイプ−ルへ向かって走り出す。見上げる月はどうも満月のようだ。ということは、今日明日あたり、タ−ジ・マハ−ルは夜の開門があるわけだ。紫色に染まるマハ−ルを見てみたいが、それは個人の自由旅行でないと無理な話であろう。いつの日かその機会があるといいのだが……。
 

窓外に目を凝らすが、月明かりだけでは何も見えない。ドライバ−は大変である。昨日も終日、そして今日も夜中から夜遅くまで運転の連続となる。彼も睡眠不足の身体で過労気味に違いない。大丈夫だろうか? 暗闇の運転は、疲れもいっそう増すことになる。旅行先でこんな真夜中の走行は初めてのことである。そんなことを思いながら、暗闇だけが流れる車窓を眺めていると、つい眠気を催してしまう。
 

素敵な夜明けの風景
時々すれ違う車のライトがまぶしい。彼らは減灯もせず、やりっぱなしに走っている。さすがに、この時間帯には車も少なく、順調に走り続ける。がたぴしの田舎道を走って数時間、ようやく空の方もほのかに白み始めている。車で走りながらインドの夜明けの風景を眺めるのも乙なものである。少し冷え込んでいるのか、窓の向こうの風景には深いもやがかかっている。 


ホテルで朝食
出発から3時間以上走ったところで、朝食休憩となる。辺りにはほとんど建物らしいものも見えず、ただ原野が広がる道路沿いにポツンとホテルだけが建っている。道路の舗装状況は悪いが、アグラ〜ジャイプ−ルを結ぶメインル−トだけに、観光客の利用者が結構多いのかもしれない。辺りを見回すと、視界いっぱいに薄もやが広がり、し〜んと静まり返った素敵な夜明けのシ−ンを見せている。
 

ホテルの庭より。前方の景色は朝もやに包まれ、その中に残月が浮かぶ
素敵な光景。だが、満月が写真ではよく見えない。矢印の下が満月。


ふと、朝もやの中を見ると、そこには見事な満月がミルキ−なもやの中に溶け込みながら今日最後の残月を見せている。わ〜…と思わず声が出そうな素敵きわまる光景である。早起きは三文の得というが、きっとこのことをいうのだろう。早起きしたお陰で、思い出に残る素晴らしいシ−ンを見ることができたのだから……。
 

車窓の風景
朝食を済ませると、再びバスの人となり、ジャイプ−ル目指して走り続ける。窓からは朝日を受けながら静かに広がる農耕地と立ち木が茂るのどかな田舎の風景が見られる。昨夜の騒乱があったのは、どの場所だったのだろう? そう思いながらも、つい見過ごしてしまう。後でガイド氏に尋ねたところ、横転した車は道路脇に片づけられ、何事もなかったように静かだったという。事故が発生してから警察が出動し、事態の収拾整理に当たったのだそうだ。お陰で、今朝は平穏のうちに通過できたのである。
 

ジャイプールへ向かう途中の風景

ジャイプール到着
こうしてスム−ズに走行しながらも、約5時間をかけて早朝8時過ぎ、目的地のジャイプ−ルの街に到着する。ここまでのコ−スが昨日予定されていた旅程であるが、もし事故の渋滞にでも巻き込まれていたら、到着はいつになったのか想像もつかない。アグラに引き返して1泊し、こうして夜中出発で来たのは大正解だったわけだ。途中、朝食休憩はあったものの、4時間近くもバスに揺られているのだが、思ったほど疲れは感じない。
 
                 (ジャイプールの位置)



ジャイプ−ルのこと
ここジャイプ−ルの街は人口約2300万、デリ−の南西266kmの距離に位置するラジャスタン州の州都である。その歴史は浅く、260年の歴史しかない町で碁盤の目状に設計された近代的な新都市でもある。1728年、藩王(マハラジャ)ジャイ・シンが先祖代々の丘陵城砦であるアンベ−ル城を出て、自らの名にちなんだこの町を建設したといわれる。この町のシンボルとなっている美しいハワ・マハル(風の宮殿)や、ムガ−ル様式とラジャスタン風の建築様式が融合してできたシティ・パレスなどがあり、郊外にはアンベ−ル城が残っている。
 

ピンクシティ
また1876年、英国皇太子の訪問を歓迎して町中をピンクに染めたそうだが、それ以来、ピンク色のままになっており、それがこの町の大きな特色にもなって、ピンクシティとも呼ばれるようになっている。
 

アンベール城へ
さて、これからが本日予定されている観光の始まりで、市内を通り抜けてまずはアンベ−ル城へ向かう。市の郊外11kmの地点にある城で、しばらく走ると左手丘陵に長いクリ−ム色の建物が見えてくる。


丘の上にアンベール城が見えてきた

坂下の駐車場基地に出ると大混雑で、乗客待ちの何台ものジ−プが所狭しと折り重なり、それに巨大な象さんたちまでが入り混じっている。私が整理してやりたいほどの雑然とした混雑ぶりである。狭い場所に勝手きままに適当にジ−プを止めているので身動きができないでいる。もっと整理して客待ちをすればいいものを、それをやらないで混雑させるのがインド流なのかもしれない。
 

制限された名物“像のタクシー”
このアンベ−ル城へは徒歩で上る以外にジ−プや象のタクシ−を利用できる。この4人乗りの象はこの地の名物らしく、“象のタクシ−”と呼ばれている。つい先頃までは200頭もの象がいて観光客を運んでいたそうだが、ある日1人のガイドが象の鼻ではねられて死亡すると事故があったという。普段はおとなしい象でも、何かがあると機嫌をそこなうらしい。
 

その事故以来、象の数を現在は50頭に制限しているのだという。そのため象に乗るためには、予約待ちで大変らしい。こうした頭数制限のあおりをくって廃業に追い込まれた象使いたちは、彼らの生活がかかっているだけに、州などが生活補助をしているらしい。そんなわけで、われわれもそのあおりで象のタクシ−には乗れず、乗り合いジ−プを利用することになる。
 

ジープでお城へ
バスを降りると、押し合いへし合いで待つジ−プに分乗して丘上の城を目指す。家並みに囲まれた村の狭い道路を埃を立てながら走り抜けていく。やがて城門の狭いア−チを通り抜けると、急坂を上り始める。なるほど、これでは馬力のあるジ−プが適しているというわけだ。上りあがると、入城門の手前で下車し、城内へ入る。
 

乗り合いジープで城へ向かう


前方の狭い門をくぐって急坂をを上る

丘の上に建築されたこの丘城は、6世紀もの長きにわたってアンベ−ル王国の首都であった。城内には宮廷や庭園が何段にもなって造り上げられ、最高傑作といわれる鏡の間などもある。宮殿正門にあたる太陽門のア−チを通り抜けて中に入ると、周りを建物に囲まれた広い正方形の中庭が静かに広がっている。あまり美的な庭園ではないが、傍らで尾長猿が戯れているのがのどかさを演出している。
 

“象のタクシー”が到着


サルが散歩するのどかな中庭


大小のドームがそびえる

城内の様子
屋内に入って上段に上り高台に出ると、その眼前には周囲の山並みや谷間に広がる村落を見下ろせる素晴らしい景観が開けている。取り囲む周囲の山上には万里の長城のような城砦が築かれており、そのシルエットが稜線に浮かび並んでいるのが見える。これを見ると、やはりここが城砦都市であることが分かる。



           城内テラスから眺めた中庭の風景。右手は太陽門。


            一段高いテラスから眺めた風景。前方の山上にも城砦が見える。谷間には町が広がる。







 裏手の山上にも城砦が・・・




また、見下ろす大きな堀の中に築かれた広い台地が見える。これは象を戦わせた競技場だったらしい。マハラジャは、こうして城から見下ろしながらそれを楽しんでいたのだろう。堀の水際では水浴びする象の姿が見られ、道路には観光バスの長蛇の列が見える。これを見ても分かるように、いかに観光客が多いかということ。このジャイプ−ル〜アグラと続くル−トは、インド北部観光のメインル−トなのだろう。
 

堀の中に台地が造られている。象の競技場だった?

「鏡の間」
宮殿の中ほどに貴賓謁見の間として利用された勝利の間がある。そこに最高傑作ともいわれる「鏡の間」があるのだが、その絢爛豪華な室内装飾には息を呑むばかりである。とにかく室内空間を囲む天井から壁一面にびっしりと装飾が施されているのだ。まるで大きな万華鏡の中に迷い込んだ感じである。これらは無数の鏡の小片で飾られているそうで、ここで灯される1本のロ−ソクの炎が装飾に反射して何千本にも輝いて見えるのだそうだ。その様子を見てみたいものだが、残念ながら一観光客ではそれもできまい。
 

万華鏡のような錯覚を覚える装飾で埋め尽くされている。

この宮殿のすごいところは、どの部屋も見事な装飾に埋め尽くされ、いかにも贅を尽くしたという造作で彩られている。よほどの富と財力を有するマハラジャであったと思われ、その繁栄ぶりが想像できる。外観は無骨な感じの城砦だが、それとは裏腹にその内部の宮殿は繊細で豪奢な装飾で飾られているのが訪れる者に意外感を与えている。
 








 贅を尽くした見事な装飾
















壁面には色とりどりの花瓶の装飾が・・・



(次ページへつづく・・・)










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